第41話 六つめ(または七つめ)

「見つけた!」

 興奮のあまり体が跳ねそうになり、ドゥークの肩車から落っこちそうになる。

 ゆっくりと地面に下ろしてもらい、ドゥークに向き直る。

 手の中で青く輝くものを誇らしげに高々掲げる。

「うん、星だな」

 やったな、とまるで僕のお手柄みたいにドゥークが頭をぐりぐり撫でてくれる。

 洞窟の高い位置の岩陰に微かな光を見つけたのは僕だ。けど、当然僕の背じゃ届かなくって、ドゥークの肩に乗せてもらったのだった。

 真っ暗な洞窟を二人で進んだけれど、屈強なドゥークと一緒だから怖いことなんて何もなかった。まあ、ずっとドゥークのマントの裾を掴んではいたけれど。

 けど、実際危ない目に遭うこともなくここまで進んできた。バサバサと蝙蝠が飛ぶたびに悲鳴を上げてしまったけど、それ以外は暗闇のお蔭で虫一匹目にすることはなかった。モンスターには一匹も遭遇しなかった。ミミとイチハが選んだ分岐も同じように安全ならいいけど。早く先を進んで二人に合流したかったけど、暗闇の中を焦って走るんじゃないとドゥークに窘められた。

 手に入れた星をドゥークに渡そうとすると、彼が言った。

「それは、坊主が持っておけ」

「え、でも」

 絶対にドゥークが持っていた方が安心だと思うけど。そう思いつつも、自身が星を持つことにドキドキしている。

 ドゥークが僕の背嚢に星を入れて、落さないようにぎゅっと袋の口を縛る。

「これで六つだ」

「え、七つだよね」

 ついに願いを叶えてもらえる七つ目の星を見つけたんだ。

 僕はもう百以上の数をかぞえることもできるし、簡単な計算もできる。星は、僕が一つ、ドゥークが三つ、ミミが二つ持っている。そこに一個足すと、「七つ」になる。こんな簡単な計算をドゥークが間違えるなんて。不思議そうに見上げる僕に、ドゥークが微笑む。

「お前のは使えないだろ。ハートを兼ねているのだから。使ってしまえば、ライフを削るのと同じだ」

 なるほど、確かにそうだ。

 この世界の生物はみんな赤いハートライフを持っている。ハートがゼロになるのは命が消える時だ。違う世界から来たドゥークとイチハは持っていないけど、そのせいでハートなしで生きている魔女として集落を追い出されたり酷い目に遭ったみたい。僕のハートも少し変で、背嚢に入れていたハートの欠片たちはいつの間にかドーナツ状にくっついて、その中に青い星が生まれていたのだ! ハートから星だけを取り出すことはできそうになかった。だから、もしこの星を使ってしまえば、僕のハートは、ドゥークが念のためにとよけてペンダントにしてくれた小さなハート一欠片きりになってしまう。確かにそれでは大変心許ない。使わない方がいい、という彼の意見に僕も同意した。

 背嚢の肩掛け紐をぎゅっと握りしめる。

「どっちに進む?」

 ドゥークに尋ねる。星は手に入れた。引き返してミミ達を追いかけるか、合流すると信じて道を進むか。

 ドゥークがじっと松明の火をかざす。

 鼻の穴がピクピク動く。

 炎が少しゆらりと揺れた。向こうから風が吹いているのだ。

「進もう」

 僕らは真っ暗な洞窟をさらに進むことにした。

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