世界樹の肥料係のダンジョン探索記・完結
まほりろ
第1話「世界樹の肥料係」
人の住む街から山をいくつも越えたところに、エルフやドワーフやニンフやユニコーンなどが暮らす村がある。
その村の中心には樹齢一万年を超える世界樹があった。
エルフたちは世界樹の世話をし、見返りに世界樹の実りをいただき、慎ましやかに暮らしていた。
世界樹の近くには度々ダンジョンが現れ、それを放置すると中から魔物が溢れ村を襲い村人を苦しめた。
そこで村人たちは腕の立つ若者を戦士としてダンジョンに送り込み、ダンジョンを攻略することにした。
ダンジョンを攻略する戦士の中でひときわ魔力が高い者を、人々は尊敬の念を込めて「勇者」と呼んだ。
この物語はそんな勇者に選ばれた青年……の話ではなく。
勇者の強い魔力を帯びたうんこを集め、世界樹に与える世界樹の肥料係の一族に生まれた少年の話である。
☆
「コニーよ、つい先日世界樹の近くに新たなダンジョンが出現した。
そのことは知っているな?」
「はい、お祖父様」
「勇者様御一行は勇者カイ様、戦士オデル様、魔術師リック様、僧侶アリッサ様」
カイ様は銀の色の髪がトレードマークのユニコーン、オデル様はドワーフ、リック様はリザードマン、紅一点のアリッサ様は
「既に勇者様御一行がダンジョンの攻略に向かわれた。
勇者様のうんこには非常に高い魔力が含まれている。
高い魔力を含む勇者様のうんこは、世界樹の良い肥料になる。
勇者様のうんことダンジョンの魔素が混ざると、さらに良い肥料にとなる。
だがそれをダンジョンのモンスターが吸収すると、モンスターが巨大化し凶暴化してしまう」
魔素とはダンジョンの禍々しいほどの魔力と、モンスターの気がまじった淀んだ空気みたいなものだ。
「我らエルフは、神に世界樹の世話係として任命された由緒ある一族。
わしらの祖先は世界樹の世話係の中の一つ肥料係に任命され、以来数千年の長きに渡り勇者様のうんこを集めることを生業としてきた。
コニーよ、お前も由緒ある世界樹の肥料係の末裔だ。
ダンジョンに十五歳のお前を送り出すのは心苦しいが、この家を継ぐ者はもはやお前しかいない。
ダンジョンに潜り魔物が勇者様のうんこを吸収する前に、勇者様のうんこを集め世界樹に捧げるのだ」
「はい」
僕の父と母も世界樹の肥料係をしていた。
この仕事は周りから馬鹿にされやされやすい。
父と母はこの仕事に嫌気がさし、昨年村を家を出て行ってしまった。
祖父はもう年だし、僕がダンジョンに潜るしかない。
「勇者様のうんこを集めたらわしに届けるのだ。
勇者様のうんこを世界樹に与えると、世界樹はお例として様々なアイテムをくれる。
そのアイテムを使えば、ダンジョンでの勇者様のうんこ集めがさらに楽になるだろう」
「はい」
世界樹に勇者様のうんこを捧げると、世界樹が回復薬やスキルアップの実をくれたり、枝を落としてくれる。
ポーションやエーテルはダンジョン攻略に必須だし、スキルアップの実を食べれば魔物を倒しやすくなる。
世界樹の枝を加工して武器にすれば、攻撃力が上がる。
僕の得意武器は弓とナイフ。
「ではゆくが良い、世界樹の肥料係コニーよ」
僕はおじい様に弓とアイテム収集袋をもらいダンジョンに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます