第17話 各国の思惑
それからの数日、城はバタついていた。使者たちに取り囲まれる国王と鈴子。何とか話を付け、皆を国に送り返す算段を付ける。三日目の朝には、集まった者たちすべてが自分たちの国へと出発していた。
彼らが国に帰るのに数日。国内での議論、結論に至るまでの日程はどのくらいなのか。しかしもう後には引けないし、元より、引くつもりもない。
国王ハースによると、大陸ザハドには大きな四つの国があり、その近隣に三つの小国があるとのこと。小国三つは大きな力もなく、大国の意思に従うしかないようだが、大国の方は、軍事力も経済力もあり、自己主張もそれなりに強いらしい。あの、使いの者たちの説明がどこまで通じるかは不明瞭だ。
とりわけユーリルという国の王が曲者で、自国の軍事に大分予算を費やしており、今回の戦もかなり前向きであったとのこと。急に和平の話など持ち出して、果たして納得してくれるのかどうか。
「いざとなったら押しかけて行かなきゃ」
「ん? どこに?」
ゼンが鈴子の独り言に反応する。
「ご近所の国に、よ。本当はみんな仲良くしてほしいけど、やっぱり各国それぞれ、思惑とかあるんでしょうねぇ」
「思惑?」
「人間って種族は、無駄な争いが好きでね、存在を誇示したがるというかなんというか、しなくていい衝突をしたり、争わなくていいようなことで争ったり、そういうこと、繰り返すのよねぇ」
今回はわかりやすく、人間対亜種、という構図だったが、多分これ、大国同士での争いなんかも繰り返されているのだろう。
「鈴子殿!」
バン、と乱暴に扉を開け、入ってきたのはトルボ元帥。額のは大粒の、汗。
「あら、そんなに慌ててどうしました?」
「とんでもないことになりそうですぞ!」
鈴子は嫌な予感がしていた。まさかとは思うが……、
「ユーリルから宣戦布告がっ」
「あらやだ、やっぱり?」
あらかた、この機に乗じて腰抜けのミリール国王を
「やっぱり、とは…?」
鈴子は大きく息を吐き出すと、
「今すぐ国王との謁見を!」
と、トルボ元帥に告げた。
「ゼンちゃん、申し訳ないけどまた力を貸してね」
「おう! 何でもやるぜ!」
鈴子は眉間に皺を寄せ、次の一手を考えていた。
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