第107話 六度目の進化


 脳内に流れてくるメッセージを認識した直後、久々に感じる強い痛みと衝撃で悶えそうになるのを必死に堪え、身体から溢れる強い光が収まるまで耐え続けた。

 数秒か、数分か……呼吸をするのも忘れ、時間の感覚が曖昧になる中でようやく痛みが治まり、無事進化ができたことにひとまず安堵する。


「がぁあ……ハァ、ハァ。今回は、かなり……キツかった……」


「阿吽様! 大丈夫ですか!?」


「あぁ、もう痛みは無い」


「さすがに……心配した」


「すまん、心配かけたな。俺の場合、進化に伴う痛みはその時によって違うんだ。痛みが強い時ほど変化も大きいんだけど……外見はどこか変化してるか?」


「兄貴、身体と角が大きくなってるっす!」


「ん。カッコいい、それに強そう」


「そうなんか? 確かに目線が少し高くなってる気がするな。まぁここじゃ落ち着かんし、拠点に戻ってからステータス確認するか」


 リッチを倒したことにより出現した魔法陣に触れると、視界が拠点前の庭へと切り替わる。

 さて、どんな感じになってるかな?


<ステータス>

【名前】百目鬼 阿吽

【種族】阿修羅

【状態】

【レベル】60(残18ポイント)

【属性】雷・闇

【HP(体力)】6300/6300

【MP(魔力)】800/1260

【STR(筋力)】137(+8)

【VIT(耐久)】65(+10)

【DEX(器用)】30(+10)

【INT(知力)】139(+10)

【AGI(敏捷)】125(+5)

【LUK(幸運)】35

【称号】迷宮の支配者Ⅲ

    雷帝

【スキル】

・鉄之胃袋

・痛覚耐性

・体術(Lv.4)→(Lv.6)

・刀術(Lv.4)→(Lv.6)

・大食漢→美食家(変化):捕食することでHPとMPの回復(大)

・鑑定眼

・疾風迅雷

・雷鼓

・雷属性魔法(Lv.5)→(Lv.6)

・闇属性魔法(Lv.1)

・空舞→空駆け(変化):5段跳躍、空中停止可能

・涅哩底王(技巧)

・探知

祭囃子まつりばやし:精神の高揚により発動が可能。全ステータスが10分間2倍となるが、効果時間の終了と共に全ステータスが10分間半減。



 毎回思うが、やはり進化は得られる恩恵がかなり大きい。進化分のステータスポイントは自動で振り分けられているが、レベル換算で10レベル以上の恩恵が得られている。残ポイントはレベル54の時から進化後のステータスを見て振り分けようと貯めていたものだ。

 今の戦闘方法や所持スキルを考えるとSTRとAGIに振り分けるのが良さそうだな。これもアークキメラ戦前には振り分けておこう。


 スキルも進化したタイミングで強力なものを取得する事が多い。今までの傾向から考えると前回の進化から今回の進化までに行ってきた行動や戦闘に関与している可能性も高い気がする。

 今回の一番の変化と言えるのは【祭囃子】のスキルだ。発動条件に“精神の高揚”とあるが、これ爺ちゃんが言ってたバイブスぶち上げる系だよな?

 俺そんなノリノリで戦闘してたこと…………あったわ。うん、序列戦とか観客煽るくらいにはテンション上がってた。

 まぁそれは一旦置いといて、得られる効果が全ステータス2倍。発動条件や効果終了後のデメリットを考えると任意発動は難しいが、バフの3重掛けが可能になったというのは正直破格だ。特に格上を相手にするとなった時や、防御特化の敵がいた時を考えたらこのスキルがあるだけで一気に形勢を逆転できるだけのポテンシャルを秘めている。


 次に【空駆け】。空中での戦闘がさらに行いやすくなったため、【飛行】スキルを持っている相手に対してもある程度対抗手段を得られたと言っていいだろう。

 欲を言えば飛行スキルが欲しかった……幼いころは、「空を自由に飛びたいな♪」なんて思っていたが、俺に翼が無い以上これは高望みなのかもしれない。


 そして3つ目、ついに【闇属性魔法】がスキル欄に加わった。が、いまいち使い方がわからん。

 イメージが湧かないというか何というか……これは闇属性魔法が使えるヤツに色々教えてもらうのが一番手っ取り早そうだな。確かメアが闇属性の魔法を得意にしているって聞いた気がする。フォレノワールに戻った時に頼んでみよう。


 ナイトメアのメアとレッドオーガのチェリーと言えば、最近Bランクに上がったようだ。最初は人間の価値観がわからず街でトラブルになる事もあったようだが、今ではしっかりと冒険者として街に溶け込むことができているらしい。

 あの二人には冒険者として活動してもらいつつ、奴隷商から売られてしまった亜人や獣人達の様子を探ってもらっていた。そのため活動拠点はミラルダを中心としている。


 ルザルクが貴族や奴隷商を断罪した際に顧客リストも押収する事ができていた為、買われていった者のほとんどはルザルク派の貴族経由で解放してもらっており、その後はプレンヌヴェルトで生活している。一部は、主人と良好な関係を築くことができ解放を求めていない者もいた。そういった者に関しては、話し合いの結果奴隷契約を解除し、そのまま使用人として働くという形に収まっている。

 この数か月で買われていったすべての亜人・獣人の対応は完了しており、メアとチェリーは自由な時間が増えているはずだ。


 そういえばメア達もレベルを上げて進化したいって言ってたな……ってか、あいつらも俺達と同様にプレンヌヴェルトダンジョンではレベル上げできないんだよなぁ。


 【星覇】は全員が俺と従属契約を行っており称号に従属者がある。これにより、帰還転移や迷宮間転移などの便利な機能を使える事や、クエレブレに師事する事ができるなどのメリットがある反面、俺がダンジョンマスターとなっているダンジョンでは経験値が取得できず、レベルが上げにくいというデメリットもある。今後の事を考えるとやはり育成には力を入れていきたい。


 うーん、そう考えるとダンジョンは見つけ次第吸収するってのも得策じゃないのかもしれない……。

 いや、むしろ吸収せずに育成場所として残しておく方がいいか? 移動手段として迷宮間転移はすごく使いやすいがそれだけになってしまうのも持て余している感がある。


 それにしても、俺は今回でかれこれ6度目の進化。もう当たり前のように魔物図鑑に載っていない種族ではあるのだが、進化の回数から考えるとSランクの魔物と同等かそれ以上のステータスを獲得できているはずだ。となると、多分アークキメラはSSランクの魔物に分類されるような魔物だということも自然に分かってくる。


 次の周回でアークキメラと戦ってみるとしよう。

 わがままを言わせてもらえるなら、できればタイマンで勝負してみたい……うん、これもみんなに相談してみようかな!




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<あとがき>

 久しぶりのステータス表記なので前回からの変更点をわかりやすくしてみました♪

 どうかなぁ??

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る