第17話 人を信用する物差しが低い民族
【6日目、ポロンナルワ。日本から輸出された自転車で遺跡を巡る。】
1月2日朝7時。毎晩、20時過ぎには布団と抱き合う生活をしていると、朝が必然的に早くなる。本日は華やかな王朝史を誇るポロンナルワへ向かう。
この街へ行くにはシ-ギリア行きと同じバス停にバスが止まるため、目印になっている売店の前で7時前くらいからバスを待った。
しかしポロンナルワ行のバスがなかなか来ない。来たとしても満員で通り過ぎていくだけ。通勤路線と重なっているのか、本数は決して少なくないけど、止まってくれないのだ。
朝焼けに浮かぶバルーンを眺めながらずっと待つ。このバルーンは「サンライズバルーニング」と言う会社が行っている。ダンブッラで人気のアクティビティで、バルーンに乗って上から街並みや遺跡を眺めるというものだ。運が良ければシギリアロックも見ることができるという。しかし大人210ドルと結構強気な値段である。
待つこと30分。例の売店の優しい家族が総出でバスを止めてくれ、乗り込みに成功した。ほんと、バス停代わりになっている売店にはお世話になった。ジュース買ってけ!とかそういう営業も全くないのだ。親切心だけでやって下さる。もしかしたら私のことを頼んだ宿のご主人が、いつもこの売店で物を買っていて、そのつながりで親切にしてくれただけかもしれない。だが、さすがにバスに乗り込んでから申し訳なくなった。
さて今日乗り込んだのは満員バスだ。しばらく立ち乗りだった。バス代は100ルピー。背負っている荷物がみんな邪魔なのか、運転席のギア横の空いたスペースにドカッと置いている。
この国では結構、周囲の環境、人間を信用するものさしが緩いな、と言う印象を受けた。自分が目を離したすきに、鞄が他人に持って行かれやしないか、と言う心配はよぎらないのだろうか、と山積みになっているリュックなどを見て思う。中には前方ドアから乗車して、荷物をそこに置いて後方に移動したりしている乗客もいた。確かに比較的治安が良い国だなぁと、数日過ごして実感しているが、元々、警戒心が弱い国民性を持っているのかもしれない。
途中で20分ほど質素な空き地で休憩を挟んでいたので、1時間10分くらいでポロンナルワに到着した。またもや降ろされたのは道端だ。昨日のアヌラタブラより不安になる殺風景な道路に落とされた。土系道路で全く整備もされておらず車が通る度、砂埃が容赦なく襲ってくる。
スリランカ滞在中は、夜、洗顔をしてもほんと顔の汚れが取れた気がしなかった。鼻の穴は毎度真っ黒だった。
降ろされた場所はレンタル自転車屋が多く立ち並ぶ通りだった。ポロンナルワはアヌラタブラのように遺跡が散らばっている感じではなく、遺跡地区に固まっているから、自転車で回れなくもない。結構バックパッカーは自転車をレンタルして遺跡巡りをしていると、インターネット上に書き込みもあった町だ。せっかくだから挑戦してみよう。
自転車が多数並べられているお店の中から、やたら手招きしてくるおばちゃんがいたので、そこの店にお世話になることにした。
私が日本人と分かるやいやな、すぐにブリヂストンの自転車をよこしてきた。自転車をよく見ると、「富岡市立北中」と言うシールが貼ってある。
日本で放置された自転車はこちらに輸出されているのか。レンタルバイク代は300ルピーで、これは前払い制だった。鍵が付いていなかったので、
「カギは?盗まれないか?」
と質問したら、即、大丈夫との返答である。ほんとこの国、穏やかだなぁ。確かに実際、全く盗まれなかった。
ポロンナルワも博物館に行ってチケットを購入する。チケット代は3880ルピー。この価格設定にはもう慣れてきて驚かなくなってきた。
先に博物館内を見学した。ポロンナルワ博物館はまだ許せるレベルで照明が当たっており、遺跡資料も見やすい。ちゃんと見せようとしている気持ちが伝わってきた。
施設一番奥にある比較的まともなトイレで用を済ませてから、遺跡地区のゲートに向かう。ゲートでは軍人が厳重に入場チェックをしていた。
ポロンナルワはこじんまりとした町だ。遺跡の中は、地球の歩き方に掲載されている地図通りなので、地図を広げたままにして自転車にまたがった。
ポロンナルワの主要な遺跡群は森林公園の中に収められている。森林浴をしながら、遺跡見学をする。心地よい風を受けながらの遺跡見学は本当に楽しい。緑と挨拶を交わしていると、突然古代遺跡がひょっこり顔をあらわす。心躍る時間だった。
園内は英語の看板が多数あるから、全く迷わない。そしてほとんど一本道。青空に見守られながら、快調にペダルを漕ぐ。どの遺跡から見学しても良いのだが、私は一番奥に鎮座している遺跡から見学することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます