第4話 夜半に嵐。

いつの間にか、眠っていた。自分が、気配を感じて目を覚ましたのは、夜中の2時を回っていた。窓辺は、新月で、闇が深い筈なのに、星の灯りが注いでいる。

「なんで、ここ?」

犀花は、頭を振った。なんとなく生臭い匂いが、窓の向こうから、漂ってきている。犀花が、よく見ようと、窓辺に顔を近づけると、偶然にも、三つの紅い光と、目が合ってしまった。

「あ!」

そおいうと、犀花は、後ろに後図さると、背中が、何かにあたった。

「だから、あれほど、言ったわよね」

母親だった。

「だから、出て歩くなと言ったでしょ。誰にも、気付かれず、居ろと何度も言った」

鬼の形相で立っていた。

「見つけた」

紅い光が、グッと窓辺に近づいてきた。光と思っていたのは、三つ目で、大きな蜘蛛の体を持つ、生き物だった。

「化け物!」

「嫌。。嫌。。そんな事、言わないで、くださいよ。マスター」

窓に手を掛け、その小さな頭を押し込み入ろうとしている。

「帰るのよ」

母親は、指先に呪符を挟み、念を入れると、火をつけた。

「破邪!」

火の矢となり、蜘蛛の顔面へと飛び出す。

「待って!マスター」

蜘蛛は、ジタバタと、窓から、外へと逃げ出そうとする。

「ようやく、見つけたのに、それはない」

「帰るのよ」

母親は、容赦なく、蜘蛛の跡を追いかけようと、窓に手を掛けた。

「少し、荒いのでは?」

外に立つ、大きな木の影から、声がした。

「誰?」

犀花が、母親の後を追いかけ、窓の外を見ようとするが、母親に押し戻されてしまった。

「退魔師は、やり方が、甘い。それとも、自分の行いを隠すためかな?」

逃げていく蜘蛛の妖物とは、別に姿を現したのは、先ほど、街中に現れた銀髪の少年だった。

「今晩は、色々と厄介な事が、多くてね。これ以上、厄介な事は、起こしてほしくなかったんだけど。」

「お前まで、現れるとは」

母親は、犀花の様子が気になるのか、何度か、振り返りながら、少年の顔を睨みつけていた。

「そこに行く。余計な事は、言うな」

「そろそろ、本当の事を教えようよ。命懸けの封印も、もう、破れつつある」

少年は、1階の屋根の上に立ち、窓から、中を覗き込んだ。

「やぁ。。あまり、外には、出ない方がいいよ。このお姉さん。怖いからね」

母親は、言葉にカッとなり、呪符を苗つけると、少年は、後ろに飛び去る。

「言ったよね。この夜は、静かに過ごす事。誰かが、起きて来るかもしれない」

少年が、後ろに飛び去ると、突然、地面が、裂け、巨大な右手が現れ、少年に呪符を投げ受けていた母親の足を、掴み上げた。

「母さん」

巨大な右手は、母親の体を振り回し、そばの木に、叩きつけようとした。

「だから」

少年は、腰の刀を抜くと、巨大な右手を首から、バッサリ切り落とした。

「母さん!」

半狂乱になり、窓から、外に身を乗り出すと、少年が、母親の体を支え、地に降り立つ所だった。

「もう、隠しきれないよ」

少年は、ポツリと言う。

「お役目、ご苦労さん」

母親の体は、少年の腕の中で、呪符を巻かれた1本の気になっていた。

「どういう事?」

「君を、守る為さ。」

「え?」

「十分に、役目は、果たした」

少年の手の中で、1本の木となった母親の元の姿は、ポッと、光を放つと赤く燃え出し、炭となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る