第416話 津軽にて「身体拘束ゼロ」唱へ就活するに現実は厳し(医師脳)

 2001年、厚生労働省「身体拘束ゼロ推進会議〉が小冊子を出版した。

hhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/gyakutai/tori ..... tebiki.pdf

 前書きの概要だけ引用する。

――「身体拘束は、人権擁護の観点から問題があるだけでなく、高齢者のQOL(生活の質)を根本から損なう危険性を有している。身体拘束によって、高齢者の身体機能は低下し、寝たきりにつながる恐れがある。さらに、人間としての尊厳も侵され、ときには死期を早めるケースも生じかねない」――。


 身体拘束は、本当に「やむを得ない」のだろうか。


 身体拘束に代わる方法を十分に検討することなく、安易に「やむを得ない」と身体拘束を行っているケースも少なくない。

 医師や看護師・介護士はじめとする施設スタッフの多くが「縛らなければ安全を確保できない」と自らを納得させることで、身体拘束をすることへの抵抗感を麻痺させているとも思える。

 確かに家族は、施設や病院側の説明を聞き身体拘束に同意しているだろう。がその同意は家族にとって、他に方法のない「やむを得ない」選択であったこと、そして縛られている親や配偶者を見て、家族が混乱し苦悩し後悔している姿を、私たちは真剣に受け止めなければならない。

 身体拘束を「事故防止対策」として安易に正当化することなく、高齢者の立場に立って、その人権を保障しつつケアを行うという基本姿勢が求められる。


 身体拘束を許容する考え方を問い直そう。


――「身体拘束をしないケアの実現にチャレンジしている看護・介護の現場を見ると、スタッフ自身が自由さを持ち、誇りとやりがいを持ってケアに取り組んでいる姿に出会う。身体拘束をしないことにより『自由』になるのは高齢者だけではない。家族も、そして、現場のスタッフも解放されるのである」――。


 この小冊子が出版されて既に20年以上もたつというのに、全く古さを感じられない。それだけ、老人医療介護の世界には、人権意識の進歩がなかったということか……。

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