第9話 トゥーリ
『ピ~ン、ポ~ンパ~ンポ~ン。一年五組の藤吠牙君。お電話が入っているので至急職員室まで来てください』
「え?」
五時間目の授業中。いきなり呼び出された。
「おい、何したんだよ?」
クラスメイト達に尋ねられるが、一切心当たりがない。
首をかしげながらも席を立ち、職員室へと向かった。その背中をローナに見つめられているとも気が付かず。
職員室にやってくると生徒指導の宮内が待っていた。
普段何かというと生徒を呼び出して説教をかます厳しい嫌な先生で、今度もいちゃもんに近いなにかを言われて、理不尽な罰則を科せられると思っていたが、宮内はかなり心配そうな顔で「お客さんが来ている……」と言った。
職員室横の来客室を指さす宮内。まだ疑問が解消されずにその扉を開ける。
「突然呼び出してもうしわけない。戸塚警察署の者です」
若い男だった。
スカジャンから警察手帳を出し見せつけてくる。
俺の中の戸惑いはピークに達した。
何故警察が、学校で呼び出してくる。それに、
「あの……その警察手帳本物ですか? 触っても?」
「いや、不用意に一般の人に手渡ししちゃいけないことになってるんで……って、どうして、そんなことを聞くんですか?」
「いえ、別に……」
怪しいからだよ。不振だからだよ。
だって、あんたの眼、泳いでんだもの。
それに……隣の……、
「……早く話を進めろ」
待ち構えていたのはその警察の男性だけではない。もう一人いた。
鎧を着た女の子だ。
ここに居て当然だと言う風に堂々としているが、違和感が半端じゃない。
「この子は気にしないでください……とにかく席に座って」
警察の人が椅子に座るように促し、指示に従う。
警察と鎧の女の子と対面させられ、緊張で体がこわばる。
「改めて戸塚警察署の刑事、赤城というものです。君は藤吠牙君で間違いないよね?」
「そうですけど……」
「君に少しだけ話が聞きたくて、いいかな? 昨日の新宿の事……それと君のクラスのある人についてなんだけど」
「⁉」
そのワードが出た瞬間、全てが繋がったような気がした。
「ローナ・シュタインですか?」
「話が早いね……そのことについてこっちの人から話があるみたいなんだけど」
赤城が、隣の鎧の女の子を促す。
「ところで、この人誰です?」
「……僕も知らない」
「は?」
いきなり赤城が頼りないことを言いだした。
「えっと……今更だけど、お名前何て言うの?」
赤城が鎧の女の子に聞き始めるが、彼女は無視した。
そして手をかざし、
「
かざした手の先に魔法陣が浮かび上がった瞬間だ。
———時が止まった。
「はぁ⁉」
思わず立ち上がってしまう。びっくりしたいきおいのまま膝をテーブルに思いっきりぶつけた。
「イッデェ‼
————あれ? 動ける⁉」
新宿の時と違い、今度は完全に動けるようになっていた。
「久しぶりね、藤吠牙」
「はぁ⁉」
いや、あんたなんか知らんぞ?
「誰だよ⁉」
鎧の女の子が腰に携えた剣を抜いた。
「……? 記憶がないの? まぁいい、私の名は———トゥーリ。
トゥーリ・シュタイン。答えてもらうわよ。ローナ・シュタインに何を吹き込まれたのか。
そして———私の〝オウカ〟はどこにあるのか」
「はあああああぁぁ⁉」
剣の切っ先が首元へ添えられる。
が、
「〝オウカ〟って……あれはローナの……というか、シュタイン⁉ ローナの姉妹か?」
「妹よ。姉は私の〝オウカ〟を取り上げて父に協力してこの世界を破壊しようとしている。私はそれを止めに来た、あなたはどっち側?」
「どっちって⁉」
「現実世界の味方? それとも異世界の味方? 答えなさい、藤吠牙!」
ズイッと更に切っ先が迫る。
首にめり込み、若干の血が流れ始める。
「どっちでもないよ。私たちは私たちの味方だよ」
別の女の子の声が響いた。
「ローナ!」
出入り口にローナ・シュタインが立っていた。俺が入って来た場所とは違う廊下側の出入り口からだった。
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