引っ越してきたのは、住民が消えていく町
トドキ
第1話
この町では人が消える。
そう気づいたのは、引っ越してきて間もないころだった。
ある日の昼、僕は転校先の高校で新しくできた友達2人と弁当を食べていた。普通に怪しいことも何もなく、前の学校と同じように楽しい話で盛り上がった。特にかずのりという人が話題をたくさん持っていて、基本的に尽きることはないのがすごい。
「でな、最近俺の家あたりで幽霊が出たって噂なんだぜ?」
相変わらず自身に満ち溢れたような喋り方で、たくましい。堂々と金髪に染め切った髪の毛が彼の大胆な性格を現しているよう。
「なに言ってんだよ、そんなものいるわけないじゃないか」
すごく図太い声でこう言ったのは科学大好き少年のともや。まんまるとした体が印象的で、穏やかで優しいかと思えば割と現実主義者な部分が目立つ。
なかなか意見の合わなさそうな二人だが、それでも一緒にいるのは相当な信頼関係あってだと思う。
「いや絶対いるって、なあせいじ?」
「え? う、うん」
僕は苦し紛れに返事をした。
「ほら、せいじもお前が変なこと言うから困っているだろ?」
「はあ? 俺がいつ変な話したよ!」
でも、それにしても本当に仲いいんだよな、この二人。
この学校に来たばかりのころ、まだクラスに慣れなくておどおどしていた僕を真っ先に受け入れてくれた二人。みんなからの評判も良くて、多分一番信頼されているコンビ。もちろん、僕もそう思う。
ただ、一つだけ気になるところがあるとしたら、いつもどこか物足りなそうで何かを失っているような顔をしているような気がした。まるで、重い過去を背負った悲劇的なヒーローみたいな感じで。
もちろん、それは僕の思い込みで、単なる妄想みたいなものだけど。
その日は、ずっとかずのりが見たっていう幽霊の話で盛り上がっていた。なかなか決着がつかなくて、僕たちは明日もう一度議論しようということで一旦落ち着いた。あわただしいけど、なんとなくこれも楽しいからよかった。
僕は二人に会えるのが楽しみだったんだ。
でも、次の日、かずのりは学校に来ていなかった。僕は病気か何かでやすんだのかな、と思って自分の席で勉強しているともやに話しかけた。
「ねえ、今日かずのりが来てないけど、どうかしたのかな」
ともやは僕の質問に対して首を傾げた。
「かずのり? せいじ、お前、誰のこと言ってんの?」
「え?」
「もしかして、前の学校の友達が恋しすぎて、間違った記憶ができちゃったのかい? そんなやつこの学校にはいないよ?」
「でも、幽霊の・・・・・・」
「はあ? んじゃ、ほら見てみ?」
ともやは僕にスマホのラインの画面を見せてくれた。確かに、どれだけ探しても、かずのりの名前は見当たらなかった・・・・・・
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