第33話 夏季休暇の予定
それからは普通に学校に通って、夏季休暇がやって来たんだ。でも、日本とは違って夏季休暇は7月20日から9月15日までとかなり長い。それに、宿題が無かった…… まあ、宿題は読み書き計算が出来る者が免除されてるんだけどね。出来ない人には宿題が出てるんだよ。
僕としては自由研究をやりたかったけど、無いなら仕方ないよね。
で、僕は考えたんだ。せっかく陛下から領地を頂いたのだから、その領地を知る必要があると!
名案でしょ。早速思いつきをセバスに相談してみたんだ。
「なるほど、それは非常に良い考えですな。しかしながら、先ずは陛下か、王太子殿下にお話を通しておく必要があるかと存じます。なに、そちらは私が手配致しますので、許可が出たら出発できるように、トーヤ様や一緒に行かれる方はご準備を進めて下さい」
僕はセバスの返事を聞いてから、ガルン伯爵夫妻に先ずは
「悪いな、トーヤ様。本当はそっちに行きたいんだけどな」とはガルン伯爵。
「私はトーヤ様とご一緒しようかしら?」とはラメル伯爵夫人。
「えっ? それならお父さんがトーヤと一緒に行って、お母さんは私と一緒に来て欲しい」とはリラの言葉。
リラの言葉にズーンッて擬音が聞こえるほどにガルン伯爵は落ち込んでいたよ。僕はそんなリラにダメだよって意思を込めて肩をポンポンと叩いたよ。
「もちろん、冗談だよー。お父さんも連れて行かなきゃ侯爵様が是非会いたいって言ってるから」
落ち込んでたガルン伯爵が思い出したように僕に言ってきた。
「そうだった、トーヤ様。トウシローさんも連れて行っていいかな? 侯爵がトウシローさんにも会いたいって言ってるんだが」
ああ、そう言えばサカキ侯爵家は元を辿ればトウシローと同郷なんだってね。僕は頷いて了承したよ。
それからフェルちゃんの部屋に向かった僕は、フェルちゃんに領地視察に行かないか聞いてみたんだ。え? 先ずは婚約者に先に言うべきだって? そんな小さな事(話す順番)を気にする人じゃないよ、僕の婚約者は。まあ、種を明かせばフェルちゃんの部屋に行くまでにガルン伯爵夫妻の部屋があるってだけなんだよね。
「まあ、トーヤ様。それは素晴らしいですわ。是非ともご一緒させて下さい。それで、いつ出発致しますの? レミも一緒でよろしいのでしょうか?」
僕は出発はセバスが王家からの許可を取ってきてからで、レミさんも勿論一緒に来て欲しいと紙に書いて伝えたよ。
「まあまあ、セバスさんなら早ければ明日にでも許可を取ってきて下さいますわね。レミ、早速準備しましょう!」
「はい、フェル様。私も楽しみです」
2人が楽しそうに準備を始めたので、僕は部屋を出て、ハレに会いに行ったんだ。何人かの侍女も一緒に来てもらおうと思ってね。
ハレに領地視察の件を伝えて、今回はトウシローはガルン伯爵家と一緒にサカキ侯爵家の領地に行くから、何人かの侍女に一緒に来てもらいたいと言うと、ハレは悩み始めた。
アレ? ひょっとして何人か抜けたらこの屋敷の仕事がしんどくなるのかな? そう思った僕はハレに1人でも良いんだよって伝えたら、
「違いますよ、トーヤ様。コチラが手薄になるからではなくて、みんなが行きたがるので誰を選べば一番良いのか悩んでいるのです…… トーヤ親衛隊は益々トーヤ様とフェル様、それにリラ様に首ったけになっておりますから、下手をしたら血を見る事になりますので……」
と言われてしまった。何、ソレ…… いや、おかしいでしょ、身内で争うなんて。僕の目に浮かんだ恐怖に気がついたハレは、直ぐに笑顔になってこう言った。
「申し訳ございません、トーヤ様。でも、10歳になられてお三人ともとても見目麗しくなられましたので、しょうがないと私とセラスも諦めております。でも、血で血を洗うような争いが起こらないように何とかしてみますので、ご安心下さい。取り敢えず2名でよろしいですか?」
ハレの言葉に全然安心出来なかった僕は、くれぐれも頼むよという意図を込めて頷いたよ。
そして、夕食の時にハレから親衛隊特攻隊長のナーガと副隊長のメレンが同行する事になりましたと教えられたんだ。
待機してる侍女たちをチラッと見たら、勝ち誇った顔をしたナーガとメレン。そして悔しそうに2人を睨む他の侍女たちを見て即座に目をそらしたよ。
夕食の途中でセバスが王宮から戻ってきたって聞いたから、食べながら聞くよと頷いてセバスに来てもらった。
「トーヤ様、領地視察は陛下から了承頂けました。いつ向かっても構わないそうです。それから、陛下から案内役として、領地出身の者を付けて下さるとの事でしたので、出発日時を王家にお知らせする必要がございます。いつになさいますか?」
僕がフェルちゃんを見たら、フェルちゃんが返事をしてくれた。
「今日の明日というのは急過ぎると思いますから、明後日の10の時に出発するというのはどうでしょうか?」
フェルちゃんの言葉を聞いてセバスが頷いた。
「かしこまりました、フェル様。王家にお知らせしておきます。また、今回は私は同行致しませんが、ロッテンが同行致しますので、よろしくお願い致します」
やった、ロッテンが来てくれるなら安心だね。何か名産品とかがあれば良いなって思ってたけど、ロッテンなら色々と教えて貰えるよ。
僕は笑顔でセバスに頷いて了承したよ。
陛下に領地を与えると言われた時にセバスやロッテンに頼んで領地の事を少し調べて貰ってたから、早く見に行きたかったんだよね。
そこは王都から3キロしか離れてないけど、随分な田舎で街じゃなくて村しかないそうだけど、僕が前世で大好きだったものがある筈なんだ。セバスやロッテンの出してくれた調査報告書を読んで間違いないと思ってるんだけど。
そこに住む人たちは気味悪がって近づかないそうだけど、僕は確信してるんだ、そう、温泉があるってね!
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