第77話 トウチカの旅(幕間のお話)
旅に出たトウチカとヒヨリを
センジとオリョウは宿の部屋で話合いをしている。勿論、
「さて、俺とオリョウ以外は、
センジの言葉にオリョウが返事をする。
「お前さん、万が一逃げられたら困るのは
「むう、確かにそうだな、オリョウ。だが、アヤツにお前の
センジが憂慮していると、オリョウが笑いながら言う。
「心配ないさ、お前さん。いくらお前さんの弟だからって、同じ体質な訳じゃあるまいし。それに、もしも効かなくてもその時はお前さんが出ればいいだけだろ?」
オリョウの言葉にセンジも
「ちげぇねぇ。オリョウの言うとおりだな。さて、2人を始末するまではトウチカ様とヒヨリには合流せずにおくか…… 他に居る可能性もあるしな」
そう言って賛同した。そしてオリョウは
「そうだね、お前さん。さて、夜も更けたら出かけるんだから、今の内に…… ねっ、」
その豊満な
トウチカとヒヨリは取り敢えず怪しまれぬ様にと、イーヨ県の城下町で漆器などを購入し、商品として売り歩く事にした。トウチカのスキル、アイテムボックス内には金貨2枚(2,000,000円)分の商品が入っている。
「トウチカ様、かなり買い込まれましたね」
ヒヨリがそう言うと、トウチカが注意した。
「ヒヨリ、俺達2人は
「あら、いやだ。あたしったら、昔の男の名でお前さんを呼んじゃったよ」
隣部屋はダウテ家自慢の
それに気づいたヒヨリも咄嗟に芝居をしたのだが、昔の男の名はないだろう…… と、トウチカ改めトウリは思った。
「それよりもヒヨリ、お前の路銀も俺が持っているが良いのか?」
とコレは小声でヒヨリにしか聞こえぬように言うトウリ。
「いいんですよぉ、お前さん。私の物は貴方の物。貴方の物は私の物なんですから、どっちが持ってようが一緒ですよぉ」
何かスイッチが入ったのか、とても楽しそうにそう言うヒヨリを見てトウリは思った。この旅の間に正式な婚姻を結ぼうと…… イーヨに居たのでは身分の差が邪魔をしていたが、既に手形通りの名で生活して行こうと考えているトウリは心にそう誓うのだった。
深夜、
センジとオリョウは幼いトウチカに出会い、その優しさに触れて考えが改まった経緯がある。それまでは
ザンジもその時に共にトウチカに出会っていたが、ザンジの心は変わらなかったのだ。そして、オリョウは兄のセンジと結婚した。ザンジはその時に思った、俺を認めなかったオリョウと兄のセンジを機会を見て亡き者にしてやると……
そんなザンジが浅い眠りについている部屋に音も気配もなくオリョウが居た。
「ザンジ…… お前さんが考えている事は私にも分かるよ。けど私もセンジも幸せに生きたいんでね…… ココでもうお
そう静かに言うとザンジの額に手を置くオリョウ。そして数分後に手を離し静かに部屋を出て行った。
良く朝、いつまでも起きてこない客を訝しんだ宿屋の者が部屋に行くと、両足が
「ふむ、どうやらオリョウの夢記憶が効いたようだな…… 夢で切られると実際に体にもその異変が起こる夢記憶、本当に恐ろしい力だぜ」
センジが少しだけ哀しそうにそう言うと、オリョウもまた、
「お前さんには効かないんだからそんなに怖がらないでよね。でも、出来る事なら私もザンジには使いたくなかったよ…… 何故か幼い頃のザンジが思い出されてね……」
哀しそうにそう言う。
「済まない、辛い役目をさせてしまったな……」
センジがオリョウの手をギュッと握ってそう言うとオリョウが気を取り直したように言う。
「いいんだよ、お前さん。それがトウチカ様の為になるんだから。さあ、早くこの場を離れないと
2人は足早にその場を離れてトウチカとヒヨリの泊まる宿に向かった。その頃、
センジとオリョウが宿に着くとちょうどトウチカとヒヨリが宿を出るところだった。2人は
センジとオリョウは
「
小声でそう言うセンジを見て静かに頷くトウチカ改めトウリ。小声で2人にこう言った。
「苦労をかけるな…… 2人とも、済まん」
その言葉には弟を始末した2人に対する労りが込められていた。
そして、人混みから外れてセンジの力により、4人は津の島まで一気に飛んだ。
✱作者より、
もう1話、トウチカ改めトウリの話が続きます。その後、本編に戻ります。よろしくお願いします。
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