(二)-12

 そして取り決めについては口頭での口約束のみだ。文書を交わすなど迂闊なこともしていない。

 それゆえ取り決めは信義則に基づいたものになる。信用第一だ。だから取り決めに加わった五社については仲間、身内だと思い最大限尊重してきた。困った時には援助もしてきた。

 そしてその取り決めを交わしたのは各社のトップであり、知っているのはせいぜいその側近ぐらいだ。

 これは逆にいえば、もしも取り決めの内容について漏らした者がいるとすれば、この「身内」の中から、ということになる。

 なるほど、この件の犯人は自分の近くにいると、松ヶ浦は思い至った。


(続く)

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