【しかも】冒険者クランに入ろうとしたけど、門前払い受けた件【百回】

ぺぱーみんと

第1話門前払いされること、百回超えた話。正直、心折れそう。

 泣きたい。

 もう、泣きたい。

 泣いていいかな??


「うーん、ウチではスキルがひとつしかない方はちょっと」


 そうやって、様々な冒険者クランを訪れて、所属を断られること百回。


 この数日間。

 次こそは、次こそはと頑張って来たけど、もう心が折れていいと思うんだ。

 十回断られた時にはまだまだ、と頑張った。

 三十回を越えたあたりで、あれ?もしかして自分、社会に必要とされてない?となってきた。

 そして、今しがた記念すべき百回を越えたのだ。

 断られ続けること、百回。

 ちなみに【クラン】というのは、冒険者で構成される大所帯のチームのようなものだ。

 実に百個の冒険者クランから入会を断られ続けた。


 どの冒険者クランでも、実力を測る手合わせまで行かず、ステータスを確認して終わる。

 中には、俺の体格を見ただけで門前払いするところもあった。

 一つ目から門前払いだったっけ、そういえば。


 受付さんが俺のステータスを見て、【あっ⋯⋯(察し)】という顔をみることほぼ百回。


 実家の方ではそこまでステータス表示は重要視されていなかったから、まさかここまで影響が出るとは思っていなかった。

 そんな俺のステータスはというと、こんな感じだ。


 ■■■



 ○名前:ウィン・アキレア・フール・キングプロテア

 ○年齢:15

 ○状態:普通

 ○体力:999

 ○魔力:0

 ○職業:【冒険者】【渡航者】

 ○技能:[身体強化]

 ○特殊:[無し]



 ■■■


「ここも、ダメだった」


 世間は厳しい。

 思っていたよりも、ずっと厳しい。

 俺は、とぼとぼと百個目の冒険者クランの建物を出た。

 どうしよう。

 しばらく一人で活動するしかないかな。

 友達や仲間、出来るとおもってたのになぁ。

 ぐすん。

 はっ!

 いやいや、こういう時こそ笑顔笑顔!!

 父さん達に教わったじゃないか!

 ニコニコしてれば楽しくなるし、楽しいことがやってくるって!!


「ファイトだ、俺!!」


 と、そこで何かの商店のガラスに映った自分を見た。

 そこには、今にも泣き出してしまいそうな顔をした、ヒョロがりのチビが映っている。

 肩に引っ掛けているのは、傍から見れば布に包まれた細身の棒に見えるだろう。

 それは、この旅に出ると決めた時、父さんが祝いとしてくれたものだった。

 旅の友であり、相棒を布越しに握りしめる。

 こいつを使うのも、もう少し先になるだろうな。


 スキルは一個しかないし。

 顔だって十人並。

 せめてイケメンだったらなぁ。

 なんて、また落ち込んでしまう。

 我ながら、才能が花開く可能性が低いんだよなァ。

 魔力ゼロだし。

 ははははは。

 泣きたい。

 いやいや、母さんだって細かったけどめちゃくちゃ強かったし!!

 なんなら、もう一人の父さんも、魔力無しだったのに普通に強かったし!

 ちなみに、俺には三人の育ての親がいる。

 父が二人、母が一人だ。

 と説明すると高確率で、複雑な家庭環境なのか、と思われるがそうではない。


 それは、さておき。


 諦めるにはまだ早い、と思う、うん!

 暗く考えるのは、アレだ、お腹が減ってるからだ、きっと。

 ご飯を食べて、再挑戦だ。

 うん。

 何しろ、この王国内だけでも千を超える冒険者クランがあるし。

 贅沢を言わなければ、生産系のとこでもいいわけだし。

 でもなぁ、やっぱり戦闘系のとこに入りたいんだよなぁ。

 強くなりたいのに、そのスタート地点にすら立てない。


「でも、スキル1個だけだと、やっぱり無理なのかなあ」


 ハアっと、大きくため息をついた。

 いや、魔力無しなのもクランに入れない理由だろう。

 腕には自信があるほうだ。

 でも、腕試しすらさせてもらえないなら、意味が無い。


 景気づけに、お肉食べたいな。

 お腹空いた。

 でも、先々のこと考えると節約しないとだよな。

 けど、今日くらい。


 なんて、考えながら歩いていた時だ。

 たまたま通りかかった路地。

 その向こうで、男二人に取り囲まれている女性が視界に入った。

 ガラの悪い男たちだった。

 何やら鱗を模した刺青が、腕や首、刈り上げた頭に掘られている。

 そんな男達の手には、きらりと光る刃物。

 俺はそちらに走った。

 そして、跳んで膝を片方の男の横っ面にくらわせた。

 うし、まず一人!!


「え?」


 女性と、


「んな?!」


 残った男が声を上げる。

 因みに、飛び蹴りを喰らわせた一人目は完全にのびていた。

 俺は身をかがめ、残った男の顎を下から勢いよく蹴りあげた。

 男の手から、刃物が落ちた。

 刃物はカランっと転がってしまう。


「大丈夫ですか?

 お怪我は、ありませんか??」


 失礼にならない程度に聞きつつ、俺はその女性の手を取って大通りへと歩き出す。


「え、あ、はい!」


 女性が答えて、ホッとする。

 怪我が無くてよかった。

 そして、そのまま近くの衛兵の詰所へと向かう。

 詰所へと女性と共に駆け込んで、事情を話す。

 すると衛兵はすぐに女性を保護してくれた。

 そして、詰めていた衛兵が先程の路地へと駆けていく。

 俺は、そこで詰所から去ろうとしたが、グッと腕を引っ張られた。

 引っ張ったのは、女性だった。

 女性、というよりも少女といった方が正しいかもしれない。

 よくよく見れば、それは少し大人びた少女だった。

 俺と同い年か、少し上くらい。

 腰まで伸ばした銀色の髪と、紅い瞳をした美少女だった。

 美少女は、俺の腕を掴んでいた手を離すと、


「あ、あの、なんてお礼を言ったらいいか!

 本当にありがとうございました!!」


 そう言って、深々と頭を下げてきた。


「いえいえ」


 ヒラヒラとなるべく美少女が気負わないように、軽薄な感じで手を振って、俺はその場を後にしようとする。

 なんなら、頭の中は今日の宿と食事のことに切り替わっていた。

 腹減った。

 しかし、また、ガシッと腕を掴まれた。


「あ、あのあの!!」


 美少女が、なにやら忙しなく言ってくる。


「はい?」


 のんびりと、俺は返した。


「お礼させてください!!」


 美少女がそう言った直後。

 美少女の言葉が聞こえていたのだろう。


「ごめんねぇ、この後、詳しく聴取するから二人とも帰らないでねぇ」


 なんて、衛兵に言われてしまった。

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