国王一家

国王で父のアルフレッドは厳しい顔をしていたが、王妃アナスタシアとエリックは涼しい顔をしている。


ティタンと末弟のリオンだけは重苦しい雰囲気に萎縮してしまっていた。


この間の婚約者の件について、家族会議だ。


「さすがに二人共同じ家の令嬢とは……」


「兄弟と姉妹で丁度良いと思います」


サラリと言うエリックにアルフレッドはため息をつく。


「一つの家との関係が強くなりすぎると癒着の心配とか、血筋が濃くなりすぎるとか、上手く行かない理由が諸々あるだろうが。エリックならその辺りわかるだろ?」


もうすでに王太子として決定している聡明なエリックならば、このような事態はすぐに予測できたはずなのに。


「わかりません。たまたま好きになった女性が同じ家だっただけです。寧ろ同じ女性を好きにならず済んだのは良かったです。

こういう懸念があったのだから、最初から俺とティタンを同じ茶会に参加させねば良かったと思いますよ」


淡々とエリックは言い放つ。


「そもそもこの茶会自体失礼なものでした。皆が皆、俺たちと結婚したいわけではなかったはずなのに、あのように呼び出されて。特にレナン嬢とミューズ嬢は父親である宰相殿の顔を立ててイヤイヤながら参加されていた。母上が来てくれた令嬢の為にお詫びの意味を込め、数多くの手土産を用意したのはご存知ですよね?」


「ぬっ!?」


痛いところを突かれ、アルフレッドは唸り声をあげる。


効率重視のこの茶会は失礼だとは思った、しかし縁談の数に辟易していたのもあって開催したのだ。



「だから一回で決まったことはお褒め頂いても怒られる事はないはずですよ。なぁティタン」


饒舌なエリックは弟に話題を振る。


「ミューズと引き合わせてくれたことは父上に感謝している。しかし、無理矢理参加させられたと聞いたときは、本当に申し訳なかった」


「今度謝罪文を出すから……」


ティタンにも咎められるとはと、アルフレッドは落ち込んでしまった。


「それよりも婚約の許可と打診を」


すかさずエリックが切り込む。


「あちらは二人きりの姉妹です。レナン嬢を王太子妃に、ティタンをあちらに婿入りさせれば良いでしょう。俺に何かあれば、リオンが次代の王太子で良いと思います。スフォリア領は王都の直ぐ側だ。行き来もそう不便ではない」


「あの親バカなディエスが娘を離すだろうか……」


「そこは父上の手腕に任せます」


面倒くさそうな仕事は父に丸投げだ。


エリックは弟たちを順に見遣る。


「ティタンはそれでいいか?」


「ディエス殿が許せば勿論大丈夫です」


「リオンは? 将来俺の補佐として大変にはなるが」


「構いません、エリック兄様の手助けを出来るなんて光栄な事です」


最後の要に目を向ける。


「母上は賛成でいいですね?」


「えぇ。特に異論はないわ」


あとはアルフレッドの言葉だけだが、ここで異論を唱えるのはなかなか勇気がいる。


国王とて人間だ。


家族の決定に一人だけ否を言うのは、他の四人を論破しなければいけない。


その後の関係性にも、影響があるのは間違いないだろう。


「わかった……打診をしておく」


どう足掻いても覆りそうにないのだが、そう、答えるしかなかった。


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