第6話 ショットガン
「おい、七尾」
5中隊で駿のことを七尾と呼ぶのは鹿山だけだった。
「はい。何か?」
シム訓練を終え中隊のプレハブに戻ろうとしていた駿は、鹿山に手招きをされてハンガーに入っていった。
そこにはギターケースを細身にしたくらいの木箱があった。鹿山がバールを蓋の下にこじ入れている。
「いい所に来たな。お前にプレゼントだ」
「プレゼント?」
「いいからちょっと手伝え。蓋を引っ張ってくれ」
バールでこじ開けられた隙間に指を入れ、開きかけた蓋が閉じないようにする。鹿山がまだ隙間のないあたりにバールを差し込もうとするとガールズ三人組もやってきた。
「何ですか?」
瑠璃が好奇心に瞳を輝かせて駆け寄ってくる。
「俺に、プレゼントだって」
駿は踏ん張りながら答えた。
鹿山が気合いを入れてバールをこじると、最後にバキッという音を響かせて蓋が外れた。
早速木箱の中を覗き込む。そこには異様にバレルの太い銃が入っていた。
鹿山はそれを無造作に掴み出すと、上から下まで眺めて駿に手渡した。
「何です。この銃?」
「お前には小銃よりこっちの方がいいかと思ってな」
形状は普通のアサルトライフルにそっくりだったが、バレルが異様に太い。20式と比べるとずっしりと重かった。
「ショットガンですね」
しげしげと眺めながら瑠璃が言った。
「フランキ社のコンバット・ショットガンだ。ショットガンには珍しくボックスマガジンで撃てるから再装填も簡単だ。ガンガン撃てる」
鹿山は拳で駿の肩をこづいた。
「ショットガンだから遠距離での射撃には向かないが、お前の場合遠距離じゃどうせ当たらないから関係ないだろ」
駿はしばらく惚けていたが我に返って言った。
「ありがとうございます。これなら多少ぶれてても大丈夫ってことですよね」
「まあな。反動も大きいが、だからと言ってフリンチングが余分に出るってモンでもないだろ」
駿はハンガーの壁に向けて構えてみた。多少重いものの形状がアサルトライフルにそっくりなので違和感は無かった。
「使う使わないはそっちで判断してくれ。もし使うならグレネードを装着できるように改造するから」
「とりあえず撃ってみますよ。その上でシミュレータ上でどうなるか見てみればいいし」
「そうだな。シミュレータにもデータ入力しておくよ」
駿はなんだか嬉しかった。仲間は分遣隊の三人だけではなかった。鹿山も駿が戦えるように考えてくれていたのだ。
「あの、鹿山さん」
突然そう言ったのは由宇だった。
「何だい?」
「非致死性弾も準備して貰えますか?」
「大丈夫、ちゃんと別に要求してるよ。今度の作戦は要人救出だろ。そう言うニーズもあるかと思ってな」
「はい。ありがとうございます」
指揮官としては当たり前なのかもしれなかったが、由宇はまるで自分の事のように喜んでいた。
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