第42話、当日の朝
テスト当日の朝を俺と純白は迎えた。
いつもより早く起きた俺と純白は学校に行く支度を済ませた後、今日行われる科目の最終チェックを行う。俺達が今日までどれだけ頑張ってきたのか、それを父さんに見てもらう為の大事なテスト。だからこそ失敗は許されないのだ。
俺は純白と一緒に教科書を捲りながら一つ一つ丁寧に確認していく。
「今日は数学があったよな。大丈夫か、純白」
「はい。兄さんが何度もわたしに教えてくれたおかげですっ、今ならどんな問題でも答えられます! 兄さんはどうですか? 暗記系が少し不安だって言ってましたよね」
「俺もばっちりだ。頭の中に全部刻み込んであるよ」
「良かった。父さんをあっと驚かせるすごい点数、取れそうですね」
「そうだな。後はやってやるだけだ」
俺と純白は互いに頷き合って、最終確認を終えた教科書やノート、筆記用具を鞄の中にしまい込んだ。
いよいよ始まる。
このテストは俺と純白の人生を大きく変える分岐点だ。
タイムリープして二度目の青春をリスタートさせて、俺は純白と添い遂げる未来をその手にする為に頑張ってきた。
その結果を父さんに見せる時が来た。
俺達はリビングのソファーに座っている父さんの前に立つ。
父さんは真剣な眼差しを俺と純白に向けた。その瞳を俺達は逸らす事なく真っ直ぐに見つめ返す。
「父さん、見ててくれよな。俺と純白の二人が力を合わせれば、どんな事だって出来るって証明してみせる」
「兄さんの言う通りです。わたし達は二人で一つなんです、だから絶対に今回のテストでそれを証明します!」
俺と純白の自信に満ちた言葉を聞いた父さんは一瞬だけ目を見開く。それからふっと表情を和らげる。
「蒼太、純白。あれからお前達の頑張りは目にしている。蒼太は純白の為に、純白は蒼太の為に、お互いの事を思って必死になっていた。父さんはお前達が一緒にいると不幸になると、そう思って引き離そうとした。だがお前達は二人一緒ならどんな事でも成し遂げられる事を見せようと、こうして行動を起こしてきた。それなら父さんは待っている、結果を見せてくれ。おれの考えが間違いだった事を、お前達なら支え合って幸せになれると証明して欲しい」
「ああ必ず。俺と純白でやってみせるよ」
「はいっ、わたしは兄さんと一緒じゃなかったらここまで頑張れませんでした。兄さんがいたからです。兄さんがいなければ今のわたしはいません」
「だったらもう何も言う事はない。全てを出し切ってこい。そして結果を持って帰って来い」
父さんの言葉を聞いて俺と純白はお互いに視線を交わす。そして大きく息を吸い込んで手を繋いだ。
俺と純白は二人で並んで家の玄関に立つ。
そこで俺達はもう一度顔を合わせた。純白は星のように煌めく青い瞳で俺を見つめ、柔らかな唇が弧を描く。
そして周りには聞こえない声で俺への想いを紡ぐ。
「兄さん、愛しています。これから先もずっと……大好きですよ」
「俺も愛しているよ、純白。これからもずっとずっと、絶対に真白を離さない。大好きだ」
純白の手を握る力をほんの少し強くすると、同じように純白も握り返してくれる。
この温もりがある限り、俺と純白は何があっても、どんな事でも、乗り越えていける。
そんな確信を胸に秘めて俺はゆっくりと口を開く。
「行こう、純白」
「はい、兄さんっ」
俺と純白は一緒に扉を開けて、歩幅を合わせて、肩を並べて、一歩ずつ前に進んでいく。
——俺と純白の幸せな未来を確かなものにする為に。
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