第11話 二人の看病
文化祭が終わり、3日ぶりの学校が始まった。
勉「今日はいつもより早く教室に着いたな。 おはよう・・・・・・」
B組の教室内では不穏な空気が流れた。
勉「おい、果報。この雰囲気、どうしたんだ?」
寝待「あぁ、真面野か。実はな・・・・・・今日百合根さんが風邪で休んだらしいんだ。」
勉「え、百合根さんが風邪?」
寝待「文化祭で疲れがたまったのかな?」
勉「(それでみんな落ち込んでいるのか・・・・・・)」
勉の顔が青ざめた。
勉「(待てよ、風邪の原因って・・・・・・まさか、先週のプール!?)」
昼休み、屋上では
勉「なあ三八さん、団ちゃん。華のことなんだけど。」
団子「うん、ただの風邪だって~」
三八「でも珍しいよね、華ちゃんが風邪ひくなんて。」
勉「確かに・・・・・・」
勉は心の中で「ゴメン、その原因作ったの僕だ・・・・・・」と思った。
団子「何顔真っ青になっているの?」
勉「いや・・・・・・別に。帰りに華のところにお見舞いに行くか。」
団子「まあ私が行きたいけど実は今日日直で早く帰れそうにないのよ。」
三八「私も今日先生に呼ばれて・・・・・・」
団子「だからお見舞いよろしく~」
勉「え!?」
放課後、勉はドラッグストアで薬や飲み物などを買った。
勉「えっと・・・・・・スポーツドリンクと冷却シートと食べやすいようにプリンとゼリーと、あとは・・・・・・こんなところか。」
勉は華の家に向かった。
勉「(華の家に行くの、喧嘩した時以来だな・・・・・・)」
一方、華の家では
華「ゲホゲホ・・・・・・何で風邪ひいたんだろう・・・・・・のどが痛い、頭が痛い、関節が痛い・・・・・・ はあ、お母さんも仕事でいないし。さみしいなあ・・・・・・」
チャイムが鳴った。
華「誰?こんな時に来ないでほしいよね・・・・・・」
華は匍匐前進しながらドアを開けた。
華「はい、どなたですか・・・・・・」
勉は華の匍匐前進姿を見て仰天した。
勉「・・・・・・華、大丈夫か!?」
華「勉!?わっわっわっ!{ひっくり返る}」
勉「華!?」
勉は華をお姫様抱っこして布団に戻した。その後、勉はおかゆを作り始めた。
華「あれ・・・・・・何で布団に・・・・・・ くんくん、なんか焦げたにおいが・・・・・・」
その時、勉がキッチンでお粥づくりに悪戦苦闘していた。
勉「あれ!?何で焦げた?おかゆ作るの簡単だと思ったけど。」
華「なんだろう・・・・・・何作っているのだろう?」
数時間後・・・・・・勉
勉「おまたせ・・・・・・ごめん、おかゆ焦げた。」
華「おかゆ作っていたんだ。」
勉「さすがに食べられないだろ。これは僕で処分するから。」
華はおかゆを取った。
勉「そんな、それ食べたら風邪が悪化するって。」
華「いいの、私はこれが食べたいの。いただきます。」
華は焦げたおかゆを食べた。
華「うん、おいしい。」
勉「いや、そんなわけないだろう。」
華「本当だって、作ってくれてありがとう。」
勉「うん・・・・・・後、ゴメン。僕のせいで風邪ひいちゃって。」
華「いやいや、あれは私がふざけたのが原因だって。」
勉「まあそれはそうだけど」
華「ハハハ、生まれて初めて制服のままプールに入ったよ~」
勉「(笑いながら言うことか・・・・・・)塩素の匂いが残るから制服がクリーニングに出しておいた方がいいよ。」
華は焦げたおかゆを全部食べた。
勉「(本当に全部食べた・・・・・・)」
華「後は薬飲むだけね。勉、ごめんけど薬の袋取ってくれない?あそこにあるから。」
勉「はい、これだろ。」
勉は薬の袋を取った時あることに気づいた。
勉「あれ、この袋?」
華「ありがとう。どうしたの?」
勉「あのさ、この薬って・・・・・・うちの病院だよな?」
華「え、そうなの?近くにある病院だからそこに行ってたんだけど。」
勉「真面野内科だよな。ウチの病院だよ。」
華「ということはあそこが勉の家!?」
勉「そうそう、でも病院内じゃなくて敷地内の家に住んでいるけどね。」
華「知らなかった・・・・・・勉が病院の息子だったなんて。」
勉「あれ、言ってなかったっけ?」
華「聞いてないよ!」
数時間後・・・・・・
華の母「ただいま」
華「お母さんおかえり。」
勉「あ、お邪魔しています。」
華の母「あら、真面野さん。いらっしゃい。」
勉「では、僕はこれで。」
華「じゃあね。今日はありがとう。」
勉「お大事にね。」
勉は帰った。
華の母「よかった。華のことを考えて仕事早く抜けたけど真面野くんが看病してくれて本当に助かったわ。」
華「うん・・・・・・」
勉は家に帰った。
勉「ただいま。」
勉は家に着いた途端。くしゃみをした。
次の日
団子「華ちゃんよかったね~元気になって。」
華「うん、勉の看病のおかげで元気になったよ。」
3人は生徒会室に向かった。
華・団子・三八「失礼します。」
笑福「おお、来たか。3人仲良く来て結構結構コケコッコー。」
生徒会室は凍り付いた。
笑福「ごめん、今日類が日直でいないから・・・・・・」
団子「それより、勉くんまだ来ていないのですか~?」
笑福「真面野なら今日休みだよ。風邪ひいたらしい。」
華「え!?(私のせいだ・・・・・・私が風邪をうつしたから)」
三八「華ちゃん?」
華「私、急用を思い出したので帰ります!」
笑福「ちょっと、百合根さん!?」
華は急いでコンビニで食べ物を買って勉の住んでいる真面野内科に向かった。
華「確か、病院の裏側に家があるって・・・・・・あった。」
華はチャイムを押した。
兼備{インターホン}「はい、どちら様ですか?」
華「あ、あの・・・・・・私、勉くんと同じ学校に通っている、百合根華と申します。」
兼備{インターホン}「あら、勉の同級生ね。今扉開けるから待っていてね。」
インターホンが切れた後、ドアが開いた。
華「わっ、勝手に開いた。」
華は勉の家の前に立った。
兼備「どうぞ、よく来たわね。勉の母の真面野兼備です。」
華「お邪魔します。(綺麗な人・・・・・・)」
兼備「勉は今、二階で寝ているから。」
華「ありがとうございます。」
兼備「あなた、もしかして勉のコレ?」
母は恋人という意味の小指を立てた。
華「まあ・・・・・・そうです。」
兼備「え?本当に?」
華は静かに頷いた。
華は2階に上がった。勉の部屋をノックした。
勉「母さん?どうぞ。」
華「勉、体の具合はどう?」
勉「華!?何でここに?」
華は呆れた顔で
華「だって家がここって言ってたじゃない。」
勉「まあそうだけど・・・・・・(本当に来るとは思わないだろ・・・・・・)」
華「これ、食べやすいようにヨーグルトと飲むゼリー。」
勉「ああ、サンキュー。そういえば昼、何も食べなかったから腹減ったな・・・・・・」
華「じゃあヨーグルト食べる?今開けるから。」
勉「サンキュー」
華はヨーグルトの蓋を開け、スプーンでヨーグルトをすくって勉の前に差し出した。
華「ほら、あーんして。」
勉「へ!?」
華「早くしてよ、こぼれるじゃない。」
勉「自分でできるって!」
華「病気の人にこんなことできるわけないでしょ」
勉「恥ずかしい・・・・・・」
華「いいから!」
勉はヨーグルトを食べさせてもらった。
勉「{モグモグ}おいしい・・・・・・」
華「それならよかった。ほら、二口目。」
勉「も、もう勘弁してくれ~!」
結局ヨーグルトをすべて華に食べさせてもらった勉であった。
勉「恥ずかしかった・・・・・・食べさせてもらうなんて何十年ぶりの話だからな・・・・・・」
華「風邪の方は大丈夫?」
勉「ああ、今日1日中休んだからな。もう大丈夫だよ。」
華「その、ゴメンね。私のせいで風邪うつしちゃって・・・・・・」
勉「華のせいじゃないよ。僕も文化祭の疲れが出たからだと思うからさ。」
華「もう、優しすぎるって・・・・・・」
勉「ん、今なんか言った?」
華「何でもないって!」
勉「外がだいぶ暗くなったからそろそろ帰った方がいいんじゃないか?」
勉が窓から外を見ると、家のインターホンを押す寝待の姿が。
勉「果報!?」
華「え、果報くんがどうかしたの?」
勉「アイツが家に来た・・・・・・」
華「え!?どうしよう!」
勉「とりあえず僕が相手するから!」
勉はガウンを羽織り、玄関まで向かった。
兼備「あら、勉。寝てないといけないじゃない。今、果報くんが来ているけど。」
勉「母さん!百合根さんが来ていることは言わないでくれ!」
兼備「何でかしら?」
勉「いいから!て言うか僕が相手するから!」
兼備「はいはい、じゃあお母さんお手洗いに行ってるから。」
勉は玄関のドアを開いた。
寝待「あれ、真面野どうしたん。もう風邪治ったのか?」
勉「どうして果報がウチに来ているんだ?」
寝待「なんでって、今日の分のプリントを持ってきたんだよ。」
勉「ああ、そういうことか。サンキュー・・・・・・」
寝待「後さ、トイレ貸してくれない・・・・・・もう、限界近いからさ・・・・・・」
勉「分かった!早く上がれ!」
寝待は2階にあるトイレに入った。
寝待「は~スッキリした。」
勉「じゃあな、もう遅いから帰った方がいいだろ。」
寝待「なんだよ、その言い分じゃ早く帰れみたいな感じじゃないか?」
勉「そんなことは・・・・・・」
寝待「あそこがお前の部屋だろ。ちょっと見てみたいな。」
勉「ちょっと!プライバシーの侵害だぞ!」
寝待「いいじゃん。あ、もしかしてエロ本とか隠しているのか?」
勉「違うよ!(むしろエロ本より見つかったらマズイ人が・・・・・・)」
寝待「じゃあお邪魔します。」
勉「おい!」
寝待は扉を開けた。
寝待「へ~結構きれいにしているじゃん。」
勉「(あれ、華がいない?どこに隠れているんだ?)」
寝待「真面野、布団に戻ったらどうだ?」
勉「そうだな・・・・・・」
勉がベッドに座った時布団の中から
華「イタッ!」
勉「!?(何で布団の中に隠れているんだ!?)」
寝待「今なんか声が聞こえたような?」
勉「イタタタ・・・・・・お尻を思い切りぶつけた・・・・・・」
寝待「でも、真面野にしては声が高いような・・・・・・」
勉「{声を高くして}イタタタ・・・・・・」
寝待「まあいいか、あれ?布団の中にもう一人いるのか?」
勉・華「(ま、まずい・・・・・・)」
勉「あ~!こ、これは抱き枕だよ。ほら、こうしていないと僕、眠れなくてさ。」
勉は抱き枕に扮した華を思いっきり抱きしめた。
華「(fsづいjうぇgふぃおっぎおggs!){興奮しすぎて何言っているかわからない}」
寝待「へ~そんなにいい抱き枕なんだ。俺にも貸してくれよ。」
勉「駄目だ!」
寝待「いいじゃないか、別によ~」
勉「(マズイ、バレる・・・・・・)」
寝待が抱き枕に触れる瞬間、1本の電話が。
寝待「あ、俺だ。」
寝待は電話を取った。
寝待「はい果報です。あ、店長。今日仕事はないはずですが、え!?従業員がドタキャンして人数が足りない?分かりました、すぐに向かいます!」
勉「どうした、バイト先からか?」
寝待「ああ、今から行くことになった。じゃあな、お大事に!」
寝待は急いで勉の部屋を出た。
勉「あ、真面野のお母さん。お邪魔しました。」
兼備「果報くんまた来てね。」
勉「ふ~何とかなった・・・・・・華、もう大丈夫だぞ。」
しかし返事がない。
勉「お~い、もう大丈夫だっ・・・・・・」
華はベッドで顔を真っ赤にしながら倒れていた。
勉「華!?風邪でもうつったか!?おい華、しっかりしろ!」
華は意識が戻るまで約30分はかかったという。
第11話(完)
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