第4話

 意識や前世の記憶を残した転生であっても、六道輪廻の枠には嵌まり込んでいる。

 むしろ、そのような転生は前世での行為を受け是正するための罰と考えた方がよい。


 ユーリという男は本来、地獄に落ちるべき処理系だった。普通の人は悪い所があっても餓鬼道、畜生道くらいであるから、これはこれで稀少な存在と言える。

 

 しかし、彼は暗殺者の手にかかって死ぬ非業の死を遂げた。このとき、多くの業は暗殺者の手に移った。

 それでも消せない罪が彼にはあった。

 それは「統計の改竄」。この行為は数を殺すことに等しい。


 狐を殺した者の来世は狐に生まれて射たれる運命と語る謡曲があるが、数を殺した者は数となって来世で苦しむ宿命。


 かくして、この男には数の世界であるこの量子ビットで、修羅の道を歩むことになったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る