第83話 完売御礼です……
で、展示即売会に参加するのは、ハール様、僕、ラウールさんだよ。僕たちは領地で使う為にだけどね。今はナニワサカイ国から仕入れている陶器や磁器、漆器だけどヤパンのも見てみたいからね。
そして、トウリが出してきた製品を見て僕たちはフェルも含めてウットリしてしまったんだ。
洗練された模様付けの磁器はとても美しくて使うのが勿体無いぐらいだよ。
それに陶器も表面の光沢が凄いし、漆器もとても落ち着いた色合いで、ずっと見てられると思っちゃったんだ。
「皆様、ここに出している物は私がイーヨ県から出る際に売られていた物です。流通が進み他県で作られた優れた物もあります。コチラの漆器はダウテ本家の県産のものになります。また、コチラの陶器は天皇陛下がお住まいする
庶民が利用しているっていう陶器、磁器、漆器も、またキレイなんだよね。コレは領地の温泉旅館で使えると思ったんだ。ただ、ラウールさんもそう考えたらしく、目線がそちらにいってるんだよね。ムム、何とか奪い合いにならない様にしなくちゃね。
ハール様はさっきから武士や大名が使用する物を物色してるよ。その目がキラキラしてるから、僕とラウールさんはハール様が選んだ後にしましょうと目と目で確認しあったんだ。
そして、一先ず庶民仕様の器たちを物色する。僕の意見だけじゃなく、フェルの意見も聞くよ。女性目線は大切だからね。だから、ラウールさんにもフェルには助言を出してあげてねって目と手振りでお願いしたよ。
僕とラウールさんの領地は競争してる訳じゃないからね。お互いに協力しあってお互いの領地を盛り上げて行きましょうっていう事になってるんだ。
泉質も違ったのが幸いだったよ。でも、考えてみたらハール様の領地も温泉が出て、旅館も建てた筈だけど…… 良いのかな?
そしたらハール様が物色しながら僕とラウールさんにこう言ってきたんだ。
「ワシの領地では旅人などの庶民相手の旅館には温泉を引いておらんからの。貴族相手の旅館だけ温泉を引いておるんじゃ。但し、庶民が入れる公衆温泉を多めに建てての。料金も足湯はただ。湯船につかるのも鉄貨3枚(300円)にしておるんじゃ。勿論、庶民用旅館からも徒歩1分程の場所に建ててあるぞ。それに、ナニワサカイ国から大量に仕入れた器が数多くあってな。そちらを庶民用旅館に回すつもりじゃ。で、コチラのモノを貴族用旅館に卸そうと思ってな」
さ、さすがは公爵様でした。僕やラウールさんの領地では考えられない温泉運営をやってたんですね。でも、恐らくはそれも僕やラウールさんの領地と競合しない様に配慮して下さったんだと思うんだ。僕もラウールさんもハール様に頭を下げて感謝したよ。
「ん? どうした? 2人とも頭なんか下げて。ハッ、ダメだぞっ! コッチのはワシが選んでからじゃからなっ!」
うーん、僕は間違ってるのかも知れない…… そう思ったけど、ハール様はワザとこんな事を言って照れ隠しをされてるんだと思う。きっとそうに違いない! 多分……
それからラウールさんと2人でコレは僕の領地で使用、アッチはラウールさんの領地で使用みたいな感じで庶民用の器をトウリから購入したんだ。
トウリはお金は受け取れませんなんて言うけど、さっきハール様が言った事を僕は書いて、ラウールさんは言葉で伝えて受け取って貰ったよ。
何といっても貴族は
そして、ハール様…… 高級品を全て買い取られました…… 僕とラウールさんにも一点でもいいから置いといて欲しかったです……
けれどもコレでトウリの在庫は全て売れたので、完売御礼として、トウリが緑茶を入れて入れ方を侍女さんたちに指導して、僕がお米を炊いて、炊き方を料理人たちに指導したんだ。
ハール様はトウリの入れた緑茶を美味しそうに飲みながら、僕がオカズとして作っている料理をニコニコしながら見ている。
今回、僕が用意するのは、だし巻き卵とシャーケの塩焼きだよ。ナニワサカイ国から仕入れたシャーケは前世の鮭と似た魚だよ。
同じくナニワサカイ国から仕入れた醤油もあったから、だし巻き卵にお好みでかけて下さいって書いた紙を料理人に渡したんだ。
今回、毒見役に志願した料理長はニコニコ顔で頷いてるよ。
真っ先に食べられるのが嬉しいみたいだね。
トウリは僕がシャーケを3枚におろすのを見て驚いてたよ。
「トーヤ様は何処でその技を?」
って聞かれたけど、また今度ねってフェルがトウリに言ったら頷いたよ。
そして、肝心な話はササッと終わり、展示即売会と完売御礼がメインになったハール様のお屋敷訪問は無事に終わったんだ。
コレで良かったのかな? いいんだよね? 誰か教えて下さ〜い!!
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