第42話 模擬戦

【これまでのあらすじ】

 真実を探すため、Crystal Tower を登るバイオとグリ。

 三階の直通エレベーターから到着した階で、Crystal Towerを守護する百八の魔星の二人、天狼星のkurokirby、天敬星のしろと人狼で勝負する。

 不慣れなバイオとグリのため、しろは一戦目を模擬戦とするように提案するのであった。


【主な登場人物】

 ・バイオ:本編の主人公。エフコム通信の伝説のハガキ職人。

 ・グリ:バイオのサポートをする謎のエージェント。バイオの持つ特殊能力“龍眼“を開花させた。

 ・kurokirby:胸にリベレートの傷を持つ仮面の男。百八の魔星の一人で、天狼星の宿星を持つ。

 ・しろ:天を敬い人を愛す大人(たいじん)。百八の魔星の一人で、天敬星の宿星を持つ。



「なるほど、どちらの陣営に人狼がいるかを知ることが重要ということか」

 しろの解説にバイオは、得心した。


「おう、バイオどんは理解がはよもす。

 ここから先は、駆け引きでごわ。実戦ではじめもす。

 では」


 一呼吸おいて、しろがkurokirbyに話し出す。

「そちらに、人狼がおりもす。

 くろかびさあ。

 どちらかを釣る算段をつけねばなりもさん。

 どうしもす?」


「そうだな。

 おい、グリ!

 うぬは、人狼か?」


「ミーはビレッジマンだ」


「ほー。では、バイオうぬが人狼だな?」


「違う。俺は村人だ」


「んー。今一瞬答えに間があったな、バイオ。

 おっと、とぼけても無駄だ。

 俺は、会話の間(ま)から相手の嘘が見破れる。

 それこそが、天狼星の能力よ!」


「Hey!嘘をつくな、kurokirby!

 バイオよ、奴に呑まれるんじゃあないぞ。

 奴の言うことこそライだ!

 本当のことを言おう。

 ミーがビレッジマンというのはライだ。

 ミーこそがウエアウルフだ!」


「これは、面白い。グリどん、おはん何者じゃあ。初見で人狼団体戦の妙味を理解しておるようじゃ」


「お褒めに預かりオナーだ、ミスターしろ。

 だが、妙味も何もこれはファクトだ」


 バイオは、この高度な心理戦では、少しの失言が命取りとなる事を悟り、沈黙に徹する事にした。そして、この沈黙により、次戦以降相手にある先入観を植え付ける事を狙った。

『奴等の心に見えない毒の種を植え付ける!』


「んー。バイオはダンマリか。

 やはり、怪しいのはバイオだな。

 もう一つ、バイオが人狼である理由がある。

 グリ、うぬは始め村人を名乗っていながら、なぜ、途中で人狼と言い換えたんだ?

 その理由は、始めは真実で通すつもりだったが、バイオの動揺を感じたから言い直したんじゃないのか?」


「ノーだ!ミーがファーストにビレッジマンを名乗ったのは、ユーたちを混乱させるためだ。

 セカンドで言い換えたのも、同じ理由だ。

 どちらにしろユーたちは今混乱している。

 タクティクスだよ」


「よか。

 くろかびさあ。

 おいは、おはんの言う通り、バイオどんが人狼と思う。

 釣るんはバイオどんじゃあ」


「おう、では俺たちはバイオに投票で決定だ!」


「バイオどん、グリどん。

 本来、日中話し合いフェーズは30分じゃが、双方が合意すれば途中で切り上げることもできもす。

 今回は、模擬戦じゃあ。

 堅苦しく考えずに、投票にいかんかあ」


「どうする。

 グリさん」


「オーケーだ。

 だいたい、タクティクスは理解した。

 バイオ、ミーたちは、kurokirbyに投票しよう」


「分かった、グリさん」


「よし、では投票だ。

 収納箱の中のスキャナーで、人狼と思うやつの名前をチェックしろ!

 もちろん、今口頭で言った名前と違う名前を入れてもいいぞ」


 kurokibyの誘導で、全員が投票を終えた。

 スキャナーに、投票により処刑されるプレイヤーの名前が表示される。


 処刑:バイオ、kurokirby


 結果:

 人狼であるバイオが処刑されたため、村人チーム勝利!


「何!2人が処刑だと!?」

 バイオは叫んだ。


「おう。

 申し訳なか。

 伝えるのを忘れておった。

 通常は、投票数が同数の場合、決選投票じゃが、ここんハウスルールじゃあ同数の場合、全員処刑じゃあ。

 そうせんと、いつまでたっても終わらんからな。

 それと、人狼側が圧倒的有利な状況を緩和する目的もありもす」


「なるほど。そういうことか」


「こんゆっさ(戦い)のことが、分かってもらえたところで、次は本戦じゃあ」


「わかったぜ!」

「アイシー!」

 模擬戦で敗れた2人は、本戦でのリベンジに燃え、同時に応えていた。

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