第19話 女神来訪
「この状況どうやって収めよう」
「知るか、ケイコ殿が暴走するからいけないんだ。自分で何とかしてくれ」
俺とケイコの前には金髪の幼女が激おこぷんぷん状態で立っていた。
彼女は噴水跡のクレーターを見ていた皆の前に光の筋が現れ、光が消えるとその場に立っていた。
その姿を見たケイコがパルミール様とつぶやいたが、教会などに祭られている女神様とはどう見ても同一だと思えないほどの姿だった。
女神像はきれいでスタイル抜群な20歳位の女性で、目の前の彼女はどう見ても初等学園の通ってる生徒くらいの幼女だったのだ。
「ねえ、ケイコちゃん、いきなり女神召喚するとかなんなの?もう少し私の事も考えてほしいんだけど」
「えっ、私パルミール様を召喚した覚えないんだけど」
なんだか良く分からない状態でケイコと自称女神の金髪幼女が話をしていた。何が起こっても驚かないと誓ったがさすがにこれは無理だった。
「だってケイコちゃん私の名と御使いだって宣言しながら私の事考えてたでしょ、だから出てきたのよ」
「はあ、それは召喚ではなくて、パルミール様が勝手に出てきたのではないですかね」
「むぅ、呼ばれたから出てきたのにその言い方、これでも私は女神なんだよ、偉いんだからね」
「はいはい、えらいでちゅね、いいこいいこしてあげますよ」
ケイコは幼女の頭をなで始めると、幼女もまんざらでなくとろんとした顔になっていく。
「あのケイコ殿?、その方は本当に女神様なのですか?」
流石にほのぼのとした雰囲気になってきたので、気になったことを聞く。
その直後、子爵邸のドアが開くとオリビア王女が出てきて、辺りの状況を見て何があったのか分からずきょとんとしていた。
そしてこっちを見ると驚いたように口を開く。
「あ、パルミール様、何で地上に?」
「あれ?あなたは、ケイコちゃんの前に送った子だったっけ」
「はい、そうです、今はオリビア・ローライとして生きてます」
「ん?もしかして記憶戻った?」
「おかげさまでばっちり戻りました」
「そっか、(あれ?確かこの子の記憶は消去したはずだったけどな)それはよかったね」
俺は王女と幼女の会話を聞いてこの幼女は女神様だと確信して膝まづき拝むと、金髪幼女改めパルミール女神様は小さな体をそらして、『えっへん』と言いたげにこっちに向いていた。
その場に居た者全員も状況を把握したのか同じように祈り始めた。
「とりあえずこのままだと先に進まないから、パルミール様には帰ってもらおうかしら」
「えっ、何もしてないのに帰れっていうの?呼び出しておいてそれひどくない」
ケイコは女神様に帰れと言うし、女神様は何もしないで帰るのは嫌だと駄々こね始めるし、オリビア王女はなぜか目をキラキラさせて女神様を抱きしめてなでなでしているし、どんどんカオスな状況になっていく。
「あの~女神様?大変失礼かと思いますけど、とりあえずこの場を何とかしてもらえませんか?」
俺が言うと女神様とオリビア王女とケイコは周りを見回して『しまった』という顔をしていた。
「すべて私は見てました、あなたが私の御使いであるオリビア・ローライを部屋に閉じ込め監禁しようとした、そして私の友人であるケイコちゃんを無実の罪で罰せようとした事は分かってます、これは女神に対する反抗としてとらえても良いという事ですよね」
しばらく辺りを見回し状況を把握してから、女神様は子爵の前に行き告げる。
「い、いえ、そ、そんな事はございません、この者たちが女神様の御使い様と御友人だと知らなくてですね、知っていたらこんなこと致しません、ただ平民ごときが私に不愉快な思いをしたので罰するのがこの国の決まりというか、身分が上である貴族のルールというか・・・」
「そう、という事は、身分が下の者になら何しても良いっていうのが地上のルールなのかしら?それなら私もそのルールに則ってあなたを消滅させても文句はないわよね、だって私より下の身分のあなたは私を不愉快にしたんですから」
女神様が問いかけ子爵は女神様の顔を見たとたん泡を吹いて倒れた。
「私からのお仕置きはこの辺にして、あとはあなたたちに任せるわ」
女神様は俺たちに振り返り『やり切った』と言わんばかりの笑顔で言ってきた、結局この件は国王に伝えて国に何とかしてもらうのが一番だろうとオリビア王女と俺が手紙をしたため、早馬に王宮に届けさせた。
オリビア王女の意見で手紙には王女が御使い様という事にしてケイコの事は一切書かないことにした、それによりみんなで口裏を合わせて状況の説明を少し変えて書くこととなった。
その後は気絶したままの子爵を使用人たちが家に担ぎ込んだのを確認してから、俺たちは馬車で屋敷を後にした。
女神様関連の噂が広まったのか道の脇に膝まづき祈る町民の列が街を出るまで続いていた。
街を出ると馬車を東に向けて走らせる、この街から南に行くと王都方面だが、オリビア王女の領地は子爵領の東隣に有るので俺たちは王都に向かう綺麗に整地された街道ではなく、所々に穴や轍だらけの道を走っていく。
「時間を食ったな、この調子だと日が沈んで途中で野営しないといけないかもな」
昼休憩をして走り出した馬車の御者台で俺がつぶやく。
出発前のごたごたや道が悪くて馬車の速度が出せない状況で村までの道のりの三分の一も進んでいなかった。
「それなら私が一瞬で・・・」
「「「それはやめて、もっと大変なことになっちゃうから」」」
「はい、」
なぜかまだ居る女神様はしょぼんと落ち込みながら返事をする。
「はいはい、凄い女神様はこっちでいいこいいこでちゅよ~」
ケイコが落ち込む女神様を抱き上げ頭を撫でていると、横でいいな~と言わんばかりの王女様が居て、馬車の中はほのぼのとした空気で満たされていた。
案の定、村までの道の半分ほど進んだ頃には日が傾き、これ以上は危険だと騎乗してついて来てくれている王女様の近衛兵の意見も参考に野営できそうな場所を先行して探してもらう。
野営が出来そうな場所に着くと念のために持って来ていたテントを近衛兵の二人が手際よく3つ張ってくれた、俺も手伝おうとしたのだが、すぐに邪魔になると感じて薪拾いをしてケイコとアリサの料理の手伝いに回った。
王女と女神様は初めての野営のためにテンションマックスでテントに入ってはすぐに出たと思ったらテントの周りを走り回り、を繰り返していた。
夜は近衛兵が夜番をすると言って俺たちはテントに押し込まれた。
後半の番だった近衛兵を半ば無理やり馬車で休ませると俺は馬に乗り御者をアリサに任せて次の村まで出発した。
昼の食事と休憩を済ませるともう一人の近衛兵を馬車で休ませて交代させて出発する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます