第17話 運命の悪戯
水瀬天音が15歳、高等学校へと進学するのと同時に父親の従兄である諏訪家に預けられた。父親の転勤を機に日本を離れることも考えたが、天音にとって凛太朗ともうしばらく一緒に過ごしたいと思ったのが事実だった。恋仲ではなかったが、それほどまでに天音は、凛太朗を気にしていた。日本に置いていくことができなかったという方が正しいのかもしれない。
諏訪家は、父親と双子の息子の3人で暮らしだった。母親はというと、2人が幼い頃に離婚していた。原因は、母親の浮気で、そうともなれば、自然と経済力のある父親が2人を引き取ることとなった。仕事ばかりで忙しい時も多かったようで、家政婦を雇うこともあったそうだ。
双子は、天音よりも3歳年上で兄が翼、弟が昴だった。二人は、二卵性双生児であったので顔はあまり似ていなかった。翼は、男の子にしては華奢な体系をしており、幼い頃から体が弱かったらしい。弟の昴は、活発で体系もがっちりとしていた。天音は、年に数度程、父親と共に諏訪家を訪れることがあったが、翼と会うことはあまりなかった。翼は、人と会うことを好まなかったからだ。父親に無理矢理連れられて来ていたことはあったが、言葉数は少なく、表情も硬かった。しかし、昴とは心を通わせているようで、他の者とは話さない代わりに昴とはきちんと会話をしていた。一方昴と言えば、気さくに天音やその弟の天詠に話しかける社交的な男の子だった。天音が、諏訪家で生活をし始めた時も、人の家で生活することは何かと不便が伴うだろうと、昴が天音の身の回りの説明をした。
そんな双子は、少し複雑な家庭でありながらも、道を逸脱することなく、同じ大学に進学し、順風満帆に育っていた。そうであったからこそ、天音の両親も男ばかりの家に預ける決心がついたのかもしれない。
天音がスイスへ経つまでの1年半で、それが一変することとなる。
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