第3話「初めてのダンジョン」

勇者様と鉢合わせするのをさけ、僕は一時間ほどしてからダンジョンに入った。


「ここがダンジョン……!」


ダンジョンの中は岩がごろごろしていて少しだけ空気が重かった。


「本来ならダンジョンの中は真っ暗なはずだけど、勇者様が明かりの魔法を使っているのかな?」


明かりの魔法を使用するとダンジョン全体が明るくなる。


「勇者様たちがダンジョン探索している間は松明を使わなくて済みそうだ」


でもきっと勇者様たちは、ダンジョンから瞬時に脱出する魔法を使えるはず。


そうなったらダンジョンの中は真っ暗だ。


僕もレベル10ぐらいになれば脱出魔法を覚えると思うけど、まだレベル1だからな。


「勇者様たちがモンスターを狩ってくださったから、この階にはモンスターはほとんどいないはず」


でも断定はできない、いつでも攻撃できるようにしておかないと!


僕は弓を握りしめ足を前に進めた。


「お祖父様が、

『勇者様は光の草を食しているから勇者様のうんこは光っていて見つけやすい』

 って教えてくれたけど……ダンジョン内がこんなに明るい状態で見つかるかな?」


勇者様たちが明かりの魔法を使っていることが裏目に出た。


だが僕が想像していたよりもはるかに早く、勇者様のうんこを見つけることができた。


「勇者様の第一うんこ発見!」


勇者様のうんこはダンジョンの魔素を吸収し青白く輝いていた。


「きっと勇者様の魔力とダンジョン内の魔素が混ざり、存在感を放っていたんだ」


これなら勇者様のうんこを簡単に見つけられる。


「でも勇者様のうんこを見つけやすいのはモンスターも同じ。

 モンスターが勇者様のうんこを吸収する前に、僕が勇者様のうんこを全て回収しないと!」


僕はアイテム収集袋に勇者様のうんこを入れた。


「まずは一個目!」


集めるものが勇者様のうんこであったとしても、物を探したり集めたりするのは楽しい。


生き物の本能的な欲求にかなっていると思う。


「沢山勇者様のうんこを集めて世界樹に捧げて、世界樹から良いアイテムをもらってスキルをアップさせるぞ!」


僕が改めて決意を表明した時、背後でガサガサという音がした。


振り返るとそこには一匹のスライムがいた。


「なんだ……スライムか」


このときの僕はスライムぐらい楽に勝てると思っていた。


数分後、その考えが甘いと思い知らされた。


「うわっ! また外れた! 避けるな!」


スライムは意外と素早く、矢を上手く避けるので全然ダメージが与えられない。


なんとかスライムを倒した時には、一時間ほど経過していた。


レベル1の僕にはスライムすら強敵のようだ。


その後も僕は休憩をはさみながらダンジョン内の探索を続け、襲ってきたスライムを一匹倒し、勇者様のうんこを二つ回収した。


弓矢がなくなったので一旦村に帰ることにした。


「あちこち擦り傷だらけで服も破れてるな」



スライム二匹と戦っただけでこのザマとは。


ダンジョンを出ると夕闇に包まれていて、空には一番星が輝いていた。

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