男ども殺し合うより称え合え
楠本恵士
少し変な青バラの【童話国】
第1話・リュアルの襲来
花ビラがハート型をした青いバラが咲き乱れ、その青バラが国の紋章にもなっている【青い童話国】
「謎の存在〝リュアル〟が、この童話国に現れました」
その日、頭にヤギの角を生やしたイケメン男性兄弟『中ガラガラドン』とイケメン少年の『小ガラガラドン』は、城の王女の玉座部屋に通された。
金色に輝く『幸福の王女』が言った。
「中と小のガラガラドン、力を貸してください」
金の王女は、最初は町の広場に設置されていた普通の金を貼られた銅像だった。
ある日に、金色の王女の像が動き出して城に向かって歩いてきて。
金色の幸福の王女として玉座に座った。
玉座に座る、黄金に輝く王女が言った。
「先日『ブレーメンのイケメン音楽隊』が、リュアルに襲われました」
王女の言葉を聞いた、中ガラガラドンが戦斧を握り締める。
「ブレーメンのイケメン音楽隊が? リュアルから、どんな姿にされたんですか?」
リュアルは、黒衣の人間姿で現れる一見すると、童話国の住人と見分けがつかない。
リュアルと童話国の住人を見分ける方法は、リュアルは夢とか希望を持っていないので返答が決まって。
「夢とか希望が叶うワケがない……現実的になれ」
そんな、否定的な言葉を必ず返してくる。
金色の王女が言った。
「わたくしと会話をする時はタメ口で結構です……ブレーメンのイケメン音楽隊は、ロバ、イヌ、ネコ、オンドリに変えられてしまいました……リュアルが語った言葉だと、それが真実の姿だと」
「真実……リュアルが好きそうな言葉だ、でオレたちは何をすればいい?」
「リュアルと戦う者たちを、あたしを含めて見つけて集めてチームを作ってください」
王女が手にした木製のカップが、黄金のカップに変わる。
金の王女は、手にしたモノを自由に黄金に錬金するコトができた。
「リュアルの出現により、国が乱れています。喧嘩があちらこちらで発生してしまって、一刻も早くリュアルと戦うチームを作らなければ」
「まずは、オレたちはどこへ行けばいい?」
「最初に【鬼ヶ島】に行ってください」
中と小のガラガラドンが、少しイヤな表情をする。
「鬼ヶ島……
「それは、わかりません……とにかく、鬼ヶ島に行って『豪拳モモ太郎』という人物に会ってください、きっと力になってくれます……モモ太郎は拳で語る漢です」
中ガラガラドンと、小ガラガラドンは仲間を集める旅に出た。
沖に鬼ヶ島を望む海岸──半年前に桃を中から割り裂いて誕生した、たくましい剛健な肉体のイケメン『豪拳モモ太郎』は、腕組みをして鬼ヶ島を見ていた。
日焼けした褐色の肌、 ピラミッド型の
交差した幅広革の、ヘビィメタル風の装身具を身につけ。
裸の上半身と下半身には鍛えられて、隆起した筋肉。
タンパク質の摂取と、筋肉トレーニングで見事な肉体美に仕上がったイケメンなモモ太郎は、両手のファンティング・グラブを締め直す。
「さて、これから先どうしたものかな」
モモ太郎の後方には、幻獣キマイラか魔犬ケルベロスのような、イヌ、サル、キジが合体した三頭一身の怪物がいた。
数日前まで、家来のイヌ、サル、キジは頭にそれぞれのお面を付けた人間だった。
それが、リュアルに襲われこんな姿に。
「リュアルの野郎、オレの家来を本当は別の姿にするつもりが、失敗したとかほざいて……こんなおぞましい姿にしやがって、許さねえぞ」
イヌとサルがモモ太郎に向かって凶暴な形相で牙を剥く、キジも鋭いクチバシでモモ太郎の眼球を突こうと狙う。
キビ団子を食べながらモモ太郎が呟く。
「もう、キビ団子程度じゃ。こいつらを従わせるコトはできねぇか……仕方がねぇ」
モモ太郎は昔、ある人物から譲り受けた、三個の金の輪を家来に向かって投げる。
三個の金の輪は、それぞれイヌ、サル、キジの首にハマり、三匹は大人しくなった。
「これでしばらくはよしと、さてとどうやって海を渡るかな……鬼ヶ島の『
鬼ヶ島で鬼の大将を務める温羅童子は、少年のような可愛らしい系のイケメン鬼で、その顔に似合わない統率力で部下の美形鬼たちが悪事を働かないように抑えていた。
豪拳モモ太郎一行とは以前、ちょっとした勘違いから衝突して戦いに発展したが、今は和解して温羅はモモ太郎を「モモお兄ちゃん」と呼んで慕っている。
「鬼ヶ島までは遠いな……オレ一人なら泳いでもいけるが、イヌ、サル、キジの家来がいるからなぁ……こいつらを置いてはいけねぇ」
その時──浜に中ガラガラドンと、小ガラガラドンがやって来た。
中ガラガラドンが言った。
「あんたが、拳で語る豪拳モモ太郎か」
「そうだが、おまえたちは?」
「ガラガラドンだ、仲間になって。一緒にリュアルを倒すために戦ってくれ」
「そうしたいのは山々だが、今は鬼ヶ島の鬼たちの安否が心配でな……この海を渡って鬼ヶ島の様子を確認してからでないと……リュアル退治は」
その時──海が大きく盛り上がり、海中から巨大な海ガメが出現した、海ガメの甲羅の一枚がパカッと上に開いて、中から白ヒゲの老人が姿を見せた。
昔話に出てくるような老人が、モモ太郎を見て首を傾げながら言った。
「おまえさん、どこかで会ったような……会ったことが無いような、あぁ思い出せない……儂はいったい誰じゃ? このカメはいったいなんじゃ? ここはどこじゃ?」
髪を結った白髪の老人を凝視していた、豪拳モモ太郎が呟く。
「じいさん、まさか……そうか、リュアルにそんな姿に……それがリュアルが言う、本当の姿なのか……リュアルの野郎」
数日前まで、ラフなアロハシャツ姿でウクレレを弾いて竜宮城と地上を、カメ型の万能メカで往来していた『ウラシマタロウ』は、本来の物語ラストの老人の姿に変えられた。
カメから浜に降りて、座り込んだウラシマタロウは、寂しげに海を見つめる。
「みんなどこに行ったのじゃ……儂は今まで何をしていたのじゃ」
老人のウラシマタロウが、震える指先でカメ型のメカを指差してモモ太郎に対して呟く。
「おまえさんに、あのカメを譲るのじゃ……儂には、もう必要ないモノなのじゃ」
深々と旧友に頭を下げる、涙目のモモ太郎。
「じいさんすまねぇ、移動で使わせてもらう……リュアルは必ず倒す」
豪拳モモ太郎と、家来の三頭一身のイヌ、サル、キジ。
それと中と小のガラガラドンは、カメの乗り物に乗って【鬼ヶ島】に向かった。
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