100の青い蕾
七瀬モカᕱ⑅ᕱ
小さな変化
あの子はとにかく何でも出来る子だった。勉強も運動も、とにかくなんでもできた。まるで少女漫画に出てくるような優等生だった。顔ももう覚えていないほど、記憶も曖昧だけれど。
これはそんなあの子との、ちょっとした思い出話。
✱✱✱
「川上先生、おはようございます。彩花さんも、おはよう」
今日も、学校の昇降口から二階へ上がる階段までの間に男の子にあいさつされる。樹さんだ。
「ああ、樹さん!おはよう。ちょっと声低いけど、もしかして声変わり??」
「はい、そうです」
私の隣で楽しそうに先生と樹さんがはなしている。私も何度も声をだそうとするけれど、上手く声が出ない。というか、息が上手く吐けないという方が正しいかもしれない。
「あ、そろそろ時間だよ。気をつけてね」
「はい。じゃあまたね、彩花さん」
「........」
結局、今朝も頷き返すのが精一杯で一言も言葉を交わすことができずに終わってしまった。
✱✱✱
授業と授業の間の休み時間に、先生からこんな相談をされた。
「そろそろ運動会ですねー。でね、ちょっと今年は相談があってね.....?人数の関係で、赤組に入ってくれないかなって」
少し、いやとても嫌だった。だってそうすると、玉入れの時のあの時間が無くなってしまうから。本音を言えば、あの時間が運動会のどの競技よりも大好きだから。
「気持ちは白組応援してくれたらいいから!」
先生は笑顔で、私に言った。それを当時小学二年生だった私は素直に受け取った。
この先、顔を合わせる機会はまだたくさんあるのだからと思っていた。
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