蜷川ニーナは蔑まれたい。
「ニーナ…そろそろ出て来ないかい? 学校でみんな心配してるよ? また来るから…」
「ニーナちゃん! 元気出せよ? あの須藤君が何かしたんだろ? 絶対問い詰めてくるからさ!」
「ニーナさん、そろそろ内申がまずいよ。僕からも先生に言ってあげるからさ、僕にだけ教えてくれよ」
◆
「ニーナ、ニーナ、ニーナ………うるさいですね」
クラスメイトの男子が何度も何度も自宅に訪れてきます。これを機に仲良くしようとする男の欲が見えます。
みんな軽薄な言葉と薄っぺらい気持ちが、まるで紙皿のようで、何枚重なっても私の心の涙は受け止められません。
もっとも、もう枯れてしまったのですが。
まあ、でも面倒になって、親にも止める事はしなくなってしまいましたが。
男性不信だった私が、笑ってしまいます。
まあ、今部屋に入ったら確実にやられちゃうでしょうね。
裸ですし。
まあこんな汚い私にはお似合いでしょうか。
はあ。
「…汚い身体……ふふ」
全裸で姿見に映る私はまるで芋虫ですね。
安全ピンで真っ直ぐ水平に何本も身体を引っ掻いてみました。
囚人服のように。
でも何処か満たされません。
もう、優しく抱かれて感じることなどは、無いのでしょうね。
ふと見上げた窓から覗く夜空には、星が遠慮したような煌めきで。
遠くに寂しそうに浮かぶ月を盛り上げて。
その月はまるで清春さんのようで。
いつか清春さんがくれた暖かさが、あの月のように遠い。
私から遠ざけたのですから当たり前ですね。いくら悪魔に操られていたとしても、到底許されるものではありません。
心と身体が罰を求めています。
他の方にでも抱かれてみましょうか。
清春さんは何と言うでしょうか。
「汚いなんて、言ってくれるでしょうか…」
いえ…こんな私など無関心でしょうか。
他の男に抱かれようが抱かれまいが、汚いことには変わりはないですしね。
「何の償いにもならないですよね」
それに償いだなんて、ただの自己満足ですしね。
NTR雌豚。
これが私に一番相応しいのでしょう。
NTRなどと言う言葉、初めて知りました。そこだけはクズに感謝ですね。
こんなに醜悪な言葉はないでしょう。
実際はレイプと言いたいところですが、清春さんにはそうは見えませんし。
もう、普通ではやり直してはいただけないでしょうから、思い切って豚になるのはどうでしょうか。
豚の毛穴は、三穴で一つのユニット。他の動物とは違います。
見分けは簡単ですね。
ならば一回で三箇所を刺さないといけません。
ではまず、針を三本用意します。
針はふとん針にしましょう。一番長く太いですからね。
その先をライターでキンキンに熱します。破傷風が面倒ですからね。
そのあと冷水にチュッとつけて冷まします。焼き戻りしますからね。
乾かした後、針先を0.5mmほど出るように木綿糸で針三本をぐるぐると束ねます。その際は簡単に緩まないようにキツく縛るのがコツです。
出来ました。
これで雌豚針の完成です。
簡単でしょう?
では早速、使用してみましょう。
「NTR、ゆえに雌豚。あ、ぎぃ、が、ぁ、んぎ、あぐぅ…」
まるでtherefore signのように刻みます。
「雌豚、なぜならばNTR。んぐぅ、あ、く、あ、ん、ぁ、ぎぃ…」
まるでbecause signのように刻みます。
まるで地図記号の茶畑マークのように、身体のあちこちに青々と刻んでいきます。
清春さんの心の安寧と平安を願い祈りながら、クズの口が触れた胸に足に腕にお腹にお尻にアソコに赤々と刻み上書きします。
「んひ。これは…はぁ、罰になり得ないかもしれません……ぁが、ぎぃ、ぁ、ぐ、ん、あ"…ひ、ん」
突き刺さり反応する痛覚は、一瞬だけ表層に浮かんでは消える残響のよう。
その度に何度も熱が灯り裏返る心。
その度に何度も海老反りになる身体。
でもこの痛みは、いえこの痛みこそがやっと取り戻した私の選択の証。
この私、蜷川ニーナの自由で開かれた意志の具現。
もう奪いも奪われもしない私の純情証明。
一人孤独なこの部屋の中で始める私のリスタート。
この痛みこそが私の望む道を教えてくれる。
この痛みこそが清春さんに続く道になる。
やがてそれらはジンとした熱を持ち、過去の呪縛まみれの首輪を溶かし、いつしか私の情熱に変わる。
それはあのクズへの熱い想い。
パスが切れて初めて感じた激情。
それがついに、いわば情熱家のようにまで高まった時、この部屋を私は飛び出すのです。
「つまり、殺します」
ああ、そうですね。
その前に他のNTR雌豚さん達にも声を掛けてあげましょう。
そして刻んであげましょう。
この雌豚の毛穴を。
きっと喜んでくれますね。
「んふ、ふ、ぎぃ、ふ、ぎ、ふ、が、あがッ! ん、ん"……いけない扉が…開いちゃいますね…これ…んぎぃ、は、は、はー…清春さんは…見てくれるでしょうか…んふふ」
いいえ。
清春さんならきっと。
きっと私のこの熱くぶ厚い情熱に、きっときっと、喜び蔑んでくれるに違いありません。
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