第67話 【超超巨大宇宙船の中】

【超超巨大宇宙船の中】


超超巨大な宇宙船の中に、入りました。


入口は存在せず。ただ無限に続く高さの、白銀の塔のように、見えました。


############################


「高さだけで、600mよ」

アスカが、言いました。


600m?634タワーより、少し低い程度。

恐ろしい、途方もない寒さを、感じました。


そして

音もなく、縦長の扉が、開いていきます。


何というテクノロジー、地球との差が億万年にも、思えてきます。


############################


超超巨大宇宙船の中は、途轍もなく広い部屋でした。


その端の方、巨大で無機質な壁の近くに、ベッドがありました。


粗末なベッドです。


地球の病院の病室にあるベッドに比べれば、遥かに贅沢です。


でも、粗末だと、万九郎は思いました。


「Appollo 20の宇宙飛行士が、持っていったのよ。この上で寝ていた、可愛くて悲しい女の子を」


アスカが、言いました。


「その女の子も、この超超巨大宇宙船の奥の、ずっと奥の部屋では、楽しい日々を過ごせていたのだろうか」


万九郎、今さら考えても、仕方のないことを考えています。


「さあ、行きましょう」


出口の。いえ入り口のドアが、音もなく開きます。


アスカを先頭に、4人はドアの中に、飲み込まれるように、消えていきました。


############################


通路は、ずっと向こうまで続いています。


照明は間接照明のようで、暖かい気分になる、淡い光です。

でも、その中に、永遠の輪廻の、たった1人で寂しくて悲しい、永久の冷たさを内包しています。


アスカは、音もなく、綺麗な姿勢で、歩いていきます。


時折り、左に、あるいは右に、扉がありました。

なんのための部屋か、万九郎には分かりません。


時に左に、そして次は右へと、いったん立ち止まって、曲がります。


############################


大きな、とても大きな部屋に、着きました。


そこには、大きな彫像が。いくつもあります。


でも、それらは例外なく、身体の途中で、この宇宙船の冷たい床に、埋もれています。


ある者は、ウルトラマンのように大きく、強く、筋肉隆々です。


ある者は、天使のような羽すら石のように凍らされ、片方の脚の太ももの付け根付近から、床と一体化しています。


「この者たちは、神々よ」

アスカが、言います。


「神々?」


「この超超巨大宇宙船の外にいた、あの大蛇も、その1体よ」


############################


もう、何を言えばいいのか、分かりません。



「万九郎、あの神々を、自由にして、助けてあげましょう」


「この超超巨大宇宙船の、無数の乗組員の中には、悪魔の心を持つ、心の悪い科学者たちがいたのよ」


############################


「こう、するのよ」


アスカはそう言うと、神々の1体に人差し指を向けます。


すると、何ということでしょう。


その神が、無数の光る微粒子になって、淡く光って、消えていきます。


「さあ、万九郎も」


「うん」



万九郎も、似たような姿勢で、心を無にします。

いえ、無と言うより、果てしない輪廻の、その果への、できるだけの悲しみと、強さを込めました。


「万九郎。上手よ」


さっきみたいに、指さした神の1体が、淡く光って、消えていきました。


############################


万九郎とアスカは、何度となく、数え切れないほど、同じことを繰り返します。


・・


やっと、全ての神々が、消滅しました。


何もなくなった部屋は、やたらがらんどうで、空疎に思えました。


でも、良いことをやったという気持ちが、とても良いです。


「ワカ、アスカ様!素晴らしいです。私たちは見てるだけでしたが、何か昔、蜘蛛の巣に架かったオニヤンマを、助けたときを思い出しました!」


サングラスたちが、とても嬉しそうです。


############################



【悲しい、たった1人のミイラ】


それから、また歩き出しました。


何時間も、あるいはたったの数分だったのかも、知れません。


アスカが、また止まりました。


その部屋も、何もありません。ただ、無限の空気だけが、ありました。


############################


アスカは、部屋のずっと先まで、歩いていきます。


そして、止まりました。


「万九郎、サングラスの皆さんも、こちらに来てください」


何だろう?

万九郎は、思いました。


「皆さん、ここにあるのが、本当の私です。何万回も、何十億回も、あるいはそれ以上の回数、転生を繰り返す前。この超超巨大宇宙船の王女だったのが、このミイラです」


「ミイラ・・」


「回復不可能な伝染病で、この超超巨大宇宙船の99.9999999%の人口が失われ、普段は優しく、穏やかだった科学者たちは、正気を失い、この透明なピラミッド型の永久個体に、私の身体を封印しました。その結果が、これです」


一見、ガラス張りにも見える、その透明な物質には、本当にアスカが、封じ込められています。


目の前にいる本物のアスカと、とても似ています。ですが、とても儚く、とても悲しく、億千万の輪廻の恩讐を受け継いだ、たった1人の女の子です。

同時に、限りなく純粋な、女神のようにも見えました。


############################


また、歩いています。ずっと、歩いています。


「皆さん、トイレ行きたくないですか?」


そう言うとアスカは、さっさと女性用らしい部屋に、入っていきました。


サングラスたちも、男性用トイレに入りました。


「おわ・・」


万九郎も、急いで続きます。


############################


トイレの中は、とても広くて、暖かい間接照明で照らされています。


万九郎は、コンパートメントに入りました。


すると何かが、股間の前の壁で小さく光り、何かと思っていると、尿意がスッキリ爽やかに解消されています。


「今の地球の人類とか、何万年科学が進歩しても、同じことやれそうにないなあ」


############################


トイレから出ました。


もう皆んなは終わって、万九郎を待っていました。


「やぁ、済まない」


「あれ?」


アスカが、向こうを向いて、立っています。


サングラスたちは・・


「ワカ、ズボンを膝上まで落ろしたままです!」


「ヒィーーーーー」


万九郎は、必死で服を直しました。


############################


それから、しばらく歩きました。


「皆さん、やっと目的地です。あのドクのディスク。あれを小さいスロットに挿入すれば、月の落下は止まります」


「やった!」


万九郎もサングラスも、そしてアスカも、大喜びで飛び上がっていました。


超超巨大な宇宙船の中に、入りました。


入口は存在せず。ただ無限に続く高さの、白銀の塔のように、見えました。


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「高さだけで、600mよ」

アスカが、言いました。


600m?634タワーより、少し低い程度。

恐ろしい、途方もない寒さを、感じました。


そして

音もなく、縦長の扉が、開いていきます。


何というテクノロジー、地球との差が億万年にも、思えてきます。


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超超巨大宇宙船の中は、途轍もなく広い部屋でした。


その端の方、巨大で無機質な壁の近くに、ベッドがありました。


粗末なベッドです。


地球の病院の病室にあるベッドに比べれば、遥かに贅沢です。


でも、粗末だと、万九郎は思いました。


「Appollo 20の宇宙飛行士が、持っていったのよ。この上で寝ていた、可愛くて悲しい女の子を」


アスカが、言いました。


「その女の子も、この超超巨大宇宙船の奥の、ずっと奥の部屋では、楽しい日々を過ごせていたのだろうか」


万九郎、今さら考えても、仕方のないことを考えています。


「さあ、行きましょう」


出口の。いえ入り口のドアが、音もなく開きます。


アスカを先頭に、4人はドアの中に、飲み込まれるように、消えていきました。


############################


通路は、ずっと向こうまで続いています。


照明は間接照明のようで、暖かい気分になる、淡い光です。

でも、その中に、永遠の輪廻の、たった1人で寂しくて悲しい、永久の冷たさを内包しています。


アスカは、音もなく、綺麗な姿勢で、歩いていきます。


時折り、左に、あるいは右に、扉がありました。

なんのための部屋か、万九郎には分かりません。


時に左に、そして次は右へと、いったん立ち止まって、曲がります。


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大きな、とても大きな部屋に、着きました。


そこには、大きな彫像が。いくつもあります。


でも、それらは例外なく、身体の途中で、この宇宙船の冷たい床に、埋もれています。


ある者は、ウルトラマンのように大きく、強く、筋肉隆々です。


ある者は、天使のような羽すら石のように凍らされ、片方の脚の太ももの付け根付近から、床と一体化しています。


「この者たちは、神々よ」

アスカが、言います。


「神々?」


「この超超巨大宇宙船の外にいた、あの大蛇も、その1体よ」


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もう、何を言えばいいのか、分かりません。



「万九郎、あの神々を、自由にして、助けてあげましょう」


「この超超巨大宇宙船の、無数の乗組員の中には、悪魔の心を持つ、心の悪い科学者たちがいたのよ」


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「こう、するのよ」


アスカはそう言うと、神々の1体に人差し指を向けます。


すると、何ということでしょう。


その神が、無数の光る微粒子になって、淡く光って、消えていきます。


「さあ、万九郎も」


「うん」



万九郎も、似たような姿勢で、心を無にします。

いえ、無と言うより、果てしない輪廻の、その果への、できるだけの悲しみと、強さを込めました。


「万九郎。上手よ」


さっきみたいに、指さした神の1体が、淡く光って、消えていきました。


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万九郎とアスカは、何度となく、数え切れないほど、同じことを繰り返します。


・・


やっと、全ての神々が、消滅しました。


何もなくなった部屋は、やたらがらんどうで、空疎に思えました。


でも、良いことをやったという気持ちが、とても良いです。


「ワカ、アスカ様!素晴らしいです。私たちは見てるだけでしたが、何か昔、蜘蛛の巣に架かったオニヤンマを、助けたときを思い出しました!」


サングラスたちが、とても嬉しそうです。


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【悲しい、たった1人のミイラ】


それから、また歩き出しました。


何時間も、あるいはたったの数分だったのかも、知れません。


アスカが、また止まりました。


その部屋も、何もありません。ただ、無限の空気だけが、ありました。


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アスカは、部屋のずっと先まで、歩いていきます。


そして、止まりました。


「万九郎、サングラスの皆さんも、こちらに来てください」


何だろう?

万九郎は、思いました。


「皆さん、ここにあるのが、本当の私です。何万回も、何十億回も、あるいはそれ以上の回数、転生を繰り返す前。この超超巨大宇宙船の王女だったのが、このミイラです」


「ミイラ・・」


「回復不可能な伝染病で、この超超巨大宇宙船の99.9999999%の人口が失われ、普段は優しく、穏やかだった科学者たちは、正気を失い、この透明なピラミッド型の永久個体に、私の身体を封印しました。その結果が、これです」


一見、ガラス張りにも見える、その透明な物質には、本当にアスカが、封じ込められています。


目の前にいる本物のアスカと、とても似ています。ですが、とても儚く、とても悲しく、億千万の輪廻の恩讐を受け継いだ、たった1人の女の子です。

同時に、限りなく純粋な、女神のようにも見えました。


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また、歩いています。ずっと、歩いています。


「皆さん、トイレ行きたくないですか?」


そう言うとアスカは、さっさと女性用らしい部屋に、入っていきました。


サングラスたちも、男性用トイレに入りました。


「おわ・・」


万九郎も、急いで続きます。


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トイレの中は、とても広くて、暖かい間接照明で照らされています。


万九郎は、コンパートメントに入りました。


すると何かが、股間の前の壁で小さく光り、何かと思っていると、尿意がスッキリ爽やかに解消されています。


「今の地球の人類とか、何万年科学が進歩しても、同じことやれそうにないなあ」


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トイレから出ました。


もう皆んなは終わって、万九郎を待っていました。


「やぁ、済まない」


「あれ?」


アスカが、向こうを向いて、立っています。


サングラスたちは・・


「ワカ、ズボンを膝上まで落ろしたままです!」


「ヒィーーーーー」


万九郎は、必死で服を直しました。


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それから、しばらく歩きました。


「皆さん、やっと目的地です。あのドクのディスク。あれを小さいスロットに挿入すれば、月の落下は止まります」


「やった!」


万九郎もサングラスも、そしてアスカも、大喜びで飛び上がっていました。


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