魔術学園(弟視点)
リオンは母の親類のもとを離れ、魔術学校に入学した。
早く学び、早く王都へ帰りたかったが、知識も経験も乏しい自分があの王都に帰っても食い物にされるか傀儡にされるのがオチだ。
リンドールから離れたこの場所で出来るだけ、力を蓄えたい。
「改めてよろしくお願いします、リオン様」
「マオ…」
彼はエリックが紹介してくれた、護衛兼従者だ。
言葉巧みに相手を引き込んだり陥れたり、とにかく喋りが上手だ。
猫の目のようなツリ目が特徴的で、屋敷にいる時から伝令役として顔見知りである。
「まずは信頼出来る頼もしい仲間を増やしていくのです、人脈は宝です」
自分自身を高めるのもありだが、それだけではやっていけない。
自分の欠点を補い支えてくれる相手が必要だ。
「いざとなれば僕がいるので大丈夫ですが、休みなしはきついので仲間が欲しいです。頑張りますよー」
軽薄そうな軽い口調、ガチガチな王宮の者と違う彼はリオンとしては面白い男として見ている。
「マオがいるととても勇気づけられるな。何でも出来るような気がしてくるから不思議だ。こちらこそ改めてよろしくお願いする」
真っすぐで捻くれてないその瞳にマオはクスクスと笑う。
「まずはその素直過ぎるところを直しましょうか。身近な者も疑ってかかるくらい慎重でなくてはなりませんからね。国王たるものその決断と発言は責任が重すぎるくらい重いので」
「マオの言うことも疑うのか?」
「勿論です。僕が間違った情報を持ってくるかもしれない、僕が間諜になるかもしれない。身内を人質に取られて泣く泣く嘘をつくかもしれない。ゆめゆめ油断してはなりませんよ」
「王都には嘘つきがいっぱいです、心が真っ黒な方が多いです。なので信じる人を見極めなければなりません。嘘だらけの中、正しい道を選び決断するのがあなたの役目になってきます。あなたの発言次第になりますよ。民を生かすも殺すも」
リオンは身震いする。
「重いな…重くて放り投げたくなる」
「逃げてもいいですよ、僕の人生じゃないですし」
マオはあくまで軽口を叩く。
「いや、僕は王族だ。どこにいても何をしていてもそれが付き纏う。今僕の代わりに頑張ってくれている姉様のためにも頑張らねば」
あの魔窟で戦っている姉を思うと頑張らなくてはいけない。
「そのミューズ様の嘘の悪評により、学園内も茨の道になってますのでくれぐれもお気をつけて」
「ふん。自分で確かめたわけでもない間違った悪評を鵜呑みにする愚鈍な者などいらん。僕を信じてくれる者を探し出してみせる」
「良い心掛けです、出世した際は3食昼寝付きボーナスたんまりでお願いします」
「考えとくよ」
リオンの戦いもまた始まったのだ。
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