第17話うちの家族構成、そんなに珍しいかね?
件のダンジョンにやってきた。
それは、最近発見されたダンジョンらしい。
ダンジョンに関する依頼は、基本的に調査が中心となる。
構造について調べたり、どんな魔物が棲みついているのか調べたりする。
そうして、調べ尽くし最下層まで行って、所謂コアと呼ぶものを回収することで、攻略となる。
「元々クラン向けの依頼だったということもありますが。
ビクターのところのクランは、大所帯で向かっています。
つまり、人海戦術で攻略する気だったのでしょう」
ダンジョンの出入口に立って、ラインハルトはそう分析した。
ちなみに傍目からみると、ダンジョンの出入口はただの洞窟にしかみえない。
通常、クランとしてダンジョン攻略を受けたとしてもせいぜい十人程度で向かうものらしい。
けれど、あの日【
荷馬車も三台ほどあった気がする。
地面を見た。
車輪の跡を三台分見つけた。
しかし、それは街とは逆方向に向かっていた。
「…………」
その意味を考える。
そんな俺の横で、ラインハルトは説明を続けた。
「それだけ本気だったと考えられます」
「……しっかし、意外だな。
ラインハルトはビクターと仲が悪いだろ。
よく助けに行く気になったな」
ダンジョンに入る。
そして、そんなことを俺は聞いてみた。
「ビクターが生きてたら貸しができます。
あとは、もしもアイツが死んでて、けれど構成員が生きているなんてことも考えられます。
その場合、アイツのクランを吸収して私のクランを大きくすることもできますから」
なるほどなぁ。
「それはそうと、このダンジョン。
最近発見されたこともあって、本当に情報がないんですよ。
鑑定持ちがいないことも痛手ですね。
まだミーアが、【索敵】スキルを所持してるのが救いですが」
なんて言って、ラインハルトは副総長のミーアを見た。
ミーアは頷いて、
「今のところ、魔物の気配はない」
短く答えた。
まぁ、まだ一階層だからな。
はたして何階層まであるのやら。
ちなみに、階層が深くなればなるほど出てくる魔物は強くなる。
とにかく、進むしかないだろう。
「そういう君こそ、なんでこの件を受けたんですか?
なんだかんだ友情でも芽生えました??」
「は?
キショいんだけど、その考え」
「だって、君にとってビクター君は友達でもなんでもないでしょう?
むしろ、ちょくちょくウザ絡みしてくる存在ともいえます。
死んだと聞いてせいせいしたんじゃないですか?」
え、俺そんな冷血漢だと思われてたの?
ショックだわぁ。
「言い方、酷くね?
俺、そこまで人でなしじゃねーよ?」
「おや、そうでしたか。
これは失礼しました」
「これで貸し作ったら、このことネタにビクターのことずっと揶揄えるだろ?
あとは、個人的に楽しそうな仕事だと思ったんだよ」
「……前者はともかく、後者は君らしいですね」
「そうか?
いやぁ、母さんの教育の賜物かなぁ。
よくそっくりって言われるし」
「どんな御母堂様ですか」
「……母さん?
ピンクゴリラって呼ばれてた」
俺の返しに、聞いてきたラインハルトもだが何故かエールとミーアも俺をなんとも言えない目で見てくる。
そして、ヒソヒソと三人で言い合う。
「ドラゴンに育てられたと思ってましたが、ゴリラでしたか。
ちょっと意外です」
「自分は魔族に育てられたとばかり」
「時々ご家族の話は聞いてましたけど、お母様がゴリラだったなんて!
ということは、お父様の話ももしかしたら本当なのかも」
「「父親?」」
「えぇ、なんでもウィンさんには三人の育ての親が居るらしいんですが、お母様が一人、お父様は二人なんだそうです。
そのお父様の片方が、全裸の馬だとかなんとか」
「いや、それはただの馬だろう」
「馬は基本、服着ないでしょう。
全裸の馬って時点で言葉がおかしいですよ」
「母がゴリラ、父が馬、じゃあその残るもう1人の父親はどんな動物なんだ?」
「それが、ウィンさんの言葉を借りるなら、お人形さんだとか」
「「生き物ですらない?!」」
盛り上がってんなぁ。
他人の家の事情って、そんなに知りたいもんかね?
「え、待ってください。
無機物が親??」
「エール、さすがにそれは担がれたんじゃないか?」
「ミーアさん、酷い!」
そんな感じで、俺たちはダンジョンを進んで行った。
***
とりあえず、十階層まで降りてきた。
何度か魔物と遭遇した。
どの魔物も、低級なものばかりだった。
しかし、凶暴化していた。
「攻撃力が上がっている。
凶暴化が原因だろうな」
「低級のはずなのに、危険度A並でしたよ。
あくまで体感ですけど」
俺の言葉にラインハルトが返す。
こりゃ、なにも知らずにここに入ったら油断して死ぬやつ続出しそうだな。
ちなみに、低級の魔物の危険度はEとDで表される。
スライムなんかはここに入る。
「滅茶苦茶、きな臭いな」
「同感です」
しかし、まだ攻略に来たはずの【
もっと奥に進んだということだろうか。
しかし、だとすると……。
いや、これは帰ってから確かめればいいか。
俺たちは、さらに先へと歩を進めた。
そして、【
それも、更に進んだ先、三十階層で。
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