【第3章】町の拡張と新村開拓

第35話 町の拡張計画


第三陣の移民が到着してから2週間が経った。

一陣と二陣はベックとケイコ、それにジョイとルーイに割り振ってもらったのもあり、今では各職場で頑張っている。


第三陣は家族連れは良いとしても、孤児の子供たちの仕事探しは難航するかに思えた。

家族持ちは宿屋や商店の売り子など、当初の予定通りすんなりと仕事が見つかっていく。

孤児達は働けるものは畑の手伝いに街の子供たちと雑用、働けない年齢の者は領主館の空き部屋に院長の希望で孤児院を作った。


「なんだかすんなりと決まっていったな」


執務室でお茶を飲みながら移民たちの就職先のリストを見て安堵していた。


実際は第一陣のみんなの活躍によるものが大きい。

第一陣の面々は到着して早々、新築の住宅に町民の歓迎に驚き感動して、着いた仕事先で張り切ったそうだ、それを見ていた町民も色々と世話を焼いていく、そして第二陣が来た時は有望そうな人材の取り合いになってそれをまとめるためにジョイとルーイが頑張ったとか。


そして騎士団の設立準備も開始された。

騎士団はアルスとケビンによって前もって勧誘していた者や町民の希望者から10人が採用されて初代アブド領騎士団が結成された。

採用から漏れたものが自警団の立ち上げを希望して来た、俺は騎士団の下部組織とまでは行かなくても町の治安維持に役立つならと許可することにした。

仕事は騎士団は領の主要人物の護衛と西の村の危険排除。

自警団は手の空いている者が町の入り口で見張りをするのと町の巡回程度だが、本人たちがやる気だから任せることにした。



溜まっていた事務仕事が片付くと俺たちは町の様子を見て回ることにした。

久しぶりの町歩きという事もあって楽しみが沸き上がっていた。


「人も増えたからか町の中も結構ごちゃごちゃしてきたな」

「そうですね、空き地も移住者の家を建てるのにほとんどが無くなりましたからね」


俺の言葉に横に居たベックが答える。

出発する前は所々に空き家や空き地が目立っていたのだが、今では建築中の建物や綺麗な建物が並んでいた。

こうしてみると町も手狭に感じる。


「いっそのこと町を拡張するか」


俺の一言で町の拡張計画が始まることになった。

善は急げと執務室に戻り、町の地図と領地の地図を広げてどこを広げるかを話し合っていく。


東西は畑の手前までしか広げられず大きくは取れない、大きく広げるなら畑のない南北が良いのだろうか。

南北に伸ばすというのがジョイとアリサ、東西に広げて様子を見ようというのがベックとルーイ。

そんな中で東西の畑の一部を潰して全体的に均等に広げるというのがケイコの意見である。


「畑を潰すって、その畑の持ち主にはどう説明するつもりだ?下手すると仕事なくなるのではないか?」


気になったことを聞くとケイコは段取りの順番次第ですよと言う。

まずは町拡張予定地の外に拡張した際につぶれる畑と同じ広さの畑を作る、そこを該当する畑の持ち主に与える。

それから畑を潰せば仕事がなくなることはない、それに東の畑のように肥沃な土地じゃなくても畑は作れるのだから、と説明された。

いまなら人手もあるし、東の畑の時のように早急に作らないといけないわけでもないので長期の計画でゆっくり進められる、とも付け加えて説明された。


そこまで説明されてなるほどな、と思っているとケイコはそのためにはまずはこの範囲の畑の持ち主の了承を得ないと駄目ですけどね。と言ってきた。

もし拒否されたなら仕方ないので東西は畑の手前までで南北を少し大きめに取ればいいとも言ってきた。


本来なら領地は国から領主に与えられたもの、そしてこの畑はいわば領主から領民に土地を貸し与えているという事になる、やろうと思えば有無を言わさず移動させることもできる。

でも一応畑の持ち主に確認を取って駄目ならあきらめるというケイコの説明に少なからず同意することにした。

それにアリサやベックたちも、町が広くなるのに反対はないし、全体的に均等に広くなるなら各種計画も立てやすいと納得していた。


「それなら、まずはケイコの案で計画していくことにする。それがだめならまたみんなで考えようじゃないか」

「「はい」」


そうして俺たちは町の拡張計画の細かな事を決めつつも、手分けをして拡張予定地の畑の持ち主に説明をしていくこととなった。



数日後、結果は反対意見が出ることなく全員了承してくれた。

中には新しい畑作りに協力するといってくれる人まで現れたのだからびっくりである。

畑の持ち主たちには畑を作ってから移ってもらうのは早くて来年の春ごろだと伝えてある、それも種まきの時期を考えての事なのでみんなそれならばと了承してくれたのだった。


それからは細かい計画と開墾の人員確保、と俺たちは忙しく動き回った。


そんな中、水車と併設された製粉所の完成報告が飛び込んできた。


「いよいよか、思ったより長くかかったな」

「一から作ったのですから、それは仕方ないのではないでしょうか」


揚水水車自体は完成していて東の畑に繋がる水路とため池に水をひくことは出来ていた、問題は水車の力を使って石臼を回す製粉所のために水車の改良と動力を伝える仕組みを作るのに苦労していたようだった。

ちなみにこれもケイコの指導でやっとできたものである。


そして俺たちは翌日に水車と製粉所を見に行くことにした。










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