第94話 メルカにボーナスを

ガントシティを脱出してから10日後、実はまたガントシティに戻ってきた。


沼様の指示だ。戻った理由は、メルカに占ってもらった今後の行き先を見た結果。


メルカ自身は、自分が私との約束を果たす前に死ぬ気だった。だから、先に袋に入れた紙で渡されていた。



「なになに?ん、これって何だろう。カリフのパナハ、ブライトのシルラ・・」


こんな書き方で暗号のようなものが30ほど書き連ねてある。


「ん~?あ、最後のは、ニュデリイのイタス。これってニュデリイ国のイタスダンジョン。ダンジョン30ヵ所のピックアップかな」


ダンジョンの位置なんて、冒険者ギルドに行けば分かる。シルラダンジョンの名前を探せばブライト王国と簡単に出てくる。


「メルカはなんで、わざわざこんなもんくれたんだろう」

『サーシャ、メルカにいいもん教えてもらったかもな』

「あ、沼様。メルカがくれたメモのことだよね。わざわざダンジョン名を羅列してあるみたい」


『お前が読んでるの聞いて、アタイが予測したことがある。メモの中にあるダンジョンが近くにないか』

「うんと、あ、1ヵ所あるね。ガントの北西の端っこのクアラル初級ダンジョンだ」

『行ってみろ』


移動していた川沿いの街で1泊し、指定されたダンジョンの位置を聞いて入ってみた。


「どう沼様」

『大当たりだ。メルカのスキルは大当たりだ。追加ボーナスをやってもいいぞ』


「どういうことか、教えてよ」

『ほら、アタイがイタス特級ダンジョンでダンジョン奥に不思議な存在がいると言っただろう』

「ああ、ダンマスってやつね」


『ここにもいる』

「本当?」

『初級ダンジョンの主だから感じる「気」も小さいが確実にいる』


「じゃあ、このメモの30箇所は・・」

『アタイの欲求を満たし、「沼」のレベルアップにもつながる存在がある場所だ』


「じゃあ早速、そのダンマスってのに会いに行こうか」

『当たりならメルカのとこに戻って、トコブシ姫を眠らせてアタイのとこに送ってこい。治療をしてやる』


「そんくらいの価値があるよね」

『お前がメルカと関わるのは予想外だったが、収穫も想定外にでかかった。今後のために、恩を売っとけ』


「送れるのはゲルダを外に出せる10日後だから、時間はあるね。初級ならサクッと調べてくるよ」


トコブシの腕が腐らないように「沼の底」から出して収納指輪に保管した。


◆◆


次の日には、ダンジョンボスを倒した。


クアラル初級ダンジョンはゴブリンだらけの全20階で洞窟型。


沼様も低レベルゴブリンは要らないと言うから、スキルは使わず駆け抜けた。


帰還用の転移装置は開いたが、帰らずにボス部屋を調べた。


「沼様、分からないよ」

『気配はある』


「分かった。くまなく調べるよ」


歩いて、壁を叩いて1時間。ボスがリポップしたら倒して再調査。


「「沼」の出番かな」


床に「沼」を滑らせたが、無反応。


今度は「泥団子」を手当たり次第投げた。


真上に投げたときだ。


ぺちょっ。ボコッ。


ぬぽっ。「えええええ?」


ぽっちょ~ん。


真上の8メートル。泥団子から展開した「沼」に天井が1メートル四方に吸い込まれ、沼の向こうにに、うっすらと人影のようなものが見えた。


そいつが「沼」に捉えられ、沼送りになった。


「何が起こったんだろう」


『サーシャ、ビンゴだ!』

「うわっ、沼様」


ダンジョンコアでもない。別世界からダンジョンの引力に、次元的に引かれてきた奴がいるそうだ。


『来たのは神器持ち召喚者と同じ世界だ。膨大な力を持たされてはないがな、引っ張ってきたのは神の力』


「で、美味しかった?」


『もちろん、と言いたいとこだがな、神器持ちに比べて味が薄い』

「残念だね」


『しかしこれで、次の楽しみができた。サーシャが巡りやすいとこから行くぞ』


その前に、メルカのとこに行き、トコブシの治療をする。


沼様が言う「ダンジョンマスター」は恐らく30と決まっているらしい。

だから次が発生している可能性が高いが、何千とあるダンジョンのどこかは分からない。


「そういや沼様、さっきのダンマス君で沼レベルはどうなったの」

『あんなので0・3ポイントも上がったぞ』


「少ないように見えるけど、私が送る魔物に換算したら特級ダンジョン2個分。一年分の獲物と一緒くらいだよね」


すでに沼レベルは「6」。現世の魔物や人間でレベル上げは無理。しばらくメルカのお告げに従って、「ダンマス」捕獲に努める。


私がゲルダと幸せに、それもメロン、カリナも一緒となると、まだ力が足りない。


◆◆

9日後、地上50メートルに小沼設置の大技をやり、何とかトコブシ姫やメルカの仲間と接触した。


メルかとも会えた。療養所から出られないけど、すごく明るかった。


だけど、のんびり話してたら、他の王子達にも見つかり話がもつれた。

トコブシ姫をさらい、眠らせて強引に腕をくっつけて帰した。


治療の間は、今度こそゲルダと裸で抱き合ってた。


けれど、姫をガント王宮に返したとき、私は王族誘拐未遂の闇魔法使いとして、指名手配されていた。



トコブシ姫とメルカが誤解を解くと言ってくれたが、沼様に止められた。国レベルで指名手配されたくらいが、悪意を持つ者が寄ってきて、ちょうどいいそうだ。



◇次回から3話ほどメロンやカリナの近況です

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