第4章 記念日

【 1 】


  未翼、莉世、美麗の3人は、 "VENUS PROJECT" 名義のレコーディングに参加するため、上越新幹線で東京に移動。スタジオ入りする前に、短いボイストレーニングを済ませている。順番を待つ間、控室で昼食を食べている。控室では、レコーディング中の様子がモニタリングできるようになっている。3人に同行しているのは、マネージャーの杵渕巴亜斗。



~控室

今井莉世:みはちゃん、緊張してる?


鷲尾美麗:たくさん曲覚えないといけなかったからね。


河井未翼:歌う前に緊張するのはいつものことなので問題なくて、楽曲も全部覚えてきたので問題ないんですけど、…


今井莉世:けど、どうしたの?


鷲尾美麗:具合悪い?


河井未翼:体調も問題ないです。ただ、昨日の夜、寝付けなくて。


今井莉世:夜遅くまで歌の練習していて眠れなくなっちゃった?


河井未翼:いつもと同じくらいにベッドに入ったんですけど、寝付けなくて。


鷲尾美麗:もしかして、しいなさんとケンカでもした?


河井未翼:えっ、…


鷲尾美麗:BINGOかな?


河井未翼:ちょっと違いますね。ケンカじゃないですけど、しいなさんに悪いことをいってしまって。しいなさん、私のことを思って尽くしてくれているのに、冷たいっていってしまったんです。今朝、しいなさんに誤って、気にしていないよといってくださったんですけど、嫌われてしまったんじゃないかと心配で。


鷲尾美麗:しいなさん、優しいから甘えすぎちゃって、ついついかまってちゃんになったんでしょ?(微笑み)


河井未翼:そうなんです。


鷲尾美麗:みはちゃん、まだまだ赤ちゃんでちゅね~(微笑み)


今井莉世:みれい!(一瞥する)


鷲尾美麗:(急に真面目に)でも、みはちゃん。しいなさん、大人だからそんなに心配する必要ないと思うよ。


河井未翼:そう思いますか?


鷲尾美麗:うん。大丈夫!


今井莉世:雑念があると、レコーディングに影響するから、今はレコーディングに集中!


河井未翼:はい。そうします。(頷く)


鷲尾美麗:私、 a-Force PROJECTと "MUSE 12" の2曲に参加するだけだから気楽だけど、みはちゃんは6曲でしょ? ライブに向けてはもっとたくさんの楽曲を振り付きで覚えなくてはならないから大変ね。


河井未翼:ライブのセットリストだけでも分かると、準備することもできますけど、それもできません。


今井莉世:みはちゃん、現役高校生だから、時間のやりくり大変。6月は出張公演もあるし。ところで、ふたりは裏でコソコソやってるみたいだけど、何かすること決まったの?


鷲尾美麗:裏でコソコソしてるつもりはないけど、案件進行中につき内緒です。(微笑み)


今井莉世:もしかして、それも6月だったりする?


河井未翼:おかげさまでその予定です。


鷲尾美麗:みはちゃん、これから大忙し!


今井莉世:そうなんだ。無理して倒れないように、限界前に救いの手を求めていいからね。


河井未翼:ありがとうございます。倒れないためにもたくさん食べて、筋力つけるようにしています。6、7、8月は忙しくなりますけど、穴を開けないように頑張っていきたいと思っています。


今井莉世:頑張りましょうというのは簡単だけど、みはちゃんのおかげでa-Force NIIGATAにもチャンスが巡ってきたからね。体調に注意しつつ、ひとつひとつのお仕事を大切に、みんなで声かけあって協力もしながら乗り越えていきましょう。


鷲尾美麗:りせりせ、いいこというね。(微笑み)


今井莉世:私、リーダーだし!(少し偉そうに)


河井未翼:でも、私のおかげではないです。私を推してくださって、支援してくださったファンの方々のおかげです。


鷲尾美麗:まだ結果をひとつも残しいないといいたいんでしょ?


河井未翼:はい。


鷲尾美麗:みはちゃんとのユニットが成功することで、a-Force NIIGATAの牽引役になれたらいいね。(微笑み)


河井未翼:そうですね。光り輝けるくらいに。(微笑み)


今井莉世:それで何するの?


鷲尾美麗:だ~め! まだ教えてあげません!(笑)



//

  このあと、しばらくしてレコーディングを終えたYuiYuiのふたりが控室にやってくる。YuiYuiは、愛称のゆうゆうと呼ばれることが一般的な佑唯(ゆい)と、愛称のよしよしと呼ばれることが一般的な由依(ゆい)の名前が "ゆい" 同士のユニット。アコースティックギターデュオからスタートし、楽曲によってはエレキギター、ダンスも披露する。エンターテイメントスクール出身ではないふたり。東京事務所組。



~控室

佑唯:遅くなってごめんね。みんな、待ったでしょ?


今井莉世:(席を立ち)こんにちは、お疲れさまです。


鷲尾美麗:(席を立ち)こんにちは、お疲れさまです。


河井未翼:(席を立ち)こんにちは、お疲れさまです。


由依:そっか~、a-Force NIIGATAのメンバーは、おはようございますは朝だけなんだよね。普通の社会人になったみたいで新鮮。(笑顔)



//

  a-Force NIIGATAでは、現役の学生、退団後の社会生活に配慮し、一般的な朝昼晩の挨拶を励行している。



~控室

佑唯:りせちゃんも背高いと思ってたけど、おふたりはもっと高いんだね?


由依:ゆうゆう、背を少し分けて貰ったら?(笑)


佑唯:153で悪かったわね!(怒る)


由依:おふたりのこと、何と呼んだらいい?


鷲尾美麗:私は普段、みれい、みれいちゃんのどちらかで呼ばれているので、お好きな方で。


河井未翼:私は、同期以外には、みはちゃん呼びされているので、みはちゃんでお願いします。


佑唯:みはちゃんは、年下でかわいいから、みはちゃんと呼ばせて貰うけど、みれいかみれいちゃん? 美しすぎて、みれいさん、… 違うな。みれいさま! って呼びたい。


由依:私もそう思った! みれいさまがいい!


鷲尾美麗:さま呼びするのは、ごく一部のファンだけで、背中がくすぐったくなるのでご遠慮ください。


佑唯:(由依を見る)じゃあ、どうする?


由依:仲よさげな感じがするから、みれいちゃんにする?


佑唯:そうしよう。


鷲尾美麗:じゃあ、みれいちゃんと呼んでください。


由依:私は、よしちゃんって呼んで貰おうかな?


佑唯:私は、ゆいちゃんで!


由依:あ、抜け駆けずるーい!


佑唯:ずるくない!  "VENUS PROJECT" に参加するの、年齢制限で今年が最後なんだから、本当の名前で少しくらい気分よく呼ばれてもいいでしょ?


由依:はいはい、ゆいちゃんは今年で "VENUS PROJECT" 定年なんでした。お疲れさまです。(棒読み)


今井莉世:おふたり、仲悪かったんですか?


佑唯:ビジネスパートナーです!(笑)


由依:中学から一緒です。


今井莉世:ナイスコンビですね。(微笑み)



//

  未翼らは、連絡先を交換、セルフィーを撮影したりして、つかの間の交流を楽しむ。



~控室

由依:私たち、ダンスの基礎がないから、ビデオシューティングからライブまで、みんなの足を引っ張ってしまうけど、温かい目で見守ってくれると助かるよね?(佑唯を見る)


佑唯:Afroditiとか、Mousaとか、アイドルの範疇をはみ出すダンススキルのあるグループが増えて、公開処刑を待つ受刑者みたいな気分で憂鬱なの。


由依:りせちゃん、ダンスうまいけど、みれいちゃん、みはちゃんはどうなの?


鷲尾美麗:私は、グループ内で底辺です。みはちゃんは、グループの頂点を競うふたりのうちのひとりです。


河井未翼:グループの頂点を競うだなんて、私はまだまだです。


今井莉世:みはちゃん、謙遜していますけど、歌唱力を含めて外に出して恥ずかしくないメンバーです。


佑唯:かわいくて、背が高くて、スタイルもよくて、歌もうまくて、ダンスも踊れるとなれば、アイドルとして最強だ~! それは、目の付け所がいい人は、推したくなるわ~ さすが、 "VENUS AWARD" 3位さま!


河井未翼:私、まだ結果を何ひとつ残せていないので、ここから落ちる一方のアイドル人生になるかもしれないので、そんなにおだてないでください。


佑唯:そんなことはない! みはちゃんは、出せば売れる! そんなアイドル人生になると預言します! もし、預言が外れたら、100万YuiYui差し上げよう。(自信たっぷりに胸を張る)



//

   "100万YuiYui" 発言に、相棒の由依も口をポカーンと開ける。



~控室

河井未翼:あのぅ?  "100万YuiYui" って、何ですか? お金ではありませんよね?


由依:とっさに思いついて、口にしただけでしょ?(苦笑)


佑唯:お金ではない。


由依:じゃあ、何?


佑唯:そうだ。100万YuiYuiは、ステッカー100万枚という意味だ。最強アイドルになれなかったら、YuiYuiのステッカー100万枚差し上げよう。


由依:みはちゃん、私たちのステッカー100万枚貰っても全然嬉しくないよね? ゴミ同然だものね。


河井未翼:ゴミではないですけど、100万枚は手に負えません。YuiYuiのファンの方々にプレゼントした方がいいと思います。


由依:私たちのファン、100万人どころか、10万人もいないはず。U-chライブストリーミングしても、10万人超えないから。100万枚もステッカーつくったら、ほぼ在庫になっちゃう。(苦笑)


鷲尾美麗:それでしたら、 "100万みはちゃん" にしてくださいませんか? みはちゃんのステッカーなら、100万枚つくっても在庫にならないはずです。


今井莉世:それいい! みはちゃんのU-ch、視聴者数100万人超えるから、ステッカー100万枚は余裕でしょう。むしろ、争奪戦!


佑唯:U-chで視聴者100万人? マジなの?(目が点)


河井未翼: "VOTE GP" で注目されて、翌週の "U-ch GP" では初日から100万人以上の方に視聴いただきました。


由依:たった今、セルフィー撮って、お友だち~! みたいにしていたけど、みはちゃんは神、私たちは平民。それくらい段違いの格差だよね?


佑唯:とんだご無礼をいたしました。



//

  佑唯と由依は、未翼の前に並び、正座してひれ伏す。



~控室

河井未翼:(ひざまずき)頭を上げてください! 私ごときに、そんな、…


由依:(頭を上げ)困った顔も女神や~(微笑み)


河井未翼:まだ駆け出しのアイドルに、冗談でも止めてください。YuiYuiのおふたりって、お笑い芸人さんじゃないですよね?


佑唯:いえ、最近はそんなところがある。(苦笑) ヒット曲ないし、単独ライブはトークを楽しみにしてくるファンが増えてる。


由依:実際、歌詞や曲を考えてるより、ネタを考えてる時間が増えた。(笑)


佑唯:よしよしが来年、 "VENUS AWARD" 卒業したら、おもろいミュージシャンに転身します。なので、a-Force NIIGATAにおもろいメンバーつくらないでね。


今井莉世:私たちのグループが目指すところは、おもしろいではないので安心してください。おもしろい分野は、a-Force OSAKAの担当ですから。


由依:a-Force OSAKAのみんなには、おもしろくても全然構わないけど、大阪に留まって、全国区にならないことを祈るばかり。


佑唯:ところで、今夜は時間あるの? みんなで遊ばない?


杵渕巴亜斗:(わざと)コホン、コホン、…


今井莉世:(マネージャー杵渕をチラッと見やり)今夜はリモートで打ち合わせの予定があって、都合が悪いんです。申し訳ありません。


由依:それは残念。次、会えるのは、ジャケ写の撮影かビデオの収録かな?


今井莉世:そうなると思います。


佑唯:いい加減、ビデオ撮影の場所を教えて欲しいよね? 持って行く物の準備もあるし。


鷲尾美麗:撮影地の希望あるんですか?


佑唯:夏ソングだから、あったかい沖縄とかがいいよね。


今井莉世:去年は沖縄でしたね。


由依:ほんと、沖縄よかった~ 今年も沖縄がいいけど、トップ3のみはちゃん、脱がないよね? 絵になるかな?


河井未翼:私、水着NGです。水着、強要されますか?


今井莉世:強要されたとしても、五十嵐GMが断固拒否するはずだから、安心していいよ。


河井未翼:だったら安心です。


佑唯:出すのは、脱ぎっぷりのいいAfroditiに任せて、うちらは夏っぽいワンピース着て、リゾート満喫みたいなのが楽でいい。(微笑み)


由依:それ賛成!






【 2 】



//

   "VENUS PROJECT" 名義のアルバムは、 "VENUS AWARD" にランクインした24人が参加するアルバム。リリース後には、VENUS PROJECT LIVEが開催される。7月のリリースとライブ開催日まで日数があまりないため、突貫作業の印象は拭えない。レコーディングスケジュールは3日間。予備日が1日設けられていて計4日間。未翼、莉世、美麗のレコーディングスケジュールは前3日間。3日目が予備日となっている。


  楽曲の担当パートを収録、確認してOKならば次に進める地道な作業。未翼、莉世のふたりが参加する楽曲の収録が続けられている。



~レコーディングスタジオ

プロデューサー島村:OK、いいね! 試してみたいんだけど、みはちゃん、りせちゃんの歌にハモれたりする?


河井未翼:ハモりですか? やってみましょうか?


プロデューサー島村:お願い。


河井未翼:分かりました。


プロデューサー島村:まずは、1回練習してみようか?


今井莉世:私は、さっきと同じように歌えばいいんですね?


プロデューサー島村:そうして貰える?



//

  莉世が譜面通りに歌い、未翼が音を重ねる。



~レコーディングスタジオ

プロデューサー島村:みはちゃん、いいね~ ハモり使おう。



//

  すぐに本番に移り、未翼のハモりが収録される。



~レコーディングスタジオ

プロデューサー島村:みはちゃん、OK! ハモり、他の曲でもお願いするかもだから、そのときはよろしく。


河井未翼:承知しました。


今井莉世:みはちゃん、男性っぽい低い声も出せるので、よかった聴いてください。


プロデューサー島村:そうなの? 今のところ、男性風に歌うとどうなるの?



//

  未翼は、低い声で歌ってみせる。



~レコーディングスタジオ

プロデューサー島村:は、は、は、は、はぁ、…(笑) 歌っていて、辛くなったり、苦しくなったりしないの?


河井未翼:低い声でずっと歌い続けられますね。


プロデューサー島村:急に普通の女の子の声に戻したり、低い声から高い声、高い声から低い声にしだいに変えていくことはできるの?


河井未翼:ブレスを挟めば、低い声から高い声、その反対もできます。低い声から高い声へ、その反対もきれいにつなげて歌うことは、今のところできません。たまに練習はしてるんですけども。


プロデューサー島村:そうだとしても、ひとりデュエットはできるね。コーラス部分を被せれば。


河井未翼:ひとりデュエット、おもしろいですね。



//

  プロデューサー島村は、背後にいるディレクター江口と相談。江口が口を開く。



~レコーディングスタジオ

ディレクター江口:河井さんの特徴を生かした楽曲、来年は用意させます。なので、来年もランクインしてください。


河井未翼:嬉しいおことば、ありがとうございます。頑張ります。



//

  1日目のレコーディングは、夕方まで続けられる。未翼、莉世、美麗のそれぞれが順調にスケジュールを消化。1日目を終える。






【 3 】



~控室

  レコーディング1日目を終えた未翼、莉世、美麗の3人が控室に戻ると、a-Force AICHIの樋口ゆりあと関根美愛、a-Force OSAKAの長澤みると長澤めるの4人が待機している。


今井莉世:こんばんは、お疲れさまです。お待たせしました。


鷲尾美麗:こんばんは、お疲れさまです。


河井未翼:こんばんは、お疲れさまです。


樋口ゆりあ:お疲れさま~ みんな順調だった?


今井莉世:1日目はおかげさまで順調でした。


樋口ゆりあ:それはよかった。


関根美愛:お疲れさまです。


長澤みる:みんな、おはよう!


長澤める:こんばんは、なん?(首をひねる)


長澤みる:NIIGATAさんは、業界挨拶せんと普通なん。覚えておき。


長澤める:変わっとるんや。


長澤みる:める、そんなことより、みはちゃんのこと、よく見て研究するんやで。あんたの方が1歳上やけど、これからライバルとしてガチンコ勝負やれるくらいにならんとあかんのやで。今んとこ、2周回遅れくらいやからな。ぬるま湯に浸かってたらあかんで。


河井未翼:私が、めるさんのライバルですか?  "VENUS AWARD" では3位という順位をいただきましたけど、まだ全然実績は残していません。めるさんのようにシングルの表題曲で実績を残されている方とライバルで、しかも私が2周先行しているなんということはありません。


長澤みる:める、いいか? この謙虚さが必要なんやで。関西人やからて、ガツガツいけばいいんとはちゃうで。


長澤める:具体的にどないせえ、いうねん?


長澤みる:基本、王道アイドル路線や。普段は、「私、お笑いなんてできません」と拒否し続けておって、ここぞ! というときに、ぶちかます! これでいこ!


長澤める:ここぞ! というときまで待てんわ。お笑いの血が騒ぐ。(苦笑)


長澤みる:うちのところは、めるがこんなんやから、先行き暗いけど、ゆりあちゃんとこは、ええなぁ、みりあちゃんが育っておって。


樋口ゆりあ:私のところは、みりあにすぐにバトンタッチはできるけど、もっともっと頑張って貰わないと、a-Force NIIGATAさんの勢いは、これからどんどん加速しそうだし、引き離されるばっかりな気がする。


今井莉世:私たち、これまでライブは新潟と隣接県、あと、東京でやっただけで、全国ツアーはまだです。やっと、そのスタートラインに立てたという感覚でしかなくて、勢いが加速するかどうかは、まだ分かりませんけども。


長澤みる:全国ツアーのチケット販売のときに、分かるんちゃうん? どのくらいの箱でやるか知らんけど、ホールやったら、今のNIIGATAさん、落選まつり確定! そのくらい、みはちゃん登場のインパクトはある。


河井未翼: "VENUS AWARD" の結果以外に、目で見てとか、数値とかで実感できるものがあまりなくて、 "VENUS AWARD" の結果は本当なのかな? と思ったりします。


鷲尾美麗:実感できるものあるでしょ? 劇場に来てくれるファン、これまでは毎日のように通ってくれて、出席確認ができるような状態だったのが、今では常連さんが1カ月以上チケット当たらなくて、泣いてる人たくさんいるんだから。


今井莉世:それに、劇場のファンが圧倒的にみはちゃんファン。全員がみはちゃんファンで埋まらないと、満足できないタイプ?(微笑み)


河井未翼:あ、全員が私のファンになるだなんて、そんなことはありえないです。確かに、劇場に来てくださるファンは多くなりました。


樋口ゆりあ:1カ月チケット当たらないとなると、ファンも泣きたくなるね。でも、そんなに申込倍率高いの?


今井莉世: "VENUS AWARD" 明け、GMが登壇して報告会が行われるんですけど、その日の倍率は初めて40倍を超えたと話がありました。その後も劇場公演を観たいという新規のファンも多くて、倍率はあまり下がることなく高いまま推移しているみたいです。


樋口ゆりあ:40倍以上ってことは、キャパ250だから、10,000人以上が申し込んでいるんだ。すごいな。


関根美愛:私、頑張っても頑張ってもゆりあさんに追いつけないのに、ゆりあさんがいなくなったら、AICHIの看板、どうやって背負っていけばいいんですか?


樋口ゆりあ:ほんと、それ! "a-Force PROJECT" の長女としての地位は、今回の "VENES AWARD" でa-Force NIIGATAさんに打ち砕かれ、あとは、プライドが残るくらい? 捨てちゃって、気楽になる?(苦笑)


関根美愛:ゆりあさん、そんな悲しいこといわないでください! ファンが聞いたら、失望しますよ!


樋口ゆりあ:ごめん。失言。口外しないでね。


今井莉世:a-Force AICHIのみなさんには、 "a-Force PROJECT" の最初のグループとして歴史をつくり上げてきたというプライドを常に持っていただいて、姉妹グループと切磋琢磨しながらも、常に先頭を走っていっていただきたいと思っています。


樋口ゆりあ:りせちゃん、お世辞でも嬉しいよ。


今井莉世:お世辞ではないです。(手を横に振って否定)


長澤みる:める、AICHIさんの次期エースのみりあちゃんでもグループに対しての危機感抱いてるんや。あんたも自覚持たなあかんで!


長澤める:はーい。


樋口ゆりあ:a-Force NIIGATAさん、ランクインしなかったけど、みはちゃんの同期はすでにシングルの表題曲でP0務めてるし、今年入団した子たちもかわいい上に、ちゃんと踊れて有能という噂を聞いてるから、みりあひとりじゃなくて、みんなで頑張らないと、マジで何周も周回遅れになる。


関根美愛:それって、もう私の次を考えるってことですか?


樋口ゆりあ:まずは、全員が立ち位置を知って、自覚を持つところから。私がいなくなったら、みりあが先頭で引っ張っていくことを前提に。エースが退団するたびに、グループを引っ張っていくメンバーが決まらずに混乱していたら、ファンの熱も下がっちゃうでしょ? まだエースに上り詰めていないのに、次の後継者の話。理不尽に思うかもしれないけど、メンバーを入れ替えながら存続していくグループの宿命みたいなもの。理解してくれると嬉しいな。


関根美愛:私、ゆりあさんのような絶対的なエースになれますか?


樋口ゆりあ:それは、みりあの努力しだい。


長澤みる:へ~ ゆりあちゃん、ちゃんとグループのことも考えていたんだね?


樋口ゆりあ:みるちゃん、私のこと、バカだと思ってたでしょ?(笑)


長澤みる:うん。てっきり、自分のことしか考えられないタイプだと、…(笑)


樋口ゆりあ:まあいいけど。(苦笑) 私たちのファン、メンバーができることをやらないでおいたり、中途半端なままにしておいたりすると、結構口うるさかったりするのよ。だから、私たちはメンタルも強くないといけない。


長澤みる:ゆりあちゃん、さすが、長女グループのエース。見直したよ。(微笑み)


樋口ゆりあ:ありがと!


長澤みる:める、どうする? うちらももっとグループのこと考えんと、AICHIさんにも周回遅れにされんで。


長澤める:どうするいわれても、める以外にP0務まりそうなんおる?


長澤みる:うちら、圧倒的にコマ不足やわ。もっとかわいくて、アイドル力もあって、歌もダンスもそれなりにできて、笑いも取れる子をいっぱい取らんと、この先、真っ暗やわ。


長澤める:そんな子いるか? だいたい、かわいい子がおらんやろ? 大阪やで?


長澤みる:確かに。神戸のかわいい子にいっぱい来て貰うしかないかな~


今井莉世:京都は対象じゃないんですか? 京都も大都市ですし、きれいどころとして有名ですけど?


長澤みる:京都はあかん! 表ではええ顔してけるけど、基本的に大阪を見下してる!


長澤める:せやせや! 都があったからいうて、自分らが上、大阪を下と見てる。


今井莉世:そうなんですか、…(苦笑)


樋口ゆりあ:京都出身のメンバーいなかったっけ?


長澤みる:前はいたけど、すぐに辞めよった。


樋口ゆりあ:それじゃあ、京都から東は、a-Force AICHIで引き受けます。


長澤みる:あ、滋賀と奈良はこっちや。京都だけいらん。(笑)


樋口ゆりあ:了解。(笑)


関根美愛:そんなこと決めちゃっていいんですか? そんなに権力お持ちだったんですか?


樋口ゆりあ:まさかぁ。冗談よ、冗談。(微笑み)



//

  a-Force AICHIの樋口ゆりあと関根美愛、a-Force OSAKAの長澤みると長澤めるの4人にスタッフから声がかかる。



~控室

長澤みる:お時間? 話足りない。


樋口ゆりあ:次に会えるのは、ジャケット撮影かな? ミュージックビデオ撮影かな? 元気で会いましょうね!



//

  未翼、莉世、美麗の3人は、レコーディングスタジオへと移動していく4人を見送る。



~控室

杵渕巴亜斗:夕食、何が食べたいとか、どこで食べたいとか、リクエストある?


鷲尾美麗:それは、はあとちゃんの奢りですか? それとも、自腹?


杵渕巴亜斗:事務所持ちに決まってるでしょ! だから、気兼ねなくいって。とはいっても、高級すぎたり、ここから遠すぎるのはNG。


今井莉世:中華料理はどうかな?


鷲尾美麗:夏に向けて、体力つけるにはいいかも! みはちゃん、何か食べたいものある? 後輩だからって、遠慮しなくていいよ。


河井未翼:私も中華いいと思います。かしこまって食べるような上品なお料理やお店は苦手で、…


杵渕巴亜斗:それじゃあ、中華に決定! MAPのアプリで、今日の日付、エリア、人数を入力して、…



//

  MAPアプリで抽出された中華料理店をみんなで品定め。おすすめ料理や店の雰囲気などから、行く店が決まる。



~控室

河井未翼:あの、杵渕さん。明日もこのくらいに終わるようでしたら、実家に帰りたいと思うんですが、だめですか?


杵渕巴亜斗:みはちゃん、待って! 質問の回答の前に、私のこと、杵渕さん呼びするの止めない? これから私が同行することも多くなるだろうからさ。6期のみんなみたいに、はあとちゃん呼びにしない? それとも、アラサー女子には、ちゃん付けできない?(微笑み)


河井未翼:年齢は関係ないですけど、スタッフさんとメンバーは違いますし、スタッフさんには細かいことからいろいろお世話になっていますから、一線を画した方がいいと思います。


鷲尾美麗:メンバーとマネージャーは一心同体。礼儀もあるけど、女性マネージャーはみんな若いんだし、…(チラッと杵渕を見る) ちゃん付けでより身近な存在になった方がいいと思うよ。


今井莉世:ちゃん付けされた方が、若くいられるだろうしね!(微笑み)


杵渕巴亜斗:そうそう、気持ちだけは若いつもり。(苦笑)


河井未翼:そうかもしれませんけど、もう1年以上、杵渕さん呼びしているので、それに慣れてしまってます。今からちゃん付けといわれても、…


杵渕巴亜斗:さん呼び禁止、女性マネージャーにも適用して貰えばいいでしょ?


河井未翼:そんな、…(困惑)


杵渕巴亜斗:では、質問の回答。東京に来たついでに実家に帰りたい。今回、マネージャーが私ひとりだけだから、叶えられるように、五十嵐GMに掛け合ってみる。時間をちょうだい。


河井未翼:わがままいってすいません。よろしくお願いします。


鷲尾美麗:(手を挙げて)はい! 私もみはちゃんの実家に同行したいです!


今井莉世:親子水入らずの貴重な時間、どうして邪魔しようとするの?


鷲尾美麗:みはちゃんのお母さまに、みはちゃんを私にくださいとお願いに伺おうと思って。


今井莉世:(呆れ顔で)はあ? 結婚前のカップルのつもり?


杵渕巴亜斗:みれいちゃん、みはちゃんのことになると、思考回路おかしくなるよね?


河井未翼: "VENUS AWARD" 終わってから、ママとは電話しかしていません。ふたりきりで話したいこともあるので、次回以降、機会があればにしてください。


鷲尾美麗:(肩を落とし)残念だけど、次に期待することにする。



//

  未翼は、電話では分からない母親の様子を確認したい。メスを入れる手術ついて話し合いたい気持ちがある。



~控室

鷲尾美麗:ねぇ、はあとちゃん。そろそろ、今日の部屋割り教えてよ~


杵渕巴亜斗:みれいちゃんがひとり部屋、残る3人が3人部屋。


今井莉世:みれい、よかったね、ひとり部屋。(微笑み)


鷲尾美麗:はあとちゃん、本当の部屋割り教えて!


杵渕巴亜斗:みれいちゃん、ひとり部屋は嫌い? それなら、一番忙しいみはちゃんと代わりましょうか。(微笑み)


鷲尾美麗:どうして、そんな意地悪したがるの!


杵渕巴亜斗:はい、はい。それじゃあ、私がひとり部屋使わせて貰っていい?


今井莉世:私がみれいの監視役することにします。


鷲尾美麗:監視役って、別にみはちゃんが嫌がるようなことしないから大丈夫。さらじゃないし!


今井莉世:(疑いの目線で)本当に? 寝静まったときに、狼となって、みはちゃんを襲ったりしない?


河井未翼:みれいちゃん、本当にそんなこと考えてないですよね?


鷲尾美麗:考えていません!


河井未翼:でも、私のママに、私をくださいっていいに行きたいといってました。それは、ああいう意味では?


今井莉世:うん。絶対にああいう意味。(頷く)


鷲尾美麗:それは誤解! 今後のこともあるから、みはちゃんのママにご挨拶したいっていうのをちょっと遊び心でいい変えただけです。


今井莉世:みれい、本当に信用して大丈夫?


鷲尾美麗:みはちゃん、この前、みはちゃん家に泊まったとき、事件的なものは何も起きなかったでしょ? 信用してください。


河井未翼:確かに、あの日は何もなかったです。今夜も失望させないでくださいね。






【 4 】



//

  中華料理店での夕食を終え、未翼、莉世、美麗、マネージャーの杵渕はホテルに入る。チェックインを済ませ、杵渕が先導して、未翼、莉世、美麗が宿泊する部屋に入る。



~ホテル

杵渕巴亜斗:この部屋、スイートルームだ。いい部屋割り当てて貰って、ラッキーだね!


今井莉世:あれっ!? 3人部屋のはずですよね? ベッドがふたつしかないけど?



//

  スイートルームの間取りや設備などを確認する4人。莉世がベッド数が足りないことを指摘する。



~ホテル

河井未翼:こっちにもベッドがふたつあります!


鷲尾美麗:こっち、夜景が楽しめていい! 私とみはちゃんは、こっちで寝るから、りせりせ、奥のベッドルームで寝てね!


今井莉世:だめだめ。みれいを野放しにはしておけません。私とみれいは、奥のベッド。


鷲尾美麗:(不満顔で)さらじゃない!


杵渕巴亜斗:疑いは行動で晴らしましょうね。(微笑み)


河井未翼:ベッドが4つあるのに、予約2部屋したんですか? もったいなくないですか?


杵渕巴亜斗:ね? 私、予約を担当してないから、どういうやり取りがあったか、分かんない。でも、私、まだ仕事残ってるから、ひとりの方が助かるけどね。


今井莉世:はあとちゃん、予定通りにシングルのお部屋使います? ひとりの方が仕事も集中してできるし、晩酌もできるから、気楽でいいですかね?(微笑み)


杵渕巴亜斗:やらないといけない仕事して、あとは寝るだけ。私、仕事でない限り、お酒飲まないから、晩酌はなし。


今井莉世:お酒、基本的に飲まないんですね。


鷲尾美麗:へ~ 勝手なイメージですけど、いっぱいは飲まないけど、毎日飲んでいるイメージでした。


今井莉世:お酒、弱いんですか?


杵渕巴亜斗:うん。すぐ酔っちゃう。


鷲尾美麗:今度、はあとちゃんを酔わせてみたい!(微笑み)


杵渕巴亜斗:お断りします! おしゃべりしてると時間もったいないから、もう行くね。夜ふかししないで、早く寝なさいね。



//

  マネージャーの杵渕は、未翼、莉世、美麗の部屋を出ていく。残った3人は、部屋の間取りや設備などを確認を続ける。



~ホテル

鷲尾美麗:ねえねえ、バスルームがおしゃれだよ!



//

  美麗の声に、未翼、莉世がバスルームを覗きに来る。



~ホテル

今井莉世:スイートルームだけあって、バスルームも高級感ある。ガラス貼りでないのもいいね。ガラス貼りだったら、恥ずかしくて入れないもの。


鷲尾美麗:ステイタスを感じる落ち着いた雰囲気でいいよね。流行りを追った感じでないのもいい。欲をいえば、バスタブが小さいのが残念。みはちゃんの家というか、しいなさんの家は、4人で入れるものね。


今井莉世:ジャグジー付きなんだっけ?


鷲尾美麗:そう。とっても疲れが取れて、癒やされる。みはちゃん、バスタブ小さいけど、一緒に入ろう?


河井未翼:明日、実家に帰ることができるかもしれないので、ママにそのことを連絡しようと思っているので、お先にどうぞ。


今井莉世:みはちゃんのお邪魔しても悪いから、その間に私たちはお風呂に入ってしまいましょう。


鷲尾美麗:それって、りせりせと一緒にお風呂に入るってこと? どうして?


今井莉世:ひとりずつ入ったら、時間がもったいないじゃない? それに、一緒にお風呂に入るの、初めてじゃないから、恥ずかしくないでしょ?


鷲尾美麗:はいはい。りせりせと入ります。(つくり笑顔)



//

  莉世、美麗の入浴中、未翼は母親に電話をかける。



~ホテル

河井未翼:ママ、今、時間ある?


河井未宙:大丈夫よ。今日は、レコーディングで東京にいるんだよね?


河井未翼:そう。


河井未宙:ママに会いたくなった?


河井未翼:明日、レコーディングが順調に終わったら、ママのところに帰っていいかスタッフさんに確認してて、OKが出たら帰れる。明日の夜、時間ある?


河井未宙:明日ね、…


河井未翼:お仕事で都合悪い?


河井未宙:仕事は休職中。


河井未翼:ガンのステージ進んだとか、ガンの影響でお仕事できないほど体調悪いとか?


河井未宙:そうじゃないの。ガンの手術することに決めて、明日から入院するの。夜だと面会時間過ぎてるから、会うのは難しいかな。


河井未翼:(驚いて)手術することに決めたのね!


河井未宙:そうよ。未翼が頑張ってる姿を見せてくれるから、私も頑張って手術をすることに決めたの。


河井未翼:どうしてそんな大事なことを教えてくれないの!


河井未宙:手術が無事に終わって、術後の経過もいいようだったら、未翼に伝えようと思っていたのよ。レコーディング中に会いに来たいといってくるとまでは予想していなかった。


河井未翼:まったく、もう~


河井未宙:今回は無理だから、次の機会、… 7月にある学校の三者面談になるのかな? そのときに、元気になったママの姿を見せられるように頑張るから。


河井未翼:次が三者面談になることは理解したけど、肝心の手術する日はいつなの?


河井未宙:入院して、検査して、その結果を受けて、手術の日を確定だそうよ。だから、近日中としかいえないわね。


河井未翼:手術する日が決まったら、絶対に連絡してね。


河井未宙:ママが手術する日、病院に来るつもり?


河井未翼:たぶん、オフじゃないだろうし、オフだとしても平日は学校がある。遠くから手術が無事に終わることを祈ってます。


河井未宙:芸能人になったんだから、それでいい。手術前に未翼の声を聞くことができて嬉しかった。ありがとう。じゃあ、切るわね。


河井未翼:えっ? もう切っちゃうの?


河井未宙:ひとり部屋?


河井未翼:3人部屋。


河井未宙:その中にママがガンだってこと知ってるメンバーか、スタッフさんはいる?


河井未翼:いない。


河井未宙:お風呂に入っている時間を利用して、ママに電話をかけてきたんでしょ? だったら、早く電話を切った方が安心よね?


河井未翼:そうだけど、もしも、この電話が最後になっちゃう可能性だって、絶対にないとはいいきれないでしょ?


河井未宙:手術することに決めたんだから、あとはドクターに任せるしかないでしょ。もしものときのため、スマートフォンに音声で未翼への遺言残しておこうか?


河井未翼:遺言なんていわないで! 悲しくなっちゃう。


河井未宙:じゃあ、止めておく。


河井未翼:あ、… やっぱり、遺言じゃなくていいから、私に音声メッセージ残しておいて。


河井未宙:はいはい。残しておいてあげる。じゃあね。おやすみなさい。


河井未翼:おやすみなさい。手術決断してくれてありがとう。



//

  母親との電話を終え、キャリーケースを整理していた未翼。入浴を終えた美麗がやってくる。

キャリー

キャリー



~ホテル

鷲尾美麗:みはちゃん、お風呂空いたから入って。


河井未翼:ありがとうございます。


鷲尾美麗:ところで、お母さまとは連絡取れた?


河井未翼:はい。でも、仕事で遅くなるから、会うのは次の機会にといわれてしまいました。7月の学校の三者面談までお預けです。


鷲尾美麗:7月の学校の三者面談、事務所の三者面談と同じ日にするんだよね?


河井未翼:はい。県外出身で学校の三者面談があるメンバーは、事務所の三者面談とスケジュール調整していただくことになってます。


鷲尾美麗:事務所の三者面談のときに、お母さまにご挨拶させてね?


河井未翼:本当に、私をくださいっていうつもりなんですか?(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃんがOKしてくれたら、いっちゃうけど、いい?(微笑み)


河井未翼:だめです!(両手で☓をつくる)


鷲尾美麗:だよね~(微笑み) コンビのご挨拶をさせていただきます。


河井未翼:それだけならOKです。コンビのご挨拶でしたら、私もみれいちゃんのお母さんにご挨拶しないと。


鷲尾美麗:そうね。それはそのうち、… ところで、明日、実家に帰れなくなったことは、はあとちゃんに連絡した?


河井未翼:はい。電話を終えたあと、すぐに。


鷲尾美麗:じゃあ、お風呂に入っておいで。



//

  入浴後の3人は、U-chライブストリーミング、U-timeの更新、ファンmailの送信、マッサージやストレッチなど、それぞれが自分の時間を過ごす。



~ホテル

今井莉世:みれい、ちょっと来てくれる?



//

  莉世に呼ばれた美麗は、莉世がいるベッドルームへ移動。ベッドに腰掛けるよう促される。



~ホテル

鷲尾美麗:急に何?


今井莉世:ベッドの上で体育座りしてくれる?


鷲尾美麗:えっ!? いいけど、マッサージでもしてくれるの?


今井莉世:そんな気の利いたことじゃない。



//

  莉世は、薄くて小さな板状のものとテーピングテープを取り出す。そして、板状のものを美麗のふくらはぎに押し付け、その上からテーピングテープで固定しようとする。



~ホテル

鷲尾美麗:りせりせ、ちょっと待って! 何よ、それ?


今井莉世:(いったん手を止め)忘れ物防止タグ。これを取り付けて、私のスマートフォンから一定の距離離れると、スマートフォンが警告音で知らせてくれるの。(再び、テーピングテープで固定し始める)


鷲尾美麗:私が忘れ物? というか、犯罪者扱いのようなものだよね?(憤慨する)


今井莉世:みはちゃんを狙う犯罪予備軍。(微笑み)


鷲尾美麗:あのね、…(呆れる)


今井莉世:(忘れ物防止タグを固定し終え)はい、完成! これでみはちゃんも少し安心。


鷲尾美麗:こんなの、剥がしたら意味なくなるでしょ?


今井莉世:テーピングテープ、超強力粘着タイプだから、剥がすときに声が出るくらい痛いからね。(微笑み)


鷲尾美麗:りせりせ、これから悪魔って呼ぶことにしようか?


今井莉世:ご自由に。(微笑み) それじゃあ、1回テストしてみようか? ベッドから少し離れて貰える?


鷲尾美麗:いいけど、どのくらい?



//

  美麗は、少しずつ莉世から離れる。3mほど離れたとき、莉世のスマートフォンが「ブ・ブブー ブ・ブブー」と警告音を発する。



~ホテル

今井莉世:テストOK。リードでつないでおくより、現代的でいいでしょ?(微笑み)


鷲尾美麗:私は犬か、…


河井未翼:(警告音を聞いてやってくる)今の音、何ですか?


今井莉世:寝静まったときに、みれいがみはちゃんを襲わないように、私と距離が離れたら警告音が鳴る忘れ物防止タグをみれいの足につけたの。だから、安心して寝て大丈夫だからね。(微笑み)


鷲尾美麗:長年付き合ってるのに、こんなことするんだよ。りせりせって、悪魔だと思わない?


河井未翼:メンバー思いの優しい先輩、リーダーだと思います。(微笑み)



//

  未翼は、安心して就寝する。






【 5 】


  未翼、莉世、美麗のレコーディング2日目。午後からのスケジュールを順調に消化。すべての作業を終え、控室に戻っている。短い休憩のあと、帰り支度をしている。



~控室

杵渕巴亜斗:今日の夕食、どうする? みはちゃんの実家に帰る予定なくなったから、全員で食べに行ける。リクエストある?


鷲尾美麗:昨日が中華だったので、もんじゃ焼きとかどうですか?


今井莉世:鉄板を囲んで、わいわい喋りながら食べられるから、いいかもね。


鷲尾美麗:みはちゃん、もんじゃ焼きはよく食べてたりしてた?


河井未翼:いいえ。家の近くにお店がなかったので、数えられるくらいしか食べたことないです。


今井莉世:小さいころって、そんなに行動範囲広くないし、近くにないと、そうなっちゃうよね。


杵渕巴亜斗:みはちゃん、もんじゃ焼きでいい?


河井未翼:はい。いいです。


杵渕巴亜斗:それじゃあ、もんじゃ焼きに決定! MAPのアプリで、今日の日付、エリア、人数を入力して、…



//

  MAPアプリで抽出されたもんじゃ焼き店をみんなで品定め。もんじゃ焼き以外の料理や店の雰囲気などから、行く店が決まる。



~控室

杵渕巴亜斗:予約完了! 明日は帰るだけになったから、たくさん食べていいからね。リーズナブルなものばっかりだし。(微笑み)



//

  未翼らが夕食の話をしているところに、次にレコーディングに臨むAfroditiの3人がやって来る。



~控室

みやび:おはよう! みんな楽しそうだね?


あんり:おはよう! レコーディング終わったんだ?


今井莉世:こんばんは、お疲れさまです。私たちのレコーディングはすべて終わりました。


鷲尾美麗:こんばんは、お疲れさまです。


河井未翼:こんばんは、お疲れさまです。


はるか:ま、時間ないから、さっさと終わらせたいんだろうけど、スケジュール通りに終わらせたのは有能!(微笑み)


みやび:ねぇ、みんなで何の話で盛り上がってたの?


今井莉世:これからもんじゃ焼きを食べに行くことになって、その話で。


みやび:もんじゃ焼き、いいな~ お腹ペコペコだから、私もついて行きたい。(笑)


鷲尾美麗:みなさんのために、お弁当が用意されていますよ。(指差す)


あんり:今日、弁当ばっかり、…(苦笑)


みやび:あったかいお料理食べたーい!(笑)


杵渕巴亜斗:すみません。もんじゃ焼きのお店を予約してますので、ここで失礼させていただきます。


みやび:もう帰っちゃうの?


今井莉世:すみません。次は、ミュージックビデオ撮影になるんですかね。そのときにお時間があれば、ゆっくりお話させてください。



//

  未翼、莉世、美麗、マネージャーの杵渕は、荷物を手に控室を出ていく。



~控室

あんり:スケジュールに余裕があるみたいで、羨ましい。(苦笑)


はるか:彼女たち、今のところは、地方アイドルのレベルでしかないからね。時間的な余裕はあるでしょ?


あんり:まだ私たちのライバルではないといいたいの? みはちゃん、みれいちゃんは、実績なしといっていいレベルで "VENUS AWARD" にランクインしてきたのよ。侮っていたら、すぐに抜かれるよ。


みやび:みはちゃん、本当にかわいい。ぎゅっとしたくなる。(微笑み)


はるか:私たちの地位を脅かそうとするのは、すべてがライバル。侮っているつもりはない。だから、来年の "VENUS AWARD" のために3人で頑張っていくことにしたんでしょ。それより、みやび! 敵に塩を送るようなことしないでね!


みやび:(不満顔で)敵に塩を送るってどういうこと? みはちゃんを見つけてくれたファンに、本当にありがとうっていいたいくらいなんだけど。


はるか:だから、そういうことを私たちのファンの前で絶対にいわないこと! ファンが彼女たちに流れたら、1・2・3フィニッシュできなくなるでしょ? そのくらいのこと、ちゃんと考えてね!


みやび:(渋々)は~い。


はるか:そうだ。思い出した。あんり、私とあなた、そして、あの子の3人の楽曲あるじゃない? ソロダンスパートつくって貰って、めちゃくちゃ難しいダンスをコレオグラファーにお願いしておいたから、覚悟しておいてね。


あんり:あの子って、みはちゃんのことだよね?


はるか:そう。その子。


あんり:名前で呼んであげないの?(苦笑)


はるか:あの子でも、その子でも、みはちゃんでも、どれでもいいじゃない。呼び方なんて、…


あんり:それで、どうして難しいダンスソロをお願いしたりするの? みはちゃんのことを意地悪して潰す気?


みやび:潰すって、お願いだから、止めてあげて!


はるか:私とあんり、あの子の楽曲だから、みやびは部外者。黙ってなさい!


みやび:みはちゃん、かわいそう、…


はるか:(人差し指を立てて唇に当て)しっ!!


あんり:私もかわいそうだと思う。みはちゃんがどのくらいのダンススキルがあるか分からないけど、初参加のライブに向けて私たちよりたくさん覚えなきゃいけないのに、めちゃくちゃ難しいダンスをさせるなんて、はるかがV3の最大のライバルとなりそうなみはちゃんを潰そうと思われたら、逆効果だよ。


はるか:あの子がダンススキルなくて、踊れないと決まった訳じゃない。踊ることができたら、まだ経験浅いのに、ダンスが本当に上手なんですと褒めてあげればいい。踊ることができなかったら、経験浅いので、長い目で暖かく見守ってあげてくださいといえばいいだけのことでしょ? 問題になることじゃない。心配しすぎよ。


あんり:はるかがどう思って、どう発言するかじゃなくて、私たちのファンやみはちゃんのファン、 "VENUS AWARD" に関わる支援してくれるアーティストのファンや周囲の人たちがどう感じるか。トップであり続けたいあなたのプライドがそうさせたのかもしれないけど、考え直して。


はるか:あんり、考えすぎよ。心配いらないから。逆に、やっぱり簡単な振り付けにしてくださいなんて、コレオグラファーにいってみなさい。コレオグラファーが不審がるでしょ? コレオグラファーにはやる気をみせておけば大丈夫よ。


あんり:(神妙な面持ちで)ねぇ、はるか。


はるか:急に真剣な顔して、何?


あんり:はるかのこと、昔から知っているし、一緒にやってきた仲間だし、親友だとも思ってる。


はるか:私もあんり、みやびのこと、そう思ってるよ。


あんり:だったら、ひとついわせて。はるか、たまに自分を中心に世界が回っていると思っているような姿勢を感じることがある。口に出して、相手も見下したりするようなことはないけど、はるかの視線がそれを物語っていたり、行動で感じる。だから、ときどきでいいから、一歩引いて自分のことを見てみて。プライドのせいで自分に潰される。そんな姿を見たくないから、お願い。


はるか:あんり、心配性なんだから。でも、気遣ってくれて嬉しい。ありがとう。


みやび:ねぇ、真面目な話すると、お腹空かない? お弁当食べようよ~(微笑み)


あんり:みやび、あなたは真面目な話してないでしょ? お腹空いたとみはちゃんがかわいいしかいってない。(笑)


はるか:本当、それ!(笑)






【 6 】



//

  GMの五十嵐は、楽屋にメンバー、マネージャー陣を集めている。メイクアップアーティストも何が始まるのかと、ドレッシングルームから顔を覗かせている。



~楽屋

五十嵐あゆ:みんなから提案されていた件で進展があったので、みんなに報告します。まずひとつ目、a-Force NIIGATAのアーティストブック、初刊行決定しました。



//

  メンバーから「やったー」の声が上がる。



~楽屋

五十嵐あゆ:このアーティストブック、タイトルは「メンバー責任編集 a-Force NIIGATA 10th」 発売は7月30日。タイトルにある "10th" は、a-Force PROJECT 10期という意味です。出版社への提案では、メンバー企画・責任監修としていたけれど、メンバー責任編集を謳うことにしたので、すべて自分たちでやる覚悟でお願いね。メンバー同士でインタビューとか、フォトセッションとか、詰めないといけない部分ありそうだから、アーティストブックの担当者を指名します。責任を持って、原稿をつくるなどしてください。では、指名します。まどか、聖空、紗羅、零、碧唯。以上。月は、直接関与しなくていいけど、進み具合とか見てあげて。


長谷川月:承知しました。


五十嵐あゆ:莉世、美麗、未翼の3人は "VENUS PROJECT" があるので、編集には関与不要。りりあは、地元での出張公演があるので免除。美咲、遥香は、同じようなことをやるかもしれないから、どんなことをやっているのか、参考程度に見ておくように。


小平美咲:承知しました。


長尾遥香:はぁい。


五十嵐あゆ:次、りりあから提案のあった、個別イベントの開催の件。莉世、美麗、未翼の3人が "VENUS PROJECT" 参加のため、それが終わるまでは、公演ができない日が出てきます。そこで、公演できない日を穴埋めするべく、みんなに個別イベントを開催して貰いたいと思います。



//

  五十嵐GMから個別イベントの概要が告げられる。


   "VENUS PROJECT" ライブに参加する莉世、美麗、未翼を除き、同ライブ終了までの期間、ひとり最低1回個別イベントに参加


  イベント会場 L-Platz NIIGATA Hall C


  イベント開催日 スケジュール決定次第抽選にて決定


  イベント時間 60分~90分程度


  チケット料金 有料であれば設定自由


  内容 法的に問題なければ自由※スタッフが協力できる範囲、時間に収めること


  資金援助 ひとり1回のみ一律20,000円


  ライブ配信 U-chエンタメビジョンの有料の月額スタンダード会員向け、a-Force NIIGATAプレミアム会員向け、いずれもライブ配信なし


  ※イベント成果は、各メンバーの成果に反映。複数メンバー参加の場合、ひとり当たりに換算



~楽屋

石黒りりあ:チケット料金10,000円に設定して、250人満席にできたら、250万円が成果になるということですね?


五十嵐あゆ:そういうことね。


長谷川月:料金設定自由とはいっても、開催日が平日のメンバーが不利で、土日に開催できるメンバーが有利になってしまいますよね? その開催日、抽選というのが、…


五十嵐あゆ:平日でもお金を払っても観に行きたいと思うようなイベントを考えるといいんじゃない? 料金設定しだいかもしれないけど。


押切まどか:法的に問題なければ自由ってことは、水着撮影会しちゃってもいいってことですね!



//

  メンバーから「おっー」「あ~」の入り混じった声が上がる。



~楽屋

五十嵐あゆ:待って! それはまずい。非常にまずい。衣装以上の露出を禁止。これ、追加ね!


押切まどか:え~っ、自由じゃないじゃないですか~(不満たらたら)


鷲尾美麗:みはちゃん、もしもだけど、写真撮影会することができたら、100,000円出しても250人満席になりそうだよね?


河井未翼:私に100,000円も出す人いませんよ~


鷲尾美麗:いるいる。この前のロリィタ着て、絶対領域見せたら、1,000,000円でも絶対に集まるよ。(微笑み)


稲田零:同意します。(頷く)


押切まどか:その写真撮影会、メンバー特権で参加していいですか? もちろん、ファン側で。(笑)


五十嵐あゆ:まどか、冗談はそこまで。


小平美咲:ロリィタのお洋服着て、写真撮影会はだめですか?


五十嵐あゆ:未翼、このイベントの対象外だから、そういったまで。美咲がするのは大丈夫よ。


小平美咲:よかった~ ロリィタのお洋服着て、写真撮影会することにします。


五十嵐あゆ:ステージ上ですることになると思うけど、何人ずつ登壇させるとか、どの距離から撮影させるとか、撮影が終わったらファンはどうするとか、ちゃんとスタッフと調整してね。


小平美咲:承知しました。


長尾遥香:みさきちゃん、はるかも加えて貰えないかなぁ? ふたりでやったら、ひとりずつ別々にやるより集まってくれそうな気がしない?


小平美咲:そうかも。いっぱい来て貰えるように頑張ろう!


長尾遥香:うん!(微笑み)


五十嵐あゆ:美咲と遥香のイベント内容が決まったところで、この話はここまで。続いて、未翼が提案した件について。



//

  未翼は、自分が提案した件といわれ、五十嵐GMに何か提案したことがあったか思いを巡らす。



~楽屋

五十嵐あゆ:4月の "VENUS AWARD" 開催期間中から、劇場公演を生で観てみたいという新規のファンが殺到。嬉しいことに申込倍率が高止まりしています。結果、ファンからは「全然当選しません」「1カ月以上当たっていません」「いつになったら当たりますか」といった意見が多数寄せられています。そこで、未翼が取材を受けたときの提案を採用することにしました。



//

  未翼は、取材のときを思い出す。ファンが劇場に少しでも足を運びやすくなることを期待して耳を傾ける。



~楽屋

五十嵐あゆ:申込をしてくれているファンの推し設定から、そのほとんどが未翼を劇場で観たいと考えていると推測されます。そこで、未翼の出演が予定される土日祝の公演で、かつ、ほかのアーティストのライブスケジュールが入っていない場合、キャパシティーが倍となるHall Bを会場として公演を行うこととします。


武内紗羅:みはちゃん、すごい!  "VENUS AWARD" 3位さまが提案すると、いとも簡単に提案が通るんだね?


五十嵐あゆ:未翼と考えている方向性が一緒だったということで、いとも簡単にということではありません。


今井莉世:Hall Bでの公演、初回はいつになりそうですか?


五十嵐あゆ: "VENUS PROJECT" ライブが終わって、7月後半にスケジュール調整がつけば1回はやりたい。姉妹グループ劇場での出張公演やフェスへの参加がそのあと続くから、土日にHall Bで公演がしばらくできない期間が出ます。そこで、前言を覆すみたいになってしまうけれど、夏休み期間中、試験的に平日もHall Bが空いていれば、公演をやりたいと思います。


長谷川月:申込倍率が高止まりしているって話ですけど、夏休み期間中まで持続しますか? 持続してくれたら、私の誕生日もあるので嬉しいんですけど。


五十嵐あゆ:それについては、まったく心配していません。


今井莉世: "VENUS PROJECT" 、私たちのアーティストブック発売、イベントやフェスへの参加、そして、秋シングルのリリース。話題はつきないですね。


長谷川月:りせちゃんも心配してない?


今井莉世:心配してない。それに、みはちゃんとみれい、裏で何か話が進んでいるみたいだし、…(微笑み)


長谷川月:それ、お仕事ってことだよね?(美麗を見る)


鷲尾美麗:現時点で教えてあげられることはないから、忘れて貰って大丈夫。


長谷川月:そうなの、みはちゃん?(未翼を見る)


河井未翼:みれいちゃんがそういうなら、そうなんだと思います。


武内紗羅:(美麗を睨んで)みはちゃんと一緒にお仕事なんて、絶対に許さない!


鷲尾美麗:さらの記憶からみはちゃんを消してあげたい。そうすれば、いちいち怒らなくて済むのにね。(微笑み)


武内紗羅:さらは、みれいちゃんをこの世から抹殺したい!


五十嵐あゆ:そこ、ケンカしないの!


長谷川月:五十嵐GM、みはちゃんとみれいちゃんでするお仕事が何か決まっているんですか?


五十嵐あゆ:そんなに気にすることでもないわよ。未翼と美麗に順番が来たというだけで、そのうち、月やみんなにだって順番は巡ってくるだろうから、羨ましいと思うだけじゃなくて、応援してあげて。


長谷川月:はい。そうします。


五十嵐あゆ:Hall Bの話はここまで。次からは、フロントからのお知らせ。秋シングルの件、リリースは8月最終週の予定。ポジションのセレクションは、出張公演後、6月最終週から順次行います。楽曲データは、このあとに渡します。そして、秋シングルを引っ提げて、秋ツアーを実施します。



//

  メンバーから「やったー」の声が上がり、拍手が起きる。



~楽屋

五十嵐あゆ:今回、新潟県内3カ所、新潟市、長岡市、上越市。そして、隣接県5カ所、山形市、会津若松市、前橋市、長野市、富山市。そして、東京都内。ここまでは、これまでやってきたけど、この秋は加えて、名古屋市、大阪市、岡山市でもコンサートします。これでやっと、全国ツアーしますっていえる規模になります。このツアーを成功させて、来年はもっと多くの都市で開催できるように、大きな会場でできるように頑張っていきましょう!



//

  メンバーの「はい」という声が揃う。



~楽屋

五十嵐あゆ:もうひとつ、定例のGM会議で決まったことを伝えます。 "VENUS AWARD" の結果を受け、 "U-ch" のエンタメビジョン、スタンダード会員がライブ試聴できる劇場公演をこれまでの毎週木曜日から7月よりもっとも視聴者数が望める毎週金曜日に変更します。最後、ルールの件で、マネージャー陣からお願いがあるそうなので、聞いてあげて。


杵渕巴亜斗:簡潔にいいますね。私たちもニックネーム呼び、ちゃん付けしてくださいというお願いです。男性マネージャーは名字+さん付けがいいそうなので、これまで通りにお願いします。


樋口美彩:「みさちゃん」「みさみさ」のどちらかでお願いします。


浅倉七瀬:「ななちゃん」「ななせ」のどちらかでお願いします。


杵渕巴亜斗:最後に私。「はあとちゃん」って呼んでください。



//

  すでにちゃん付けしているオープニングメンバーの6期生にとっては、関係ない案件。しかし、追加オーディションで入団した8期生の紗羅以降のメンバーにとっては、突然の呼び方変更。杵渕から直接いわれている未翼を除いては、戸惑いの表情が広がる。



~楽屋

武内紗羅:ルールってことは、強制ってことですよね? ルール守らなかったら、罰則ありの。


杵渕巴亜斗:罰則付きです。イエローカードやレッドカードを貰わないでくださいね。(微笑み)


武内紗羅:(困惑の表情で)2年もさん付けで呼んできたのに、いきなりですか?


押切まどか:キラキラネームのはあとちゃんが、いい出しっぺなんでしょ? 「はあとちゃん」って呼ばれてることを他人に聞かせて、反応を楽しみたいっていう魂胆が見え見え。(微笑み)



//

  すでにそのことを知っている6期生からクスクスと笑いがこぼれる。



~楽屋

稲田零:いきなり変更といわれても無理です。せめて猶予期間が欲しいです。


武内紗羅:メンバー間じゃないので、罰則ありのルールじゃなくて、罰則なしの申し合わせ事項でよくないですか?


高橋碧唯:さらちゃんに賛成します。


稲田零:前言撤回して、私もさらちゃんに賛成します。


樋口美彩:あれ? 不評? みさみさって呼んで欲しいな~


小平美咲:私、どっちでもいいです。変えるとしたら、早い方が助かります。


杵渕巴亜斗:みさきちゃんが反対しないってことは、過半数超えない訳だから、私たちへのさん付けは禁止ということに決定ということでいいですね。(微笑み)


武内紗羅:横暴すぎる、… みはちゃんも見てるだけじゃなくて、何かいってよ~


河井未翼:私、月曜日に直接さん付け止めてといわれてるので、… まさか、こんなに早く実行に移されるとはおなっていませんでしたけども。


稲田零:反対じゃないの?


河井未翼:月曜日、私も困惑しけど、りせちゃんがちゃん付けの方が、マネージャーさんも若くいられるだろうからみたいなこと話していて、そういうものなのかなと思って、納得させることにした感じ。


杵渕巴亜斗:不本意かもしれないけど、みはちゃんもこういってくれてるし、ルール化ということに。でも、いきなりで横暴すぎるということなら、れいちゃんが撤回した意見を取り入れて、今月6月は移行期間、7月から完全移行ということでお願いします。


樋口美彩:呼びにくいから、恥ずかしいからといって、マネージャーさん呼びとか、指定の呼び方でないKマネージャーとか、Hマネージャーとか、Aマネージャーとか、ステージ上のMCでない限り禁止よ。


星聖空:少し歩み寄ってくれたように見せて、実は外濠を完全に埋める見事な連携プレイ。(苦笑)


今井莉世:はあとちゃんたちがこのままずっといてくれて、30過ぎてもちゃん付け希望するのか分からないけど、仲よくやっていきましょう。


五十嵐あゆ:マネージャーの呼び方、変更するということでいいわね。アーティストブック、個別イベント、Hall Bで公演を実施、 "U-ch" のライブ配信日変更の件、発表するのは、週末、明後日夜の碧唯の生誕祭、自己紹介始めに莉世から報告して貰います。それまでは、口外禁止。シングル、ツアーの件もまだ口外しないこと。あと、気になっているメンバーもいるかもしれないけど、8月予定のユニットシャッフル。まだピースが埋まらないから、時間をちょうだい。私からは以上。質問ある?


長谷川月:イベントでファンの方につくったお料理を提供するのはOKですか?


五十嵐あゆ:火を使わなければ、つくることは問題ないと思うけど、提供するのは問題あるんじゃないかな。スタッフに確認させます。ほかには?


星聖空:イベントの来場者全員に直筆メッセージカードをプレゼントするとか、抽選で私物をプレゼントすると行ったことをしてもいいですか?


五十嵐あゆ:プレゼント企画はいいと思うけど、そのままネットオークションやフリーマーケットに出されてしまうことも考えてくれると嬉しい。ほかには?


稲田零:コンサートのことですけど、披露したい楽曲ややりたい企画を提案したら、採用してくださいますか?


五十嵐あゆ:みんなの提案、意見、要望をどれくらい取り入れられるか約束はできないけど、検討しやすいように早めにお願い。ほかには?


星聖空:たびたびですみません。話になかった富山、長野以外の出張公演の件ですが、ツアーと重なってやらないということはありますか?


五十嵐あゆ:日程や開催都市も調整中だけど、必ず出張公演します。


武内紗羅:コンサートつながりで、さらの地元の埼玉、あおいちゃんの地元の宮城でもコンサートできませんか?


五十嵐あゆ:そうね。今年の全国ツアーが成功したら、来年の全国ツアーで実現させたいと思います。


武内紗羅:やった! 本場の牛たん食べれる!


長谷川月:(呆れ顔で)故郷に錦を飾るじゃなくて、そっち?



//

  メンバー、スタッフから笑いがこぼれる。



~楽屋

高橋碧唯:おいしいものが食べたいなら、宮城より北海道では? おいしいものの宝庫。


長谷川月:あおいちゃんまで、そっち?


押切まどか:来年の全国ツアー、夏からスタートにして、沖縄に行きません?


鷲尾美麗:沖縄の海で泳ぎたいとか、バカンスしたいっていうんでしょ?


押切まどか:みれいちゃん、正解!(笑)


五十嵐あゆ:はいはい、止め止め。要望は聞きますけど、全部が採用されるとは決して思わないでね。では、質問の受付はここまで。まだ何かあったら、スタッフに確認して。



//

  五十嵐GMは、楽屋をあとにする。メンバーは、マネージャーの指示を受け、秋シングルの楽曲データを自分のタブレットにダウンロードする。



~楽屋

長尾遥香:みはちゃん、ポジションのセレクションって、どんなことするんですかぁ?


河井未翼:はるちゃん、みさきちゃん、今回が初めてシングルに参加だものね。簡単にいうと、用意された楽曲に対して、私はこう感じますと述べて、その思いを込めて歌とダンスを披露。それを審査して貰う。


小平美咲:歌詞の解釈、歌の披露、ダンスの披露。この3つをするんですね。


河井未翼:歌もダンスも貰った楽曲データに入っているけど、それはあくまでも参考。何も味のついていないお料理に、味付けをしてあげる。そんな感覚でセレクションに臨めばいいと思う。


長尾遥香:るなちゃんは、いろんな味付け方法知ってそうですぅ。(微笑み)


小平美咲:それ、リアルのお料理でしょ。それとこれは別。(微笑み)


長尾遥香:誰が審査するんですかぁ?


河井未翼:必ず対面となるのは、五十嵐GM、諸橋チーフマネージャー。都合がつけば、コレオグラファーも対面。あとは、ビデオ審査でリリシスト(作詞家)、コンポーザー(作曲家)、楽曲によってアレンジャー(編曲家)。全部で5人、ないし、6人。


小平美咲:セレクションは、このパフォーマンス審査の4分3、人気の指標? の4分1を合算して、ポジションを決定するんですよね?


長尾遥香:みはちゃん、 "VENUS AWARD" で3位になったから、人気は満点。とても有利ですね。


小平美咲:P0を狙ってるんですよね?


河井未翼:私を推してくれるファンのみなさんは、私にP0に立たせるために頑張ってくださったので、シングルの表題曲でP0に必ず立たなければならないと思ってる。期待を裏切りたくないからね。


小平美咲:(両手の拳をグーにして)頑張ってください!


河井未翼:みさきちゃんも頑張らないとだよ。まずは、フロントメンバー目指そうね。


長尾遥香:フロントメンバーって、5人?


河井未翼:5人の場合が多いみたい。


小平美咲:(指折り数えながら)みはちゃん、れいちゃん、りせちゃん、るなちゃん、今回はみれいちゃん? 5人埋まっちゃいますけど?


河井未翼:楽曲によって、ハマるメンバーもいれば、ハマらないメンバーもいる。だから、諦めちゃいけないし、油断しちゃいけない。いい?


小平美咲:私も頑張ります!


河井未翼:はるちゃんもね。


長尾遥香:もちろんですぅ!






【 7 】



//

  椎名は、自家用車で未翼を高校まで送っている。助手席の未翼は、ずっとスマートフォンを見つめている。



~川原の自動車

川原椎名:起きてからずっと着信を待っているようだけど、お母さんが連絡くれることになっているの?


河井未翼:私がママからの連絡を待っていること、どうして分かるんですか?


川原椎名:お仕事だったら、みはちゃんから直接電話しているだろうし、メンバーだったら、とりあえずメッセンジャーで用は足りるだろうし、夕方に会って伝えることもできる。そう考えると、お母さんからの連絡を待っているというのが確率高いと思ってね。でも、連絡が来るのか来ないのか、分からない感じでずっと待っていることからすると、お母さんが連絡の取りにくい場所にいる? 病院に入院しているとか?


河井未翼:しいなさん、お見通しなんですね。実は、レコーディングで東京に行ったときに、ママに電話したら、検査入院して、ガンの手術をすることにしたといわれました。昨夜、メッセンジャーに今日の午後に手術すると連絡があって、声を聞きたくて電話したんですけど、電源が切られているみたいで繋がらなくて。私から連絡ちょうだいとメッセージを何度も送っているんですけど、既読にならなくて、…


川原椎名:心配だろうけど、手術が無事に成功することを祈って待つしかないよ。


河井未翼:分かって入るんです。でも、ママはたったひとりの家族なので、万が一のことがあったらと思うと、落ちいていられなくて。


川原椎名:今日のみはちゃん、集中力なさそうだから、いろいろ気をつけて、ぶつかったり、転んだり、ミスしたりしないように過ごすんだよ。


河井未翼:そうします。



//

  お昼休憩。購買に買い出しに行っている碧唯を待つ間、未翼は母親から届いたメッセージを確認する。


  昨夜から何回同じようなメッセージ送れば気が済むの www

遠くから手術が無事に終わることを祈ってるんじゃなかったの www


  手術が無事に終わって、麻酔が切れた今夜にまた連絡する

ママのことはいったん忘れて、公演は集中して頑張りなさい!


  母親から届いたふたつのメッセージに目を通した未翼。


  ママ、頑張ってね!


  未翼は、短く答える。



~教室

高橋碧唯:今、誰かにメッセージ送ってたでしょ? 校内からメッセージ送るなんて、珍しいじゃない? お仕事?


河井未翼:そう。お仕事の件の確認。


高橋碧唯:それはウソ! 午前の授業と授業の間の休憩時間、チラッチラッ、チラッチラッとスマートフォンで着信確認してたじゃない? お仕事で急ぎだったら、電話すると思うんだけど。誰に連絡したの? まさか、まさかの禁止対象のお相手じゃないよね?


河井未翼:ママからのメッセージに返信してたの。


高橋碧唯:いいのよ、私にだけ本当のことをいっても。(微笑み)


河井未翼:(スマートフォンの通知履歴を見せ)本当です~


高橋碧唯:でもさ、お母さんとそんなに急ぎの用って何?


河井未翼:ただの生存確認。昨日の夜に私が送ったメッセージに、朝になっても既読にならなかったから、心配していただけ。


高橋碧唯:今でもお母さんとこまめに連絡取り合ってるんだ。すごいね。


河井未翼:毎日ってこともないけど。ママは、私のU-timeやファンMailで私の生存確認できるし、動いている姿を見たかったら、U-chチェックすればいいからね。


高橋碧唯:ところでさ、新しいみはの家、いつ泊まりに行ったらいい? 先週のみさきちゃんみたいに、生誕祭を終わって押しかけるのはまずいよね。その前の週、みれいちゃんがお泊りしてるし、3週連続となると、おじさんに迷惑かかる。


河井未翼:寮で生誕祭2次会はしないの? そしたら、私が泊まりに行けばいい。


高橋碧唯:私が新しいみはの家に泊まりに行くことに意味があるのであって、私のところに泊まっても意味はない。


河井未翼:そんなに泊まりに来たい?


高橋碧唯:もちろん。豪邸暮らしを体験してみたい。(微笑み)


河井未翼:マンションとしては広いお部屋だけど、豪邸というほどゴージャスではないよ。


高橋碧唯:そうなの?


河井未翼:うん。


高橋碧唯:来週末は?


河井未翼:ミュージックビデオ撮影で金曜日まで沖縄に行ってる。土曜日に帰ってきて、日曜日は公演。


高橋碧唯:ハードなスケジュールだこと。その次の週は、出張公演でこっちにいない。その次の週は、はるちゃん生誕祭。はるちゃん、泊まりに行くの?


河井未翼:はるちゃんには、 "VENUS PROJECT" の準備でだめかもとは伝えてある。


高橋碧唯:7月、 "VENUS PROJECT" ライブが終わるまでは確実にだめ。後半から8月はイベント出演とか入るだろうし、姉妹グループ間の出張公演もある。当面、泊まりに行くのは無理そうだね。


河井未翼:夏休み期間に入れば、週末とかにこだわる必要ないから、平日でもいいんじゃない?


高橋碧唯:あ、そうだね~ でも、平日だとおじさんが嫌がったりしない?


河井未翼:大丈夫じゃないかな。毎朝起こして貰ってるし、ご飯もお弁当もつくってくれてるから。


高橋碧唯:完全に主夫。いっぱいいっぱい恩返ししないとだめだよ。


河井未翼:私の夢を叶えてあげたいといってくれているから、一番の恩返しは私が夢を叶えることだと思ってる。


高橋碧唯:ちゃんと考えていて偉いね。


河井未翼:あおいちゃんだって、モデルになりたいって夢があるんでしょ? 一緒だよ。


高橋碧唯:モデルになりたい気持ちに変わりはないけど、宮城にいたときの思いの強さと、新潟に来て、アイドルになって実際に活動してからの思いの強さには、大きな差がある。


河井未翼:宮城にいたときは?


高橋碧唯:私でも頑張ればモデルに絶対なれる!


河井未翼:新潟に来た今は?


高橋碧唯:私程度では、モデルになるのは難しい。


河井未翼:アイドルになって、夢へと近づいたのに、モチベーション下がっちゃったの?


高橋碧唯:まどちゃんがMCでいってたと思うけど、新潟にいたら、少し歩けば、美女・美少女に出くわすでしょ? それに、a-Force NIIGATAは全国のかわいい子ちゃんを集めたグループになっている。仕事先に行ったら行ったで、そこにも美女・美少女がいる。夢は遠のいたというのが実感。


河井未翼:アイドル2年目が始まったばかりでこれからなのに、モチベーション下げないで。


高橋碧唯: "VENUS AWARD" 3位になって、取材が続くみはが羨ましい。みはには、みはの悩みや苦しみもあるだろうけど、アイドルとしてキラキラしているように見える。


河井未翼:あおいちゃん、かわいいからもっと自信持って。自信がないと、顔にも出るみたいだから、自信を持って前向きにいこう!


高橋碧唯:そうはいってもね~ (ボソッと)来年、契約して貰えるんだろうか?


河井未翼:そういう話は、こういう場所で口にしたらだめ!


高橋碧唯:そうでした。(舌を出す)


河井未翼:五十嵐GMとの面談で、この時点で話がなければ大丈夫でしょ。7月の三者面談でいきなり宣告されて、そこで終了とはならない。


高橋碧唯:そうだとしたら、少し安心できる。


河井未翼:少しじゃなくて、本当に大丈夫だから、安心して活動して。(微笑み)


高橋碧唯:先月くらいから、りりあちゃんの周囲が慌ただしい気がするけど、関係しているのかな? みはも輪に加わっていたから、なにか事情を知ってる?


河井未翼:え~っと、…(困惑の表情)


高橋碧唯:(悟って)そうなんだ。本当に早い段階で五十嵐GMに告げられるんだね。安心できたから大丈夫。






【 8 】



//

  その日の夜、公演を終えた未翼が楽屋に戻ると、スマートフォンに着信があったことを示すランプが点滅している。着信履歴を確認すると、母親からの着信。留守番電話にメッセージが残してある。未翼は、楽屋の隣りにある控室に移動し、メッセージを聞く。


  ママよ。がんの手術、無事に終わったから安心してね。これで元気な姿で7月の三者面談に行ける。待っててね。


  未翼は、母親の声を聞いて、ほっと胸をなでおろす。すぐに控室を出ると、碧唯が立っている。



~楽屋

高橋碧唯:おや? またまた、誰かから連絡街でした?(微笑み)


河井未翼:あおいちゃん、立ち聞き?


高橋碧唯:楽屋がうるさいし、ドアが閉まっているから、何も。


河井未翼:ママから留守番電話にメッセージが残されていたから、気になって控室使っただけ。普段、電話でやり取りはあまりしないから、万が一、ショッキングな悲しくなる内容だったら、みんなに悲しい表情を見せたくないし。


高橋碧唯:お母さんのこと、本当に大好きなんだね?


河井未翼:まあね。おじさんの家に厄介になっているとはいっても、私にとって唯一の家族だから。


高橋碧唯:みはが家族のことに触れないでいいようにしようって心がけてるのに、ごめんね。


河井未翼:あおいちゃん、気にしなくていいよっていってるでしょ? パパ、私が物心つく前に死んじゃっていないんだから。


高橋碧唯:そうはいってくれても、デリケートな問題だからさ。みははさ、お金をいっぱい稼げるようになったら、お母さんを新潟に呼んで、一緒に暮らすこと考えていたりするの?


河井未翼:それもちょっとデリケートだね。(微笑み) ママは、お仕事大好きな人だから、今のお仕事を続けると思う。


稲田零:(未翼と碧唯のところにやってきて)ほらほら! 早く着替えて、帰る準備する!(笑)


高橋碧唯:はいはい。れいが早く家に帰れて、胸がきゅんきゅんするような少女マンガを早く読めるようにしますよ。(笑)


稲田零:(不満げに)いっておくけど、毎日じゃないから。ところで、何を立ち話してたのよ?


河井未翼:まじめな将来のお話。(微笑み)


稲田零:みはとあおいが同じ高校でクラスメイトだからって、同期なんだから、私だけ仲間外れにしなくてもいいでしょ?


高橋碧唯:みはと私は、県外組だしね~(未翼に微笑む)


稲田零:(お手上げ)はいはい。おふたりの関係に入り込む隙間はありません。(微笑み)






【 9 】



//

  碧唯の生誕祭が行われる日の朝の楽屋、未翼と零が碧唯のもとにやって来る。



~楽屋

稲田零:あおい、17歳の生誕祭おめでとう。誕生日に渡せなかったけど、はい、これ。私とみはから。(小さなショッパーを手渡す)


高橋碧唯:(受け取り)ありがとう。



//

  ショッパー(ショッパーバッグ)には、高級コスメブランドのロゴが入っている。碧唯が袋を開けると、中にリップスティックとリップグロスが入っている。



~楽屋

高橋碧唯:コスメが欲しいといったけど、高かったでしょ? いいの、本当に貰って?


稲田零:あおいにあげるために買ってきたんだから、もちろんいいよ。


高橋碧唯:ふたりにあげたコスプレ衣装よりも絶対に高いよね。ごめんね。


河井未翼:本当にいいものを使って、モデルの夢が叶うように頑張ってね。


高橋碧唯:ふたりとも本当にありがとう。


河井未翼:ショップのカラーシミュレーションでね、あおいちゃんの写真をもとにして色を決めたんだよ。ちょっぴり大人っぽい感じの色にしたんだけど、気に入ってくれると嬉しいな。


稲田零:子どもの殻を破って、早く大人になってね!


高橋碧唯:急には大人になれないけど、今日から使わせて貰うね。


稲田零:まずは、背伸びしたあおいからだね。(微笑み)


河井未翼:これまでのあおいちゃん、背伸びしたあおいちゃん、リップの使用前、使用後みたいにスチル撮ってみない? 無表情バージョンとスマイルバージョンでそれぞれ撮ってみると、変化がより強調されておもしろいかも?


高橋碧唯:それ、おもしろい! 無表情バージョン、証明写真みたいに撮ってみる。(微笑み)


河井未翼:昼公演、これまで使っていたリップのあおいちゃん、生誕祭の夜公演、プレゼントしたリップのあおいちゃんにした方がより話題にできそう。


高橋碧唯:最近、メンバーがオフィシャルのU-timeに掲載して貰ったりしているから、私もして貰うことにする。


河井未翼:それがいい!



//

  碧唯の依頼を受けたスタッフは昼公演前、無表情の碧唯のスチルに、「この顔にぴんときたら」の帯をつけてオフィシャルU-timeに投稿する。






【 10 】


  夜公演で碧唯の生誕祭が行われる。


  a-Force NIIGATA「Skyscraper」公演。全体曲4曲を披露し、メンバーの自己紹介に移る。前列は5人、左から今井莉世、星聖空、稲田零、武内紗羅、高橋碧唯が並ぶ。後列は7人、左から押切まどか、小平美咲、長尾遥香、河井未翼、長谷川月、石黒りりあ、鷲尾美麗が並ぶ。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:始まりました「Skyscraper」公演 高橋碧唯生誕祭。17歳になったあおいちゃんの生誕祭、楽しんでますか?



//

  大きな拍手とともに、ファンから数多くの「あおいちゃん、おめでとう!」の声が上がる。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:今夜、嬉しいことはあおちゃんの生誕祭だけではありません。こちらをご覧ください。



//

  メンバーが上手側、下手側に移動。背後のLEDディスプレイに、アーティストブック発売決定の画像が映し出される。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:a-Force NIIGATA初のアーティストブック発売が決定しました!



//

  ファンから「おー!」という声が上がり、拍手が起きる。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:タイトルは「メンバー責任編集 a-Force NIIGATA 10th」 発売は7月30日です。タイトルにある "10th" は、a-Force PROJECT 10期という意味になっています。ただいま、メンバーみんなで協力しながらつくっていますので、期待してお待ちください。続いては、こちら!



//

  LEDディスプレイに、個別イベント開催決定の画像が映し出される。


  ファンから「おー!」「やったー!」「楽しみ!」といった声が上がり、拍手が起きる。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:こちらについては、私、みれい、みはちゃんの3人が "VENUS PROJECT" 参加のため、通常公演ができない期間を利用して開催されます。



//

  ファンから「え~」「みはちゃんのイベント観たい」「全員やんないの?」といった不満の声が上がる。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:ごめんなさい。私たち3人は、個別イベントに参加しません。ご了承ください。このイベント、メンバー自身で考えた内容、イベント料金になっています。こちら、ライブ配信されない非公開イベントになっています。推しのメンバーのイベントにぜひご参加ください。そして、次はこちら。



//

  LEDディスプレイに、 "U-ch" エンタメビジョンのスタンダード会員向け公演ライブ配信変更の画像が映し出される。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世: "U-ch" のエンタメビジョン、スタンダード会員がライブ試聴できる劇場公演は、これまで毎週木曜日でした。7月からは毎週金曜日に変更となります。これまで毎週金曜日に配信していたa-Force AICHIは、毎週木曜日に変更となります。スタンダード会員のみなさんはご注意ください。そして、最後がこちら。



//

  LEDディスプレイに、一部公演をHall Bで開催の画像が映し出される。


  ファンから「おー!」「やったー!」といった声が上がり、拍手が起きる。同時に「キャパ2倍になっても当たる気しない!」「Hall Aにしてお願い!」といった声も。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世: "VENUS AWARD" で非常に多くのみなさんからご注目いただき、劇場で公演を鑑賞したいというファンが急増いたしました。それによって、なかなか当選できない状況が続いています。これに対して、会場スケジュールの調整ができた場合、一部公演をHall CからHall Bに変更して実施することに決定しました。初回は、 "VENUS PROJECT" ライブ終了以降を予定しています。公演スケジュール発表の際は、会場もご確認の上、申込をお願いします。料金に変更はありません。なお、Hall Bにどのくらい変更可能かは、現時点で不明です。みなさんへのお知らせは以上となります。



//

  LEDディスプレイの画像が消え、上手側、下手側に分かれていたメンバーが元の位置へと戻る。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:それでは、私から自己紹介させていただきます。はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール新潟校卒 新潟県出身の今井莉世です。今日の主役あおいちゃん、入団してからこれまで、同期のれいちゃん、みはちゃんには心開いてしゃべっているのに、先輩とのおしゃべりになると、急に心閉ざして人見知りを発揮してたんですね。2年目に入ってようやくMCだけでなく、普段もことばのキャッチボールができるようになってきたかなという印象で、ちょっと嬉しいです。そしたら、U-chライブストリーミングでは、別のあおいちゃんの姿があるという噂を聞いて、とても気になっている後輩です。今日は、あおいちゃんをたくさん応援しつつ、新たな発見をしていってください。楽しみましょう。よろしくお願いします!


星聖空:はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール郡山校出身 福島県出身の星聖空です。あおいちゃん、せいらの地元福島のお隣り宮城の出身で、最初から仲よくしたいなと思っていたんですけど、りせちゃんがいってたように、ものすごい人見知りで。あおいちゃんの心の拠りどころのみはちゃんが、… えっと、後輩ちゃんが入ってきて、お姉ちゃんになった自覚が出てきたのか、心を開いてくれつつあります。U-chライブストリーミングの視聴者のみなさんには、すでに心を開いているみたいです。あおいちゃん推しのみなさんにも同様だと思うので、せいらも早く追いつけるように頑張ります。生誕祭、楽しんでいきましょう!


稲田零:はい! 9期生 エンターテイメントスクール新潟校卒 新潟県出身の稲田零です。みはと一緒に、あおいにコスプレのお洋服をプレゼントしようと思ったんですけど、きっぱり拒否されてしまい、私のときみたいにロリィタ姿をみなさんにお見せできないのが残念です。



//

  ファンから「それであれなんですか?」と質問が飛び、「ロリィタ見たーい!」の声も上がる。それに対し、あおいは両手で☓をつくる。



~L-Platz NIIGATA

稲田零:アーティストブックでもあおいのロリィタは見ることできません。いつか同期でロリィタ披露できるように、みなさんが擦り込んでください。若いときしかできないのでお願いします。あおいの生誕祭、盛り上げてください。お願いします。


武内紗羅:は~い。いきます! 8期生 エンターテイメントスクールさいたま校出身 埼玉県出身の武内紗羅です。あおいちゃんとは似たもの同士で。



//

  あおいは首を横に振って否定。



~L-Platz NIIGATA

武内紗羅:そんなことあるんです。さらとあおいちゃんは、みはちゃんがそばにいないとだめなタイプ。でしょ? 似たもの同士で。



//

  それには、あおいも納得。あおいが後列のみれいに目をやる。



~L-Platz NIIGATA

鷲尾美麗:私は違うよ~ あおいちゃんは、みはちゃんがそばにいないとだめなタイプ。私は、みはちゃんに触れていないとだめなタイプ。(微笑み)


武内紗羅:後列に気持ち悪い人がいますが、気にせずにあおいちゃんの生誕祭、盛り上げていきましょう! 今日も1日よろしくお願いします。


高橋碧唯:はい! 9期生 エンターテイメントスクール仙台校出身 宮城県出身の高橋碧唯です。6月1日に17歳になりました!



//

  生誕委員から「あおいちゃん!」の声がかかり、「17歳おめでとう!」とファンが声を揃える。同時に、17歳おめでとう! と書かれたフライヤーが一斉に掲げられる。



~L-Platz NIIGATA

高橋碧唯:ありがとうございます。今朝、オフィシャルのU-timeに私の顔写真を掲載していただきました。「この顔にぴんときたら」のキャプションがついていたので、「高橋碧唯」と即答された方が多いと思います。ただ、それだけでは、「○(正解)」はあげられません。U-timeに掲載された私の顔写真と今の私を見比べて、正解を導き出してください。答え合わせは、夜のU-chライブストリーミングで行います。私の生誕祭ですが、メンバーみんなにも大きな声援、コールをお願いします。楽しんでいってください。よろしくお願いします。



//

  前列メンバーが次のユニットパート準備のため、ステージから捌ける。後列メンバーの自己紹介に移る。



~L-Platz NIIGATA

押切まどか:はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール仙台校出身 山形県出身の押切まどかです。.私の生誕祭のときに、あおいちゃんが私のことを「仙台校の伝説の美少女」みたいに褒めてくれたけど、あおいちゃんもきれいなのに、私以上に自信なさそうにしているのがとても残念に思います。あおいちゃんが自信を持てるように、今日はファンのみなさんの大きな声援で盛り上げてください。よろしくお願いします。


小平美咲:はい! 10期生 エンターテイメントスクール長野校卒 長野県出身 小平美咲です。あおいちゃんは、私やはるちゃんのことをよく観察というか、見守ってくださっていて、私たちが何か上手にできたりすると、褒めてくださったり、うまくいかなかったときには、こういうやり方もあるよとか、アドバイスをくださる優しい先輩です。それでは、あおいちゃんの生誕祭、盛大に盛り上げていきましょう!


長尾遥香:はい! 10期生 エンターテイメントスクール高崎校卒 群馬県出身 a-Force NIIGATA唯一のベビーフェイス はるちゃんこと 長尾遥香です。はるちゃんと呼んでください。今日の主役あおいちゃん、お花に例えると、「ねぇ、きれいでしょ? 見て!」と主張して真ん中で咲いているお花じゃなくて、ちょっとだけ視線をずらしたところで健気に咲いているお花。先輩たちの感じている印象とはるかが感じている印象は違うみたいですが、そんな風に感じてます。だから、あおいちゃんのことを放っておけなくて、ファンのみなさんが支えてあげてるんだろうなって思ってます。そんな温かい心をお持ちのみなさんと、あおいちゃんを盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。


河井未翼:はい! 9期生 エンターテイメントスクール東京本校卒 東京都出身 河井未翼です。みはちゃんと呼んでいただけたら嬉しいです。今のはるちゃんのお話、興味深く聞いていました。はるちゃん、日頃から人間観察しているせいか、目のつけどころが違うと思いました。あおいちゃんの同期として失格ですね。あおいちゃんには、日頃からお世話になっているので、今日はお返ししていきたいと思います。よろしくお願いします。


長谷川月:はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール新潟校卒 新潟県出身の長谷川月です。あおいちゃん、先輩や同期に見せていない別の世界というか、本来の姿をまだ全然見せてくれていないということなのかな? 興味湧いてきますね。みなさん、楽しんでいきましょう。よろしくお願いします。


石黒りりあ:はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール金沢校卒 富山県出身の石黒りりあです。あおいちゃんは、りりと同じ匂いがしてます。人見知りなところとか、煮えきらないところとか。りりみたいになったら困るというファンのみなさんも多いはずですので、あおいちゃんをちゃんと誘導してあげてください。あおいちゃんの生誕祭、楽しんでいきましょう!


鷲尾美麗:はい! 6期生オープニングメンバー エンターテイメントスクール新潟校卒 新潟県出身の鷲尾美麗です。あおいちゃんは、盾になってさらからみはちゃんを守ってくれるSPのような存在で、本当に感謝してます。恩返しできるように生誕祭を盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。



//

  自己紹介を終えてユニットパートに移る。「Skyscraper」公演では4組に分かれて披露する。1回目のMCパートを経て、全体曲3曲を披露し、2回目のMCパート。6人ずつ2組に分かれて行う。前半は押切まどか、星聖空、鷲尾美麗、武内紗羅、稲田零、高橋碧唯。後半は今井莉世、石黒りりあ、長谷川月、河井未翼、小平美咲、長尾遥香。



~L-Platz NIIGATA

星聖空:今日の主役あおいちゃんがいます。ここまで終えてどう?


高橋碧唯:いつもだとこんなに声援受けることないので、いつも以上に緊張してます。


星聖空:では、そんなあおいちゃんについてお話していきたいと思います。自己紹介のとき、SPみたいにみはちゃんのことを守ってくれているといっていたみれいちゃんから。


鷲尾美麗:あおいちゃん、本当にいつもありがとう。あと、れいちゃんも。誰かさん、みはちゃんのことをおっきなぬいぐるみかのように何でもしていいと勘違いして、走ってきて抱きつきにいこうとしたりして、本当に危ないから、本当に盾になってくれてありがとう。


稲田零:そうですよね。さらちゃんは、本当に危ないと思います。あおいは、危機察知能力が高いのか、反応が早いです。


高橋碧唯:ケガしてからでは遅いので、勢いよく走ってきて抱きつきにいくのは、本当に止めてくださいね。


武内紗羅:(渋々)は~い。その代わり、お見送りでみはちゃんの横に行こうとするのを阻止しないでくれる?


高橋碧唯:どっちも止めてください。


武内紗羅:ときどきくらいだったら、いいことにしない?


鷲尾美麗:だめ、だめ! みはちゃんの生命力が落っちゃう。


星聖空:舞台袖で見ることもあるけど、あおいちゃん、無駄な動きすることなく、さらを追いやる。ときに、れいちゃんと連携プレイで。(笑) コツがあるの?


高橋碧唯:さらちゃんがいるところで、公開するわけにはいきませんね。(微笑み)


武内紗羅:必ず突破して、みはちゃんの隣りをゲットしてみせます!


押切まどか:毎日、無益な争いを繰り広げているのね。(苦笑)


星聖空:まどちゃん、それはいっちゃだめ!


押切まどか:(気にすることなく)あおいちゃん、どんなモデルさんになりたいとかあるの?


高橋碧唯:目標にしているモデルさん、憧れのモデルさんは特にいません。身長があって、笑顔が得意ではないので、元気や華やか系ではなくて、自然やクール系のモデルになれたらいいなと思ってます。


星聖空:あおいちゃんの笑顔、ちょっと控えめな感じで笑うのがかわいいよ。


鷲尾美麗:その場の雰囲気がほっこりする。


高橋碧唯:本当ですか?


押切まどか:笑顔が得意でないといっても、笑顔つくらないでかわいいんだから、今のままで自信持っていいと思うよ。


高橋碧唯:褒めていただいてありがとうございます。


星聖空:あおいちゃんのお話、もっと聞きたいところですが、お時間が来てしまいました。後半MCにバトンタッチです。



//

  メンバーが入れ替わり、後半組のMCが始まる。



~L-Platz NIIGATA

長谷川月:ここからは後半組です。テーマは、あおいちゃんについてです。自己紹介でりせちゃんが、「U-chライブストリーミングで別のあおいちゃんの姿があるという噂」とかいってましたけど、教えて貰ったりすることはできるのかな?


今井莉世:ほかのメンバーが取り上げてくれると思っていたけど、なかったね。ファンのみなさんは知ってるはずだから、いってもいいのかな。


石黒りりあ:りりも噂を聞いたよ。


長尾遥香:はるかも知ってますぅ。


小平美咲:私も小耳に挟みました。


長谷川月:あれっ!? 同期のみはちゃん、知らなかったりする?


河井未翼:ごめんなさい。普段から一緒にいるのに知りません。


長谷川月:知らないのは、私とみはちゃんだけ。りせちゃんに教えて貰おうかな?


今井莉世:あおいちゃん、U-chライブストリーミング中、ぼやきまくるみたいで、 "ぼやきアイドル" とか、 "ぼやき天使" っていわれてる。何をぼやいているかっていうと、ほぼみはちゃんのこと。


河井未翼:(驚きの表情で)私、ですか?


石黒りりあ:みはちゃん、お仕事で忙しい日が多くなって、かまって貰えない。というか、迷惑かけるといけないから、お話したり、連絡することを控えていて、そのはけ口がU-chになっていて、そこでぼやいてる。


河井未翼:それじゃあ、みなさんはU-chであおいちゃんのぼやきに付き合ってくださっているんですか?



//

  ファンから「はい、そうで~す」「あおいちゃんのぼやきを聞く係です」「あおいちゃんを励ます会みたいなものです」といった声が上がる。



~L-Platz NIIGATA

河井未翼:私のせいなんですね。本当にごめんなさい。(繰り返し頭を下げる)


長谷川月:みはちゃんが忙しくなったのは事実。そこは動かしようがないからいいとして、毎日のようにアイドルが励まされるってどういうこと?(笑)


今井莉世:あおいちゃんのストレスが溜まらないでいられるのは、みなさんのおかげということですね。ありがとうございます。(微笑み)


石黒りりあ:りりもこれからぼやきまくっていこうかな?


長谷川月:りりあってきまぐれだからさ、「また好き勝手なこといってる」で、ファンから無視されるんじゃない?


石黒りりあ:りりはだめ?


長谷川月:だめだと思う。


長尾遥香:あおいちゃんのライブストリーミング、じわじわ人気が出ていて、フォロワー数も多くなってます。


小平美咲:みはちゃんのこと話してると思って観ていたら、沼にはまっちゃったって人が多いのかもしれませんね。(微笑み)



//

  ファンから「はい、そうで~す」「そのひとりです!」「あおいちゃん沼から出られません!」といった声が上がる。



~L-Platz NIIGATA

石黒りりあ:誰か "りりあ沼" にもはまって~ お願い!


長谷川月:はい。会場無反応。 "りりあ沼" にはまるファンなし。だいたい、あおいちゃんのファンの前でいっても無駄。(笑)


石黒りりあ:再来週、りりの地元の富山県で出張公演するので、お時間のある方はぜひ来てくださいね!


長谷川月:りりあ、あおちゃんの話をしているところで、自分の宣伝しない!


小平美咲:りりあちゃんが宣伝するなら、私も! 同じく再来週、私の地元の長野県でも出張公演があります。私にとって初の地元での出張公演になるので、ぜひ来てくださいね~



//

  りりあのときにはなかった、ファンから「長野行くよ~」「俺も行く!」の声。



~L-Platz NIIGATA

小平美咲:ありがとうございます。長野でお会いしましょう!(微笑み)


長谷川月:あ~ どう収拾したらいいか、…(戸惑い)


今井莉世:ちょっと気になるので、出張公演のこと、みなさんに伺ってもいいですか。富山出張公演を観に行きますという方、挙手お願いします。



//

  数人のファンの手が挙がる。



~L-Platz NIIGATA

石黒りりあ:あ~、よかった。ひとりもいないのかと思った。声出していいんですよ。


今井莉世:次、長野出張公演を観に行きますという方、挙手お願いします。



//

  こちらも数人のファンの手が挙がる。ファンから「行きたかったけど、チケット当たりませんでした」の声に、「俺も外れた!」「出張公演も大きい箱でやって!」といった声が続く。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:もう出張公演の当落出たんですね。自己紹介に入るときに、一部公演をHall Bでといったけど、出張公演も申込倍率高くて、行きたくても行けない方がいらっしゃるんですね。ちなみにですけど、出張公演外れた方、挙手お願いします。



//

  3割ほどのファンの手が挙がる。メンバーも挙手したファンの数に驚く。



~L-Platz NIIGATA

今井莉世:本当にたくさんの方が出張公演にも申し込んでくださって、本当にありがとうございます。もっと大きな会場で公演ができたり、コンサートができるように頑張りますので、これからも応援をよろしくお願いいたします。



//

  メンバーが「よろしくお願いします」と声を揃え、一礼する。



~L-Platz NIIGATA

長谷川月:少し脇道に反れてしまいましたが、歌の披露に戻りたいと思います。高橋碧唯生誕祭、ラストスパートです。盛り上がっていきましょう!



//

  メンバー全員がステージに揃い、最終の後半パートで全体曲4曲を披露して「Skyscraper」公演は終演。



~L-Platz NIIGATA

稲田零:おまたせしました。ここからは、高橋碧唯生誕祭です!



//

  碧唯は、零に促されてステージ中央へ。未翼は、バースデイケーキなどの準備のために舞台袖へ。


  a-Force NIIGATAにおける生誕祭、ファンの有志による生誕祭実行委員会が組織され、実行委員会よりお祝いのケーキ、花束、フラワースタンドが贈られ、横断幕の設置といった演出も実施される。華美になりすぎるのを防止するため、費用の上限が設けられている。


  未翼がワゴンで運んできたバースデイケーキは、いちごムースで真っ赤に彩られたハート型のケーキに、生クリームで17歳の "17" が記されている。客席のファンにもケーキが見えるように、ワゴンから伸びたアームに取り付けたビデオカメラの映像が、背後のLEDディスプレイに映し出される。そして、17本のろうそくが立っている。


  未翼がバースデイケーキの17本のろうそくに火をつけ、準備が整う。



~L-Platz NIIGATA

稲田零:それでは、お誕生日の歌(Happy Birthday to You)を歌いましょう。あおい、名前のところはどうする?


高橋碧唯:未成年最後の年齢なので、あおいちゃんでお願いします。


稲田零:では、名前のところは、あおいちゃんでお願いします。



//

  誕生日の歌を歌い終え、碧唯が17本のろうそくを吹き消すと、ファンから「おめでとう」の声と生誕祭実行委員会が用意した17歳おめでとうの記載されたフライヤーが掲げられる。そして、「せ~の」の掛け声がかかり、「あおいちゃんのことが大好きだっちゃ!!」とファンが声を揃える。



~L-Platz NIIGATA

高橋碧唯:うわ~、びっくり。こんな多くの方から好きといわれたことないので、本当にありがとうございます。照れくさいです。


稲田零:「だっちゃ」は、宮城弁?


高橋碧唯:そう。


河井未翼:「だよ」って意味だよね?


高橋碧唯:そうそう。


河井未翼:れいちゃん、新潟弁だと何ていうの?


稲田零:「あおいちゃんのことが大好きらて」かな?(新潟出身メンバーの顔を見る) 「だっちゃ」の方がかわいい。


河井未翼:きゅんとする?


稲田零:うん。「らて」は、なんていったらいいのかな。拍子抜けする。


河井未翼:それでは、あおいちゃんに、ファンのみなさんから花束と花冠のプレゼントです。



//

  未翼は、花束を碧唯に手渡し、頭に花冠をセットしてあげる。



~L-Platz NIIGATA

稲田零:ファンのみなさんに挨拶お願いします。


高橋碧唯:私の生誕祭をお祝いしてくださった会場のファンのみなさん、ライブ配信で応援してくださったみなさん、日頃から支えてくださるスタッフさん、そして、メンバー、家族に感謝します。本当にありがとうございます。来年は成人になるので、もっと成長しなくちゃと思いつつも、行動が追いついていかないんだろうなと想像してます。ファンのみなさんには、歯がゆい思いをさせてしまうと思いますが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。私の人見知り、なかなか治らないと思います。初めての後輩は、みはがみさきちゃん、はるちゃんのふたりに指示を与えていたみたいです。私に声をかけるようにって。毎日、ふたりが声をかけてくれたおかげで、同期と同じくらいに話せるようになったと思います。順序が逆ですけど、先輩とはこれからゆっくり。(微笑み) 目標は、MCでもいったようにモデルになることです。何をどうしたら、モデルの道が開けるのか分かりませんが、先輩のようにきれいでかわいくなれるように自分磨きをしていきたいと思います。今日は、本当にありがとうございました。(深々と一礼)



//

  ファンから「これからも応援するよ」「モデルの夢叶えてね!」といった声が飛ぶ。「ぼやきの女王目指そう!」の声には笑いも。



~L-Platz NIIGATA

高橋碧唯:(とまどいながら)私、そんなにぼやきまくってます? ぼやいているとは思うけど、ぼやきまくるってほど、連発している自覚はない。



//

  ファンから「毎回1回でもぼやけば、それで充分ぼやきまくってる」との声。



~L-Platz NIIGATA

高橋碧唯:あ~ それだとぼやきまくるってことになりますね。(苦笑)


稲田零:もういい残したことはない? 


高橋碧唯:ないです。


稲田零:本当にない? 来年、○○したいとか?


河井未翼:れいちゃん、無理にいわせようとしないの。


高橋碧唯:(零が何をいわせたいか納得しつつ)ありません。では、最後の挨拶します。



//

  メンバーが横一列に整列して手をつなぐ。



~L-Platz NIIGATA

高橋碧唯:ありがとうございました!



//

  繋いだ手を上げたメンバーは、「ありがとうございました!」と声を合わせ、繋いだ手を下げて一礼する。



~L-Platz NIIGATA

稲田零:このあとは、メンバー全員でファンのみなさんをお見送りいたします。参加をご希望の方は、スタッフさんの指示に従ってお待ちください。



//

  お見送りも終わり、あおいの生誕祭が終わる。






【 11 】


  碧唯の生誕祭から帰宅した未翼。明後日には、美麗とのユニット、hareitionの写真集撮影を迎える。東京、新潟、天気予報でどちらも好天となることが予想されている。



~川原宅ダイニング

川原椎名:あおいちゃん、寮で生誕祭の2次会しないんだ?


河井未翼:私が明後日、東京でお仕事があると伝えてあったから、気遣ってくれたんだと思う。事前に対応しておけば、急に2次会なしと知って期待外れに思うメンバーもいないでしょうし。


川原椎名:あおいちゃん、自分が主役でみはちゃんもいないとなると、居心地悪いだろうし、これでよかったのかな?


河井未翼:そう思います。オフィシャルU-timeに掲載されたあおいちゃんの写真の答え合わせライブストリーミングもやらないといけないので、寮のメンバーも理解してくれていると思います。


川原椎名:みはちゃんは、このあとU-chライブストリーミングはどうするの?


河井未翼:あおいちゃんのライブストリーミングの邪魔をしないように、かつ、びっくりさせたいと思ってます。(微笑み)


川原椎名:びっくり? みはちゃん、何を企んでいるの?(微笑み)


河井未翼:私のライブストリーミングとあおいちゃんのライブストリーミング、2窓の準備して視聴してください。(微笑み)


川原椎名:なるほど。分かった気がする。(微笑み)



//

  未翼は、碧唯のU-timeライブストリーミング予約を確認。自分のライブストリーミング予約を碧唯の5分前に設定する。



~ライブストリーミング

河井未翼:a-Force NIIGATA 9期生 エンターテイメントスクール東京本校卒 東京都出身 河井未翼です。みはちゃんと呼んでいただけたら嬉しいです。みなさん、こんばんは!



//

  未翼のU-chチャンネル、ライブストリーミング開始を待っていた多くの視聴者から一斉にコメントが送られ、まったく読めない状態。AI判定で「こんばんは!」「待ってました!」「みはちゃん!」「みれいちゃん」「あおいちゃん生誕2次会は?」といったコメントが寄せられている。



~ライブストリーミング

河井未翼:開始と同時にみなさん集まってくださってありがとうございます。さっそくで申し訳ありませんが、協力して欲しいことがあります。もうすぐ、あおいちゃんのライブストリーミングが始まります。私が合図を送るので、あおいちゃんのチャンネルに移動していただいて、あおいちゃんに「17歳おめでとう」のコメントをお願いします。あおいちゃんにはこのことを伝えてないので、びっくりして貰えると嬉しいなと思ってます。(微笑み)



//

  コメントはまったく読めない状態中。AI判定で「了解!」「おもしろそう!」「サプライズ企画だね」「あおいちゃん びっくりするぞ www」「みはちゃん知能犯」といったコメントが寄せられている。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:みなさん、こんばんは~ a-Force NIIGATA 9期生の高橋碧唯です。今日の夜公演は、私の生誕祭でした。劇場でお祝いしてくださった方、ライブ配信で全国からお祝いしてくださったみなさん、素敵な時間をありがとうございました。


河井未翼:はい! お願いします!



//

  未翼の依頼を受け、視聴者が一斉に碧唯のチャンネルに移動。そして、「17歳おめでいとう」のコメントを送る。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:今日はね、ちょっとした企画をオフィシャルU-timeで行っていまして、朝と夜公演後に私の写真を掲載して貰いました。2枚の写真を見比べて、変化気づいた方いますか?



//

  コメントに目を移した碧唯。見たことのない速さでコメントが流れ、視聴者数のカウンターもものすごい速さでカウントアップしていることに気づく。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:待って。いつもと違う。違いすぎる。(考え込む)



//

  碧唯が考え込む間も高速でコメントは流れ続け、AI判定で「17歳おめでとう」と共通したコメントが届いていることが分かる。



~ライブストリーミング

河井未翼:おめでとうコメント終わった方から戻ってきてください。あ、2窓の人しか観てないか、…(微笑み)



//

  未翼のU-chチャンネル、碧唯にコメントしている間、コメントは落ち着いていた。視聴者が戻り始めると、だんだん読みにくい速さに。AI判定で「任務完了!」「おめでとうしてきた」といった報告コメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

河井未翼:ご協力してくださったみなさん、本当にありがとうございます。あおいちゃんのライブストリーミング、私も観てるんですけど、異変に気づいたときのあおいちゃんの表情が何ともいえずよかったです。(微笑み) そろそろ気づいて欲しいな。



//

  碧唯は、連絡用にしているスマートフォンを取り出す。ワイヤレスイヤホンを耳にし、スマートフォンを操作する。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:みは、やっぱりライブストリーミングしてる。みは、観てる? こんなことしたの、みはでしょ?(微笑み)


河井未翼:(手を振りながら)あおいちゃん、生誕祭お疲れさま~(微笑み)


高橋碧唯:住民大移動だっけ? 隣りでコラボ配信してたら、心の準備できてるからいいけど、前触れもなくされると、頭の中が真っ白になる。(微笑み)


河井未翼:きょとんとしたあおいちゃんの表情、かわいかったよ。(微笑み)


高橋碧唯:もうサプライズは遠慮しておく。


河井未翼:あおいちゃんが忘れたころにするね。(微笑み)


高橋碧唯:もうやらなくていいから。(困惑)


河井未翼:(手を振りながら)あおいちゃんのファンのみなさん、驚かせてすみませんでした。このあとは、あおいちゃんのトーク、まったりと楽しんでください。お邪魔しました。あおいちゃん、ばいばーい。


高橋碧唯:(手を振りながら)みはは、私のライブストリーミング切るんだよ。


河井未翼:(手を振りながら)だめなの? それじゃあ、また明日!


高橋碧唯:(深い息を吐き)さて、話題を最初に戻します。企画をオフィシャルU-timeで行っていまして、朝と夜公演後に私の写真を掲載して貰いました。2枚の写真を見比べて、何か変化に気づいた方いますか?



//

  「生誕祭前の緊張した表情と終わってほっとした表情」「元気な顔と公演終わって疲れた顔」「半日くらい年取った」「自分でした化粧とメイクさんにして貰った化粧」といったコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:まだ正解はないけど、お化粧に関連してます。



//

  「チーク変えた」「コンシーラー使った」「アイライン変えた」「ノーズシャドウ・ハイライト入れた」「リップ変えた」といったコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:正解出ました。昼公演は、これまで愛用してきたリップを使って、夜公演では、みはとれいに貰ったリップとリップグロスを使ってます。証明写真みたいに撮影して貰ったスチルだと、光の加減で少し分かりにくかったかもしれませんね。ライブストリーミング後には、証明写真みたいなスチルでないバージョンのスチルをU-timeに投稿します。そちらで確認すると、違いが分かると思います。



//

  「はーい」「楽しみに待ってます」といったコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:実はね、この企画もみはが考えてくれたの。まさか、ほかにも考えていたとは全然予想していなくて、さっきは本当にびっくりしました。夏のにわか雨みたいに、突然土砂降りになったかと思ったら、あっという間に過ぎ去って、太陽がさんさんと輝いてるみたいな感じ。まどちゃんだったか、みはのことをマジシャンに例えたことがあったけど、こんなことできるのは、冷静に考えたら、みはしかいない。



//

  「確かに、みはちゃんしかいない」「マジシャンみはちゃん」「みはちゃん ソーシャル・チッピング(投げ銭)あったら 毎日家が建つレベル」といったコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:U-PRO系の芸能人は、U-chでのソーシャル・チッピング無効になってるから、それでみなさんに負担をかけることもないし、私たちも一喜一憂することもない。ソーシャル・チッピングが有効だったとしても、ストリーマーへの還元率はそんなに高くないだろうからね。



//

  「投げ銭有効だったら みはちゃんの誕生日は豪邸が買える」「みはちゃん 桁外れに視聴者数が多いから 還元率プレミアム設定で高いかも?」といったコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:なるほど、… この話は止めましょう。



//

  「生誕祭スピーチで来年のVENUS AWARDランクイン目指しますっていって欲しかった」とのコメントには、「ランクイン目指しましょう!」「ランクインすればモデルの夢にも近づく!」といった賛同するコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:れいがいわせようとしたのをみはがいわないでいいよっていってくれたのに、いわせようとするの?(微笑み)



//

  「有言実行」「言霊」「いってくれればついていきます!」「同期は最大のライバル」「不戦敗はよくないと思います」といったコメントが次々と寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:ふたりみたいに歌やダンスがうまい訳じゃないからね。同じ土俵で勝負しないって決めたから、その話はしない。ごめんね。



//

  「あおいちゃん VENUS AWARDは人気のバロメーター パフォーマンスは関係ないよ」という反論のコメントが寄せられると、「ランクインすれば注目される。モデルの夢にも近づくと思うよ」「シングル表題曲のフロントメンバーじゃくても みれいちゃんはランクインできた 最初から諦めちゃだめ!」と応援、激励するコメントが寄せられる。



~ライブストリーミング

高橋碧唯:みんなの気持ちは嬉しいけど、ここまでにしようね。疲れちゃったから、ここで終わりにするね。今日は、本当にありがとうございました。みんなもゆっくり休んでね。おやすみなさい。



//

  碧唯は、ファンの思いに胸が苦しくなり、ライブストリーミングを早々に切り上げてしまう。椎名は、未翼のライブストリーミング終了を受けて、未翼の部屋を訪れる。



~未翼の部屋

川原椎名:みはちゃん、ライブストリーミングお疲れさま。あおいちゃんのライブストリーミング、最後まで観てた?


河井未翼:最後まで観ていましたけど、音声は切っていましたので、コメントしか追えていません。急にライブストリーミング終えたように見えました。何かありました?


川原椎名:来年の "VENUS AWARD" にランクインして欲しい。目標に掲げて欲しいっていうファンの気持に押し潰されそうになって、ライブストリーミングを切り上げた。そんな感じ。このタブレットのホーム画面にビデオファイル置いてあるから、時間があったら観てね。


河井未翼:(タブレットを受け取り)ありがとうございます。生誕祭の自己紹介やMCを聞いていて思ったんですけど、普段から一緒にいるあおいちゃんのことを全部知っているように思っていたのに、知らないことが多くて。深い関係にはまだなれていないんだなって思いました。


川原椎名:1年ちょっとですべてのことを分かりあえたら、人間関係で悩むことすくなくなるだろうね。


河井未翼:それって、3カ月の私としいなさんの関係を遠回しに否定しようとしてます?(微笑み)


川原椎名:はい。(即答)


河井未翼:しいなさん、ひどい!(頬をふくらませる)


川原椎名:怒っている暇があったら、明後日の準備する! まだなんでしょ?


河井未翼:まだですけど、持っていくものはレコーディングのときより少ないですから大丈夫です。


川原椎名:明日の夜公演終わって、新幹線で東京に直行。寝て起きて、撮影しつつ昼には新潟に戻ってるんだものね。荷物は最少減で済んじゃうか。


河井未翼:はい。しいなさん、撮影している現場、覗きに来ます?


川原椎名:やすらぎ堤で撮影しているところを見に行こうと思ってる。


河井未翼:写真集の原案を考えてくださったのに、そこだけでいいんですか?


川原椎名:いっぱい見てしまうと、実際に写真集を手にしたとき、感動が少なくなるじゃない?


河井未翼:しいなさんが少し離れた場所から見ている画角? とフォトグラファーが撮影した画角は違うから、プロはこんな風に被写体を見て撮っているんだって、比較ができて新鮮な感じがするんですけど。


川原椎名:なるほどね。


河井未翼:しいなさんがひとり加わったくらいでは邪魔になることはないと思うので、近くで見ます? スタッフさんに伝えておきますけど。


川原椎名:近くは遠慮しておくよ。


河井未翼:そうですか。私にとって初めてといっていい大きなお仕事なので、近くで見守ってくれたら嬉しいなと思ったんですけど、無理ですか。


川原椎名:やすらぎ堤でちょっと覗く程度にしておくよ。


河井未翼:次のミュージックビデオ撮影の沖縄にも来ませんよね?


川原椎名:僕に付き人でもやって欲しいの?


河井未翼:付き人? それなら、お仕事中でも一緒にいれますね。(微笑み)


川原椎名:付き人のつもりじゃなかったんだ。すると、何が希望なの?


河井未翼:しいなさんのことが好きだから、一緒にいたいだけですよ。


川原椎名:ぺいぺいには無理だよ。ひとり立ちして、一人前になってからだね。


河井未翼:ぺいぺい? 意味は分かりませんけど、見下されてますよね?(不満げ)


川原椎名:お風呂に入って、早く寝るんだよ。



//

  椎名は、未翼の部屋を出ていく。






【 12 】


  hareitionの写真集撮影当日。未翼の撮影は、早朝の東京の公園から開始。未翼の担当フォトグラファーは岡本虹晴。ディレクターの高橋、動画収録スタッフが帯同。未翼に同行するマネージャーは杵渕巴亜斗。


  約束の日。未翼の通う高校の創立記念日で休みの日、美麗が住む新潟市で会うことにしている。連絡先は交換せず、時間と場所の詳細も決めてはいない。奇跡の再会を願う未翼と美麗。朝早く目覚めた未翼は、時間を潰すために公園を散歩している。



~公園

ディレクター高橋:カット!



//

  写真集の撮影と並行してショートムービー、メイキング動画を収録している。ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す。



~公園

杵渕巴亜斗:みはちゃん、お疲れさま。まだ寒いでしょ?


河井未翼:日陰はちょっと寒いですね。



//

  未翼は、杵渕から薄手のカーディガンを受け取り、すぐに羽織る。そして、温かい紅茶をひと口いただく。



~公園

河井未翼:ふ~ 生き返りました。(微笑み)


杵渕巴亜斗:次は、東京駅にクルマで移動して、駅のシーンの撮影。そして、歩いて、皇居周辺のお濠での撮影。


河井未翼:そこで誰しもが東京にいたんだって分かりますね。


杵渕巴亜斗:みはちゃんのおじさん、よくこんなストーリー考えたものね。ありがちな風景をバックに、ありがちなポーズとか、こんなところでこんな格好は絶対にしないという格好で、非日常的な変なポーズしたりするのが写真集のあるあるだと思うんだけど、それがない。ふたりのストーリーが別々に進行して、ふたりが再開してひとつのストーリーになっても、ふたりのフォトグラファーが異なる視点で撮影を続ける。それに、新潟市のスポットを訪れるガイド的な役割も持っている。全部まとめちゃいました! 的な。見るたびに発見がある写真集になるんだろうなって思う。それに、特典としてメイキング映像とショートムービーつけるんでしょ? これは売れて欲しいな~ って、関係者でなくても思う。


ディレクター高橋:(未翼と杵渕の会話に割り込み)そうなんです。それで、関係者からすると、定価高めでも初版20,000部はクリアして欲しいと願ってます。私が営業でしたら、おふたりの人気から初版50,000部としたいところですが、実績がないと、営業に首を縦に振って貰えず。申し訳なく思っています。


河井未翼:実績がないことは事実ですから、そんな風に思わないでください。


ディレクター高橋:原案を考えてくださった河井さんのおじさん、今日は新潟市内での撮影をご覧になるといったことは、予定されていますか?


河井未翼:やすらぎ堤での撮影を覗きに来ますとはいってました。おじさんに何かご用ですか?


ディレクター高橋:新潟入りしておりますプロデューサーの大竹が、ご挨拶したいと申しております。お声がけいただけませんでしょうか?


河井未翼:かしこまりました。おじさんに連絡しておきます。


ディレクター高橋:お願いします。



//

  1箇所目の公園での撮影を終えた未翼。2箇所目の東京駅、3箇所目の皇居周辺での撮影も終え、新潟へ行く上越新幹線の時間を待っている。同行しているマネージャーの杵渕に電話がかかってくる。



~東京駅

杵渕巴亜斗:ねえ、みはちゃん。みさから電話なんだけど、みれいちゃんにちょっとしたトラブルがあるみたいなんたけど、変わって貰える?



//

  美麗は、1箇所目の新潟市古町にある喫茶店で撮影を行っている。未翼が新潟に来るのが楽しみすぎて、早く家を出てしまい、喫茶店で時間を潰している。



~東京駅

河井未翼:(杵渕のスマートフォンを受け取り)お疲れさまです。みはです。みれいちゃん、どうかしました?



~喫茶店

樋口美彩:みはちゃん、お疲れさま。実は、みれいちゃんが緊張しちゃって、自然な笑顔にならなくて。山本フォトグラファーがお手上げ状態なの。みれいちゃんに声かけて、元気づけてくれないかな?



~東京駅

河井未翼:みれいちゃんが緊張?



~喫茶店

樋口美彩:そうなの。だから、みれいちゃんに声かけて、元気づけて。お願い!



~東京駅

河井未翼:みれいちゃんが緊張?



~喫茶店

樋口美彩:今、みれいちゃんに替わるね。


鷲尾美麗:(樋口と替わり)みはちゃ~ん、私、変。緊張しちゃって、表情がこわばっちゃう。



~東京駅

河井未翼:どうしたんですか? みれいちゃん、らしくない。もうちょっとすれば、私も新潟に着くんですから、楽しみに待っていてください。



~喫茶店

鷲尾美麗:みはちゃんに会えることが分かっていても緊張しちゃってるの。どうしよう?



~東京駅

河井未翼:私のことだけを考えて、それでも緊張するなら、大きくふぅ~ って新規呼吸してみてください。少しはリラックスできると思います。



~喫茶店

鷲尾美麗:ありがとう。やってみる。早く新潟に帰ってきてね。



~東京駅

河井未翼:では、撮影頑張ってくださいね。近くにフォトグラファーの山本さんはいらっしゃいます? いらっしゃったら、替わって貰えませんか?



~喫茶店

鷲尾美麗:山本さんに替わればいいのね?



~東京駅

河井未翼:お願いします。



~喫茶店

フォトグラファー山本:(美麗と替わり)替わりました、山本です。



~東京駅

河井未翼:みれいちゃんの件で、お願いがあるんですけど、よろしいですか?



~喫茶店

フォトグラファー山本:何でしょう?



~東京駅

河井未翼:設定では、私が新潟に来るのが楽しみすぎて、みれいちゃんは早く家を出てしまい、喫茶店で時間を潰しているという設定になっていますけど、私に本当に来て貰えるか不安でいっぱいという設定に変更したら、笑顔を求めなくてもいいような気がします。いかがでしょうか?



~喫茶店

フォトグラファー山本:それなら、笑顔なしでOKだけど、勝手に設定を変更して大丈夫?



~東京駅

河井未翼:高橋ディレクターには、私から伝えておきます。撮影を再開してください。



~喫茶店

フォトグラファー山本:了解。



~東京駅

河井未翼:みれいちゃん、何もしなくてもおきれいなので、私が合流したら、今とのギャップが際立つと思います。



~喫茶店

フォトグラファー山本:なるほど。サンキュー!! 電話切るね。



~東京駅

河井未翼:はい。(スマートフォンを杵渕に返す)


杵渕巴亜斗:みれいちゃん、大丈夫そう?


河井未翼:大丈夫だと思います。それより、高橋ディレクターにお話しないと、…


ディレクター高橋:(未翼が振り向いたところにいて)おっ、ごめん。様子が変だったので、立ち聞きさせて貰ったよ。設定変更の件、最初の現場からなら問題なし。進めて貰おう。


河井未翼:あぁ、… 説明が省けました。ありがとうございます。(微笑み)


フォトグラファー岡本:お取り込み中、よろしいですか? 新幹線の時間までまだたっぷりあるので、みはちゃん、気に入ったスチルにいいね、マークしてくれないかな?


河井未翼:操作方法教えていただければやります。



//

  フォトグラファーの岡本は、未翼の隣りにぴったり寄り添い、アプリケーションの操作方法を教える。



~東京駅

フォトグラファー岡本:みはちゃん、いい香りがする。


河井未翼:そうですか? 香水使ってないので、ボディークリームかシャンプーの匂いですかね。


フォトグラファー岡本:現役の高校生らしくていい! 今のみはちゃんのままで保存しておきたい。(微笑み)


河井未翼:プレゼントで香水いただいたら、使ってしまうと思いますけど。


フォトグラファー岡本:みはちゃんは、今のピュアな感じがいいの。いろんなものを足さなくてもかわいいからね。(微笑み)


河井未翼:はあとちゃんもそう思います?


フォトグラファー岡本:はあとちゃん?


杵渕巴亜斗:私のことです。下の名前が「はあと」っていうんです。(微笑み)


フォトグラファー岡本:みはちゃん、マネージャーを下の名前で呼ぶんだ?


河井未翼:先日、そういうルールになったんです。なので、仕方なく。


フォトグラファー岡本:いいな~ 私のこと、こはちゃんって呼んでくれる?


河井未翼:社外の方をちゃんづけで呼ぶのは、ちょっと、…(困惑)


杵渕巴亜斗:マネージャー特権ということで、おあいにくさま。(微笑み)


フォトグラファー岡本:a-Force NIIGATAの専属フォトグラファーにならないとだめ?


杵渕巴亜斗:常駐のフォトグラファーはいなくて、必要なときだけ外部委託。無理でしょう。


フォトグラファー岡本:そうなんですね。(落胆)


杵渕巴亜斗:そんなに落ち込まなくても。写真集の評価しだいで次があるかもしれないじゃないですか。そうすれば、仕事でご一緒する機会も増えて、親密になれるかもしれませんよ。


フォトグラファー岡本:親密な関係になったから、出版社お抱えのフォトグラファーでもこはちゃん呼びしてくれる?(未翼を見る)



//

  未翼は、もくもくとお気に入りのスチルにいいねを付加する作業を続けていて、杵渕と岡本の話は聞いていない。



~東京駅

杵渕巴亜斗:みはちゃん?(笑)


河井未翼:(きょろきょろして)はい?


フォトグラファー岡本:みはちゃん、…(呆然)



//

  その後、上越新幹線に乗車した未翼。車両の一部を貸し切って、車窓を眺める様子などが撮影される。


  一方の美麗は、古町の喫茶店を出て、行き交う人に未翼がいないか確認しながら、歩いて新潟駅へと向かう。途中、萬代橋で歩みを止め、万代テラスややすらぎ堤の様子を漠然と眺める。未翼と再会できない不安を抱えつつ、新潟駅に向かう様子などが撮影される。


  新潟駅。新幹線改札は、東西の2箇所。両方の改札へ向かう人の動きが見えるコンコースで未翼が来るのを待つ。新幹線が到着するたびに混雑するコンコース。1本目、2本目、3本目。その中に未翼の姿を見つけることはできない。見逃した可能性を考え、改札を出て、駅のショッピングゾーンをひと巡り。それでも未翼を見つけることはできない。吹き抜けとなっているスペースにあるベンチで少し休んだあと、来た道を戻ることにする美麗の姿などが撮影される。


  未翼、新潟駅に到着。ホームで再開する奇跡を期待し、ホームに降り立つ。連絡先の交換もなく、到着時間を伝えてもおらず、見渡しても美麗の姿はない。新幹線改札を出て、目に入ったショッピングゾーンに足を運ぶ。ゆっくりとひと巡り。買い物をしている人の中に美麗を見つけることはできない。観光案内インフォメーションを見つけた未翼は、にいがた2kmを知る。美麗と出会えそうなスポットをいくつか拾い出して、新潟駅をあとにする姿などが撮影される。


  萬代橋のたもとまで歩いてきた未翼。ふと目をやった信濃川右岸のコンテナが目に留まる。そこは万代テラス。人影を見つけ行ってみる。見覚えある後ろ姿に、未翼は声を掛ける。



~万代テラス

河井未翼:みれいちゃん!



//

  声に反応して振り返った美麗に、未翼はペアのイヤリング、日付と「新潟で出会えたら、奇跡ではなく運命」と書かれたメモ書きを見せる。



~万代テラス

河井未翼:こんにちは。会えましたね。(笑顔)


鷲尾美麗:みはちゃん、見つけてくれてありがとう。(耳にしたイヤリングを指差す) 新潟に来てくれたのに、会えなかったからどうしようって、ずっと考えてた。あちこち立ち寄って来た? どうしてここって分かったの?


河井未翼:みれいちゃんがいて、絵になるところかなと思って。そこの萬代橋を渡ろうとしたら、ここが目に入って来てみました。(微笑み)


鷲尾美麗:ここで私が絵になっていた?


河井未翼:とっても。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃん、お世辞がうまいのね。(微笑み)


河井未翼:(手を振って)お世辞じゃないです。


鷲尾美麗:みはちゃん、新潟には新幹線で来たんだよね? 新潟駅に行ったら、みはちゃんを見つけられるんじゃないかと思って、新幹線改札内にも入ったんだけど、見つけることできなくて。何時に着いたの?


河井未翼:10:40くらいに到着した最速タイプの新幹線です。


鷲尾美麗:本当に?


河井未翼:はい。


鷲尾美麗:10:20くらいに到着した新幹線まで改札に向かう人を見ていた。もしかして見逃してしまったのかも? と思って、ショッピングゾーンを見て回って。結局、見つけることできなくて、ここに。


河井未翼:新潟駅でニアミスしていたみたいですね。


鷲尾美麗:私がもうちょっと新潟駅にいたら、新潟駅で再会できていたのに、本当にごめんね。


河井未翼:みれいちゃんが謝ることじゃないです。日付しか決めないで、再会しようとしていたんですから。


鷲尾美麗:奇跡の再会できたね。(微笑み)


河井未翼:はい。(微笑み)


鷲尾美麗:年齢も違えば、住んでいる場所も違うのに、こうして再会できた。やっぱり、私たちは運命の赤い糸で結ばれているんだね。(笑顔)


河井未翼:運命の赤い糸? 恋人同士だったんですか?(笑)


鷲尾美麗:前世では恋人同士だったんじゃない? きっと、時空を超えて惹かれ合う力が再会させてくたの。(微笑み)


河井未翼:私、彼女? 彼氏?


鷲尾美麗:みはちゃんが彼女、私が彼だと思う。



//

  美麗は、左手を自分の腰にやり、腕を組むように未翼に合図を送る。



~万代テラス

河井未翼:(クスッと笑い)イケメンを演じてくれるんですか? 女の子同士なので、手と手を繋いだ方がいいんじゃないですか?


鷲尾美麗:それなら、恋人繋ぎでいいかな?


河井未翼:みれいちゃんは、私を彼女にしたいんですか?(微笑み)


鷲尾美麗:私の自慢の彼女!(微笑み)


河井未翼:困った大人ですね~ (笑って右手を伸ばす)


鷲尾美麗:ありがと♡(微笑み)



//

  未翼と美麗は、寄り添って恋人繋ぎをする。再会した記念、初めて恋人繋ぎをした記念に、美麗はスマートフォンでツーショット撮影する。



~万代テラス

河井未翼:(スマートフォンを取り出し)あっ、…


鷲尾美麗:みはちゃんも右利きだよね?


河井未翼:はい。右手を繋いだままだと、左手だけではスマホ操作できません。


鷲尾美麗:繋ぐ手、交代。



//

  未翼と美麗は、左右入れ替わり、未翼もスマートフォンでツーショット撮影する。



~万代テラス

鷲尾美麗:みはちゃん、行きたいところある?


河井未翼:みれいちゃんのおすすめする場所なら、どこでもいいですよ。


鷲尾美麗:近いところで、景色を見に行こう!


河井未翼:海とか?


鷲尾美麗:海も川も山も街も。


河井未翼:(周囲を見渡し)近いところ? (指差し)あのビル、展望室があったりしますか?


鷲尾美麗:ご明察。行きましょう!



//

  未翼が指差した新潟みなとコンベンションセンターに併設する新潟みなとビルは、35階建ての最上階に展望室を有する。360度見渡すことができ、眼下の新潟市街、日本海、佐渡島、県境の山並みなどを眺めることができる。



~万代テラス

ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す。



~万代テラス

ディレクター高橋:河井さん、鷲尾さん、台詞パート、いいですよ。この調子でお願いします。


プロデューサー大竹:台詞パート、よく考えたものだ。基本設定だけ決めて、あとはふたりのアドリブ。知らない人がムービー観たら、すごい新人女優が登場してきたと思うんじゃないか。(笑)


鷲尾美麗:ほぼ日常会話ですから、自然に喋ることができますよね。(微笑み)


河井未翼:今朝、緊張して、… といっていた人の発言とは思えませんね。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃんが来てくれたら、元気100倍!(微笑み)



//

  新潟みなとビルの最上階に展望室に移動した未翼と美麗。初めて新潟に来た未翼は、眼下の新潟市街や周囲の風景に目を輝かせる。



~展望室

河井未翼:背の高いビル、新潟にもあるんですね。ニョキニョキって。(微笑み)


鷲尾美麗:100mを超えるのは、数えるくらいしかないけどね。


河井未翼:この下に流れている川が信濃川ですよね?


鷲尾美麗:日本一長い川、信濃川よ。


河井未翼:予想していたより川幅が狭いです。


鷲尾美麗:新潟は昔から洪水に悩まされていて、県の中央部で信濃川から日本海に注ぐ分水路を明治から太正にかけてつくったの。その影響で新潟市に流れる水量が減ったことで、信濃川を埋め立てて陸地をつくって、今のような新潟市になったの。このビルが建っている万代島は、埋め立てて地続きになる前は中州で、名前の通りに島だったのよ。


河井未翼:へ~ みれいちゃん、詳しいですね。


鷲尾美麗:小学生のときに、授業で習いました。


河井未翼:そうだったんですね。(指差し)あの橋の向こう側、河川敷に芝が生えているんですかね? 人がお散歩したり、座って何かしてるみたいですけど、市民の憩いの場みたいになっているんですか?


鷲尾美麗:そうそう。やすらぎ堤っていって、今日みたいにお天気がいいと、お散歩したり、この時間だと、ピクニック気分でランチしてる人が多いのかも?


河井未翼:ピクニック気分ですか。いいですね。(微笑み)


鷲尾美麗:それじゃあ、何か食べるものを買って、やすらぎ堤でランチにしようか?


河井未翼:そうしましょう!(微笑み)


鷲尾美麗:でもな~ テイクアウトできるものって、大したものないしな~(悩む)


河井未翼:はい。食べたいものがあります!(挙手)


鷲尾美麗:何が食べたいの? お寿司とか?


河井未翼:食べものについては調べてきました。(微笑み) イタリア料理でない "イタリアン" とか、黄色いカレー "バスセンターのカレー" がおいしいって、ネット検索で見ました。あと、卵で綴じないカツ丼。名前は確か、…(思い出そうとする)


鷲尾美麗:タレカツ丼のことね。


河井未翼:それです!


鷲尾美麗:B級グルメばっかり。(苦笑)


河井未翼:だめですか? せっかく新潟に来たので、新潟らしいものを食べて帰りたいんですけど。


鷲尾美麗:新潟といえば、お米だと思うけど、まあいいか。みはちゃんのいう通りにしよう。(微笑み) でも、タレカツ丼はテイクアウトできないかも。


河井未翼:じゃあ、タレカツ丼は諦めて。お米? そうですよね。おにぎりもついでに食べたいですね。(ニコッと笑う)


鷲尾美麗:みはちゃん、そんなにいっぱい食べられる?


河井未翼:シェアしたら、食べられると思います。


鷲尾美麗:Good idea!(微笑み)


ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す。



~展望室

プロデューサー大竹:このあとの一連の流れ、やすらぎ堤のランチシーン終えたら、みんなで休憩タイムです。イタリアン、バスセンターのカレー、おにぎりをたくさん用意させてあります。もうひと頑張り、頼みますよ。



//

  大竹の撮影スタッフらへの声掛けに、スタッフらは「タレカツ丼は?」「半身揚げは?」「お寿司は?」「海鮮丼は?」と次々に食べたいものがあるのか尋ねる。



~展望室

プロデューサー大竹:ごめん。それらは用意してない。どうしても食べたければ、自腹でお願いしますよ!



//

  スタッフらから「まあ、全部は無理だよな」「タレカツ食べてえ~」「自腹かよ~」との声がこぼれるも、次の準備に移る。



~展望室

ディレクター高橋:おいしいお寿司とおいしい日本酒。一泊でもすれば、堪能できるんですけどね。


プロデューサー大竹:お寿司、テイクアウトできるところがあるんですよ。そこに予約してあるんで、仕事終わりに取りに行って、駅の売店でおいしい日本酒買えば、帰りの新幹線は幸せ気分です。(微笑み)


ディレクター高橋:大竹さん、ちゃっかりしてますね~ 私にもお寿司のテイクアウトできるところを教えてくださいよ。


プロデューサー大竹:あとで、メッセンジャーで連絡しますよ。


ディレクター高橋:よろしくお願いします。(微笑み)


プロデューサー大竹:鷲尾さんは、お酒飲まれるんですか?


鷲尾美麗:メンバーと食事に行ったときに、レモンサワーとかを少し飲むくらいで、強くはありません。


プロデューサー大竹:今作がヒットして、次回作もすることができたら、みんなで打ち上げやりたいですね。


鷲尾美麗:そうなるといいですね。


フォトグラファー山本:鷲尾さんのお酒に酔った姿もぜひスチルに収めさせてください。


鷲尾美麗:アイドルの間は、事務所NGだと思います。


フォトグラファー山本:お酒に酔って、乱れた鷲尾さん。絵になると思ったんですが、残念です。


鷲尾美麗:リアルにお酒を飲まないといけないのでしたら、私がOKしません。私がお酒に酔って、乱れた姿なんて、写真集だとしても見るのはいやでしょ、みはちゃん?


河井未翼:私、みれいちゃんの酔った姿を見たことないので、何ともいえません。乱れたってことは、手に負えない状態。何かショックなことがあったとか、お酒に依存するようになったとか、そういう意味なのかもしれませんが、ストーリーしだいじゃないかなと思います。


フォトグラファー山本:ストーリーしだい? (手を1回叩き)ああ、いい案が浮かびました。鷲尾さんが河井さんに、…


鷲尾美麗:(手で制して)その先は聞かないことにします。フィクションだとしてもです。(少し怒り気味)


フォトグラファー山本:鷲尾さんがこれまで見せたことない姿を見ることができるんですよ。河井さん、いい案だと思うんですが、この案を想像できます?


河井未翼:みれいちゃんが私に?(考える) うふふ、…(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃん、いわないでね!(釘を刺す) 早く次に行きましょう。



//

  未翼と美麗は、レジャーシート、ウェットおしぼり、イタリアン、バスセンターのカレー、おにぎり、サラダ、飲料などを購入。信濃川右岸のやすらぎ堤に出かける。レジャーシートを敷いて座り、イタリアン、カレー、サラダをシェアして取り分ける。



~やすらぎ堤

鷲尾美麗:みはちゃん、お腹すいたでしょ。炭水化物多めだけど、食べましょ!


河井未翼:確かに。おにぎり2個にした分、カレーをミニサイズにして調整したつもりでしたけど、炭水化物多めになりましたね。これにタレカツ丼もあったら、すごいことになってます。(微笑み)


鷲尾美麗:何から食べる?


河井未翼:まずは、飲みものを少し飲んで、サラダで唾液を出して、口の中を潤します。


鷲尾美麗:(笑いながら)みはちゃん、いつもそんなこと考えて食べ始めるの?


河井未翼:おいしいものを食べるときは、どの順番で食べたらおいしく感じるかを考えます。


鷲尾美麗:それじゃあ、みはちゃんの食べる順番を真似てみることにする。いただきます!



//

  美麗は、ペットボトルのアイスティーを少しだけ飲むと、サラダを口に運ぶ。



~やすらぎ堤

河井未翼:(両手を合わせて)私もいただきます!



//

  未翼は、ペットボトルのレモンティーを少しだけ飲むと、サラダを口に運ぶ。



~やすらぎ堤

鷲尾美麗:みはちゃん、次は?


河井未翼:1個目のおにぎりを半分くらい。みれいちゃんのおすすめの鮭、… 新巻鮭じゃなくて、何でしたっけ?


鷲尾美麗:塩引鮭。村上市の特産品。



//

  未翼は、塩引鮭の入ったおにぎりをひと口。最初のひと口には、具の塩引鮭が入っておらず、もうひと口。



~やすらぎ堤

河井未翼:お米のひと粒ひと粒から甘さが感じられて、ご飯だけでもおいしいですけど、鮭の塩加減がちょうどよくて、ご飯のおいしさをさらに引き立ててるような気がします。鮭自体もおいしさがぎゅっと詰まっている感じでおいしいです。


鷲尾美麗:みはちゃん、食レポお上手。(拍手)


河井未翼:塩っぱいだけの鮭じゃなくて、味に深みを感じます。


鷲尾美麗:軒先とかに鮭をぶら下げて、風にさらして熟成させることでおいしくなってるみたいよ。


河井未翼:手間をかけることで、おいしさがつくられているんですね。みれいちゃん、特産品にも詳しいんですね。


鷲尾美麗:ローカルのテレビ番組で紹介されたりするから、たまたま覚えていただけ。次は、何を食べるの?


河井未翼:イタリアンにします。かかっているソース違いで、いろんな種類がありましたね。オリジナルのイタリアンは、トマトソースがかかっているんですね。


鷲尾美麗:期間限定のイタリアンも販売されることがあるから、いろんな味が食べられる。しばらく食べないでいると、無性に食べたくなるときがある。バスセンターのカレーもそう。


河井未翼:いわゆるソウルフードですね。



//

  未翼は、太麺の焼きそばにトマトソースがかかったような新潟のソウルフード、イタリアンをフォークでくるくるっと巻いて口に運ぶ。



~やすらぎ堤

河井未翼:(目を大きく見開いて)おいしい! 見た目、ナポリタンの親戚みたいな感じですけど、ナポリタンがパスタとソースで、1+1=2だとしたら、このイタリアンは、1+1=3みたいな感じです。いろんなソースにこの太麺が合うってことは、魔法の太麺なのかもしれませんね。



//

  未翼は、イタリアンをとても気に入った様子で、フォークでくるくるっと巻いては口に、巻いては口へと運んでいる。美麗もそんな未翼を見ながら、イタリアンを口に運ぶ。



~やすらぎ堤

鷲尾美麗:イタリアン、とても気に入ったみたいだけど、シェアするんじゃなくて、1個全部がよかった?(微笑み)


河井未翼:次に新潟に来たときの楽しみにとっておきます。


鷲尾美麗:えっ!? また新潟に来てくれる?


河井未翼:みれいちゃんに会いに。(微笑み)


鷲尾美麗:嬉しい!(満面の笑み) みはちゃんに出会えて幸せ。


河井未翼:私もみれいちゃんに出会えて幸せです。(微笑み)



//

  未翼と美麗は、イタリアンを完食。塩引鮭のおにぎりも完食して、サラダや飲料で口の中をリセット。バスセンターのカレーに手を伸ばす。



~やすらぎ堤

鷲尾美麗:見た目から想像できないスパイシーなカレーになってるから、辛いの苦手だったら、ひと口目はご飯多めにした方がいいよ。


河井未翼:辛いの苦手じゃないので大丈夫です。(ひと口頬張り、口に入れたまま)う~ん。(頷く)


鷲尾美麗:ね? 意外と辛いでしょ?


河井未翼:(飲み干し)このくらいの辛さは大丈夫です。いろんなものが足されたごちゃ混ぜの味じゃなくて、素材は少ないけど、ひとつひとつの素材が生きてる感じのカレーですね。これもソウルフードで、市民から愛されてるカレーなんですよね?


鷲尾美麗:そう。新潟市は全国でも有数のカレールウ消費量で、家でカレーをよく食べるけど、バスセンターのカレーも食べたくなる。そんな感じ。(微笑み)


河井未翼:ご飯がおいしいから、カレールウの消費量が多いのも頷けます。


鷲尾美麗:でもね、新潟市は全国でも有数のラーメン支出額が多い都市でもあるの。


河井未翼:ということは、ラーメンもおいしいということですよね?


鷲尾美麗:おいしいお店がたくさんある。


河井未翼:また絶対に新潟に来ないといけませんね。


鷲尾美麗:みはちゃん、新潟に来る目的、食が主目的にならないわよね? さっき、私に会いに来るっていってくれたばっかり、…(不安)


河井未翼:心配しないでください。みれいちゃんに会いに来たついでに、食も堪能します。(微笑み)


鷲尾美麗:主目的、私に会いに来ることでお願いね。



//

  未翼と美麗は、買ってきた食べものをすべて完食。食べ終えた容器などの片付けも終える。



~やすらぎ堤

河井未翼:やすらぎ堤、気持ちいいですね。お昼寝したくなります。(微笑み)


鷲尾美麗:いくら田舎でも、ここでお昼寝するのは危ないと思う。目を開けたまま横になるくらいならいいと思うけど。


河井未翼:は~い。(微笑み)



//

  未翼は、両腕を上に挙げたまま、レジャーシートにバタンと背中から倒れ込む。



~やすらぎ堤

河井未翼:みれいちゃん、空がとってもきれいですよ。


鷲尾美麗:そうかな?


河井未翼:みれいちゃんも横になって、空を見上げて見ません?


鷲尾美麗:リラックスタイムもいいかもね。



//

  美麗も未翼がやったと同じように、両腕を上に挙げたまま、レジャーシートにバタンと背中から倒れ込む。



~やすらぎ堤

鷲尾美麗:本当だ。空がとってもきれい。



//

  美麗は、未翼の手首付近を握って腕を下ろさせると、恋人繋ぎをして未翼を見る。



~やすらぎ堤

河井未翼:(美麗を見て)どうしたんですか?


鷲尾美麗:こうしてずっと同じ空を見ていたいね。


河井未翼:そうですね。


ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す。昼休憩に入る。



~やすらぎ堤

プロデューサー大竹:ふたりともお疲れさま。午後からもこの調子でお願いします。


鷲尾美麗:お疲れさまです。何とか半分終えることができました。ありがとうございます。


河井未翼:お疲れさまです。午後からも頑張ります。


プロデューサー大竹:ところで、河井さんのおじさん、お見えになってますか?


河井未翼:高橋さんの伝言は伝えましたので、見に来てくれているはずです。(周囲を見渡す)


鷲尾美麗:しいなさん、来てるの?


河井未翼:(周囲を見渡しながら)はい。でも、どこにいるんだろう、…


鷲尾美麗:(椎名探しに加わり)しいなさん、みっけ!(微笑み)


杵渕巴亜斗:(立ちはだかるように割り込み)ちょっと待って~ 何も知らない人も見てるから、指は差さないで。私が呼んでくるから、みはちゃんのおじさまの顔立ちとか、今の服装とか教えてくれる?


河井未翼:スチル写真、はあとちゃんのメッセンジャーに送りますね。


杵渕巴亜斗:ありがとう。服装は?


鷲尾美麗:チェックのシャツに、下はデニム。


杵渕巴亜斗:了解。いる場所は、さっきのみれいちゃんの視線の先でいいよね?


鷲尾美麗:はい。ここからちょっとだけ下流側。


杵渕巴亜斗:大竹さん、少々お待ちください。


プロデューサー大竹:すみません。よろしくお願いします。


樋口美彩:みれいちゃん、みはちゃんには関係ないから、向こうで休憩。


プロデューサー大竹:午後もありますから、ゆっくり休んでください。


鷲尾美麗:大人のお話ですか?


プロデューサー大竹:すみませんね。


鷲尾美麗:しいなさんとお話したかったんですけど、仕方ありません。みはちゃん、休憩しよう?


河井未翼:は~い。



//

  未翼と美麗は、マネージャーの樋口に連れられ、休憩用に用意したテントへと向かっていく。






【 13 】


  椎名とプロデューサーの大竹は、名刺交換して挨拶を交わす。



~やすらぎ堤

プロデューサー大竹:素敵な原案をお考えいただいて、本当にありがとうございます。発売日の要望もあり、発案から始めたのでは無理難題だったと思います。原案におふたりが希望する情景や設定が加わって、素敵なストーリーになったと思います。当初、特典映像としてメイキング映像を収録するだけの予定でしたが、よりストーリーを際立たせたくて、ショートムービーも制作させていただくことにしました。台詞パートも基本設定だけ決めて、あとはふたりのアドリブ。演じるのではなく、普段のおふたりの会話の延長線上というのが、ここまで順調に撮影が進んでいる要因だと思います。


川原椎名:アドリブで繋いだショートムービーというのは、五十嵐GMの発案だったと思います。私ではありません。


プロデューサー大竹:いえいえ。それも原案あってのもの。五十嵐さんに承諾いただいて、こちらご用意させていただくことにしました。(タブレットを取り出す)


川原椎名:契約書? 印税ですか?


プロデューサー大竹:クレジットだけでは申し訳ありませんので。


川原椎名:そのようなつもりはまったくありませんので困るんですが、…


プロデューサー大竹:今作がヒットすれば、次回作もと考えております。その際もお力添えいただきたいと思っており、それならば、今作から契約していただくのが筋かと思います。ぜひともお願いいたします。


川原椎名:大したことは何もできませんが、それでもよろしければ。



//

  椎名は、大竹からスタイラスペンを受け取り、契約書にサインする。



~やすらぎ堤

プロデューサー大竹:ありがとうございます。後日、書面を送付させていただきます。さっそくで申し訳ありませんが、書籍化を実現させたいものとかありますか。写真集第2弾の企画とかありますか。


川原椎名:hareitionの第2弾やa-Force NIIGATAのアーティストブック第2弾でしたら、考えてあります。あと、書籍でないものもあります。


プロデューサー大竹:ぜひお聞かせください。


川原椎名:五十嵐GMの承諾というのは、今作の印税の契約に関するものだけですよね? 何か問題が生じるといけませんので、フロントを通すことにします。


プロデューサー大竹:ああぁ、… そうですよね。気持ちが逸ってしまい、大変失礼しました。


川原椎名:素人相手に、期待していただいているだけでもありがたいことですから、とんでもありません。しかし、どうしてそんなに気持ちが逸っているのでしょう?


プロデューサー大竹:単刀直入に申しますと、早くa-Force NIIGATAとコネクションを築いて、出版に関して囲い込みをしたい。そう考えております。


川原椎名:込み入ったことになりますが、それはブルースカイパブリッシングの方針として、a-Force NIIGATAと関係を築きたいということですか。


プロデューサー大竹:現時点では、この写真集に直接携わる者だけです。営業に堅物が多く、実績がないとして、まだ同じ方向を向いていないというのが現状です。高橋とは、おふたりの人気から写真集の初版50,000部としたいと話していましたが、営業は初版20,000部の主張を曲げませんでした。


川原椎名:20,000部に50,000部。初めてだとそうなりますか。


プロデューサー大竹:初版見積もりが甘すぎると?


川原椎名:素人がまだ撮影中の作品をどうのこうのいうのは、おかしな話ですが、ふたりの人気からすれば、予約開始初日で100,000部はいけると思います。


プロデューサー大竹:おお! 何と心強い。


川原椎名:比較対象をAfroditiの3人とすれば、彼女たちの最新写真集が300,000部だったと思います。彼女たちがU-chライブストリーミングすると、500,000人ほどの視聴者数です。単純に5分3が写真集を購入した計算です。hareitionのふたりは、U-chライブストリーミングで1,200,000人の視聴者数がありますから、5分の3が購入してくれれば、720,000部という計算が成り立ちます。人数ではありませんが、 "VENUS AWARD" でのポイント獲得数を基準とすると、Afroditiの3人の今年の総獲得ポイントは、およそ1,500,000ポイント。50,000ポイントで写真集10,000部という計算になります。hareitionのふたりの総獲得ポイントは、およそ600,000ポイント。50,000ポイントで写真集10,000部ならば、120,000部という計算が成り立ちます。雑な計算で大きな隔たりのある数字ですが、目標にはなろうかと思います。


プロデューサー大竹:720,000部に120,000部ですね。俄然やる気が出ました。(笑)


川原椎名:発売日まで日にちがないからと、売る気に逸って、サンプルやオフショットのスチルなどバンバン公開するんじゃなく、発売前はふたつの表紙だけでいいと思います。ふたりのフォトグラファーがいることは、撮影を見た誰かがSNSに投稿してばれるはずです。ふたつの表紙とふたりのフォトグラファーという少ない情報から、ファンに想像を膨らませ、写真集を手に取らせるように持っていった方がいいと思います。それと、発売日前日にキーアイテムのスチルだけ公開するのもいいと思います。


プロデューサー大竹:ファンのもっと知りたいという心理を逆手に取る手法ですか。おもしろそうです。やってみましょう。


川原椎名:編集部も少しは楽になりそうですか。(微笑み)


プロデューサー大竹:SNS更新する担当者だけ、ちょっとだけですね。(笑) 特典映像については、何かお考えありますか。


川原椎名:後日の特典映像公開用にQRコードを掲載すると伺っています。QRコードの漏洩対策をお考えですか。


プロデューサー大竹:特典映像のただ見対策ですよね? これといって考えていません。


川原椎名:写真集購入者に、レシートや納品書を保管しておくことを事前に告知、写真集のQRコード掲載ページにも記載。レシートや納品書をスマートフォンなどのカメラで撮影してアップロード。購入者であることを確認して、ユーザー登録。後日、視聴用URLを通知。期間限定の映像公開とすれば、ある程度のただ見対策にはなると思います。


プロデューサー大竹:システム構築が必要だと思いますが、そこまでする必要あるでしょうか。


川原椎名:U-PROは、プラットフォーマーでネットに強い企業グループです。すでにあるシステムを持ってくるだけで済むと思います。1度行えば、次からも使えます。対応しておいた方がいいと思います。


プロデューサー大竹:早急に検討します。特典映像そのものについて、何かご提案は?


川原椎名:すでに半分収録が終わっているところで対応可能か疑問もありますが、ショートムービーの公開までに時間を要するならば、風景が中心で、ふたりの台詞のないイメージ映像を第1弾として公開。この映像の時間は短くていいと思います。60秒とか90秒とか。そして、間隔を長めに開けて、第2弾としてショートムービーを公開。最後に第3弾として、また少し期間を開けて、メイキング映像の公開。写真集購入者の満足度も高まると思います。


プロデューサー大竹:3段階ですね。こちらの編集負荷を考えると、ありがたいご提案です。ただ、内容、公開予定日の変更となると、五十嵐さんとの再調整が必要です。


川原椎名:素人が思っているほど、簡単に変更はできませんよね。失礼いたしました。


プロデューサー大竹:そんなことはありません。ご提案を踏まえて、ひとりでも多くの人から写真集を手にして貰えるように頑張ります。これからも何とぞよろしくお願いします。


川原椎名:お役に立てるか分かりませんが、こちらこそよろしくお願いいたします。



//

  椎名は、大竹と別れると、会話の終わるのを待っていた杵渕とともに、休憩中の未翼と美麗がいるテントへと向かう。



~やすらぎ堤

杵渕巴亜斗:みはちゃん、おじさまが帰られるそうだけど、お話する?


河井未翼:は~い。(テントの外に出る) 本当に帰っちゃっていいんですか? 見どころたくさんありますよ。


鷲尾美麗:(テントの外に出て来て)クライマックスは、期待していてくださいね。(微笑み)


川原椎名:みれいちゃん、1作目で羽目は外さないでね。(微笑み)


鷲尾美麗:しいなさんも五十嵐GMみたいなこというんですね。(微笑み)


川原椎名:1作目が肝心だよ。(微笑み)


鷲尾美麗:はい。胸に刻んでおきます。


河井未翼:原案がいいこともありますけど、ここまでいい感じに撮影できていますから、出来上がりに期待していてくださいね。(微笑み)


川原椎名:それじゃあ、ふたりとも頑張ってね。(手を振り、その場をあとにする)






【 14 】



//

  hareitionの写真集撮影。午後は、萬代橋を渡り、古町へ移動して街ぶら。休憩するためにスイーツ店が併設される喫茶店に入る。



~喫茶店

鷲尾美麗:朝からたくさん歩いたので、ちょっと足休めさせてね。決して、歳のせいじゃないからね。(微笑み)


河井未翼:私も朝からたくさん歩いてるので一緒です。(微笑み) みれいちゃんに会えるのが楽しみすぎて、早く目覚めてしまって。近くの公園をお散歩してから東京駅に移動して、それでも時間があるから、皇居近くをお散歩して、それから新幹線に乗って来ました。


鷲尾美麗:みはちゃん、何時に起きたの?


河井未翼:05:00ちょっと前くらい。


鷲尾美麗:家を出たのは?


河井未翼:06:00くらい。


鷲尾美麗:新幹線に乗ったのは?


河井未翼:09:00ちょっと過ぎ。


鷲尾美麗:(クスクス笑いながら)2度寝しても全然大丈夫なのにね。


河井未翼:(少し不機嫌そうに)そんな風に笑わないでください。ところで、みれいちゃんは、何時に起きたんですか?


鷲尾美麗:いつもと一緒の06:00くらい。


河井未翼:家を出たのは?


鷲尾美麗:いつもより少し早い07:30くらい。


河井未翼:そのまま新潟駅に?


鷲尾美麗:朝早くからやっている喫茶店でお茶して、新潟駅に着いたのは、09:00ちょっと前くらい。


河井未翼:大人の余裕を持った行動のようで、心は不安でいっぱいだったんですよね?


鷲尾美麗:心の余裕はなかったかな。みはちゃんがせっかく来てくれたのに、会えなかったらどうしようと思ってた。会えなかった場合、連絡先交換していなかったから、謝ることもできなくてお別れ。それは絶対に避けたくて、とても不安だった。だから、再会できて本当に幸せ。(微笑み)


河井未翼:奇跡の再会。再会できたらドラマチックですけど、無謀ですよね。(微笑み) 連絡先も交換せず、再会する日付だけ。時間や待ち合わせ場所も指定なし。


鷲尾美麗:だから、私たちは運命の赤い糸で結ばれているんだって。(笑顔)


河井未翼:みれいちゃんは、どうしてもそちらの方向に持っていきたいんですか?(微笑み)


鷲尾美麗:初めて会ったとき、列になって待っているときにみはちゃんが隣りにて、こんなかわいい子が存在するの? と思って、私から声をかけて。みはちゃん、最初はバリア張ってて、返事くらいしかしてくれなかったけど、徐々に打ち解けて。座席も隣り同士で、そのときは偶然ってあるんだなと思っただけだけど、いっぱいいっぱいお話して意気投合。みはちゃんも私のことを好きっていってくれて、再会する約束までしたら、不思議ではないでしょ?


河井未翼:みれいちゃん、お美しのに飾ったところがない素敵な大人の女性で、憧れの対象として大好きなんですよ。


鷲尾美麗:そう、…(ニコッと笑う)


河井未翼:その笑顔、何に対しての笑顔ですか?


鷲尾美麗:みはちゃん、かわいいなと思って。


河井未翼:ちょっとバカにしてます?


鷲尾美麗:全然そんなことないよ。(微笑み) 話変えるけど、甘いもの食べない? ランチはデザートなしだったから、ちょうどよくない?


河井未翼:いいですね。(微笑み)



//

  未翼と美麗は、併設しているスイーツ店に移動。購入したものを喫茶店で食べられるようになっている。



~スイーツ店

鷲尾美麗:みはちゃん、決まった?


河井未翼:みんなおいしそうで困ってます。(微笑み) (指差し)この越後姫って、いちごのことですよね?


鷲尾美麗:甘くておいしい新潟のブランドいちご。いちごショートはおすすめ。


河井未翼:おいしそうですものね。でも、こっちの濃厚チェコショートもおいしそうだし、こっちのチーズケーキも、…


鷲尾美麗:ねぇねぇ、みはちゃん。そうしたら、(指差し)このスーパーいちごパフェにしない? 越後姫のいちごがたくさん入ってるし、いちごムースの層もある。チョコプレートもあるし、チョコムースの層もある。生チーズケーキの層もあるよ。みんな入ってる!


河井未翼:そうします。パフェに決定!(微笑み)



//

  未翼は、先に喫茶店に戻り、美麗がオーダーすることに。そのとき、美麗が店員に何か尋ねると、店員は厨房に確認。店員の返答を受けて、美麗はオーダーする。美麗も喫茶店に戻り、未翼としばらく会話をしていると、スーパーいちごパフェが届く。



~喫茶店

河井未翼:えっ!? みれいちゃん、違うものオーダーしてません? 大きすぎますよ。


鷲尾美麗:スーパーいちごパフェをシェアして食べる、スーパーいちごパフェデラックス!(笑) 量は2.5倍だって。


河井未翼:(少し困った表情で)食べ切れるとは思いますけど、このあと動けなくなっちゃいそうです。


鷲尾美麗:このあとのことは心配なし。ちゃんと考えてあるから。まずは、記念のスチルを撮ってから食べましょ!(微笑み)



//

  未翼と美麗は、スーパーいちごパフェデラックスを前にしたツーショットなどをスチル撮影して楽しむ。



~喫茶店

鷲尾美麗:最初は、みはちゃんが越後姫を食べるところから。(いちごをスプーンに取り)はい、あ~ん!(ニコッと笑う)


河井未翼:やっぱり、これがしたくてシェアできる大きなパフェにしたんですね。(微笑み)


鷲尾美麗:早く、あ~んして。(微笑み)


河井未翼:(口を開け)あ~ん。


鷲尾美麗:(口にいちごの乗ったスプーンを入れ)どう?


河井未翼:すごく甘くてみずみずしい。これはいっぱい食べたくなりますね。(微笑み)


鷲尾美麗:気に入ってくれてよかった。越後姫いっぱい食べていいよ。でも、その前に、私にも。(口を開ける)


河井未翼:もう。あまえん坊さんですね。(いちごをスプーンに取り)あ~ん。


鷲尾美麗:(口にいちごの乗ったスプーンを入れて貰い)う~ん。おいしさ倍増。(微笑み)



//

  おしゃべりをしながらも、ふたりの手は止まらず、パフェはあっという間になくなる。



~喫茶店

鷲尾美麗:ふ~、食べ終わった。ランチのあと、少し動いたとはいえ、甘いものは~



//

  「別腹だよね~」と未翼と美麗の意見が一致。ふたりで笑う。



~喫茶店

河井未翼:さっき、このあとのことは心配なしといってましたけど、みれいちゃんの計画ではどうなっているんですか?


鷲尾美麗:水族館に行って、イルカショー観ましょう。


河井未翼:新潟市に水族館があるんですか?


鷲尾美麗:ここからなら歩いても行けるけど、これまでいっぱい歩いたから、バスで行きましょう。


河井未翼:だから、いっぱい食べて動けなくなっても心配ないと?


鷲尾美麗:正解!(微笑み)


ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す



~喫茶店

フォトグラファー岡本:本当においしそうに食べるなぁ、… 完食しないで、ちょっとくらい残しておいてくれてもいいのに、…(残念がる)


ディレクター高橋:パフェ食べてる時間はないですよ。イルカショーに間に合わなくなります。


フォトグラファー岡本:分かってます。



//

  パフェに未練がある岡本は、未翼が食べ終えたスプーンを素早く掴んで口に運ぶ。



~喫茶店

鷲尾美麗:(びっくりして)えーっ!!



//

  みんなの視線が美麗に向く。



~喫茶店

ディレクター高橋:どうかしました?



//

  美麗が指差した先に、スプーンを加える岡本がいる。



~喫茶店

河井未翼:(笑いながら)岡本さん、そんなにパフェ食べたかったんですか?


鷲尾美麗:いっておくけど、みはちゃんのスプーンだらかね。


ディレクター高橋:完全に確信犯。


河井未翼:(恐る恐る)岡本さん、間接キスになること知っててスプーン取りましたよね?


フォトグラファー岡本:(ニコッと笑い)おいしい~


フォトグラファー山本:(軽蔑の眼差しで)変態。



//

  未翼と美麗は、小型バスで運行されている観光循環バスに乗り、水族館に移動する。水族館の前には日本海が広がっていて、初夏の日差しでキラキラと海が輝いている。水族館のイルカショーは、ドルフィン・スタジアムで行われる。イルカの水しぶきが飛んでくる可能性のある観客席から少し離れて座る。



~水族館

河井未翼:私、イルカショー初めてなんです。


鷲尾美麗:よかった。いい思い出になるね。


河井未翼:水しぶきの注意がある席より離れて座ったのは、この辺りまで水しぶきが飛んでくる可能性があるんですか?


鷲尾美麗:もしかしたらね。濡れちゃったら大変だし。


河井未翼:前の席で雨具を着ている人は、水しぶきを体感したいってことなんでしょうね。


鷲尾美麗:みはちゃん、水しぶき体感したかった?


河井未翼:雨具着てても、顔を出していたら、水が入ってきて濡れちゃいますよね。きっと。


鷲尾美麗:たぶんね。



//

  イルカショーが始まる。音楽に合わせて、イルカが華麗なジャンプを行うたびに、未翼と美麗は、拍手をしたり、歓声を上げたりする。そして、ショーの目玉のひとつ、大きなイルカが観客席側でジャンプ。入水時に水しぶきが上がると、前方席にはバケツを引っくり返したような大量の水が降りかかり、客席から悲鳴が上がる。水しぶきは、直接には未翼と美麗の席には届かないが、霧雨状になって肌を濡らす。



~水族館

河井未翼:すご~い。スチームみたいなのがここまで来ました。(微笑み)


鷲尾美麗:もう少し前に座って、ギリギリを体感した方がよかったかな?(微笑み)


河井未翼:真夏の暑い日だったら、ちゃんと着替えの準備をして、前の席でバシャ~ンと水をかぶるのも楽しそうですね。(笑)


鷲尾美麗:水をかぶってみたい?


河井未翼:1回試してみたいです。(微笑み)


鷲尾美麗:私は遠慮して、後ろで撮影係でもしてます。


河井未翼:一緒に体験してくれないんですか?


鷲尾美麗:ほら、持ち物も濡れたりするといけないでしょ。後ろで荷物管理と撮影係してあげる。


河井未翼:残念です。


鷲尾美麗:あれれ、…


河井未翼:どうしました?


鷲尾美麗:水をかぶるのを1回体験してみたい。それも、私と? ということは、またこの水族館に私と来たい。そういうことだよね?


河井未翼:そうですよ。みれいちゃんに会いに、また新潟に来たいです。(微笑み)


鷲尾美麗:本当に? 嬉しい!(微笑み) でも、高校生だから、新潟に来るの大変だよね。


河井未翼:アルバイトしようかなって思ってます。


鷲尾美麗:みはちゃんの通ってる高校、規則うるさくないの?


河井未翼:夏休み、冬休み、春休みの期間中は、アルバイトOKになってます。


鷲尾美麗:交通費、私が出してあげようか?


河井未翼:それは絶対いけません。お金のことで関係がおかしくなったりしたくありませんから。


鷲尾美麗:ごめん。みはちゃんのいう通り。


河井未翼:落ち込まないでくださいね。こういうことも話すことができる関係って、素敵だと思いません?


鷲尾美麗:みはちゃん、優しいね。ありがとう。



//

  イルカショーを堪能した未翼と美麗は、閉館時刻まで水族館を見て回る。水族館を出たふたりは、前に広がる日本海をより間近で見るため、海岸の砂浜へと足を進める。砂に足を取られる未翼は、靴と靴下を脱ぎ、裸足になる。



~海岸

鷲尾美麗:みはちゃん、何が落ちてるか分からないから、裸足になると危ないよ。


河井未翼:足元をよく見て歩くので大丈夫です。それより、みれいちゃんも裸足になりません?


鷲尾美麗:私も?


河井未翼:はい。たくさん歩いて、足がほってているから、海に足だけ入って、クールダウンさせましょう。ずぶ濡れにならないので、これなら大丈夫ですよね?


鷲尾美麗:そんな風にいわれたら、断れないでしょ。(苦笑)



//

  ニコッと笑う未翼に付き合い、美麗も靴と靴下を脱ぎ、裸足になる。恋人繋ぎをし、足元をよく見ながら、海へと近づく。海水で濡れた砂浜で、波が寄せてくるのを確認しながら、少しずつ前へ進む。くるぶし付近まで海に入ったふたり。



~海岸

河井未翼:ちょっぴり冷たいけど、気持ちいいですね。


鷲尾美麗:そうね。これで足が元気になりそう。でもさ、油断していると、波が、…(未翼の手を引っ張り、後ずさり)


河井未翼:キャー!!


鷲尾美麗:大丈夫? 濡れちゃった?


河井未翼:(洋服を確認し)大丈夫みたいです。波、いきなり来ましたね。(微笑み)


ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。OKを出す



~海岸

プロデューサー大竹:みなさん、ここまで順調ですよ。クライマックスを前に、ここで休憩タイムにしましょう。おにぎり、タレカツ丼を用意させてあります。腹ごしらえしたら、最後頼みますよ。



//

  大竹の撮影スタッフらへの声掛けに、スタッフらは「タレカツ丼 きたー!」「分かってらっしゃる!」と歓迎の声が上がるも、「半身揚げは?」「お寿司は?」「海鮮丼は?」と、またしても食べたいものがあるのか尋ねる声も。



~海岸

プロデューサー大竹:ごめん。それらは用意してない。どうしても食べたければ、今度は本当に自腹でお願いします!



//

  スタッフらから「タレカツまで用意してくれたら、御の字」「生ものは無理だよな~」との声がこぼれるも、用意したタレカツ丼を手に取り、休憩に入る。



~海岸

ディレクター高橋:鷲尾さん、今のうちにクライマックスのシーンを確認しておきたいんですけど、鷲尾さんが河井さんの前に身体を寄せるようにして、キスするような雰囲気のところでカットしていいのか。もしくは、それに何か付け加えて、そこでカットするのか。どうされます?


鷲尾美麗:みはちゃんにキスして、私が姿勢を元に戻したところでカットがいいと思います。


杵渕巴亜斗:みれいちゃん、五十嵐GMからいわれてたでしょ! いちゃいちゃしちゃだめって。あとでたっぷり絞られるよ。


フォトグラファー山本:カメラは、ふたりの前から撮影しないので、リアルさを出すために、実際にキスした方がいいと思います。ムービに、河井さんがキスされて、ドキッとした動きを収めることができたら、最高の作品になると思います。


フォトグラファー岡本:だめですよ~ アイドルとはいえ、みはちゃんは高校生なんだし、キスは早すぎます。


フォトグラファー山本:あなたは、個人的な感情でものをいってるでしょ。河井さんが使ったスプーンを舐める人に、説得力ない! それに、高校生の女優だったら、キスくらいします。


フォトグラファー岡本:でも、打ち合わせのとき、どなたでしたっけ、… どなたかが、キスしてしまったら、それだけが注目されてしまうみたいな発言されていたじゃないですか。1st写真集なので、冒険する必要はありません。


プロデューサー大竹:そうです。1作目なので、安全運転でいきましょう。


河井未翼:お昼に私のおじさん、みれいちゃんに羽目を外さないようにねって、忠告してましたよね。忘れたんですか?(微笑み)


鷲尾美麗:分かりました。安全運転でキスしないことにします。スチルは、太陽が沈むところまで。ショートムービーは、山本さんの提案を少し取り入れさせていただいて、私がみはちゃんに実際はキスはしないけれども、みはちゃんはキスされて、ドキッと身体が反応して動いてしまう。そして、私が姿勢を元に戻したところでカット。いかがですか?


河井未翼:ドキッとした動き、難しそうですけどやってみます。


ディレクター高橋:了解しました。あとちょっと頑張りましょう。



//

  休憩に入った未翼と美麗。未翼は、用意されたタレカツ丼とおにぎりのうち、おにぎりを1個だけ食べると、スマートフォンを手にする。メッセンジャーの着信通知が複数ある。メンバー専用のグループには、碧唯から、


  U-timeに、みはとみれいちゃんが市内で写真集撮影してるとか、ドラマ撮影してるとか、目撃情報がいっぱい投稿されてるけど、何してるの。教えてよー!


  とのメッセージが入っている。これに対し、未翼は、


  情報解禁前だから、何もいえません。ごめんなさいね。


  と、グループに返信。未翼と同じようにグループへの着信を見ていた美麗は、


  みはちゃんと "ひみつのお仕事中" ♡ うらやましいだろ~


  と、グループに返信。すると、すぐにまどかから、


  お代官さま、せめて写真集撮影なのか、ドラマの撮影なのか、お教えくださいませm(_ _)m


  と、返信がある。これに対し、美麗は、


  情報解禁前である。何人も口に出してはならぬ。箝口令じゃ。みなのもの、よいな?


  と、グループに返信する。



~海岸

河井未翼:みれいちゃん、みんなに箝口令ですか?


鷲尾美麗:そう。公演のMCでみんなから追求されたり、U-chでファンから質問されたりして答えるの大変だから、箝口令が一番。いつ情報解禁になるか分からないし、このあと忙しいから、その都度対応していたら大変。


河井未翼:なるほど。


杵渕巴亜斗:それだったら、五十嵐GMから正式に箝口令出して貰おうか? そうでもしないと、誰かしら果敢に攻めてくるかもしれないし。(笑)


鷲尾美麗:さらとか、まどちゃんとか、意外にりせりせとか、るなとか。


河井未翼:はるちゃんは、箝口令って、何ですかぁ? といってきそう。(苦笑)


樋口美沙:そこからばれちゃいそうね。(苦笑)


杵渕巴亜斗:ここの意見として、五十嵐GMから正式に箝口令出して貰うことに決定でいいわね。


鷲尾美麗:お願いします。


河井未翼:よろしくお願いします。ファンMailやU-timeの更新、私たちも気をつけないといけませんね。


鷲尾美麗:スチル公開したら、撮影地だと思い込んじゃうでしょうね。それも面倒なので、スチルなしの全然関係ない話題にした方がいいでしょうね。



//

  未翼と美麗は、恋人繋ぎをしながら、日没の迫る波打ち際を歩く。



~海岸

河井未翼:街からすぐのところに海岸があるって素敵ですね。


鷲尾美麗:今日みたいにポカポカ陽気で波も比較的穏やかなときは、私もいいかなって思う。


河井未翼:冬になると、新潟は雪が降って、海も荒れるんですよね?


鷲尾美麗:北西の季節風が吹き付けて、海は大荒れ。でも、新潟市はみはちゃんが思っているほど雪は降らないと思う。雪、降ってもすぐ消えることが多いし。たまに、ドカッと雪が降ることもあるけど、冬の間ずっと消えずに残っているということはないよ。


河井未翼:すると、雪が多く降って積もるのは、山沿いということですか?


鷲尾美麗:そう。


河井未翼:真冬の新潟にも来てみたいな~ みれいちゃんは、スキーとかスノーボードとかできるんですか? 長い髪をなびかせて、シュー、シューとかっこよく滑るとか。


鷲尾美麗:私、スポーツの才能はないみたい。(苦笑)


河井未翼:お美しいみれいちゃんに、神さまもいろんな才能を授けることをためらったんですね、きっと。


鷲尾美麗:みはちゃんは、スポーツ得意?


河井未翼:可もなく不可もなくって感じです。特にこれが得意というスポーツはないですし、不得意というスポーツもないです。


鷲尾美麗:みはちゃん、華奢だから、スポーツ苦手ですというかと思ってた。ちょっと意外。


河井未翼:目立ちませんけど、やれば、それなりにできる子です。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃん、かわいい~ 本当に出会えて幸せ。できることなら、みはちゃんをずっと眺めていたい。


河井未翼:みれいちゃん、私のことをかわいいと褒めてくれますけど、みれいちゃんくらいですよ。普段は学校に黒縁メガネをかけて、髪はふたつ結び、休憩時間は小説を読むような暗くて真面目過ぎる優等生っぽい子なんですよ。


鷲尾美麗:ウソっ!? 普通にしていたら、学校中の男子が放っておかないでしょ? どうしてそんな風にしてるの?


河井未翼:ママが、大学入るまでは恋愛禁止で学業に専念しなさいって。だから、寄り付かないようにしてます。真面目に学業に取り組んでいるので、きちんと説明すれば、今日みたいに遠出もOKだし、遅くなってもOKしてくれています。先にいいますけど、成績はそんなによくないですよ。ママは、真面目に学業に取り組んでいたら、成績が少し下がっても何もいわないので。


鷲尾美麗:ということは、みはちゃん、彼はいないということだよね?


河井未翼:いませんよ。お付き合いもしたことないです。



//

  美麗は、急に立ち止まる。恋人繋ぎをしている未翼も立ち止まり、向き合う。美麗は、未翼の右手を両手で握り直す。


河井未翼:どうしました?


鷲尾美麗:(真剣な表情で)みはちゃん、私とお付き合いしてください。お願いします。


河井未翼:(堪えきれずにクスクス笑いだし)みれいちゃん、本気で彼氏になるつもりですか?


鷲尾美麗:(頬をふくらませ)もう! 男性にはなれないけど、真剣なんだから! みはちゃんを独り占めしたい。


河井未翼:座りませんか?



//

  未翼は、美麗の手を引いて、波打ち際を離れる。美麗は、やすらぎ堤でランチを食べるときに使用したレジャーシートを取り出して、砂浜に敷く。そして、レジャーシートに座る。



~海岸

河井未翼:(太陽の方向を見て)太陽、日本海に沈むところを見ることができると思っていましたけど、佐渡に沈むんですね。


鷲尾美麗:地球が傾いて公転しているから、新潟市のこの辺りからの日没は、佐渡島に沈むの。秋になると、日本海に沈むところを見ることができるわよ。


河井未翼:秋の新潟にも来たくなりました。真冬にも来てみたいし、困っちゃいますね。


鷲尾美麗:水族館のイルカショー、水しぶきを浴びたいなら、真夏がいいでしょうね。


河井未翼:そうなると、季節ごとに来ないといけませんね。(微笑み)


鷲尾美麗:夏は、お祭りや花火大会に浴衣を着て一緒に行けたらいいな。


河井未翼:みれいちゃんの浴衣姿を見てみたいです。(微笑み)


鷲尾美麗:私は、みはちゃんの浴衣姿を見てみたい。(微笑み)



//

  未翼と美麗に、しばしの沈黙が訪れる。佐渡島の向こう側に、太陽が姿を消しつつある様子を眺めている。



~海岸

河井未翼:太陽が沈んだら帰ることにしますね。


鷲尾美麗:うん。



//

  未翼と美麗の見つめる先に、太陽が沈む。



~海岸

鷲尾美麗:太陽、沈んじゃったね。


河井未翼:帰りたくないな、…


鷲尾美麗:私の家に泊まっていく?


河井未翼:嬉しいですけど、ママに怒られちゃいます。


鷲尾美麗:そうだよね。



//

  未翼と美麗に、また沈黙が訪れる。



~海岸

鷲尾美麗:みはちゃん、さっきの返事、聞かせてくれない?



//

  無言の未翼。美麗は、未翼の表情を確認しようと覗き込む。未翼と美麗の視線が合う。美麗は、唇を重ねようと顔を寄せる。ハッとした未翼は、顔を後ろに引く。美麗は、キスを諦める。



~海岸

ディレクター高橋:カット!



//

  ショートムービー用に収録した映像をディレクターの高橋が確認。未翼と美麗にも確認して貰う。プロデューサーの大竹、フォトグラファーの山本、岡本、マネージャーの杵渕、樋口もモニターを覗き込む。



~海岸

ディレクター高橋:後ろからだと、完全にキスしてるように見えますね。


プロデューサー大竹:完全にキスしてる。安全運転じゃないな、これ。


フォトグラファー山本:しないといいつつ、キスしちゃいました?(微笑み)


鷲尾美麗:してませんよ。ねぇ、みはちゃん?


河井未翼:1cmくらいの寸前で引きましたので、唇は触れてません。


ディレクター高橋:写真集のカットは問題なくても、ショートムービー公開されたら、大騒ぎになる。


プロデューサー大竹:五十嵐さん、これだとOK出さないでしょう。最後の部分カットしないと、OK貰えない気がします。


フォトグラファー山本:まあ、これも鷲尾さんの狙い通りだと思いますけど、…(微笑み)


フォトグラファー岡本:(怒り気味に)みれいちゃんはこれでいいかもしれませんけど、みはちゃんのファンは黙っていないでしょう。


フォトグラファー山本:あなただけじゃない?(笑)


河井未翼:みれいちゃんがキスしようとして諦める部分、横から撮影したシーンを加えたらいいんじゃないかと思います。


鷲尾美麗:五十嵐GMから不必要な追求されないために、みはちゃんの提案に賛成します。


プロデューサー大竹:河井さんの案でいきましょう。それなら、五十嵐さんもOKくれるでしょう。


ディレクター高橋:その部分、スチルも追加しますか?


プロデューサー大竹:使用するかどうかは後回しにして、撮影しておくことにしましょう。


ディレクター高橋:最後、もう1カット撮影します。準備お願いします!



//

  高橋の掛け声で、追加シーンをスチル、ムービーの順で撮影。hareitionの1st写真集、すべての撮影を終了する。撮影スタッフから花束が、未翼と美麗に贈られる。



~海岸

鷲尾美麗:みなさん、今日1日ありがとうございました。初めての写真集撮影ということで、私たちには分からないことだらけでしたが、たくさんご指導くださったり、ご配慮いただいたおかけで、無事にここまでくることができました。本当にありがとうございました。お疲れさまでした。


河井未翼:長時間の撮影、本当にありがとうございました。特に、東京班のみなさん、朝早くからの撮影に、長距離移動。本当にお疲れさまでした。お仕事でまたご一緒できることを楽しみにしています。


プロデューサー大竹:はい。1日で写真集のスチルとムービーの同時撮影。ムービーは非常に困難な中、鷲尾さん、河井さんのアドリブ力、頭の回転の早さに助けられて、無事に撮了できました。ありがとうございました。hareitionの次作でもご一緒できる予定でおりますので、よろしくお願いします。それではみなさん、おふたりに労いの大きな拍手をお願いします。



//

  未翼と美麗に、撮影スタッフから大きな拍手が送られる。






【 15 】


  写真集の撮影を終え、未翼は帰宅する。すぐにメイクを落とし、部屋着に着替えてダイニングにやってくる。



~川原宅ダイニング

川原椎名:潮風浴びてベタベタになったから、メイク落としたの? ライブストリーミングするとき、またメイクする?


河井未翼:ライブストリーミングはお休みします。これから、U-chのライブストリーミング予定を更新して、ファンMailとU-timeでもお休みの連絡をしようと思います。


川原椎名:朝早くからで疲れちゃった? それとも、明後日からのミュージックビデオ収録に行く準備する必要があるとか?


河井未翼:どちらも違います。あとでゆっくり相談させてください。


川原椎名:相談?


河井未翼:あとで。それより、いただいてきたタレカツ丼とおにぎりを食べません? お腹ペコペコです。


川原椎名:元気残っているなら、レンチンお願いしていい? 僕はつくっておいたわかめ汁を温めるから。


河井未翼:は~い。



//

  未翼と椎名は、夕食の準備に取りかかる。未翼は、スマートフォン片手に、U-chのライブストリーミング予定を更新するなどしながら、電子レンジでタレカツ丼を温める。ほどなくして、テーブルにタレカツ丼、おにぎり、わかめ汁、サラダ、野菜ジュースが並ぶ。



~川原宅ダイニング

川原椎名:さあ、食べようか?


河井未翼:(両手を合わせて)いただきます。



//

  未翼は、野菜ジュースをひと口飲み、サラダを食べ始める。



~川原宅ダイニング

川原椎名:お昼に食べていたのは、イタリアンとバスセンターのカレー?


河井未翼:はい。しいなさんの原案通りです。(微笑み)


川原椎名:そして、夜がタレカツ丼。本当にB級グルメばっかり。(苦笑)


河井未翼:しいなさんの原案通りですから、そうなりますよね。(微笑み)


川原椎名:ショートムービーは、順調に収録できたの?


河井未翼:きちんとした台本がなくて、ほぼアドリブだったじゃないですか? だから、NGらしいNGもなく進みました。


川原椎名:3月のお渡し会とは違い、台詞を思い出したり、指示された表情や仕草をする必要ないから、気楽にできたきかな?


河井未翼:(思い出したように)3月のCDお渡し会、そんなことありましたね。(微笑み) 今回、みれいちゃんは、最初の喫茶店のシーン、緊張で表情が硬かったみたいで、ヘルプの電話がかかってきました。それで、原案と異なりますけど、みれいちゃんが私に本当に来て貰えるか不安でいっぱいという設定に、私から変更させていただいて、ディレクターの高橋さんにもOKいただいて、撮影を進めて貰いました。


川原椎名:そんなことがあったんだ?


河井未翼:そうなんです。


川原椎名:みはちゃんが合流してからのみれいちゃんは、いつもの感じになった。そんな感じ?


河井未翼:はい。ところで、お昼に大竹さんとの大人の話って、何だったんですか? 大人の話だから、内緒ですか?


川原椎名:印税の話。今後もいろいろ提案して欲しいから、今作から契約させていただきたいといわれて契約。そんなところ。


河井未翼:それじゃあ、今日はhareition写真集の撮影日であると同時に、しいなさんとのお仕事初日でもあったってことですね!


川原椎名:今日は契約しただけだけど、結果的にそうなるね。


河井未翼:ダブルで記念日。(微笑み) やっぱり、今日にしよ!


川原椎名:何を今日にするの? さっきの相談があるとか、何か企ててる?(微笑み)


河井未翼:食べ終えてからします。それにしても、タレカツ丼おいしいですね。(微笑み)


川原椎名:みはちゃん、U-timeで今日のことが騒ぎになっているからね。みれいちゃんと写真集撮影してるだとか、ドラマ撮影してるとか。その意味でライブストリーミング休みにしたのは、正解かもしれない。


河井未翼:その騒ぎの一翼を担っているのが、しいなさんなんでしょ。(ニッと笑う)


川原椎名:(悪びれず)そうだけど、悪い?


河井未翼:情報発信はいいですけど、しいなさんのU-timeアカウント、お仲間は知ってますよね。親族の立場を利用して、… とか、追求されませんか。大丈夫ですか?


川原椎名:みはちゃん応援用アカウント以外にもアカウントあるから、それ使って情報発信してる。誰も僕が情報発信者だと気づかないよ。


河井未翼:しいなさん、私のことを情報発信してくれるのは嬉しいですけど、ほかのメンバーだったり、ほかのアーティスト用のアカウント持っていたりしないですよね? あと、メンバーの連絡先を入手して、密かに連絡取り合ったりしていませんよね?


川原椎名:してません。みはちゃんだけです。僕のスマートフォンを確認してみる?


河井未翼:本当に怪しいと感じたら、確認することにします。


川原椎名:みれいちゃんと撮影情報が、ファンの間でU-timeで飛び交ってる話に戻すけど、今日はU-chライブストリーミング休むからいいとしても、明日の公演でメンバーから突っ込まれたりしない?


河井未翼:五十嵐GMからメンバーに箝口令を出して貰いました。情報解禁までは、スルーでいきます。(微笑み)


川原椎名:もう先手を打っているんだ。やるね~ でも、公演のお見送りもある。ファンからいっぱい質問されるだろうけど、スルーできる?


河井未翼:知らぬ存ぜぬでいきますから大丈夫です。


川原椎名:スルーできれば、みはちゃん、女優の素質あるかもね。


河井未翼:女優になる予定はありませんけど、今日の収録は楽しかったです。収録した映像がたくさん使われたらいいなと思ってます。


川原椎名:30分くらいの尺で、短編映画といえるくらいの作品になったらいいなと思っているんだけど、そんな感触ある?


河井未翼:どうでしょう? 収録中は、ディレクターの高橋さん、プロデューサーの大竹さんから、いいよとか、いいですねとたくさん褒めていただきましたけど、どのくらい使っていただけるかは分かりません。


川原椎名:ショートムービーを観ながら、写真集のページをゆっくりめくれる。そんな感じで楽しめるといいんだよね。


河井未翼:大竹さんと名刺交換されたんですよね? 直接、提案してみてはいかがですか?


川原椎名:フロントに相談なしに話をして、何か問題が起きたら大変だから、みはちゃん、五十嵐GMなり、スタッフさんに伝えておいて貰える?


河井未翼:明日にでも伝えておきます。


川原椎名:ありがとう。



//

  未翼と椎名は、夕食を食べ終え、片付けも終えて、テーブルにつく。



~川原宅ダイニング

川原椎名:みはちゃんの相談ごと、聞かせて貰える?


河井未翼:(少し躊躇するも)絆確認、今夜いかがですか?


川原椎名:えっ!? こんな忙しい時期にしなくても、もう少し時間に余裕があるときにしたら? 明後日から沖縄でミュージックビデオの撮影も控えているし、今でなくても、…


河井未翼:絆確認、まだ1回もしてないですし、時間に余裕があるときといっても、しばらく忙しい日々が続きそうです。夏が終わるまでできないかもしれませんから、できるときにしておきたいです。それに、hareitionの写真集撮影日、しいなさんとの初めてのお仕事の日、この記念日に初めての絆確認の日を追加したいんです。


川原椎名:記念日ねぇ、…


河井未翼:もうひとつ。三者面談のときにママが来ますけど、ふたりで決めたルール、交わした契約書をママに見せますよね? だから、絆確認もして、仲よくやっていますということを伝えられるようにしておいた方がいいと思うんです。


川原椎名:契約書をお母さんに見せる必要はないんじゃない? 絆確認を省いたルールだけ抜粋して見せればいいと思うよ。


河井未翼:契約書じゃないと、こんな紙切れ一枚で説得力ないといわれませんか?


川原椎名:みはちゃんは未成年だから、契約書を見せても、契約は無効といわれると思うよ。


河井未翼:そうなってしまった場合、どうしたらいいですか?


川原椎名:僕がみはちゃんのお母さんを説得するよ。お母さんがどんな人か分からないけど、場合によっては卑怯な手を使ってでも納得して貰う。


河井未翼:卑怯な手って何ですか?


川原椎名:みはちゃんの夢を壊してしまうような話を持ち出すこと。U-PROJECTとの契約が破棄されるとか、そういった類の話。


河井未翼:危ない橋を渡っていることは理解しています。三者面談までにやれることってありますか?


川原椎名:根回ししようとして、余計な混乱を招くより、当初の予定通りに直接会ってからでいいんじゃないかな。それより、今は "VENUS PROJECT" に集中がいいと思う。話が脇道にそれちゃったけど、それでも絆確認する?


河井未翼:記念日にしたいので、ぜひ。


川原椎名:そこまでいうんだったらいいよ。バスローブ貸してあげようか?


河井未翼:着て行った方がいいですか?


川原椎名:いや。みはちゃんの好きな格好でいいよ。






【 16 】



//

  未翼は、椎名に借りた白いバスローブを着て、椎名のベッドルームを訪れる。未翼が中に入るのは初めて。椎名は、ネイビーのバスローブを着ている。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:どうぞ。


河井未翼:大きなベッドですね。もしかして、しいなさんも寝相悪かったりするんですか?


川原椎名:違う、違う。当初の目的は、愛する人と愛する人との間に生まれた子どもと川の字で寝たいなというのがあって、キングサイズにしたんだよ。みはちゃんが使ってる部屋に置く予定だったんだけどね。仕事部屋が隣りで便利だから、こっちに置いてるんだけど。


河井未翼:このベッド、入居時に購入したものですか?


川原椎名:そうだよ。


河井未翼:確か、ここに入居してから彼女いなかったんでしたよね?


川原椎名:そうだけど、それが何か?


河井未翼:私のこと、愛する人、彼女と認めたということでいいですよね?(微笑み)


川原椎名:当初の目的がそうだったというだけで、今は違う。


河井未翼:これからは、私との愛を育む場所ですね。(微笑み)


川原椎名:みはちゃん、どうしてもそっち、恋愛関係に持っていきたいの?(苦笑)


河井未翼:はい。しいなさんのこと、大好きですから。(即答)


川原椎名:だから、バスローブ着てくれたの?


河井未翼:そうじゃないですけど。お揃いで嬉しいです。


川原椎名:どんなパジャマ着てきたのかな? かわいいパジャマ? 大人っぽいパジャマ?


河井未翼:パジャマ?


川原椎名:どうかした?


河井未翼:パジャマ、着てませんけど、…


川原椎名:バスローブの下、何も着てない?


河井未翼:下着だけです。バスローブ、そういう意味だと思っていました。違うんですね?


川原椎名:僕に合わせて、バスローブがいいかなと思っただけだけど。僕は、ちゃんとパジャマ着てるよ。(バスローブを脱ぐ)


河井未翼:恥ずかしい~(両手で顔を隠す)


川原椎名:(笑いながら)勘違いしていたんだ。


河井未翼:(両手で顔を隠したまま)そうみたいです。


川原椎名:せっかくだから、ビューティー計画の進捗、バスローブ脱いで見せてくれる?


河井未翼:(両手の隙間から覗いて)ビューティー計画の進捗?


川原椎名:スタイルに変化があったか、確認させて貰えないかな?


河井未翼:そういうことなら、… でも、下着ですけど?


川原椎名:下着姿は、あまり見せたくない? 部屋が明るすぎて恥ずかしいかな?


河井未翼:いいえ。(自分にいい聞かせるように)そうですよね。大丈夫です。



//

  未翼は、椎名に背を向け、バスローブを脱ぐ。胸を隠すように腕をクロスさせ、椎名の方を向く。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:下着、白なんだね。白のイメージなかったけど、どうして白にしたの? バスローブの色に合わせた?


河井未翼:初体験なので、大好きなしいなさん色に染めて欲しいと思って、白にしました。


川原椎名:そんなに僕のことを想ってくれているんだ。


河井未翼:はい。大好きです。


川原椎名:腕を下げて、スタイルをもっとよく確認させて貰える?



//

  未翼は、胸を隠すようにクロスさせていた両腕を下ろし、全身を椎名に見せる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:日々の測定してくれているデータを見ると、筋肉量を増やして体重も増やす目標は、牛歩並みのペースだけど、お腹周りは、縦の線がはっきりしてきて、鍛えているのが分かるね。ただ、ここまでだよ。シックスパックはかわいくない。ウエスト、だいぶ細くなった気がするけど、最新の測定値はどう?


河井未翼:コルセットと脇腹のエクササイズ効果で、54.2cmくらいになりました。


川原椎名:ウエストは成果出てるね。バストの育乳成果は?


河井未翼:まどちゃんとのコラボ配信のときに、まどちゃんから成長中といわれていたので、育乳ブラつけ始めからすでにその途上にあったのかもしれませんけど、B65だと少しタイトな感じを受けるようになって、C65を試し始めているんですけど、C65だと少し緩い感じがしてます。


川原椎名:ブラのサイズはよく知らないけど、BがタイトでCを試しているということは、大きくなったという理解でいいんだよね?


河井未翼:そういう理解で間違いないです。アルファベットの後ろの数字は、アンバーバストのサイズです。アンダーバストが小さいので、Cカップでも小さく感じますよね?


川原椎名:ちょうどいいくらいだと思うけど。大きくなると、ダンスに支障をきたすでしょ?


河井未翼:しいなさん、私が華奢だから、あまり大きすぎない方がいいっていってましたよね。


川原椎名:うん。エクササイズで大胸筋を鍛えて、きれいな形を維持することを目指したほうがいいかもね。



//

  椎名は、ベッドに腰掛け、身体が密着するように未翼を前に座らせる。左から覗き込むように未翼を見て、両腕で包み込むように腰の前で軽くクロスさせる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:緊張してる?


河井未翼:心臓バクバクです。(椎名の手を取り、胸に当てる) 分かりますよね?


川原椎名:本当だ。伝わってくる。(手を胸から離す) ねえ、みはちゃん。僕の過去の恋愛については話したことあったでしょ? みはちゃん、確か恋愛したことないっていってた気がするけど、好きな男の子とか、憧れの男性芸能人とかいたでしょ。話してくれない?


河井未翼:私、初めて好きになった男性がしいなさんなので、お話できる過去の恋愛ないですよ。


川原椎名:過去の恋愛に上書きしてない?


河井未翼:していませんよ。バレンタインのときに、しいなさんにあげたチョコ、初めて男性にプレゼントしたチョコでした。 "VENUS AWARD" が終わって帰宅したときに、しいなさんにしたキス、初めて男性にしたキスでした。


川原椎名:クラスメイトに好きな男の子がいたとか、先輩に好きな人がいたとか、告白されたとか、みはちゃんなら、みれいちゃんレベルで告白されたでしょ?


河井未翼:まったくないです。クラスのみんなでワイワイガヤガヤするタイプじゃなかったので、少ない女の子の友だちとおしゃべりするくらい。学校が終わると、すぐにエンターテイメントスクールに行っていたので、寄り付かなかったんだと思います。


川原椎名:フラレるのが怖くて、告白しなかったんだろうか、男子どもは!(苦笑)


河井未翼:そうなんですかね。私には分かりません。恋愛経験がなくて、しいなさんの恋愛話を聞いたから、あの契約書で納得して、しいなさんに託してみようと決断できたと思います。


川原椎名:恋愛経験があったら、考えも違っていた?


河井未翼:どうなんでしょう。経験があったら、もっと警戒していたかもしれません。


川原椎名:こんな風に寄り添っていなかったかもしれいね。


河井未翼:しいなさんを信じてよかったです。しいなさんのことが大好きですし、大好きな人に初体験を捧げられるって幸せです。緊張で心臓バクバクですし、何も知らなくて不安ですし、ちょっと怖さもあります。


川原椎名:好きな男の子とか、憧れの男性芸能人がいなかったとなると、ひとりエッチもしたことない?


河井未翼:エッチって、ひとりでできるものなんですか?


川原椎名:あんな契約書をつくっておいて何だけど、ピュアなみはちゃんを汚してしまう罪を感じるよ。


河井未翼:しいなさんは、私を汚すんじゃなくて、しいなさん色に染めてくれればいいので、深く考えないでください。



//

  未翼は、椎名の顔のある左を向き、キスを催促する。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:その前に、セックスはコミュニケーションだから、感じたことを口に出して欲しいんだ。特に、痛いのを我慢したりするのは、今後にもよくないからね。約束して貰える?


河井未翼:はい。(キスを催促する)


川原椎名:おねだりさんだね。(バードキスする)


河井未翼:(不満顔で)短い!


川原椎名:素直でいいね。(微笑み) みはちゃんの性感帯を調べていくね。



//

  椎名は、未翼の左手の指先を握ったり、指を絡めたりしながら、未翼の性感帯を探る。耳に軽く息を吹きかけたり、耳たぶにキス。首筋にもキスする。未翼は、感じているというより、くすぐったそう。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:感じない?


河井未翼:こそばゆいです。


川原椎名:そうか~



//

  椎名は、いじっていた未翼の左手を未翼の右胸に伸ばし、指先でブラの上から乳首を押させる。そして、乳首の周りをくるくるとなでさせる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:ひとりエッチの方法ですか?


川原椎名:参考にしていいよ。



//

  椎名は、空いていた右手で瞬時にブラのホックを外し、右肩のストラップをスライドさせて肩から外す。ブラが滑り落ち、右の胸があらわになる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:きゃっ!!



//

  椎名は、左肩のストラップもスライドさせて肩から外すと、ブラは転がるようにして床に落ちる。両手で胸を隠そうとする未翼に、椎名は、未翼の左手をしっかり掴んで動かせないようにする。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:しいなさ~ん!


川原椎名:終わるまで隠しちゃだめ。きれいな胸をもっと見せて。



//

  椎名は、ふたたび未翼の左手指先で乳首の周りをくるくるとなでさせる。添えている自分の指先も少しずらして、直に乳首の周りをくるくるとなでる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:まだ感じない?


河井未翼:感じるっていうことが、どういうことか分からないんですけど、…


川原椎名:気持ちよくなってきてない?


河井未翼:気持ちいいとも悪いともいえない不思議な感じです。



//

  椎名は、未翼にディープキスする。その間もずっと未翼の右胸には未翼と椎名の左手があり、指先が乳首の周りをくるくると動いている。ときおり触れる乳首が立ってきたことが分かる。椎名が右手で未翼の太ももの内側に触れる。その瞬間、未翼の身体に衝撃が走ったかのように、ビクッと動く。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:太ももの内側を触られると気持ちいいの?(ゆっくりと右手の指先を滑らすように動かす)


河井未翼:あっ、あぁ~



//

  椎名は、未翼にディープキスする。指先で乳首の周りをくるくると動かせていた左手で、右胸を揉ませる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:スイッチが入って、身体が求め始めたみたいだね。



//

  頷く未翼。椎名は、未翼の右手を取り、指先でショーツの上からクリトリスを触らせる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:えっ!? 何ですか?


川原椎名:ゆっくり指先を動かしてみて。


河井未翼:ここをですか?


川原椎名:そう。止めずにゆっくり動かし続けて。


河井未翼:あっ、あん。あっ、あぁ~ だめ~ だめです。おかしくなっちゃいそう!



//

  未翼は、右手の動きを止め、少し荒くなった呼吸を整える。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:イッちゃいそうだったね。


河井未翼:イッちゃう?


川原椎名:快楽のピーク、絶頂に達することをそういうんだよ。ひとりエッチ、これでできそうだね。


河井未翼:…(恥ずかしそうに頷く)


川原椎名:ラブジュースで濡れちゃって、みはちゃんの準備も整ったようだから、次に移ろうか?


河井未翼:ラブジュース? 次に移る?(首を傾げる)



//

  椎名は、未翼の右手を取り、指先でラブジュースで濡れたショーツを触らせる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:えっ!? いつの間にか濡れてます。どうしてしまったんだろう?


川原椎名:みはちゃんだけじゃないから、濡れたことを心配する必要はないよ。



//

  椎名は、未翼のショーツの両サイドに指を滑り込ませる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:少しだけ腰を浮かせて貰える?


河井未翼:何をするんですか?


川原椎名:ショーツ脱いじゃおう。


河井未翼:(少し動揺しつつ)そ、そうですよね。その前にひとついいですか?


川原椎名:何だろう?


河井未翼:しいなさんから脱毛に行かせて貰ってますけど、永久脱毛の全身コースであそこもツルツルにしちゃってます。赤ちゃんみたいとかいって、笑わないでくださいね。


川原椎名:VIOもきれいにしてるってことだね。了解。じゃあ、腰を浮かせて。



//

  未翼は、腰を浮かせる。椎名は、ショーツを両手で押し出すように前に滑らす。未翼の膝を過ぎたところで、ショーツが床にストンと落ちる。未翼は、ショーツから足を抜く。ただ、恥ずかしさから股間を両手で隠し、膝を閉じている。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:(未翼の目の前に移動)さっきより足を開いて貰える? そして、手はどかして。



//

  未翼は、ゆっくりと閉じていた足を広げる。手は股間を隠したまま。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:(未翼の手をベッドの上に移動させ)両手はここね。後ろに僕はいないから、後ろに倒れそうになったときは、両手に力を入れて支えるんだよ。


河井未翼:恥ずかしいです。次は何をするんですか?


川原椎名:みはちゃん、とってもきれいだから、恥ずかしがらなくていいよ。



//

  椎名は、未翼の股間に顔を近づけると、ラブジュースで濡れた股間を舌で舐めてきれいにする。そして、ツンと立ったクリトリスを舌をころがすようにして愛撫する。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:しいなさん、そこは、… あんっ! あっ、あぁ~ん いや だめ あんっ! そこはだめ おかしくなっちゃいそう! あっ、あぁ~ あんっ! もう限界 イッちゃう、…



//

  椎名の舌でのクリトリスへの愛撫に、未翼は我慢できずにイッてしまい、両手の支えも意味なく背中からベッドに倒れる。椎名は、未翼の方を向いてベッドに横になる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:みはちゃんが初めてイッちゃうところ見ちゃった。喘ぎ声もかわいいし、ずっと記憶に残しておいてあげるね。(微笑み)


河井未翼:恥ずかしいから、すぐに記憶から消してください。


川原椎名:みはちゃんのクリトリス、めちゃくちゃ感度いいね。(微笑み)


河井未翼:それって、褒めてます? それとも、けなしてます?


川原椎名:もちろん、褒めてるよ。(微笑み)


河井未翼:早くイッちゃって、興ざめしていませんか?


川原椎名:最初はそんなものだよ。心配しなくていいよ。(微笑み)


河井未翼:それならよかったです。あの~、ラブジュースって、飲んじゃったと思うんですけど、大丈夫なんですか?


川原椎名:飲んでも大丈夫。


河井未翼:ラブジュースっていうだけに、甘くておいしいんですか?


川原椎名:甘いという人や甘酸っぱいという人がいるけど、僕は無味にしか感じない。


河井未翼:ラブウォターの方が近い感じなんですね。


川原椎名:まあ、そうだね。ところで、続けても大丈夫な感じ?


河井未翼:愛し続けてください。(キスを求める)



//

  椎名は、ベッドの上で膝立ちで未翼を抱きかかえると、バードキス。枕に頭を乗せ、横たわらせる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:膝を立たせて、足を開いて貰える?


河井未翼:こんな感じですか?



//

  椎名は、未翼が広げた足の間に座る。未翼の両膝に手を置くと、太ももを滑らすようにゆっくと指先を這わせる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:しいなさん、だめです。やめ、… はあっ、あぁ~ あんっ!



//

  椎名が未翼の太もも付け根近くで手を止めると、未翼の喘ぎ声も止まる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:痛いときは、ちゃんと痛いっていってね。


河井未翼:分かりました。さっきとは違うことをするんですよね?


川原椎名:そうだよ。


河井未翼:しいなさんに、私の身体、私も知らない部分を解剖されている気分です。


川原椎名:解剖ねぇ、… 探検程度だと思うけど。(苦笑) じゃあ、潜入するよ。



//

  椎名は、左手の薬指をゆっくりと膣に挿入する。未翼の様子を伺いながら、薬指の根本まで挿入する。そして、指の腹で少し押してみる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:あんっ!



//

  椎名は、未翼のGスポットの反応を確認し、くすぐるように優しく指の腹でなでたり、ときに軽く押す。軽く押したときには、未翼が腰を少しよじる反応を見せる。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:ここ、気持ちいい?


河井未翼:…(2度頷く)



//

  椎名は、奥にあるポルチオを挿入している中指の先でやさしく押す。その瞬間、ふたたび未翼の身体に衝撃が走ったかのように、ビクッと動く。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:ポルチオも気持ちいいみたいだね。(薬指の指先でゆっくりと愛撫する)


河井未翼:あっ、あ、あぁ~ん。うんっ、あっ、あぁ~ だめ。本当にだめ。あんっ! もう無理! イッちゃう、イッちゃう、イッちゃます!



//

  椎名のポルチオへの愛撫に、未翼はイッてしまう。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:しいなさんのお宝探し探検。お宝を渡したくなくて頑張ったんですけど、だめでした。お宝を奪われちゃって完敗です。(微笑み)


川原椎名:僕は、お宝があることは知っていたけど、まずは確認したところまでのつもり。


河井未翼:どういうことでしょう?(考える) イッちゃったから、お宝も奪われたと思うんですけど、…


川原椎名:お宝ハンターが登場していなんだよね。


河井未翼:お宝ハンター?(考える)


川原椎名:(正解を導けない未翼に)みはちゃん、クリトリスでイッちゃいました。Gスポットとポルチオでイッちゃいました、…


河井未翼:あっ! しいなさん、まだイッてません。でも、お宝ハンターって、…(考える)



//

  椎名は、自分の下着の大きくなった部分を指差す。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:あぁ、…(納得する)



//

  椎名は、背中を見せて下着を脱ぐ。そして、ペニスにコンドームを装着する。それを未翼が覗きに来る。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:こんなところは見なくていいよ。


河井未翼:ちゃんと避妊できるか、目視で確認しないと。(微笑み)


川原椎名:ちゃんとするに決まってるでしょ! 高校生のトップアイドルが妊娠なんてことになったら、妊娠させてしまった側の人間は生きていけないことくらい、簡単に想像できるでしょ?


河井未翼:週刊誌に、目のところだけ黒塗りのスチルが掲載されて、「全国3位トップアイドル現役高校生A 妊娠発覚で解雇!」「相手は同居する20歳も年上の親族B 禁断の肉体関係!」なんていう見出しが踊るんでしょうね~(微笑み)


川原椎名:そんなことになったりしたら、みはちゃんのファンに僕は何回殺されるんだろう? って話。(苦笑) はい、準備完了。ムード冷めさせてごめんね。


河井未翼:そんなことないです。ひとつ確認ですけど、その太くて長いものが挿入されても大丈夫なんですよね?


川原椎名:出てくるものを考えたら、比ではないよね?


河井未翼:ですよね。(納得して安心する)



//

  椎名は、少し冷めてしまったムードを再構築するため、ディープキスから再開。身体を密着させて、未翼の胸を揉む。乳首にキス。キュッと引き締まったウエストからおヘソにかけて指の腹を滑らせ、おヘソにもキス。ディープキスから舌を絡め合いなどしてムードを高めていく。そして、ペニスを挿入する。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:痛かったらいってね。


河井未翼:はい。



//

  椎名は、未翼の様子を伺いながら、ゆっくりと腰を前後に動かす。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:ん~~~、… あっ、… あぁ~、ううっ、… あ~、うううっ、…



//

  椎名の腰を動きに合わせて、未翼が喘ぐ。



~椎名のベッドルーム

川原椎名:痛くない?


河井未翼:大丈夫です。しいなさんの私への愛が、想いが、押し寄せてくる感じで嬉しいです。はあ~、… あっ、…



//

  椎名は、ひさびさとなったセックスの感動と、未翼の膣の締まり具合の感動をペニスから感じながら、ゆっくりとしたペースを崩すことなく腰を前後に動かし続ける。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:あっ、… あぁ、… あぁぁ、… あっ、あぁ~ もうだめです。イッちゃう。イッちゃます! イクッ!



//

  未翼がイッたことを確認し、椎名も動きを止める。未翼の隣りに横になる。



~椎名のベッドルーム

河井未翼:しいなさん、イッちゃいました?


川原椎名:イッてない。


河井未翼:私だけ、ごめんなさい。彼女失格ですね。


川原椎名:ここでも彼女のことを持ち出す、… でも、謝ることないよ。最初はこんなものだし、僕が久しぶりすぎて、錆びついて鈍感になってるだけかもしれないし。


河井未翼:お宝ハンター、お宝ゲットできないで終了になっちゃったんでしょうか?


川原椎名:そんなことないよ。みはちゃんのお宝、目から、耳から、舌から、指先から、そして、僕の大事なところからも。(苦笑)


河井未翼:具体的に教えてくれないんですか?


川原椎名:(手を上に伸ばして指折り数える)スタイルのよさ、かわいい喘ぎ声、もろもろの柔らかい感触や肌触り、太ももの内側、感度のいいあそこのパーツたち、あとひとつ、… 最後のはまだ内緒にしておこう。


河井未翼:気になるので、内緒にしないで教えてください。


川原椎名:あとで聞いたときに、めちゃくちゃ喜んでくれた方がいいかなって。それまでのお楽しみということで。(微笑み)


河井未翼:(ちょっと不満そうに)気になります。でも、私が喜ぶことだったら、待つことにします。忘れないでくださいね。


川原椎名:それじゃあ、絆確認初回終了! いいね?


河井未翼:はい!(笑顔)


川原椎名:寝よっか?


河井未翼:それって、しいなさんの隣りで眠ってもいいってことですよね?


川原椎名:そのつもりなかったのなら、自分のベッドで寝てもいいんだよ。おやすみ!


河井未翼:しいなさん、待ってください! 一緒に寝ます。寝ますけど、全裸でいいですか?


川原椎名:それはよくないな。パジャマに着替えてくる? それとも、Yシャツ貸してあげようか?


河井未翼:Yシャツ借ります! 彼女気分に浸れますからね。(ニコッと笑う) でも、直に着るのは、… ブラはいいとして、濡れたショーツはだめ。部屋に戻って、ショーツはいてきます。


川原椎名:部屋に戻るんだったら、ついでにパジャマに着替えてきたら?


河井未翼:Yシャツを用意しておいてくださいね。すぐに戻りますね。


川原椎名:(全裸で自分の部屋に戻ろうとする未翼に)ちょっと待って! 共有スペースで裸や下着でうろちょろしない!


河井未翼:そこは厳しいんですね。(苦笑)



//

  未翼は、ブラをつけ、バスローブを羽織る。濡れたショーツを手に、椎名のベッドルームを出ていく。






【 17 】


  翌朝、未翼は椎名のベッドで迎える。自力で目覚めた未翼。隣りに椎名の姿はない。椎名に借りたYシャツ姿のまま、ダイニングに行く。



~川原宅ダイニング

河井未翼:(キッチンを覗き)しいなさん、おはようございます。


川原椎名:ゆっくり眠れた? それとも、興奮して眠れなくて、早く起きちゃった?


河井未翼:しいなさんの隣りで、恋人気分ですやすやと眠れました。(微笑み) 自力で起きることができたので、ずっとしいなさんのベッドで寝てもいいですか?


川原椎名:絶対にだめ。まずは、寝相を直してね。


河井未翼:やっぱり、寝相悪かったですか?


川原椎名:手や足で攻撃はされなかったけど、抱き枕のように左腕に抱きつかれていて、起きるのが大変だったよ。


河井未翼:それなら、起こしてくれてもよかったのに。


川原椎名:かわいい顔して眠っていたから、起こしたらかわいそうだと思ってね。


河井未翼:私のこと、もっと好きになりました?


川原椎名:いいや。変わらない。


河井未翼:抱きついて寝ている姿を見て、かわいいなと思ったのなら、「やっぱり、俺の彼女だな」って思わないんですか?


川原椎名:みはちゃんは、彼女じゃないからね。


河井未翼:(頬をふくらませ)もう!


川原椎名:それより、明日からの沖縄、出かける準備できていないでしょ? ご飯できるまでもう少し時間かかるから、持って行く物の準備でもしておいたら? 明日、朝一の新幹線だから、04:30に起こすからね。少しでも早く寝るために、今の時間を有効に使うといいと思うよ。


河井未翼:(時間を確認し)は~い。そうします。



//

  自分の部屋に戻った未翼。姿見に映るYシャツ姿の自分を見て、昨夜のことを思い出してニヤける。記念に残そうと思い立ち、セルフィーを撮る。翌日、 "VENUS PROJECT" 名義のアルバムリード曲のミュージックビデオ撮影で沖縄に出かける。持って行く洋服を決め、キャリーケースに詰める。次に下着。持って行く下着を決めると、思い立ったように、身につけている下着を確認する。白い下着にニヤける。記念に残そうとYシャツを脱ぎ、白い下着姿でセルフィーを撮る。



~未翼の部屋

河井未翼:(ニコッと笑い)決め~た。早く準備終わらせちゃおう!



//

  未翼は、朝食前に沖縄行きの準備を終わらせようと、急いで準備して終わらせる。



~川原宅ダイニング

川原椎名:(同じ姿で戻ってきたことに)明日の準備できたの?


河井未翼:毎日持って行くコスメとかを除いて、準備完了しました。(満足げ)


川原椎名:早かったね。


河井未翼:(笑顔で)やればできる子ですから。






【 18 】



//

  学校のお昼休憩。購買に買い出しに行っている碧唯を待つ間、未翼は前夜のことを思い出してニヤける。



~教室

高橋碧唯:みは、今日も変だよ。心ここにあらずで、何か思いにふけっているみたい。かと思ったら、ニヤけてるし。疲れが蓄積しちゃってるんじゃない?


河井未翼:疲れてはいないよ。あおいちゃんより半年以上も若いし、まだ16歳。(誇らしげ)


高橋碧唯:冗談いえるくらいなら大丈夫か。それにしても、この前の心配事とか、今日の思いにふけったりとか、忙しいのに大変ね。それで、今日は誰のことを思っていたの?(微笑み)


河井未翼:誰についても、何についても考えていません。


高橋碧唯:絶対にウソ。誰かに嬉しいことをいわれたか、されたりして、宙に浮いてる感じ。昨日、何かあったんでしょ? 隠さないでいいなさい。(小声で)出版社のお偉いさんからファッション誌の専属モデルのオファー受けたとか、女優業を薦められたりとかしたんじゃないの?


河井未翼:(手を横に振って)ないない。


高橋碧唯:そうじゃないとすると、… (小声で)好きな男性が見つかったとか、想いを寄せてる男性から嬉しいことばをかけられたりとか、誘われたりとかしたんでしょ?


河井未翼:…(一瞬、ドキッとするも)ないです~


高橋碧唯:今の、見逃さなかったからね。(小声で)内緒にしておいてあげるから、前者か後者か教えなさい。(微笑み)


河井未翼:どっちでもないから教えようがない。


高橋碧唯:(小声で)20歳まで恋人はつくりませんと宣言していても、湧き上がる恋心は抑えられないよね。(微笑み)


河井未翼:(目を鬼にして)違います。


高橋碧唯:(小声で)親友のよしみで、これ以上は追求しないであげる。高校卒業したら、前言撤回して恋愛宣言していいからね。(微笑み)


河井未翼:(呆れながら)だから~、違いますって!


高橋碧唯:(小声で)ウソをついて大人になっていくんだね。(微笑み)


河井未翼:(頬をふくらませ)違うっていってるでしょ!


高橋碧唯:(小声で)まあまあ、そんなに怒るっていうことは、隠したい気持ちの裏返しだからね。(微笑み) でも、もうひとつ、みはにいっておく。みはを見てると、思いにふけながら、口が動いてるんだよね。声を出さずに同じことを繰り返しいってるみたい。そのうちに解読してあげるからね。(微笑み)


河井未翼:(ドキッとして口を抑えて)本当に口が動いていた?


高橋碧唯:(小声で)自分で暴露したようなもの。好きな男性のこと、ついつい想っちゃうよね~(微笑み)


河井未翼:(頬をふくらませ)だから、絶対に違うっていってるでしょ!


高橋碧唯:(小声で)まあまあ、そんなに熱くならないで。私だけの秘密にしておいてあげるから。(微笑み)


河井未翼:違う話にしよう?


高橋碧唯:負けを認めたということで。(微笑み)


河井未翼:アーティストブックで双子コーデするお洋服、選んでくれたかな?


高橋碧唯:かわいくて夏らしいワンピ選んだから、きっと気に入ってくれると思う。ちゃんと膝下まで丈あるから、心配ないよ。小物もちゃんとお揃いにしたからね。届くのを楽しみにしていて。


河井未翼:本当にごめんね。あおちいちゃんに全部任せちゃって。


高橋碧唯:こういうことは、時間ある人に任せるのが一番だから、気にしなくていいよ。


河井未翼:ほかのメンバーの準備状況は、大丈夫なのかな?


高橋碧唯:撮影に関しては、個人レベルで準備できるところは問題なさそう。あとは、撮影スケジュールを確定させて、撮影セットをレンタルすることくらい。特集のインタビュー記事の質問事項は出揃ったし、各メンバーページの共通質問事項もまとまった。文字数の上限を確認しているところだから、それが確認できれば、一両日中にみんなに記載して貰うことになると思う。沖縄で遊ばせないからね!(微笑み)


河井未翼:そうか、… 遊ぶ時間がないとすると、お土産を選ぶ時間もなくなるね。ごめんね、あおいちゃん。せっかく沖縄に行くのに、お土産なしで。


高橋碧唯:遊ぶ時間とお土産を選ぶ時間は別でしょ? 少し待ち時間があれば、ホテルや空港で買えるでしょ?


河井未翼:冗談よ。ちゃんとみんなにお土産買ってくるから、楽しみに待っていてね。


高橋碧唯:そうでなくっちゃ!(微笑み)






【 19 】



//

  未翼は椎名の迎えで帰宅する。食事を終え、つかの間の安らぎの時間。



~川原宅ダイニング

河井未翼:学校でしいなさんのことばかり考えていたら、あおいちゃんに「心ここにあらずで、何か思いにふけっているみたい」っていわれちゃいました。


川原椎名:だめじゃない。授業に集中しなくちゃ。


河井未翼:分かってはいても、昨日のことが忘れられなくて、…


川原椎名:昨日のこと? それって、僕のことを考えていたんじゃなくて、セックスのことを考えていたんじゃないの?


河井未翼:はっきりいいます。違います! しいなさんのことを想いすぎて、口元が動いていたみたいなんです。「しいなさん」って、口が動いていたはずなんですけど、あおいちゃんが読唇術習得するつもりなのか、解読するって意気込んでました。(微笑み)


川原椎名:それ、笑いごとじゃないんじゃない? 無意識に口が動いていて、あおいちゃんが読唇術会得したら、みんなバレちゃうじゃない?


河井未翼:そうなっちゃいますね。


川原椎名:僕の名前くらいだったら、ごまかせると思うけど、セックスだの何だの、関連用語を口にしてたらどうするつもり?


河井未翼:私、そのカタカナ4文字のアルファベット3文字は、まだ口にしていませんよ。絆確認としかいっていません。関連用語は、「イッちゃう」しかいってないと思いますけど、…


川原椎名:そうだった?


河井未翼:はい。口に出すのが恥ずかしくて、抑えることができています。「イッちゃう」は、極限や極限に近いときなので、抑えることができません。


川原椎名:限界に近いところで抑えられないのであれば、ほかの用語だって口にすることもありそうだね。みはちゃん、これからもずっと口にしちゃあだめだよ。僕とセックス、じゃない、絆確認しているときも口にしない。メンバーとの下ネタトークも一切しない。極秘ルールに追加しようね。


河井未翼:「イッちゃう」もですか? これだけは抑えられないと思います。それ以外は、ルールにしてもいいと思います。


川原椎名:「Ohhh… I’m coming」とか「Oh! No! I'm coming!」って英語でいってみる?


河井未翼:そんな、… 英語圏の人じゃないのに、極限の状態で英語が出てくると思います?


川原椎名:思いません。(きっぱり) 思わないけど、思いにふけったり、寝言で出てしまったら一大事。覚えたばかりだけど、記憶から消す。「I’m coming!」を記憶に書き込む。いいね!


河井未翼:そんな~ 無理ですよ、… (ふと閃く)そうだ! さっそく練習しましょう! 今夜、絆確認2日目。I’m coming!の練習ついでにやりましょう!(微笑み)


川原椎名:(呆れ顔で)何を血迷ったことをいってるの。明日は、朝一の新幹線に乗って、沖縄に行くんでしょ。みはちゃんが起きるのは04:30。僕が起きるのは03:30。絆確認していたら、寝る時間がなくなっちゃうでしょ。却下!


河井未翼:練習しないままで沖縄に行って、沖縄のホテルでりさちゃんやみれいちゃんたちに聞かれたらどうするんですか?


川原椎名:そのときは、… そのときは、…(考える) そうだ。ジェットコースターに乗って、急降下する夢を見ていたんですってことにすればいいよ。


河井未翼:キャー!! は、いいますけど、イッちゃうはいいませんよ。無理があると思います。


川原椎名:お風呂に入ったときに、何回もI’m coming!って復唱して覚えなさい。イッちゃうは忘れる。いいね!


河井未翼:絆確認しましょうよ~(おねだり)


川原椎名:絶対にだめ!



//

  早く就寝するためにベッドに入った未翼。前夜のことが思い出され、なかなか寝付けない。



~未翼の部屋

河井未翼:だめだ。眠れない。



//

  起き上がった未翼は、部屋の間接照明だけを点灯させ、ベッドに腰掛けるように座る。パジャマの上着のボタンを外して脱ぎ、コルセットを外す。



~未翼の部屋

河井未翼:ズボンも脱いじゃおう。



//

  パジャマズボンも脱ぎ、下着姿になった未翼。ひとりエッチをしようと、前夜を思い出しながら、左手で育乳ブラの上から右胸を軽く握る。そのまま指先で乳首を押す。指先で乳首の周りをくるくるとなでる。



~未翼の部屋

河井未翼:何か違う。育乳ブラのせいかな?



//

  育乳ブラのカップが、バストを中央に引き寄せて谷間をつくる構造になっていて、ブラの上から胸を触った感覚が、通常のブラと異なるタイプを使用している。未翼は、育乳ブラを外す。改めて、左手の指先で右胸の乳首の周りをくるくるとなでる。



~未翼の部屋

河井未翼:しいなさん、好き。



//

  左手の指先で右胸の乳首の周りをくるくるとなで続けながら、右手を太ももに伸ばす。前夜、椎名に触れられたときの性的な興奮はない。右手を太ももから滑らすようにショーツに重ね、指先でクリトリスを刺激する。



~未翼の部屋

河井未翼:はぁん!



//

  動かし続けている左手に続いて、右手も動かし続ける。



~未翼の部屋

河井未翼:はぁ、はぁん。あっ、あっ、あぁ~ うっ、うぅん。だめ、もうだめ、… イッちゃう、… 違う。(首を横に振る)



//

  椎名に使うなといわれたことばを使ってしまい、手の動きも止まる。



~未翼の部屋

河井未翼:しいなさんの意地悪。I’m coming!なんて急にいわれたって、…



//

  左手の動きを再開させる。右手をショーツに潜り込ませる。ぷくっと膨れたクリトリスは、ラブジュースで濡れている。そのまま手を伸ばし、中指を膣に挿入する。Gスポットを探す。



~未翼の部屋

河井未翼:ここ? はあぁぁー! ここ!



//

  Gスポットを探り当てた未翼。悶えて左に倒れる。ただ、右手の動きは止まらない。



~未翼の部屋

河井未翼:はぁ、はぁ、はうっ! あぁ、あぁ、あうっ! うぁぁ、うぁぁ、ううっ! しいなさん! I’m coming!



//

  Gスポットでイッた未翼。少し荒くなった呼吸を整える。しばらくして立ち上がると、ショーツを脱ぐ。



~未翼の部屋

河井未翼:しいなさん、私を強く抱きしめてください。



//

  未翼は、椎名に抱きしめられているかのように両腕を胸の前でクロスさせ、強く締め付ける。ディープキスを交わし、舌を絡め合っているかのように舌を動かす。右手が股間へとゆっくり伸びる。クリトリスを指先で1回転。身体がピクッと反応する。右手が膣にたどり着き、中指をゆっくり挿入。Gスポットを通過して、コリコリとした部分に指先がぶつかる。



~未翼の部屋

河井未翼:あ、ああっ!



//

  身体に衝撃が走ったかのように、ビクッビクッと反応。1歩後ろに足が引けてベッドに当たり、バランスを崩して、背中からベッドに倒れる。



~未翼の部屋

河井未翼:しいなさん、私は大丈夫です。このまま続けてください。



//

  椎名のペニスを挿入されていると想像しながら、ゆっくりとしたペースを変えることなく、中指でポルチオを刺激し続ける。



~未翼の部屋

河井未翼:あっ、… あぁ、… あぁぁ、… あっ、… あぁ、… あぁぁ、… はっ、… はぁ、… はぁぁ、…  はっ、… はぁ、… はぁぁ、… はぅ、… はぅぅ、… うっ! しいなさん、もうだめ。だめです。I’m coming!



//

  未翼は、右手の中指を膣から抜き、薄暗い天井を見つめる。



~未翼の部屋

河井未翼:I'm coming! なんて、やっぱり無理、… しいなさん、お願い。もっと好きになって、…(一筋の涙が零れる)






【 20 】



//

  翌朝、沖縄に旅立つ朝、04:30に椎名に起こされた未翼。眠そうな目をしたまま朝食を食べ終える。



~川原宅ダイニング

川原椎名:みはちゃん、まだ脳が完全に起きていないみたいだね。


河井未翼:いつもより早くベッドに入ったんですけど、全然眠れなくて。結局、いつもと同じくらいになっちゃいました。


川原椎名:沖縄に行くのが楽しみすぎて、全然眠れなかった?


河井未翼:違います。しいなさんが絆確認してくれなかったので、しいなさんのことをずっと考えていたら、眠れなくなっちゃいました!(少し怒り気味)


川原椎名:学校に行ったら、授業に集中! お仕事の現場に入ったら、お仕事に集中! 僕のことは忘れる。いいね?


河井未翼:分かってます!(少し怒り気味)


川原椎名:みはちゃん、スマイル! アイドルが怖い表情していたらいけないよ。(笑)


河井未翼:誰のせいだと思っているんですか。(少し怒り気味)


川原椎名:時と場合を考えないみはちゃんのせい。大人になりなさい。


河井未翼:(席を立つ)ひとりで駅に行けますから、しいなさんに送って貰わなくて結構です。行ってきます。


川原椎名:(慌てて)待って、みはちゃん!



//

  椎名も席を立って、ひとりで出かけようとする未翼の腕を掴む。



~川原宅ダイニング

河井未翼:放してください。新潟駅はすぐそこなので、私ひとりで行けますから。


川原椎名:すぐ近くでも、何か起こるかもしれないから送るよ。


河井未翼:何かって何ですか? こんな早朝で人もほとんど出歩いていない時間帯で、私が事件にでも巻き込まれると思っているんですか?


川原椎名:みはちゃんを狙っているストーカーがいるとしたら、このタイミングを狙ってるかもしれないでしょ。休館日が続いているから、スケジュール的に予想できる。ここに住んでいることだってもうバレていて不思議じゃない。事件に巻き込まれてからでは遅いんだ。絶対にひとりで出歩かないで。


河井未翼:心配性なんですね。


川原椎名:今はみはちゃんの保護者のようなものだから、みはちゃんを守る義務がある。だから、僕が駅まで、みんなとの集合場所まで送るから。


河井未翼:ご勝手にどうぞ。いい加減にこの手を放してください。


川原椎名:(掴んでいた手を放し)まだ怒ってる? いつもは冷静な判断ができる子なのに、どうして僕のことになると、冷静な判断ができなくなるの?


河井未翼:しいなさん、私のことを分かっていていわせたいんですか? いいますよ。いえばいいんでしょ? しいなさんのことが好きだからですよ。好きで好きで、大・大・だ~い好きだからですよ!(大きく息を吐く) 遅刻するといけないので、早く行きましょ。


川原椎名:クルマの鍵持ってくるから、みはちゃんも忘れものがないか確認して。



//

  新潟駅。駅に集合する場合、人数や時間帯などを考慮し、その都度変更している。今回は、南口のペデストリアンデッキの東側エレベーター付近。莉世、美麗のふたりと同行するマネージャーの杵渕巴亜斗、樋口美彩がすでに到着している。



~新潟駅

河井未翼:おはようございます。


川原椎名:おはようございます。お待たせしちゃいました?


鷲尾美麗:みはちゃん、おはよう! しいなさんもおはようございます。


今井莉世:おはようございます。私たちも今来たばかりですし、集合時間までもう少しあるので、全然問題ありません。


川原椎名:それはよかった。


今井莉世:みはちゃん、いつもしいなさんに送り迎えして貰っていて羨ましいな~ 私もして貰いたい。(微笑み)


鷲尾美麗:りせりせ、そんなこというと、みはちゃんが怒るよ。(笑) (未翼を見る)元気ないけど、どうしたの?


河井未翼:(手を横に振って)そんなことないです。元気です。


川原椎名:昨夜、あまり眠れなかったそうです。なので、新幹線の車内や飛行機の機内で少し眠らせてあげてください。


河井未翼:(手を横に振って)全然大丈夫です。1日くらい睡眠時間が短いくらいでは、何も問題ありません。(つくり笑顔)


鷲尾美麗:みはちゃんの面倒は、私が責任を持ってみますのでご安心ください。


川原椎名:よろしくお願いします。それにしても、、みれいちゃんは、月曜日にみはちゃんと撮影して、昨日は劇場公演、疲れもあるだろうに、とっても元気そうだね。メイクもバッチリで、今すぐにでもお仕事できそう。(微笑み)


鷲尾美麗:私もまだ若いですから。(莉世をチラ見) メイクに関しては、しいなさんにお目にかかるときは完璧にしていたいので、早起きも全然問題ありません。(微笑み)


今井莉世:(美麗に一瞬イラッとし)へ~ ふたりでコソコソやっていたのは、やっぱり撮影だったんだ? 写真集? ドラマ?


鷲尾美麗:そうだ。しいなさん、(人差し指を立て)しーです。情報解禁前なので、メンバーにも未公表なんです。


川原椎名:箝口令が出たことはみはちゃんから聞いていて、ファン対策だけかと思ったら、メンバーにもまだ内緒にしていたんだ?


鷲尾美麗:そうなんですよ。


今井莉世:そうと分かれば、こっちのもの。この機会に白状させます。(笑)


川原椎名:りせちゃん、リーダー特権でも使って白状させるの? 怖いね~(笑)


鷲尾美麗:絶対にしゃべりませんけどね。(微笑み)


河井未翼:私もしゃべらないです。


川原椎名:りせちゃん警察、成果なく取り調べ終了となりそうですよ。(微笑み)


今井莉世:はあとちゃん、みさちゃんも同行していたはずなので、取り調べ対象は4人です。何とかなるでしょう。(マネージャーのふたりを見る)


杵渕巴亜斗:えっ!? 私たち?


樋口美彩:(手を横に振って)知らない、知らない。


今井莉世:みはちゃんとみれい、別々に撮影していたって情報がU-timeにあったから、マネージャーひとりってことはないし、ななちゃんや男性マネージャーも外れる。残るは、ふたりしかいないでしょ。(微笑み)


杵渕巴亜斗:(白々しく)みはちゃんとみれいの撮影? 何のこと?


樋口美彩:月曜日に撮影? (手を横に振って)知らない、知らない。


今井莉世:新潟に戻ってくるまでに白状させますから、覚悟していてください。



//

  「こわ~い!」と杵渕、樋口が声を揃える。



~新潟駅

鷲尾美麗:ねぇ、みはちゃん。沖縄行くのが初めてだっていってたよね?


河井未翼:はい。飛行機に乗るのも今回が初めてです。


鷲尾美麗:飛行機も初めてなんだ? ちゃんと忘れずにパスポート持ってきた?



//

  その場にいる人の表情が一瞬固まる。



~新潟駅

河井未翼:私が眠そうだからって、海外じゃないからパスポートがいらないことくらい理解してますよ。(舌を出す)


鷲尾美麗:ちゃんと起きてるね。(微笑み)


今井莉世:そろそろ行きましょうか。


鷲尾美麗:行ってきます。(椎名に手を振る)


川原椎名:行ってらっしゃい。



//

  未翼は、椎名に小さく手を振る。未翼、莉世、美麗らは、 "VENUS PROJECT" 名義のアルバムリード曲のミュージックビデオ撮影で沖縄に向けて出発する。



~新潟駅

川原椎名:みはちゃん、少しは機嫌直してくれたかな。



//

  上越新幹線で東京への移動中、仮眠していた未翼。眠さを解消して、羽田空港で那覇空港へ向かう便に搭乗。同便には、 "VENUS PROJECT" に参加している在京のアーティストやアイドルたちの一部も搭乗。離陸するため滑走路に移動している。



~機内

鷲尾美麗:みはちゃん、離陸するときや上昇するときに、耳がキーンとするかもしれないけど、耳抜きすれば大丈夫だから、驚かないでね。


河井未翼:気圧の関係ですか。


鷲尾美麗:そう。水に入ったときと一緒。


今井莉世:離陸するときは、Gもかかるからね。座席に押し付けられる感覚あるけど、飛び立ってしまえば解消されるから、心配しないでね。


河井未翼:分かりました。(少し緊張する)



//

  未翼、莉世、美麗が搭乗した便が滑走路に入る。そして、加速する。大きなエンジン音とともに速度が上がっていく。肘掛けに置いた未翼の手に力が入る。美麗が未翼の手の上にそっと自分の手を重ねる。



~機内

鷲尾美麗:大丈夫。(未翼を見て微笑む)


河井未翼:はい。(小さく頷く)



//

  機種を上げて離陸。高度をどんどん上げていく。



~機内

鷲尾美麗:水平飛行に入るまでもう少しかかると思うけど、安心していいよ。怖かった?


河井未翼:(自分の手の上の美麗の手を見て)みれいちゃんの優しさで安心して初めての離陸を体験できました。


鷲尾美麗:(自分の手をどかし)あっ、ごめんね。ずっと置いたままにしてた。


今井莉世:ボディータッチ、確信犯! みはちゃんが視線を手に送らなかったら、降りるときまで触ってるつもりだったでしょ?(追求の目線)


鷲尾美麗:いいえ。この前、い~っぱい手を握ったから、その必要なし! 心優しいお姉さんの気持ちで手を重ねただけ。


今井莉世:この前、手を握った? 写真集? この前って、いつ?


鷲尾美麗:りせりせには教えませ~ん。(微笑み)


今井莉世:いいわよ。でも、覚悟しておきなさい。レコーディングのとき同様、夜中にみはちゃんには手を出させないからね!


鷲尾美麗:うそっ!? また、あの忘れ物防止タグ使うつもり?


今井莉世:みはちゃんを狙う犯罪予備軍に変わりはないからね。(微笑み)


鷲尾美麗:悪魔!


今井莉世:何とでもいいなさい。(笑)


河井未翼:今回も安心して眠れそうです。ありがとうございます。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃ~ん、そんなこといわないで。


今井莉世:ところで、みはちゃん。耳ツーンにならなかった?


河井未翼:なりましたけど、すぐに耳抜きしたので大丈夫です。


今井莉世:それはよかった。



//

  水平飛行に入り、シートベルト着用サインが消える。座席のシートモニターには、行き先である沖縄県の天気予報が紹介されている。



~機内

河井未翼:天気予報だと、雨が降ったり止んだりみたいですね。


今井莉世:沖縄は、梅雨の終盤で、予報はあまりよくないみたいね。


鷲尾美麗:だから、3日間撮影日を確保してるんでしょ?


今井莉世:夏ソングだから、太陽がさんさんと輝くところで撮影したいんでしょうね。


河井未翼:太陽がまったく顔を覗かせなかった場合、どうするんでしょう?


鷲尾美麗:映像を合成して、それらしくしちゃうんじゃないの?


河井未翼:それだと、沖縄に行く意味がない。(苦笑)


今井莉世:本当にそれ! 天候待ちでずっと待機にならないといいね。


鷲尾美麗:せっかくだから、少しくらいは観光したい。


今井莉世:去年は天候に恵まれて、最終日は自由行動できた。といっても、マネージャー同行だけど。


鷲尾美麗:マネージャー同行でもいいから観光したい。



//

  話をしている未翼たちのところに、同乗しているYuiYuiの佑唯と由依のふたりがやってくる。



~機内

佑唯:こんにちは~ 向こうで遊ぶ予定決めてたの?


今井莉世:こんにちは。すみません、座ったままで、…


由依:いいの、いいの、そのままで。私たちもすぐに戻るから。


今井莉世:遊ぶ予定を話し合っていたのではなくて、単にみれいが観光したいと口にしたところでした。


佑唯:天気悪くて、撮影どころじゃないような気がする。


由依:だからといって、観光していいはずもなく、… 早く撮影終わらせて遊びたい!


鷲尾美麗:同意します。(微笑み)


今井莉世:ところで、ダンスは大丈夫ですか。


佑唯:それ、それ! 私たち挫折しましたので、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。(頭を下げる)


由依:フリV観ても同じようにできなくて、ダンスのセンスがつくづくないんだなと思う。ということで、よろしくお願いいたします。(頭を下げる)


今井莉世:練習する時間は確保できると思うので、収録シーンを中心に頑張りましょう。


佑唯:(両手を合わせて)本当に助かります。


由依:ずっと通路に立ってる訳にいかないから、またね~


今井莉世:では、後ほど。



//

  YuiYuiの佑唯と由依のふたりは、自分たちの座席に戻っていく。



~機内

鷲尾美麗:ねぇ、みはちゃん。観光できるようだったら、水族館に行こうね!


河井未翼:いいですね。行きたいです。


鷲尾美麗:りせりせもついて来る?


今井莉世:私はおまけ?(不満げ)


鷲尾美麗:ほかにも行ける場所があったら、それはりせりせの好きなところでいいからね。


今井莉世:それはありがとう。少しは気を使ってくれるのね。今のうちに調べておこう。



//

  莉世は、機内のWi-Fiを利用し、宿泊先のリゾートホテルから行けそうなスポットを探す。



~機内

鷲尾美麗:みはちゃん、飛行機からの景色は新鮮?


河井未翼:雲の上を飛んでるのがとっても不思議です。飛行機の高度になると、ずっと晴れでいいなって思ってます。


鷲尾美麗:積乱雲、入道雲は飛行機の高度よりずっと上空まで伸びるみたいだから、そこに入っちゃうと真っ暗。


河井未翼:へ~


鷲尾美麗:みはちゃん、名前に "翼" があるから、鳥みたいに空を飛んでみたいとか思ったりする?


河井未翼:空を飛べたら気持ちいいだろうなとは思います。


鷲尾美麗:パラセーリングだったら、沖縄で楽しめるみたいよ。


河井未翼:パラセーリング?


鷲尾美麗:パラシュートをモーターボートで引っ張って、空中散歩ができるマリンスポーツ。


河井未翼:海の上だし、濡れちゃいますよね?


鷲尾美麗:離発着は船の上からみたいだけど、水しぶきとかは浴びそう。


河井未翼:パラセーリングは止めておきます。


鷲尾美麗:濡れるのいや?


河井未翼:足のつかないところは不安で。


鷲尾美麗:海が苦手ってことなのね。


河井未翼:あ、そうなんです。


鷲尾美麗:私が水着になるんだったら拒否するけど、みはちゃんの水着姿は見てみたい。(微笑み)


河井未翼:私も水着は拒否ですよ。


鷲尾美麗:スタイルいいのにもったいない。この前、みはちゃんがロリィタで絶対領域初出ししたあと、どれだけのファンから感謝されたと思ってるの?


河井未翼:ファンの要望でもだめです。


鷲尾美麗:スタイルよくするために努力続けているのに見せないなんて、もったいなくない? それとも、特定の誰かのために頑張ってる? 私とか?(微笑み)



//

  インターネットで行きたい場所を調べていた莉世の手が伸び、美麗の耳を引っ張る!



~機内

今井莉世:あなたは、どうしてそっちの方向に持っていこうとするの? これだから用心しないと。


鷲尾美麗:(睨むように莉世の手を払い)みはちゃんとは唯一無二の関係なので、邪魔しないで貰えます~


今井莉世:(残念そうに)どうしてこんな風になっちゃったのかな、…


鷲尾美麗:みはちゃんが圧倒的にかわいくて、私のことを慕ってくれているからに決まってるでしょ! 愛でないでどうするの! って話。


今井莉世:みはちゃん、本当に気をつけるんだよ。さらと一緒で、みれいも油断大敵。


河井未翼:みれいちゃん、今のところは理性が勝っているので大丈夫だと思いますよ。五十嵐GMにも釘を差されてますし。(微笑み)


鷲尾美麗:今のところって表現が少し引っかかるけど、みはちゃん家にお泊りもして、何も問題なかったんだから、りせりせは考えを改めるべき。さらと同一視しないでくれる!



//

  未翼、莉世、美麗の会話は、那覇空港に到着するまで続く。






【 21 】


   "VENUS PROJECT" 名義のアルバムリード曲「Summer Vacation」のミュージックビデオ撮影は、沖縄本島北部にある大きな貸別荘で行われる。合宿にも利用可能な貸別荘からは、東シナ海を望むことができ、ビーチが目の前に広がっている。大きなプールもあり、プールサイドには撮影用に準備した綿あめ、ポップコーン、かき氷、アイスクリーム、フルーツジュース・トロピカルドリンクなどのワゴンに、パラソルテーブルとチェアも並んでいる。雨上がり、太陽が顔を覗かせている。プールサイドの地面が乾くまでの間、 "VENUS PROJECT" の24人は、パジャマに着替えて指定された部屋に入る。ツインベッドが置かれている部屋、左右に2段ベッドが設置されている部屋など、4タイプの部屋で思い思いの時間を過ごす。そんなメンバーの自然な姿が撮影される。



~別荘

今井莉世:用意してくれたジェンガ、やってみる?



//

  未翼、莉世、美麗の部屋のテーブルには、ジェンガ、トランプの遊ぶためのグッズに、小説の文庫分が用意されている。



~別荘

鷲尾美麗:絵になりそうなのは、ジェンガですよね?



//

  美麗が撮影スタッフに確認。反応がよかったため、3人でジェンガをすることに。じゃんけんで負けた未翼が1番目、勝った莉世が3番目、美麗が2番目。



~別荘

河井未翼:私、こういうの苦手なので、早く倒してしまったらごめんなさい。



//

  未翼は、一番下の段の右ブロックを躊躇なく大胆に抜く。タワーは大きく揺れるが崩れない。ただ、下段側にねじれが生じる。



~別荘

鷲尾美麗:(驚いた表情で)ちょっと、みはちゃん! 最初から倒すつもり? 普通、真ん中のブロックをちょんちょんとして、抜きやすいブロックを抜くでしょ?


河井未翼:それがセオリーなんですね。(微笑み)


今井莉世:知らなかったとはいえ、大胆すぎる、…(苦笑)


鷲尾美麗:本当、大胆なんだから、… これで倒しちゃったら、みはちゃんの戦略勝ちになるから、絶対に負けたくない!



//

  美麗は、安全に抜ける真ん中のブロックを抜き、上に積み上げる。莉世も安全に抜ける真ん中のブロックを抜き、上に積み上げる。2巡目の未翼。今度は、安全に抜ける真ん中のブロックを抜き、上に積み上げる。



~別荘

鷲尾美麗:それでいいの、みはちゃん。序盤は、安全運転で行きましょ!(微笑み)



//

  2巡目、3巡目、4巡目の美麗まで、安全に抜ける真ん中のブロックを抜き、上に積み上げる。4巡目の莉世。



~別荘

今井莉世:抜けそうな真ん中のブロックがない!


鷲尾美麗:さあ、いよいよ中盤戦。抜けるサイドのブロック見つけられるかな?(微笑み)


今井莉世:私もこの回は絶対に負けたくない!



//

  莉世は、サイドのブロックを指先でちょんちょんと押し、反応を確認しながら、安全に抜けそうなブロックを見つけて抜く。タワーを大きく揺らすことなく、抜いたブロックを積み上げる。



~別荘

今井莉世:ラッキー! これでよし!


鷲尾美麗:みはちゃん、慎重に選んでね。


河井未翼:慎重なのは選ぶときだけで、抜くときは大胆でいいですか?


鷲尾美麗:そうじゃない、そうじゃない。どっちも慎重に。タワーを揺らさないように慎重に抜いて、積み上げる。



//

  5巡目の未翼も莉世と同様に、サイドのブロックを指先でちょんちょんと押し、反応を確認しながら、安全に抜けそうなブロックを見つけて抜く。タワーを大きく揺らすことなく、抜いたブロックを積み上げる。



~別荘

鷲尾美麗:5巡目で倒したくないな。最初にねじれたせいで、難しくなってるよね。


今井莉世:ぶつぶついってないで、早く決めたら?



//

  部屋の外から、キャーキャーと騒ぐ声が聞こえ始める。



~別荘

鷲尾美麗:集中したいのに、嫌がらせかな?


河井未翼:プールサイドでの撮影が始まるんですかね?


今井莉世:それなら、スタッフさんに先に声がかかるでしょ?



//

  騒ぐ声とともに、ドタバタと足音も聞こえたかと思うと、a-Force OSAKAの長澤みる、める姉妹が枕を持ってやってくる。



~別荘

長澤みる:あ~ ジェンガなんてしとる! 枕投げせえへん? ストレス発散しよう?


長澤める:AICHIさんを奇襲攻撃でやっつけてきた。今度は、正攻法でNIIGATAさんをやっつけに来たで!(笑)


今井莉世:あ~ 私たちは枕投げは結構です。ほかの部屋を当たってください。


鷲尾美麗:おふたりには勝てそうにないので、不戦敗ということに、…(苦笑)


長澤める:こっちはふたり、NIIGATAさんは3人。戦わずして敗戦はないやろ?


今井莉世:(困り顔で)そんな小学生男子みたいなこといわれても、…



//

  ふたたびドタバタと足音も聞こえたかと思うと、今度はa-Force AICHIの樋口ゆりあ、関根美愛が枕を持ってやってくる。



~別荘

関根美愛:ゆりあさん、いましたよ! OSAKAのふたり。


樋口ゆりあ:不意討ちなんて、卑怯者のすること。(長澤姉妹を指差し)正々堂々勝負だ!


今井莉世:(立ち上がり)もう! 枕投げするんだったら、自分たちの部屋でやってください!


長澤める:そんなことをいって、AICHIさんとの戦いで疲弊したところを狙って、漁夫の利を得ようと企んどるんやろ?


今井莉世:(怒り心頭)早く出ていってください!


樋口ゆりあ:りせちゃん、共同戦線張って、a-Force OSAKAのふたりを懲らしめようよ。


長澤みる:これなら枕投げできるんとちゃう?(テーブルに近づき、ジェンガのタワーを崩す)


鷲尾美麗:なんてことを!



//

  バンッ! と未翼がテーブルを叩く。未翼は立ち上がり、ジェンガのタワーを崩したみるに歩み寄る。未翼が1歩近づくたび、みるは1歩下がる。そして、めるにぶつかり止まる。



~別荘

河井未翼:(ニコッと笑って)お外は晴れてますよ。よい子のみなさんは、お外で遊びましょうね。


長澤みる:みはちゃん、こわっ!


鷲尾美麗:はいはい。みはちゃんが怒る前に、部屋から出ていってくださ~い。



//

  美麗は、未翼とみるの間に割り込むと、部屋に入ってきた4人、a-Force OSAKAの長澤みる、める姉妹、a-Force AICHIの樋口ゆりあ、関根美愛をまとめて部屋の外へと誘導する。



~別荘

樋口ゆりあ:(未翼をチラ見して小声で)みはちゃんって、怒らせると怖いの?


鷲尾美麗:(小声で)さあ、どうでしょう? みはちゃんをご機嫌斜めにさせてしまったことはありますけど、本気で怒ったところを見たことないので、何ともいえません。ただ、ニコッと笑ってはいるけど、目が本気のときは、用心した方がいいと思います。


長澤みる:それ、メモしとくわ。仕事で敵にはしとーない。



//

  入れ替わるようにYuiYuiの佑唯と由依のふたりがやってくる。パジャマから夏の装いに着替えている。



~別荘

佑唯:外の空気を吸いに行かない?


鷲尾美麗:パジャマシーンの撮影、もう終わったんですか?


佑唯:使われる時間なんて一瞬だし、使われるとしても1位さまのカットがほとんどでしょうから、さっさと切り上げ。


由依:(撮影スタッフに)こちらも撮影切り上げましょう!



//

  YuiYuiの佑唯と由依のふたりが撮影スタッフを部屋から追い出す。



~別荘

佑唯:(テーブルの上を見て)ジェンガしてたんだ?


由依:誰が負けたの?


今井莉世:誰も負けてないんですよ。1回目の途中で、みるちゃんに崩されちゃいました。


佑唯:誰も負けてないなら、悔いなく次のことできるね。着替えて、外に行こう!


今井莉世:外と行っても外出できませんよね。目の前のビーチでお散歩でも?


佑唯:プールサイドにポップコーンつくるワゴンとかあるみたいだから、おやつにできたらと思って。(笑顔)


由依:お仕事中に食べられるっていいよね。(笑顔)



//

  未翼、莉世、美麗、YuiYuiの佑唯と由依がプールサイドに出ると、リード曲「Summer Vacation」がスピーカーから流れ、撮影開始に向けてスタッフが急ピッチで準備作業を行っている。綿あめ、ポップコーンなどのワゴンでは、食材も用意されて、スタッフが試作を始めている。



~別荘

アシスタントディレクター:メンバーのみなさん、撮影用の洋服、ユニフォームに着替えてください。準備できしだい撮影始めます。


佑唯:おやつ食べてからじゃだめですか。


アシスタントディレクター:あとで食べる時間ありますので、着替えを先に済ませてください。


佑唯:はーい。


河井未翼:撮影用のユニフォームって、何ですか。


鷲尾美麗:嫌な予感がする、…


今井莉世:みれい、ユニフォームだと思うよ。(クスクスと笑う)


河井未翼:みれいちゃんだけユニフォームですか。


今井莉世:たぶんね。(クスクスと笑う)


佑唯:早く着替えて、おやつ食べよう!


由依:食い意地が張っているみたいに聞こえるから、この辺で止めとかない?(笑)


佑唯:お仕事、お仕事! っていえばいい?


由依:真面目でよろしい。(笑)



//

  着替えと化粧直しを終え、ふたたびプールサイドに出てくる。未翼と莉世は、夏らしい清涼感あるワンピース、YuiYuiの佑唯と由依は、デニムのショートパンツにオーバーサイズの白Tを組み合わせたカジュアルスタイル。美麗だけユニフォーム姿で、淡いピンクのシャツに、ピンクの胸当てエプロンを着用し、同色のキャスケットをかぶっている。



~別荘

鷲尾美麗: "MUSE 12" の12人は歌唱ないし、 "VENUS 12" のみなさんをもてなすスタッフ役だよね。


河井未翼:みれいちゃん、ユニフォーム姿もとてもお似合いです。(微笑み)


今井莉世:みれい、ピンクも似合うじゃない。ガーリーな洋服にもチャレンジしてみたら?


由依:入ったばかりのアルバイトスタッフという感じはしないね。


佑唯:若い有能なチーフって感じ。(微笑み)


河井未翼:みれいちゃん、あとで一緒にセルフィー撮りましょうね!(微笑み)


鷲尾美麗:いいけど、ミュージックビデオが公開されるまでは、非公開にしてね。


河井未翼:もちろんです。(微笑み)


今井莉世:みれい、私ともセルフィー撮ろうね。(微笑み)


佑唯:いいなぁ。私たちも入れてよ。(微笑み)


河井未翼:そうですね。みんなでぜひ。(微笑み)


アシスタントディレクター:すみません。カメラチェックさせてください。ユニフォームの鷲尾さんは、ポップコーンのワゴン担当していただいて、ポップコーンを配ってください。河井さん、今井さんは、ポップコーンを待つ人。YuiYuiのおふたりは、河井さん、今井さんを見つけて、一緒に待つ感じでお願いします。



//

  ポップコーンのワゴン上部に備え付けられたカメラが、ワンピース姿の未翼と莉世、ユニフォーム姿の美麗の3人を捉えている。クレーンカメラは、歩くYuiYuiの佑唯と由依のふたりを横から追尾。ポップコーンのワゴン前で未翼、莉世と合流。楽しそうに会話する場面を捉える。



~別荘

アシスタントディレクター:みなさん、ありがとうございます。メンバーが揃うまで少しお待ちください。


佑唯:よし! みれいちゃん、ポップコーン頂戴!(微笑み)


由依:ゆうゆう、最年長のくせして大人げない。(耳を引っ張り)順番守りな!


佑唯:(しょぼんとして)は~い。


河井未翼:ゆいちゃん、お腹空いているんでしたら、どうぞお先に。(微笑み)


佑唯:本当? ありがとう、みはちゃん!(満面の笑み)


鷲尾美麗:サイズ、MとLがございますが、いかがいたしますか?


佑唯:もちろん、Lサイズで!(満面の笑み)



//

  美麗は、トングでポップコーンをよそい、紙のポップコーンカップにたっぷり入れて、佑唯に手渡す。



~別荘

佑唯:みれいちゃん、ありがとう。(さっそく頬張り)おいち~い!(笑顔)



//

  未翼、莉世、由依の3人は、Mサイズをリクエスト。美麗からポップコーンを受け取る。美麗自身もMサイズのポップコーンカップに少しだけ入れ、みんなで食べる。



~別荘

今井莉世:ポップコーン、久しぶりに食べた。私、映画館にでも行かない限り、食べないからね。


鷲尾美麗:連れて行ってくれる人がいなくなったから?(微笑み)


由依:何、何? そういういいかたするってことは、彼氏がいたけど、別れたっていう意味?


今井莉世:みれい!(怒りの視線を送る)


鷲尾美麗:お客さまにとんだご無礼を。お忘れになってくださいませ。(微笑み)


佑唯:a-Force NIIGATAは、高校卒業したら、恋愛OKだったよね? ほかのグループとは違って、健康的でいい!(笑)


由依:私たち、最初から恋愛OKだけど、いたためしないよね。(苦笑)


佑唯:今となっては、おしゃべりグループに成り下がったから、いい男見つかんないよね。(苦笑)


今井莉世:(話を変えるため)ポップコーン食べてると、喉乾きませんか。


佑唯:めっちゃ乾く。(笑) ジュース飲みたい!


鷲尾美麗:お客さま、フルーツジュースやトロピカルドリンクもご用意いたしております。いかがですか。



//

  スタッフなりきりの美麗に続くようにして、フルーツジュースのワゴンに未翼たちは移動。おやつタイムを満喫する。しばらくすると、ほかのメンバーも順次集まってくる。雨で濡れていたプールサイドの地面も乾き、ミュージックビデオの撮影が始まる。 "VENUS 12" の12人は順番にリップシンクの撮影、待っている間は、プールサイドで楽しむ、くつろぐ場面を撮影。 "MUSE 12" の12人は、お揃いのユニフォームを着て、 "VENUS 12" のメンバーをおもてなし。


  撮影2日目、3日目の天気予報が思わしくないため、急ピッチで撮影は進む。影が伸び始め、少し過ごしやすくなったきたことを感じる中、ミュージックビデオ「Summer Vacation」の見どころとなるシーンの撮影が始まる。



~別荘

アシスタントディレクター:それでは、プールで遊ぶシーンの撮影に入ります。準備お願いします。



//

   "VENUS 12" の水着要員、Afroditiのはるか、あんり、みやび、a-Force OSAKAの長澤みる、a-Force AICHIの樋口ゆりあ、関根美愛、Mousaの川崎璃愛奈の7人がビキニ姿になって準備を整える。



~別荘

佑唯:私たちが到着する前まで雨降っていたんだから、水冷たいんじゃないかな?


今井莉世:水温22度がプールの目安らしいですけど、どうなんでしょうね。


佑唯:それにしても、Afroditiの3人は、グラビアもやっているだけあって、いいもの持ってんな~


由依:歌もダンスもできて、なおかつ、グラビアもできる。ハイブリッドといわれたりするだけのことはある。(納得)


佑唯:みはちゃん、来年1位になって、夏曲で水着になってといわれたらどうするの? まだ高校生だから拒絶?


由依:えっ!? 来年もまだ高校生?


河井未翼:今、高2なんです。


由依:わかっ!!


佑唯:来年、みはちゃんが1位になるんだから、もうちょっと勉強しておきなさい。


河井未翼:(横に手を振って)そんな、1位なんて無理ですから。来年、Afroditiのみなさんはラスト参戦で、1・2・3フィニッシュすると宣言されています。私は、今年が頂点であとは下がるばかりかもしれませんから、そんなに期待しないでください。


佑唯:みはちゃんは、アイドル最強。出せば売れる! 預言は成就します。


河井未翼:この前、1位とまではいっていませんでしたよね?


佑唯:そうだっけ? じゃあ、来年1位を追加で。


由依:外れたら、 "100万みはちゃん" でステッカープレゼントしないといけないこと、忘れてない?


佑唯:そうだった、…(冷汗)



//

  水着要員のメンバーは、準備運動を終え、プールに入る。



~別荘

長澤みる:(足を水につけ)つめたっ!!


樋口ゆりあ:みりあ、先にプールに入って。(笑顔でお願い)


関根美愛:そんなぁ、ゆりあさんが先輩なんですから、お先にどうぞ!(腕を引っ張ってプールに落とす)



//

  ドッボーン! という水の音に全員の目がプールに集中する。



~別荘

樋口ゆりあ:つっめたーい! みりあ、よくも後輩の分際で落としてくれたわね!


今井莉世:やっぱり、水温低くて冷たいんだ。


佑唯:雨上がりだものね。これから水温も下がるだろうし、水着班は過酷な撮影になりそう。陸上でよかった。(安堵)


はるか:(プールに入り)ちょうどよくない?


あんり:全然平気。


みやび:気持ちいいね。(泳ぎだす)



~別荘

佑唯:北海道民だけ感覚違う?


今井莉世:耐性があるんですかね?



//

  水着要員のメンバー全員がプールに入ると、浮き輪やビーチボール、ウォーターガンなどがスタッフから投げ込まれる。美愛にプールに落とされたゆりあは、ウォーターガンを手に入れると、恨みを晴らそうと、無防備の美愛をウォーターガンで攻撃。それを見たみるは、ウォーターガンをふたつ手に入れ、美愛に加勢する。



~別荘

河井未翼:私、嫌な予感がするので、ワゴンの後ろに行ってますね。


今井莉世:これ、巻き込まれるパターンだよね。私も行く。


佑唯:枕投げで遊んで貰えなかった恨み、ここで晴らしそうだね。(笑)


由依:一時撤退ということで。(笑)



//

  ウォーターガンの水攻撃から逃げるため、ワゴンの後ろに隠れようとする未翼たちをスタッフが静止する。



~別荘

アシスタントディレクター:ワゴンの後ろには行かないでください。ワゴンの前かビーチパラソルのところにとどまっていてください。


由依:あらら、… どうする?


河井未翼:ビーチパラソルの角度って、調整可能ですかね。傘を盾にできないものでしょうか。


佑唯:確認してみよう!



//

  未翼たちは、ビーチパラソルとチェアが並ぶエリアに移動。ウォーターガンの水攻撃から逃れるため、ビーチパラソルの角度を調整して盾として使えるか確認する。佑唯がビーチパラソルの角度調整に加えて、高さ調整もできることを確認する。そして、ビーチチェアに腰掛けたとき、ほぼ水攻撃を防ぐことができそうなことにご満悦。



~別荘

佑唯:これでいいじゃん! あらかじめ角度をプール側にしておいて、椅子に腰掛けておく。危ないと思ったら、高さを調整して回避!


由依:OK! それじゃあ、少し優雅な気分でドリンクでも飲みながら、プールを眺めることにしましょうか。(微笑み)



//

  未翼たちは、フルーツジュース・トロピカルドリンクのワゴンへと移動。美麗が担当している。



~別荘

鷲尾美麗:お客さま、フルーツジュースやトロピカルドリンクはいかがですか。


今井莉世:みれい、音声入らないんだから、そんなになりきらなくてもいいんだよ。(笑)


鷲尾美麗:笑顔で接客。お客さま満足度1番を目指しております。(微笑み)


佑唯:ブルーハワイください。


鷲尾美麗:本日、すべてノンアルコールでございますが、差し支えございませんか。


佑唯:それでいいです。お願いします。


鷲尾美麗:かしこまりました。


由依:私語禁止にしてるの?


鷲尾美麗:お客さま満足度1番を目指しておりますので、私語は慎むようにしております。(微笑み)


今井莉世: "MUSE 12" の中でスタッフに一番なりきれた人に、何かあとでご褒美があるとか、そういうこと?


鷲尾美麗:そういったお話は伺っておりません。


今井莉世:気持ち悪い。背中がゾクゾクする。(笑)



//

  佑唯はブルーハワイ、由依はハワイアンサンセット、莉世はパイナップルジュース、未翼はマンゴージュースを順にオーダーする。



~別荘

河井未翼:みれいちゃん、プールでウォーターガンで遊んでいる人たちのこと、注意しておいてくださいね。


鷲尾美麗:羽目を外されるお客さまはいらっしゃいますので、警戒は怠らないようにいたしております。(微笑み)


河井未翼:私に対してもなりきったままなんですね。(クスクスと笑う)


鷲尾美麗:お仕事ですので。



//

  美麗は、ドリンクを手渡し、ビーチパラソルのあるエリアに戻る4人に小さく手を振って見送る。プールでは、ウォーターガンによる美愛・みる連合 vs ゆりあの決戦が、いつの間にか和解して終戦。3人は、新たな敵を求めて、ビーチボールで楽しく遊ぶAfroditiのはるか、あんり、みやび、Mousaの璃愛奈の4人に迫っている。



~別荘

ディレクター:みんな、いい表情してるよ。このまま続けて!


樋口ゆりあ:ウォーターガンであっそぼ!(笑)


長澤みる:かわいこぶってるの嫌い!(笑)


関根美愛:いざ勝負!



//

  a-Force AICHIのゆりあ、美愛、a-Force OSAKAのみるの地方組3人が、Afroditiのはるか、あんり、みやび、Mousaの璃愛奈の東京事務所組4人にウォーターガン決戦を挑み、先制攻撃を開始する。



~別荘

佑唯:あ~、始まっちゃった、…


今井莉世:みるちゃん、お仕事じゃなくて、遊びに来たのかな?(苦笑)



//

  ウォーターガン決戦、地方組3人に不意討ちを食らった東京事務所組4人。



~別荘

川崎璃愛奈:(攻撃を受けながら)こっちが準備してないのに卑怯! (Afroditiの3人に)早くウォーターガン取ってください!


関根美愛:こっち3人なんだから、こうでもしないと勝てないでしょ!


樋口ゆりあ:プールから出たら、その人は失格ね!


長澤みる:逃げて楽になったら?(笑)


川崎璃愛奈:(地方組3人からの集中攻撃を受け)ひどい! あなたたたち、私たちに恨みでもあるの?


樋口ゆりあ:そうね~ 恨みじゃないけど、強いていえば、東京組はテレビの全国放送に簡単に出られる。


関根美愛:ラジオにもたくさん出られる。


長澤みる:ストリーミングの番組にもぎょうさん出演できるとか。


川崎璃愛奈:私たちのことが羨ましいんだ? でも、そんなことは最初から分かっていたことでしょ!


長澤みる:だから、少しずつ退場して欲しいな~ と思ってねん。



//

  地方組3人からの集中攻撃に、璃愛奈はプールの端へと追い詰められていく。



~別荘

長澤みる:ほら、もう後ろあらへんで。(笑)


みやび:そこまでよ!



//

  ウォーターガンを手にしたみやびは、潜水して地方組3人の背後に回り込む。地方組3人を振り向かせると、ウォーターガンで攻撃し始める。



~別荘

みやび:リアーナ、今のうちにウォーターガン取りに行って!


川崎璃愛奈:はい!


樋口ゆりあ:ヒーローになったつもり?


みやび:ばーか! 男じゃないから、ヒロインよ!



//

  地方組3人がみやびに引きつけられている間に、はるか、あんりが合流。璃愛奈をプールの端へと追い詰めていた地方組3人は、逆に背後を取られる形で窮地に追い込まれようとしている。



~別荘

はるか:形勢逆転ね。(笑)


あんり:ケガしたら大変だから、素直に諦めて降参しない?


はるか:あんりは、何を甘いこといってるの! こういうヤツは懲らしめてあげないと。


みやび:はるか、こわ~い!(笑)


長澤みる:うちら、負けるつもりあらへんで。(笑)



//

  璃愛奈が戻り、東京事務所組が4人となって包囲される前に、地方組はみるの合図でプールの端に沿うように逃げ始める。



~別荘

佑唯:やばいよ、これ。絶対にこっちに来る。みんな、盾の準備!



//

  佑唯は、未翼、莉世、由依の3人にビーチパラソルを盾にして、ウォーターガンの攻撃に備えるよう声を掛ける。そして、プールでウォーターガン対決している水着要員近くのプールサイドに、 "VENUS 12" で唯一単独行動している可奈子の姿が目に入る。可奈子は、プールサイドにある綿あめのワゴンのところで、スタッフ役のメンバーと談笑している。



~別荘

佑唯:かなこちゃん、危ないから今すぐ逃げて!


可奈子:えっ!? なぁに?



//

  可奈子が佑唯に視線を向けた瞬間、地方組を追いかける東京事務所組のウォーターガンから飛び出した水が背中にかかる。淡いウォーターブルーのワンピースが濡れ、下に着用しているキャミソールの形が浮かび上がる。



~別荘

可奈子:きゃー!!



//

  しゃがみ込む可奈子に、タオルを持ったスタッフが駆け寄る。これ以上は濡らせまいと、プールを背に可奈子を守る。しかし、アドレナリンの影響か、水着要員は暴走。そのスタッフにも水を浴びせる。その光景に、 "MUSE 12" のメンバーからも悲鳴が上がり、プールサイドはパニックに。



~別荘

ディレクター:みんな、落ち着いて! 冷静に!



//

  ディレクターの呼びかけも虚しく、水着要員の暴走が続く。未翼たちのいるビーチパラソルのエリアにもウォーターガンから発せられた水が、大雨のようにビーチパラソルを叩く。



~別荘

河井未翼:みなさん、大丈夫ですか。


佑唯:大丈夫。


由依:アイツら、誰か止めてくんないかな。


今井莉世:撤収しましょう。みんなが悲鳴あげたり、騒いだりするから、興奮しちゃってるのかも?


佑唯:そうだね。スタッフさんにもプールサイドから離れて貰おう。



//

  未翼たちは、 "MUSE 12" のメンバーに声をかけ、建物内へ誘導。撮影スタッフらには、プールサイドから離れ貰う。そして、ずっとスピーカーから流れていた「Summer Vacation」が止まり、静かな空間へと変貌する。地方組 vs 東京事務所組のウォーターガン決戦は、いつしか一緒になってプールサイドにいるメンバーを攻撃対象としていたが、その対象が消えて我に返る。



~別荘

はるか:あれっ!? 私たちだけになっちゃった?


あんり:みんな、いなくなっちゃったね。


みやび:スタッフさん、少し離れたところでみんなしてこっち見てるよ。


樋口ゆりあ:私たち、放置された感じ?


長澤みる:この辺でお開きでええんちゃう? 充分楽しめたし、もうええやろ?


はるか:久しぶりにはしゃいで楽しかった。もう1度やりたいね!


あんり:東京事務所組が数的有利な条件でやりたい。(微笑み)



//

  プールから上がる水着要員のところに、プロデューサーとディレクターがやって来る。



~別荘

プロデューサー:いい大人が何をやっているんですか! 小学生のガキじゃないんだから、周囲の状況見て、ケガ人が出たらとか考えなかったんですか。


ディレクター:可奈子さん、びしょ濡れになってショック受けてますから、みなさんで謝罪しに行ってくださいよ。


長澤みる:びしょ濡れになったの、ひとりだけ?


樋口ゆりあ:あんなに撃ちまくったのに?


ディレクター:(わざと)ゴホン、ゴホン、…


はるか:誰? 人に直接当たるように撃った人!(水着要員を見渡す) 自覚ある人いないの?


ディレクター:どれかのカメラに写っているはずです。確認しますか。


プロデューサー:犯人探しは止めましょう。今は "VENUS PROJECT" というグループです。和を乱すことは慎んでください。


あんり:以後、気をつけます。


プロデューサー:それで結構。みなさんもお願いしますよ。


ディレクター:可奈子さんへの謝罪。忘れないでくださいね。


樋口ゆりあ:早急に対処します。






【 22 】



//

  夜、宿泊先のリゾートホテル。未翼、莉世、美麗の部屋に、YuiYuiの佑唯、由依のふたりがダンスを教えて貰うために訪れている。対応しているのは、未翼と莉世。未翼は、タンクトップの上にメッシュT、下はバイカーショーツ。莉世は、キャミソールにブーツカットのロングパンツ。佑唯と由依は、お揃いのチューブトップにスウェットパンツ。「Summer Vacation」のダンスの振り付けビデオをプロジェクターで壁面に映し出して練習している。



~ホテル

今井莉世:撮影対象のシーンは、だいぶ飲み込めてきましたね。頭から通しでやってみます?


佑唯:教わっている側がこんなこというの悪いんだけど、ちょっと休憩貰える?


由依:毎日のように公演でダンスしているだけあって、体力あるね。うちらバテバテ。(床に座り込む)


今井莉世:そうですね。給水タイムにしましょう。


鷲尾美麗:ミネラルウォーター取ってきますね。


今井莉世:みれい、お願いするね。



//

  ここまで練習を見ていた美麗は、みんなの分のミネラルウォーターを取りに行く。未翼、莉世、佑唯は、先に座り込んだ由依に倣って、床に座る。



~ホテル

佑唯:ねえ、みはちゃん。脚長すぎない?


河井未翼:私より身長が高いみれいちゃんに、腰の位置が違いすぎるので横に立ちたくないといわれます。


由依:チラッチラッと覗かせるウエストもめっちゃ細いよね?


河井未翼:華奢なだけで、大したことありません。


今井莉世:華奢だとしても、ウエスト55cmの衣装で余裕があるのは尋常じゃない。(苦笑)


由依:(驚きの表情で)55cmで余裕がある?


佑唯:スタイルいいし、リアル "VENUS" だね。美術の教科書に載せたいレベル。(笑)



//

  ミネラルウォーターを取ってきた美麗は、ひとりひとりに手渡す。



~ホテル

鷲尾美麗:みはちゃん、このスタイルに磨きをかけようと、さらに努力してますからね。ウエストもっと細くしたいみたいですし、…


由依:さらに細くするって、砂時計みたいになっちゃうよ。


河井未翼:(クスッと笑って)さすがにそこまでは細くしません。


佑唯:ストイックなんだね。これまで行き当たりばったりで生きてきたから、めっちゃ尊敬する。


由依:みはちゃんの爪の垢を煎じて飲んだとしても、絶対に同じにはなれないね。


鷲尾美麗:その前に、みはちゃんに爪の垢自体ありません。(笑)


由依:それ!(笑) 土台無理って話!



//

  休憩中、スマートフォンの着信音が鳴る。



~ホテル

今井莉世:私に電話みたいです。失礼します。(立ち上がって席を外す)


佑唯:緊急連絡かな?


鷲尾美麗:明日のスケジュール、変更があるのかもしれないですね。


由依:体育館を借りて、全体でダンスレッスン受けてるシーンを撮影。天候が雨だったら、そのまま体育館でダンスシーンの撮影。天候が晴れだったら、今日と同じ別荘のプールサイドでダンスシーン撮影の予定だよね。


鷲尾美麗:その予定ですね。



//

  しばらくして、莉世がタブレットを操作しながら戻って来る。



~ホテル

鷲尾美麗:りせりせ、誰から何の用だったの? 明日のスケジュール変更とか?


今井莉世:明日の件ではなくて、はあとちゃんから、私たち3人に提出物の要請、 "VENES PROJECT" ライブのセットリスト、立ち位置が決まって、各楽曲のダンスの振り付けビデオも順次用意されるから、覚えていってね~ って話。


佑唯:はあとちゃんって、マネージャー? ニックネームで呼んでるの?


今井莉世:そうです、私たちのマネージャーです。はあとって、下の名前ですけどね。(微笑み)


由依:芸能人顔負けのすごいキラキラネーム。(笑)


佑唯:マネージャー、ふたりついて来てたと思うけど、どっち?


今井莉世:どっち?(困り顔)


由依:マネージャーも美しいa-Force NIIGATA。(笑)


鷲尾美麗:それを聞いたら、ふたりとも喜びますよ。(微笑み) 特徴でいったら、少しえらが張っているのがはあとちゃん。シュッといているのがみさちゃん。


佑唯:ふたりとも昔はアイドルしてたってことはない?


今井莉世:アイドルしていたのは、五十嵐GMですね。


鷲尾美麗:はあとちゃんは、アイドルになりたかった時期があって、応募したことはあるけど、書類選考で落ちたっていってました。みさちゃんもアイドルになりたい時期があったみたいだけど、勇気がなくて応募しなかったといってましたね。


今井莉世:どうしてそんなことまで知ってるの?


鷲尾美麗:いろいろリサーチ済みです。(微笑み)


河井未翼:りせちゃん、提出物の締め切りって、いつですか。


今井莉世:次の日曜日。アンケートみたいなものだから、そんなに時間かからないと思うけど。共有先、あとでメッセンジャーで送るね。あと、 "VENUS PROJECT" 関連のものも。


河井未翼:よろしくお願いします。いよいよですね。


佑唯:やだ~ 明日の分だけでも嫌なのに、ライブ丸々ダンス覚えないといけないなんて、地獄でしかない!


今井莉世:これまで何回も出演されてるので、既存の楽曲は導線を覚えるくらいで済みますから、新たに覚えるのは、ニューアルバムの楽曲だけですよね?


由依:何度かやっていても、忘れちゃうのよね~(苦笑) ビデオ観ても思い出すまでに時間がかかる。(笑)


河井未翼:そろそろ再開しませんか。


佑唯:そうだね。ダンスを教えて貰いに来たのか、おしゃべりに来たのか分からなくなっちゃうものね。それに、ちっちゃい子には早くおねんねして貰わないといけないものね!(笑)


河井未翼:ちっちゃい子って、私ですよね。(微笑み)


佑唯:ひとりだけ10代。しかも、現役JK! 若いっていいね。(微笑み)


今井莉世:それじゃあ、始めましょう。みれいも少し踊っておいたら?


鷲尾美麗:そうする。先に始めていて。



//

  美麗は、レッスンウェアに着替えに行く。残った4人は、「Summer Vacation」の音楽を流してダンスを始める。美麗は、おヘソが見えるミニTにロングパンツ姿で登場。通し練習に加わる。


  YuiYuiの佑唯、由依のふたりが帰り、静かになった未翼たちの部屋。



~ホテル

今井莉世:みれい、みはちゃんの前でよくお腹出しできるね? みはちゃんがお腹隠してくれているから、直接比較できなくていいのかもしれないけど、とても挑戦的。私には無理。(笑)


鷲尾美麗: "VENUS PROJECT" でスペシャル感あるし、沖縄で開放的だからいいかなと思って。みはちゃんが脚を見せてくれている分には、みんなの視線はそっちにいくし。(微笑み) 今日は時間がなかったからつけなかったけど、明日は胸を盛ることにする。(笑)


今井莉世:胸にパッド入れるの?(笑)


鷲尾美麗:寄せて上げるシリコンタイプの。ワンサイズは大きく見せられる。(笑)


河井未翼:りせちゃんも使っているんですか。(微笑み)


今井莉世:私? みれいの話を聞いて、持ってくればよかったと思ってる。(笑)


鷲尾美麗:1個しか持ってきていなから、貸してあげられないよ。(微笑み) みはちゃんは、絶賛成長中だから、安易に使わない方がいいよ。あのときだけ盛ってたとかいう輩、アンチが絶対いるからね。


河井未翼:みれいちゃんは、盛ったとかいわれても大丈夫なんですか。


鷲尾美麗:元々ぺったんこだからね。何をいわれても平気。(苦笑)


今井莉世:話を変えるけど、はあとちゃんからの連絡。アーティストブック関連、 "VENUS PROJECT" ライブ関連の共有先、これから送るから、ざっと目を通しておいて貰えるかな。みはちゃん、ライブ関連は覚えること多くて大変だと思うけど頑張ってね。練習にも付き合うから、いつでも声かけてね。


河井未翼:ありがとうございます。実は、ライブの定番曲の練習をもう始めています。いただいたビデオを観て、合わせ込みしていきます。気になることは、今作の楽曲でまだ振り付けのビデオが完成していないものがあるってことですよね?


今井莉世:みはちゃん、偉いのね。定番曲はもう練習始めていたんだ。新曲については、ビデオが用意できているのはまだ一部みたい。できるところから覚えていくって感じ。


鷲尾美麗:みはちゃん、ライブは何曲出演するの?


今井莉世:まだ共有先を送ってないから、ちょっと待ちなさい! (メッセージを送信する)はい、どうぞ。


河井未翼:(莉世から届いたメッセージで共有先を確認)え~っと、… アンコール含め全30曲中、20曲みたいです。


鷲尾美麗:(莉世から届いたメッセージで共有先を確認)人気者は大変だね。私は4曲。(微笑み)


今井莉世:みれい、来年は "VENUS 12" 入るんでしょ? 来年の今ごろ、ダンス覚えられないって泣かないですむように、今日から少しずつ覚えたら?


鷲尾美麗:私、特に目標は決めないけど。


今井莉世:みはちゃんには、1位になれるよとか、1位を目指してとかいうけど、自分は目標ないんだ? あっ、私もだ。(苦笑)


河井未翼:3人で "VENUS 12" に入れるといいですね。


今井莉世:私しだいじゃない? スピーチで来年は自分の推しに最大限の支援をしてあげてくださいといったから、厳しくなることは覚悟してる。私のことは置いておいて、みはちゃんは1位、みれいは2位を目指して頑張って。ふたりでa-Force NIIGATAを牽引していって欲しいの。


鷲尾美麗:りせりせが私に期待って、初耳だけど?


今井莉世:期待は出会ったときからしてるわよ。でも、チャンスが巡ってこないとなかなか有名になれないじゃない。みれい、チャンスが到来しているでしょ。頑張らなくっちゃ。


鷲尾美麗:目標は高い方がいいというけれど、現実的にAfroditiがお強いからね。それに、りせりせやAfroditiと同じ最終参戦組も手ごわそうだから、3位以内は厳しいでしょ。


今井莉世:U-chは、Afroditiの3人がライブストリーミングしているときの倍の視聴者数があるんでしょ。自信を持って頑張りなさい。


鷲尾美麗:U-ch視聴者数は、みはちゃんのおこぼれをいただいているようなもので、私の実力じゃないから。勘違いしてはだめ。


河井未翼:私がU-chライブストリーミングしないときでも、みれいちゃんのU-ch視聴者数多いですよね。それって、みれいちゃんの人気を示していると思うんですけど。


鷲尾美麗:みはちゃんがライブストリーミング休んだから、仕方なく私のところに来ている人と、みはちゃんのことを少しでも聞き出したい人が来ているだけ。私は、みはちゃんの人気という下駄を履かせて貰ってるということくらい自覚してます。


河井未翼:みれいちゃん、意外にネガティブなんですね。(笑)


鷲尾美麗:浮かれていないで、きちんと自己分析ができていると褒めて貰いたいんだけど。(笑)


今井莉世:現時点ではそうなのかもしれないけど、ふたりでのお仕事がうまくいったら、自信にもつながっていくんでしょう。とにかく、ふたりには期待してるからね。ということで、朝早くからの移動、ミュージックビデオ撮影、ダンス練習、1日お疲れさまでした。お風呂に入って早く寝ましょ!


河井未翼:私、U-timeやファンMailの更新を先にやりたいので、先にお風呂に入ってください。


今井莉世:それじゃあ、おことばに甘えてお先に。


鷲尾美麗:みはちゃん、今夜こそひとつのベッドで一緒に寝ようね?(微笑み)


今井莉世:(耳を引っ張り)だめだめ! 機内でいったように、みれいには忘れ物防止タグつけて、みはちゃんから一番離れたベッドで寝て貰います。


鷲尾美麗:(不満たっぷりに)りせりせは、いつまでそんなことさせるつもりなの? レコーディングのとき、私が安全だって確認したでしょ?


今井莉世:1回安全が確認できたくらいで、みはちゃんを狙う犯罪予備軍から抜けられるとは思わないでね。(微笑み)


鷲尾美麗:それじゃあ、何回安全が確認できたら、予備軍から抜けられるのよ!


今井莉世:何回? 甘いわね。私の目が黒いうちは、絶対に抜けられません。


鷲尾美麗:目が黒いうちって、もしかして、りせりせが退団するまでとかいわないよね?


今井莉世:みれい、分かってるわね~ そういうこと。(微笑み)


鷲尾美麗:りせりせのこと、今度から悪魔って呼んでいい?


今井莉世:誹謗中傷の類は禁止です。(微笑み)


鷲尾美麗:ねえ、みはちゃん。みはちゃんが一緒に寝るっていってくれたら、問題解決なんだから、一緒に寝るっていってよ~


河井未翼:お仕事で来てるので、お仕事に全力を注げるように熟睡させてください。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃん、冷たい、…(残念がる)


今井莉世:みはちゃんの方が大人。(微笑み) みれい、私が先にお風呂に入るから、その間にみはちゃんを襲っちゃだめよ!(笑)


鷲尾美麗:狼じゃないんだから、襲いません! まったく、…(怒る)



//

  莉世は、風呂に入るため、その場を離れる。



~ホテル

鷲尾美麗:ねえ、みはちゃん。


河井未翼:(スマートフォンを操作しながら)何ですか?


鷲尾美麗:私のこと、好きだよね?


河井未翼:みれいちゃんは、私にとって憧れですし、好きですよ。


鷲尾美麗:でも、一緒に寝よう? って声を掛けると、拒絶するよね?


河井未翼:みれいちゃんとはたくさんお話するようになりましたけど、同期みたいな親密度までにはなれていないかなって思うんです。気心知れてお互いのいいところや悪いところを指摘することができて、それでも尊重して助け合える。そんな関係にならないと、どこか不安なんです。だから、みさきちゃん、はるちゃんがお泊りしたときも、私のベッドで一緒に寝てはいません。みれいちゃんだけではないので、安心してください。


鷲尾美麗:れいちゃん、あおいちゃんとは、一緒のベッドで寝たことあるんだ?


河井未翼:ありますよ。


鷲尾美麗:そうなんだ。でも、いいところや悪いところを指摘っていわれても、みはちゃんのいいところはいっぱいあるけど、悪いところなんてない。どうすればいい?


河井未翼:一緒にいる時間が長くなれば、いろんなところが見えてきて、いろいろいわれるようになります。


鷲尾美麗:例えば?


河井未翼:授業中、何か思いにふけっているみたいで集中していなかったとか、その前は、休憩時間中にチラッチラッとスマートフォンばかりチェックして落ち着きがなかったとかいわれました。


鷲尾美麗:どっちもあおいちゃんにいわれたんだね。


河井未翼:そうですね。いろいろいわれます。(苦笑)


鷲尾美麗:その思いにふけっていたりとか、落ち着かなかったりというのは、大丈夫だったの? いつの話?


河井未翼:最近の話ですけど、済んだことなので大丈夫です。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃんの変化にも気づけない、相談相手にもならない私って、まだまだなんだね。(落ち込む)


河井未翼:(少し慌てて)そんなことないですよ。あおいちゃんに指摘されて、劇場に来てからは平静を装っていましたから。


鷲尾美麗:私、みはちゃんのちょっとした変化に気づけるようにならないとだめだね。もっとみはちゃんのことを見守るようにするね!


河井未翼:ずっと私のことを見てるってことですよね。それは、ちょっと、… 今でもまどちゃんやはるちゃんの視線を受け続けてますので、…(困惑)


鷲尾美麗:はるちゃん?


河井未翼:私に対してだけではないですけど、人間観察をよくしてるんですよ。はるちゃんが何を考えているのか、何を目的にしているのか分からないところがとても不安です。


鷲尾美麗:みはちゃんにしたら、安心できないメンバーがいるグループの中にいるってことなんだね。私含め、気が休まらないメンバーばかりでごめんね。


河井未翼:みれいちゃんのせいではないので、謝らなくても。私の感じ方の問題でもありますし。


鷲尾美麗:れいちゃん、あおいちゃんよりも親密な関係を築けるように頑張るね!(ウインク)


河井未翼:みれいちゃんのいうところの親密な関係、私のそれとちょっと違う気がしますけど、…(不安)


鷲尾美麗:そんなことないよ。一緒、一緒!(微笑み)



//

  このあと、就寝前には、莉世が美麗の足に忘れ物防止タグを取り付け。就寝中に美麗が莉世のスマートフォンから一定の距離離れると、スマートフォンが警告音で知らせてくれる。これにより、美麗が就寝中の未翼を襲わないようにしようというものであるが、美麗は嫌な顔せず、文句もいわず、莉世が忘れ物防止タグをつけ終わるのを待つ。



~ホテル

今井莉世:みれい、私がお風呂に入っている間に、みはちゃんと何かあった? 忘れ物防止タグに文句をいわないなんて、変!


鷲尾美麗:みはちゃんとお話して、れいちゃん、あおいちゃんのような信頼関係がまだ築けていないんだなって分かって、少し大人になることにした。


今井莉世:みはちゃん、みれいと信頼関係が築けたら、どうなっちゃうの?


河井未翼:りせちゃんには、内緒にしておきます。(微笑み)


今井莉世:教えてくれないの?(残念がる)


鷲尾美麗:これ以上、私とみはちゃんの関係に首を突っ込まないこと。(微笑み)


今井莉世:でも、何かあってからでは遅いから、みれいの忘れ物防止タグはつけたままにしておくね。


河井未翼:そうしておいてください。



//

   "VENUS PROJECT" 名義のアルバムリード曲「Summer Vacation」のミュージックビデオ撮影1日目が終わる。






【 23 】


  ミュージックビデオ撮影2日目の朝。夜中から降り出していた雨は小降りになったものの降り続いている。お昼くらいに雨はいったん止み、晴れ間がある予報。ただし、晴れ間は長く続かず、夕方からまた雨の予報。 "VENUS PROJECT" の24人は、体育館でダンスレッスンしているシーンを撮影。天候が回復しなかったら、そのまま体育館でダンスシーンの撮影。天候が回復したら、前日と同じ別荘のプールサイドでダンスシーン撮影の予定となっている。各メンバーは、用意されたレッスンウェアを着用。「Summer Vacation」がスピーカーからエンドレスで流れている。



~体育館

佑唯:(ひとりで練習している可奈子に)かなこちゃん、バッチリ覚えてきたみたいだね。すごい。


可奈子:(練習を中断し)そんなことないんです。昨日、ウォーターガンの標的にされて、びしょ濡れになっちゃって、あとから水着要員のみなさんが謝罪に来て。迷惑をかけたからと、AICHIのゆりあさん、美愛ちゃんがダンスを教えてくれたんです。それで踊れるようになったんです。


由依:やっぱり、日ごろからダンスしていないと踊れるもんじゃないよね。(笑)


可奈子:ということは?


佑唯:うちらもa-Force NIIGATAのメンバーに教わって、やっとここに立っていられる。(笑)


可奈子:ですよね。この時期しかダンスすることないので、楽しいことは楽しいんですけど、覚えるのが大変で困ります。(苦笑)


由依:頭と身体がついていかないよね。(笑)


可奈子:分かります。(笑)


河井未翼:(輪に加わり)分からないところありませんか。


佑唯:今のところ大丈夫みたい。


河井未翼:踊っていなかったので、分からないところがあるのかなと思って声をかけたんですけど、大丈夫なんですね。確認の意味で、1回通しで踊ってみます?


今井莉世:(輪に加わり)私、みんなのダンスをチェックしますね。


由依:上手な人に観られると緊張しちゃう。(苦笑)


佑唯:同意します。


今井莉世:次、曲の頭に戻ったところで始めましょう。



//

  未翼が前に立ち、YuiYuiの佑唯、由依、そして、シンガーソングライターの可奈子が後ろに一列で並ぶ。「Summer Vacation」がリピート、頭から再生され始めると、4人は踊り始める。莉世は、斜め前方から4人のダンスをチェックする。



~体育館

今井莉世:(手を叩いてリズムを取りながら)自信を持って踊りましょう! 笑顔で踊りましょう! なるべく下を向かないで! はい、いいですよ!



//

  莉世の声に励まされ、「Summer Vacation」を踊り終える。



~体育館

今井莉世:(拍手しながら)よくできました。この調子でいきましょう。



//

  個別、少人数でのレッスンから、全体でのレッスンに移行。 "VENUS 12" の12人が前に3列、 "MUSE 12" の12人がその後ろに2列で並ぶ。最前列は、真ん中P0にAfroditiのはるか、左にAfroditiのあんり、右にa-Force NIIGATAの未翼の3人。 "VENUS AWARD" のトップ3が並ぶ。同7位の莉世は2列目、同14位の美麗は4列目。ミュージックビデオは、ダンスクラブのメンバーが合宿のため、夏休みに南国を訪れて練習に励むが、気分が開放的になり、ついつい遊んでしまうという設定。リーダー役にはるか。



~体育館

はるか:みんな、ラストもう1本!



//

  はるかの掛け声に、メンバーは最後の力を振り絞って「Summer Vacation」を踊り切る。



~体育館

はるか:みんな、お疲れ!



//

  はるかが後ろを振り向くと、「終わった~!」「疲れた~!」「もうだめ!」といった声がメンバーから飛び交う。両手を膝に当てて肩で呼吸をする者、床に座り込む者、床に大の字になって倒れる者。さまざま。



~体育館

ディレクター:はい、OK! レッスンシーンここまでにします。



//

  「やった~ マジ終わった~!」「本当に疲れた~!」「もう動けない。だめ!」「お腹空いた!」といった本音がメンバーからこぼれる。



~体育館

アシスタントディレクター:みなさん、天候が回復してきたので、すぐにバスに乗って昨日の別荘に移動です。準備できしだい、プールサイドでダンスシーン撮影に入ります。



//

  「休憩は?」「ランチは?」とメンバーの声が上がる。



~体育館

アシスタントディレクター:休憩はバスの中でお願いします。お昼ご飯の時間にはなっていません。早くバスに移動してください。



//

  床に座り込んだり、倒れ込んでいたメンバーは、仕方なく立ち上がり、体育館の出口へと移動し始める。



~体育館

はるか:ねえ、みはちゃんって呼べばいいかしら?


河井未翼:(はるかの方を向き)はい。みんなにそう呼んで貰っているので、それで構いません。


はるか:そんなに細い身体してて、体力あるのね。


河井未翼:グループのみんなからも同じようにいわれるんですけど、夢中になっていて疲れているのを忘れているだけなんですけどね。(微笑み)


あんり:じゃあ、電池切れしたみたいに、当然動けなくなっちゃうこともあるの?


河井未翼:最近はあまりないですけど、ライブに向けて練習量が増えると、電池切れしちゃうかもしれませんね。(微笑み)


あんり:でもいいな。若くて体力があるって。ハタチを過ぎると、途端に体力が落ちる。(苦笑)


はるか:情けないこといわないでよ。体力なくなって踊れなくなったら、何でアピールしていくつもり?


あんり:分かってるから、頑張ってるでしょ?


みやび:私も仲間に入れて!(ぴょんとジャンプして輪に加わる)


はるか:ここにも体力ある系がいたわ、…(苦笑)


みやび:体力くらいしか取り柄ないもの。でも、お腹空いちゃってもう動きたくないけどね。(笑) そうだ! みはちゃん、一緒にお昼ご飯食べようよ~


河井未翼:いいんですか、ご一緒させて貰って?


みやび:(首を縦に2回振って)うん、うん!


河井未翼:では、喜んで。


みやび:やったー!(両手を胸の前で握る)


今井莉世:(美麗と一緒に)私たちも加えていただいていいですか。


みやび:どうぞ。みんなで食べた方がおいしいですものね。(微笑み)


アシスタントディレクター:早くバスへの移動をお願いします。


はるか:ほらほら、早く行きましょう。2日続けて怒られたくないからね。


あんり:はい。移動、移動。(みんなに移動を促す)


みやび:あ~ん。みはちゃんともっとお話したい~


あんり:乗るバスが違うんだから、あとにしなさい! みんな揃わないと出発できないんだから、さっさと動く!



//

  メンバーやマネージャーらは、2台のバスに分乗。主に東京事務所組が乗るバス、地方組が乗るバスに分かれている。



~体育館

鷲尾美麗:(耳元で)ねえ、みはちゃん。みやびさん、この前の岡本さんみたいに、みはちゃんのことが大好きでたまらない系の人?


河井未翼:そんな気がします。(苦笑)


鷲尾美麗:だよね。(困り顔)


今井莉世:岡本さんて、誰?


鷲尾美麗:りせりせには関係ない。私とみはちゃんがお仕事でお世話になった方だから。(笑顔)


今井莉世:みれいが教えてくれなくても、ふたりが何したのか、必ず暴いてやるんだから。



//

   "VENUS PROJECT" のメンバー24人は、前日にも撮影を行った別荘にバスで移動。別荘内で撮影用の衣装に着替えている。屋外では、強い日差しが濡れた地面をどんどん乾かしている。前日、飲食のワゴンやビーチパラソル、チェアが並べられていたプールサイドは、それらが撤去され、ダンスシーンを撮影する準備が進んでいる。


  お昼すぎ。衣装に着替えてプールサイドに出てきたメンバーから、「お腹空いた」「何か食べないと動けない」「お弁当まだ?」といったグチがこぼれる。



~別荘

プロデューサー:天候、時間との勝負です。もうひと頑張り。撮影終わらせて、おいしいご飯食べましょう!



//

  プロデューサーの呼びかけにも、「何か食べないと動けないっていってるでしょ」「おいしいご飯って、お弁当でしょ?」といった反論、皮肉がメンバーの口から発せられる。



~別荘

佑唯:このシーン終わったら、撮了だよね?


今井莉世:そうなると思います。


由依:ということは、沖縄で1日半くらい自由時間貰えるってこと?(笑顔)


今井莉世:それだといいですね。(微笑み)


鷲尾美麗:みはちゃん、観光できそうだよ。(微笑み)


河井未翼:楽しみです。(微笑み)


佑唯:でも、お腹空いちゃって踊る元気ない。お弁当ないのかな?


今井莉世:食べている時間がないので、出さないんじゃないですか。


由依:胃を満たすことを取るか、撮影することを取るか。この天気だから、晴れている間に撮影することを取ったんだよね。


今井莉世:頑張って踊りましょう。


佑唯:いいな~ その元気、私にも分けて欲しい。(苦笑)


鷲尾美麗:みはちゃん、お腹空いてない?


河井未翼:空いてますけど、踊れないということはありません。


プロデューサー:今はご飯食べてる時間ないですけど、スタッフの手持ちのお菓子、みなさんに提供します。ちょっとしかありませんけど、食べて元気だしてください。撮影、すぐ始めますのでお願いします。



//

  撮影スタッフやマネージャーが持参していた飴、グミ、チョコレートなどのお菓子が紙皿の上に並べられ、メンバーはそれに手を伸ばす。



~別荘

佑唯:(口に頬張り)おいしいけど、1個や2個じゃ、お腹は満たせない。(苦笑)


河井未翼:撮影が終わったら、お弁当が待ってます。頑張って踊りましょう。(微笑み)


由依:みはちゃん、ポジティブだね~ 羨ましい。


佑唯:お弁当が待ってるといっても、冷たいお弁当でしょ。


河井未翼:確認していませんけど、別荘なのでキッチンありますよね。だから、電子レンジくらいあると思いますけど。


佑唯:そうだね。電気は使えてるし、電子レンジで温めれば、それなりにおいしいお弁当が食べられる。グチグチいっても始まらない。やるしかないね!


河井未翼:頑張りましょう!(微笑み)


由依:頑張って終わらせちゃおう!


みやび:(輪に加わり)何? 何で盛り上がってるの?


河井未翼:撮影が終わったら、お弁当が待ってるので、頑張って踊りましょうって話をしていました。(微笑み)


みやび:私もみはちゃんの笑顔でチャージできた。頑張るよ!(笑顔)


アシスタントディレクター:撮影始めます。ポジションにつてください。



//

  スピーカーからは「Summer Vacation」が流れ始め、ダンスシーンの撮影が始まる。空腹にグチをこぼしていたメンバーもダンスに集中。照りつける太陽の日差しに汗を光らせながら、撮影が進む。



~別荘

ディレクター:カット!



//

  撮影した映像をディレクターが確認。OKを出す。



~別荘

プロデューサー:みんな、お疲れさま。天候の影響で駆け足での撮影になりましたが、これで撮了です。宿泊先で夜にイベントします。時間はあとでマネージャーから連絡させますので、楽しみにしていてください。


アシスタントディレクター:建物内にお弁当用意してあります。遅くなりましたが、召し上がってください。



//

  メンバーらは撮影が終わってホッとしたのか、「お昼どころか、おやつタイムも過ぎてるつ~の!」「メシだ!メシだ!」「女の子なんだから ご飯といって!」「汗だくだから ご飯の前にプールに飛び込みたい!」「下着分かっちゃうから止めた方がいいよ」といったいろんな声が上がり、笑いも起こる。



~別荘

河井未翼:リビングが広いとはいっても、スタッフさんもいるので、全員は無理ですよね? (空を指差し)雲が近づいてきていますし。


鷲尾美麗:ベッドルームも使うとか?


みやび:みはちゃん、みはちゃん。(手首を掴み引っ張る)早く、早く!


河井未翼:ちょ、ちょっと、みやびさん!


みやび:場所取りしないとでしょ?(笑顔)



//

  みやびに引っ張られ、未翼は別荘の建物内に。莉世、美麗、YuiYuiの佑唯、由依も続く。リビングには、すでにあんりがいる。



~別荘

あんり:みんな、そのローテーブルの周りに座って。お弁当貰ってくるからね。


今井莉世:ここに来るの早すぎません?(笑)


みやび:早くご飯が食べたくてしょうがない人だからね。(笑)


佑唯:私、電子レンジでご飯温めたいので手伝いますね。


由依:ゆうゆう、ついでに私のも温めて。


佑唯:了解。ほかに温めたい人います?



//

  未翼、莉世、美麗の3人が挙手する。



~別荘

はるか:(遅れてやって来る)それなら私もお願い。それにしても、あんりとみやび、誰よりに先に来たら、Afroditiは食い意地が張ってると思われるじゃない。お願いだから止めて。


みやび:早くこないと場所がなくなっちゃうでしょ。


あんり:早く来ないと待ち時間長くなるし。


はるか:だからって、ね~ (グ~ と腹が鳴る)…


佑唯:グ~(笑)


由依:グ~(笑)


あんり:グ~(笑)


みやび:グ~(笑)


はるか:(顔を赤らめ)私だって人間なんだから、お腹が鳴ることくらいあるわよ!


河井未翼:みんな、お腹空いてるみたいなので、私も手伝いますね。


佑唯:ふたりいれば大丈夫。みはちゃん、座っていていいよ。


河井未翼:では、飲みもの用意しましょうか。


あんり:お弁当のことしか考えてなくて、飲みもの忘れてた。お願いしていいかな?


河井未翼:分かりました。


鷲尾美麗:みはちゃん、手伝うね。


河井未翼:お願いします。


みやび:私も手伝う!


鷲尾美麗:ふたりで大丈夫なので、みやびさんは座っていてくださいね。


みやび:(不満げに)え~



//

  未翼たちが場所を確保したローテーブルの周りに、a-Force AICHIの樋口ゆりあ、関根美愛、a-Force OSAKAの長澤みる、める姉妹がやって来る。



~別荘

長澤みる:おたくら、めっちゃ早いなあ。


樋口ゆりあ:いい場所取られちゃったね。ここに座って食べちゃう?


長澤みる:面倒だから、そうしよう。


長澤める:めっちゃ喉乾いた~


河井未翼:今、貰って来ますね。


長澤める:みはちゃん、頼むわ~



//

  あんりと佑唯は、弁当を貰いに。未翼と美麗は、飲みものを貰いに席を外す。



~別荘

長澤みる:ところで、みんなして、グ~ グ~ いっとらんかった? あれ、何?


はるか:(人差し指を立てて唇に当て)しー!


由依:(笑いながら無視して)あれはね~ 相棒に食い意地張ってと怒った張本人がね、お腹をグ~ と鳴らしたのがおもしろくて、…


長澤みる:タイミングよくお腹鳴らせるなんて、センスあんな、はるかちゃん。(笑)


長澤める:1位さまには、お笑いの神も降臨するんや。(笑)


はるか:(顔を真赤にし)私のイメージが崩れるので、絶対に口外しないで。


樋口ゆりあ:あんまり完璧を追求しすぎない、ちょっと隙があるくらいの方が、自分も楽だし、ファンも親しみ持てるんじゃないかって思うけど、そういう考えじゃない?


はるか:私には私のアイドルの理想像があるの。それを目指して邁進するのみ。


樋口ゆりあ:まあ、人それぞれだから、それでもいいけど。


関根美愛:(耳打ち)一緒にいたら、息苦しそうですね。同じグループじゃなくてよかった。


長澤める:腹が鳴るんがだめやとすると、げっぷしたり、屁こいたり、鼻に指突っ込んだりするのもあかんのか。面倒やな。(笑)


はるか:アイドルなんだし、どっちもだめでしょ!


みやび:腹が鳴るのは仕方ないなと思うけど、あとの3つは聞かれたり、見られてくないな。地方組はOKなの?


今井莉世:(手を横に振って)まさか!


樋口ゆりあ:笑いを取りたいa-Force OSAKAだけでしょ。


関根美愛:グループ内にそんなメンバー見つけたら、次から絶対に止めさせます。


長澤みる:OSAKAだけなんや。人間味あって、ええやんな?


長澤める:せやな~


はるか:a-Force OSAKAだけで、ほかのアイドルがそうでないことを祈るわ。



//

  飲みものを貰いに行った未翼と美麗が戻って来る。水、ウーロン茶、ほうじ茶の3種類があり、大きな紙コップに入っている。トレイの上の飲みものを自由に取って貰う。



~別荘

長澤める:(水の紙コップを取り)みはちゃん、おおきに。なあ、みはちゃん。NIIGATAさんは、高校生の恋愛は禁止やけど、屁こくのも禁止?


河井未翼:(耳を疑いながら)へ・こ・く?


長澤みる:おならするの禁止かってことやで。


河井未翼:あぁ、そういうことですか。禁止ではないですけど、恥ずかしいので人前ではしません。みるさん、めるさん、人前でするんですか。


長澤みる:生理現象やで、普通にするで。やっぱり、OSAKAだけみたいやで。


長澤める:これは直すべき問題なんやろか?


鷲尾美麗:a-Force OSAKAのファンのみなさんに質問してみたらいいんじゃないですか。


長澤みる:そうしてみよか。ちなみに、みれいちゃんも恥ずかしくて人前ではせえへんのか?


鷲尾美麗:しませんね。


佑唯:お弁当お待たせ! 取りあえず5個持ってきた。残りはもうちょっと待ってね。お腹ペコペコの人?



//

  a-Force OSAKAの長澤みる、める姉妹のみが挙手する。



~別荘

佑唯:あれれ。意外と待てるのね。(笑)


由依:ゆうゆう、お腹空いているんだから、座って食べな。私、あんりちゃんの手伝いに行くからさ。


佑唯:よしよし、あんがと。あと2個はどうしよう?



//

  佑唯は、みるとめるに弁当を手渡す。持っている3個の弁当のうち、自分が食べる1個を除いた2個の行き先、メンバーの反応を伺う。由依は、あんりの手伝いに行く。



~別荘

今井莉世:a-Force AICHIのおふたりにどうぞ。


佑唯:そうだね。(ゆりあと美愛に弁当を手渡す)


樋口ゆりあ:あとから来たのにごめんね。


関根美愛:すみません。先にいただきます。(微笑み)



//

  先に5人が弁当を食べ始める。しばらくして、残りのメンバーにも弁当が届き、ようやくありついた弁当を無心で食べる。



~別荘

みやび:ねえねえ、みはちゃん。今夜、お部屋に遊びに行っていい?


河井未翼:お仕事で提出しないといけない書き物があって、やらないといけないんです。


みやび:だめか~ それじゃあ、明日は? 1日フリーになりそうじゃない?


あんり:(呆れながら)みやび、…


はるか:必死すぎ!


鷲尾美麗:明日、自由時間いただけたら、a-Force NIIGATAの3人で行きたいところがあるので、観光みたいなことできたらなって話し合ってます。


あんり:みやび、だめだからね!


みやび:まだ何もいってない!


はるか:ついて行きたいっていうんでしょ!


あんり:邪魔しないの! ごめんなさいね。みやび、普段はこんな子じゃないんだけど、みはちゃんのことを知ってから、異常な反応するの。


はるか:バカみたいでしょ? ほんと、ごめんなさい。


みやび:ひどい! バカじゃないし!(怒る)


今井莉世:みはちゃんに狂ってしまう、虜にされちゃうのは、(美麗を指差し)ここにもいるし、メンバーにもいるし、ファンにもいるんですよ。それも女の子のファンにたくさん。だから、特別というほどではないので、変な目で見ないであげてください。


みやび:ほら、ほら! 変じゃないし!


鷲尾美麗:私も変ではありませんよ。(微笑み)


あんり:みやび、変じゃないとしても、それで邪魔していい理由にはならないから、今回は引き下がりなさい。


みやび:(渋々)は~い。



//

  ミュージックビデオの撮影を終えた "VENUS AWARD" のメンバーが食事をしている間、空は雨雲が支配し、雨が降り始める。着替えをし、宿泊先のリゾートホテルへ戻るころには、雨は本降りに。






【 24 】


  ミュージックビデオ撮影2日目の夜。イベントを行うということで "VENUS AWARD" のメンバーが集められたのは、リゾートホテルにあるボウリング場。3人1組となり、1ゲームのスコアで順位を決定。上位3チームにプロデューサーから賞品が贈られる。また、マネージャー・スタッフ部門も併せて行われる。a-Force NIIGATAの未翼、莉世、美麗の3人でチームを組んでいる。練習時間が設けられ、3人のコーチングをマネージャーの樋口美彩が買って出る。ボウリングの経験は、未翼が未経験、莉世は年に1回程度、美麗は高校卒業後やっていないというほぼ初心者集団。コーチの樋口は、趣味のひとつがボウリングで、ひとりでもボウリング場に通っている。



~ボウリング場

樋口美彩:勝ったら、高級焼肉店のクーポン30,000円だからね。絶対に勝つんだ! という気持ちで、練習から1投、1投大切に投げてね。


今井莉世:どうして、私たちよりみさちゃんが必死なの?(笑)


樋口美彩:高級焼肉店だよ? しかも、30,000円分。たった1ゲーム頑張れば貰えるんだよ? やるしかないじゃない。


河井未翼:去年のミュージックビデオ撮影後もボウリング大会やったんですか。


今井莉世:じゃんけん大会とビンゴ大会。ボウリング大会はなし。


鷲尾美麗:数回投げて練習したくらいで勝てるとは思えないですけど。


樋口美彩:女の子のチーム戦なんて、低レベルの争い。基本的な投球ができて、ポイントを抑えれば勝てる。


河井未翼:ルールも知らないんですけど、それでも大丈夫ですか。


樋口美彩:みんながいるから、何とかるよ。(笑)



//

  樋口は、ボールの持ち方、立ち方、投球フォーム、狙うポイントを解説。ボールを持たない状態での投球フォームを確認し、身体に覚え込ませると、実際にボールを投げさせる。1投ごとにボールが1番ピンと3番ピンの間に行くようにアドバイス。コントロールを安定させる。



~ボウリング場

樋口美彩:みんな、飲み込みが早いね。上手になったよ。みれいちゃん、みはちゃん、りせちゃんの順で投げることにして、最後の10フレはりせちゃん。100点超えたら勝てるはずだから、頑張っていこう!


鷲尾美麗:やっぱり、みさちゃんが一番本気になってる。(笑)


樋口美彩:やるからには、勝った方が気分いいし、賞品もある。(微笑み)



//

   "VENUS AWARD" のメンバーによるボウリング大会は、3人1組で8チーム。未翼、莉世、美麗のa-Force NIIGATAチームがボールリターンを共有するボックスには、座席が向き合う形で "VENUS AWARD" 12位シンガーソングライターの可奈子、同16位a-Force OKAYAMAの人見この花、同22位Boarder Lineの池谷星南の混成チームがいる。ロリィタとゴスロリのふたつの顔を合わせ持つ5人組ユニット、Boarder Lineの星南は、ロリィタ風のメイド服でひとり異彩を放っている。隣りのボックスには、はるか、あんり、みやびのAfroditiチームとAfroditiの妹グループ的位置づけの川崎璃愛奈、 "VENUS AWARD" 13位曽根あきら、同15位 森本笑唯実のMousaチームがいる。使用レーンについては、事前の抽選で決まっている。みやびは、未翼と同じボックスにならなかったことに、不満をレーンの抽選をしたはるかにぶつける。



~ボウリング場

みやび:ほんと、はるか持ってないな~ みはちゃんと同じボックスになれないとしても、座席が背中合わせになる隣りのレーン引かなきゃ~


はるか:あなたがくじ運ないっていうから、私が引いてあげた、それで文句いうなんて最低! だいたい、どうしてみはちゃん基準なの?(逆ギレ)


みやび:お近づきになりたいじゃん!(頬をふくらませる)


あんり:みやび、あなたはもう大人なんだから、自制しないさい。みっともないんだから。(不満顔)


みやび:(Mousa越しに隣りのボックスの未翼に)みはちゃ~ん、お話しよう?


河井未翼:…(やり取りが聞こえていて苦笑)


樋口美彩:(間を遮り)ボウリング大会優勝を狙ってますので、邪魔しないでください。


池谷星南:(席を立って振り向き)未翼お嬢さま、美麗お嬢さまは、わたくしが責任を持っておもてなしさせていただきます。(ニコッと微笑み会釈)



//

  いきなり飛び出した星南の発言に、周囲の者は耳を疑い、動きも一瞬止まる。



~ボウリング場

みやび:あなた、せなちゃんだっけ? みはちゃんをお嬢さまって、どういう関係なの?


池谷星南:池に谷と書いて、いけたに。星に南と書いて、せなと申します。お見知りおきくださいませ。(会釈) 先日、素敵なロリィタ姿を公開された未翼さま、同じく、素敵なゴシックロリィタ姿を公開された美麗さまは、わたくしたちのお仲間。今夜はこんなこともあろうかと、メイド服で参りましたので、おもてなしさせていただくことにいたしました。(微笑み) 私的な交友はございませんので、ご心配無用でございます。


みやび:ならいいけど、抜け駆けは許さないからね!


池谷星南:心得ております。(会釈)



//

  みやびは、渋々席に戻って腰掛ける。星南も腰掛けると、ポケットから紙とペンを取り出し、ペンを走らせる。「何かあれば わたくしが盾となります 何もなければ 何もしませんのでご安心を♡」と書き記した紙をチームメイトの可奈子とこの花に見せると、樋口に手渡す。樋口は確認すると、未翼たちに見せて安心させる。



~ボウリング場

河井未翼:せなさん、私のロリィタ、U-chで観てくださったんですか。


池谷星南:美麗お嬢さま、りりあお嬢さまとのコラボ配信、美咲お嬢さま、遥香お嬢さまとのコラボ配信、どちらも拝見させていただいております。わたくしのことは、せなと呼び捨てでお呼びくださいませ、未翼お嬢さま。


河井未翼:お嬢さま呼びされるのは困りますし、年上の方を呼び捨てで呼ぶのも困ります。(困惑)


鷲尾美麗:お嬢さま呼び、ビジネスではなかったんですか。


池谷星南:真摯にロリィタ、ゴシックロリィタをしてくださる方には、日常的にお嬢さまとお呼びさせていただいております。そうでない方は、可奈子さん、この花さん、莉世さんと普通にお呼びいたします。


鷲尾美麗:だって、りせりせ。.


今井莉世:そう、…(冷汗)


池谷星南:莉世さんもロリィタ、ゴシックロリィタに興味おありですか。a-Force NIIGATAさんは、零お嬢さまもロリィタ姿を披露されておりますし、グループ内で流行っているのでしょうか。


河井未翼:そうですね。浸透中です。(微笑み)


池谷星南:楽しみにさせていただきます。(微笑み)


可奈子:グループに所属するメンバーさん、アクの強い方が多いんですね。(微笑み) OKAYAMAさんもそうですか。


人見この花:どうなんでしょう? 私もそのひとりに数えられたくはないですけど、…(困り顔)


池谷星南:目から入る第一印象で決まってしまう部分が多いですからね。個性強くないと、なかなか注目して貰えませんから、アクが強いことにこしたことはありません。(微笑み)


人見この花:(ぼそっと)私、個性不足なのかな?


プロデューサー:みなさん、ご準備はよろしいでしょうか? それでは、豪華賞品目指して頑張ってください。ボウリング大会、スタートです!



//

  プロデューサーの開会宣言でボウリング大会が始まる。賞品は、1位のチームに高級焼肉店のクーポン30,000円分、2位のチームに全国展開するファミリーレストランのクーポン10,000円分、3位のチームに電子マネー3,000円分。未翼たちがいるボックスは、可奈子、人見この花、池谷星南の混成チームが先に投球。投球順は、人見この花、可奈子、池谷星南の順。a-Force NIIGATAは、鷲尾美麗、河井未翼、今井莉世の順。みんなの拍手に送られ、この花の1投目。ゆっくりとコロコロと転がり、徐々に右にそれてガター。



~ボウリング場

人見この花:(両手を合わせ)ごめんなさい!


可奈子:2投目でリカバリーすればいいよ。


樋口美彩:みれいちゃん、リラックスしていこう!


河井未翼:みれいちゃん、頑張って!


今井莉世:みれい、お願いね!



//

  美麗は、大きく深呼吸してから1投目。レーンの中央をまっすぐに転がったボールは、ヘッドピンに厚めに当たり、9本が倒れて、10番ピンだけが残る。



~ボウリング場

鷲尾美麗:あ~ 惜しい!


樋口美彩:(拍手して)みれいちゃん、ナイスコントロール! スペア狙っていこう!


河井未翼:みれいちゃん、うまい!


今井莉世:みれい、やるじゃない!



//

  1フレーム2投目。この花は、1投目が右にそれたことを踏まえ、少し左側に立って2投目。やはりボールが右にそれるも、6番ピン、9番ピン、10番ピンの3本が倒れ、混成チームは3点からのスタート。続いて、美麗の2投目。スペアに挑戦。



~ボウリング場

樋口美彩:みれいちゃん、1投目投げるときの左足の延長線上に右から5番目スパットの板があるから、そこから左に9枚のところに立って、同じスパットを狙って投げてみて。あと、ガターの溝は見ないこと。頑張って!


鷲尾美麗:(深呼吸して)いきます。



//

  美麗の2投目。10番ピンにまっすぐに転がるボール。10番ピンに当たって倒れる。スペア。好スタートを切る。



~ボウリング場

鷲尾美麗:(自分でも驚き)やった、スペア取れた!


樋口美彩:(拍手しながら)みれいちゃん、ナイススペア!(席に戻る美麗とハイタッチ)


河井未翼:(美麗とハイタッチ)すごーい! 練習の成果がいきなり出ましたね。


今井莉世:(美麗とハイタッチ)投げれば投げるほどうまくなってるわね。


鷲尾美麗:最初だけにならないように頑張ります。



//

  混成チーム2番目は可奈子。樋口が未翼たちに指導していたことを思い出しながら、見様見真似で1投目。まっすぐに転がったボールは、ヘッドピンを外したものの3番ピンに当たり、6本が倒れる。残ったピンは、ヘッドピン、2番ピン、4番ピン、7番ピン。



~ボウリング場

可奈子:もうちょっと左にいったら、もっと倒れていたのに残念。


人見この花:でも、次で全部倒せるんじゃないですか。


池谷星南:ボウリングのセンスあるかも?


可奈子:私、数回しかボウリングやったことないから、あまりおだてないでね。


樋口美彩:みはちゃん、1投目が肝心よ。練習通りにやれば、7本以上は倒せるはずだから、リラックスして!


鷲尾美麗:みはちゃん、頑張って~


今井莉世:自分を信じて頑張って!



//

  a-Force NIIGATAチーム2番目の未翼。立つ位置をよく確認して構え、目標を見ながら1投目。レーンの中央をまっすぐに転がったボールは、ヘッドピンと3番ピンの間、ポケットを捉えて、10本とも倒れる。



~ボウリング場

河井未翼:(手を口に当て)うそ!?


樋口美彩:みはちゃん、すごい! 1投目からストライク!(席に戻る未翼とハイタッチ)


鷲尾美麗:(未翼とハイタッチ)みはちゃん、初めてのボウリングの1stゲームでいきなりストライクなんて、持ってる子は違いますね~


今井莉世:(未翼とハイタッチ)最初から飛ばさないで貰える~ プレッシャーかかるじゃない。(苦笑)


河井未翼:りせちゃんも続いてくださいね!(微笑み)



//

  混成チーム2番目の可奈子の2投目。1投目から立ち位置う左に移動して投げる。まっすぐに転がったボールは、ヘッドピンをかすめるが、ヘッドピンしか倒れず。3本残し。2フレームを終えて、9点にとどまる。混成チーム3番目の星南の1投目。



~ボウリング場

可奈子:星南さん、お願いします!


人見この花:星南さん、頑張ってください。


池谷星南:期待しないでください。ボウリングのボールとか、砲丸投げの玉とか、重いもの苦手なんですから。



//

  練習では、力なくコロコロと転がっていたボールが右に左に何度もガターしていた星南。深呼吸して精神統一すると、練習のときから一転。右腕を大きくバックスイングして、ダイナミックなフォームで投じる。回転のかかったボールは、カーブしてポケットを捉えると、快音とともに10本のピンをなぎ倒す。



~ボウリング場

池谷星南:(両手を左右の頬に当て)キャー!! ストライクなんて、ウソみた~い。



//

  あっけにとられるメンバーと樋口。星南は、ニコニコしながら席に戻ってくる。



~ボウリング場

可奈子:星南さん、本格的じゃないですか。


人見この花:カーブ投げられるなんてすごいです。


樋口美彩:最近、全然してないんですとかいっていましたけど、プロを目指してやっていた時期ありましたよね?


池谷星南:(こめかみに人差し指に当て)え~ 昔のことは覚えていないんです~ (急に真顔に)というのは冗談で、中学のときまで、父のスパルタ指導でプロを目指していました。高校からは(指で洋服を指し)こっちに興味が出たので、だんだんやらなくなっていきました。なので、本当に数年ぶりのボウリングです。


樋口美彩:ベストスコアを聞いてもいい?


池谷星南:もちろん、300点満点です。


樋口美彩:これはヤバい。高級焼肉が遠ざかっちゃう、…


河井未翼:どういうことですか。


樋口美彩:星南さんが、3フレーム、6フレーム、9フレーム、10フレームのすべてでストライクを出したとすると、星南さんだけで80点になるの。4フレーム、7フレームのスコアによっては100点を超えてくるから、勝てない可能性も出てくる。


池谷星南:本当に久しぶりなので、6投すべてストライクはないと思いますよ。


人見この花:でも、全部ストライクのときは、星南さんの次に投げる私に勝負の行方がかかるってことですよね? よかったんですか、この順番で?


池谷星南:(頷いて)確かに、…


人見この花:プレッシャーに弱いんですから、プレッシャーをかけないでください。お願いします。(嘆願)


樋口美彩:りせちゃん、マジで頑張ってね!


今井莉世:みさちゃん、目が血走ってる、… こわい、…



//

  a-Force NIIGATAチーム3番目の莉世。リラックスしようと何度も深呼吸。肩を上下に動かし、再び、深呼吸。時間をかけて投じたボールは、レーンの中央をまっすぐに転がり、ヘッドピンと3番ピンの間、ポケットを捉える。メンバーから歓声が上がるが、倒れたのは8本。7番ピン、10番ピンが残るスプリット。



~ボウリング場

今井莉世:ごめんなさい。絶対に残っちゃう。


樋口美彩:ストライクだと思ったんだけどね。こういうときもある。1本確実に倒していこう。



//

  7番ピン、10番ピンのスプリットのため、スペアは難しい状況。1本を確実に倒しにいった莉世の2投目。7番ピン狙いのボールは、僅かに右側を通過する。



~ボウリング場

今井莉世:(両手を合わせて)ごめんなさい。1本も倒せなかった。


樋口美彩:おしい、おしい。気持ち切り替えていこう!



//

  2廻り目、混成チームの4フレーム、星南のストライクを受けてのこの花は、6本止まり。5フレーム可奈子は7本、6フレーム星南はストライク。6フレーム終了時点で暫定49点。対するa-Force NIIGATAチーム、4フレームの美麗は7本、5フレームの未翼はスペア、6フレームの莉世は、1投目8本からの2投目0本。6フレーム終了時点で暫定79点。



~ボウリング場

樋口美彩:ほかのチームのスコア見てきたけど、予想していた通りのロースコア。敵は目の前のチームのみ。リードしているけど、星南さんがいるから油断しないでね。パンチアウトされたら、負けるかも?


今井莉世:10フレーム、私が投げることになってますけど、みはちゃんが調子いいので、替わった方がいいと思いませんか。


樋口美彩:そうね~ 次の投球を見てから判断しましょうか。


鷲尾美麗:だって、みはちゃん。期待されてるね~(微笑み)


河井未翼:頑張るしかありませんよね。



//

  3廻り目、混成チームの7フレーム、星南のストライクを受けてのこの花は、1投目4本。ヘッドピン、2番ピン、4番ピン、5番ピン、7番ピン、8番ピンが残っている。右にそれるクセのあるこの花。これまで以上に左に寄って2投目。レーンの左側をゆっくり転がるボールは、しだいに真ん中に。ヘッドピンに当たると、前のピンからゆっくり倒れていく。7番ピンだけが残り、スペアならず。



~ボウリング場

人見この花:あ~~ あと1本。


可奈子:この花ちゃん、おしい~


池谷星南:もうちょっとでスペアでしたね。



//

  a-Force NIIGATAの7フレームは美麗。1投目は6本。3番ピン、6番ピン、9番ピン、10番ピンが残っている。



~ボウリング場

樋口美彩:みれいちゃん、ヘッドピンは倒れてないけど、ヘッドピンがあると思って1投目の感覚で投げてみて。


鷲尾美麗:はい。ここ大事ですよね。


樋口美彩:うん。めっちゃ大事な場面。だからこそ、リラックスが必要。



//

  深呼吸をしてから投じた美麗の2投目。レーンの中央をまっすぐに転がったボールは、狙い通りのコースに。3番ピンに当たり、残っていたピンすべてが倒れる。美麗、2度目のスペア。



~ボウリング場

鷲尾美麗:(自分でも驚き)やった、2度目のスペア!


樋口美彩:(拍手しながら)みれいちゃん、ナイススペア!(席に戻る美麗とハイタッチ)


今井莉世:(美麗とハイタッチ)今日、一番ヘタなの私みたい。(苦笑)


鷲尾美麗:(莉世に)まだおわってないから頑張って!


河井未翼:(美麗とハイタッチ)みれいちゃん、本番に強いんですか。それとも、弱いんですか。(微笑み)


鷲尾美麗:(少し考え)この前のことを考えると、みはちゃんがいると本番に強い。たぶんね。(微笑み)


河井未翼:私も頑張らないといけませんね。(微笑み)



//

  混成チームの8フレーム、可奈子の1投目は7本。7番ピン、8番ピン、9番ピンが残っている。8番ピンと9番ピンの間を狙った2投目。狙いより右にずれて、9番ピンのみが倒れて、スペアならず。



~ボウリング場

可奈子:あ~ もう!


人見この花:スペア難しいですね。


池谷星南:ちょっとが難しいんですよ。



//

  a-Force NIIGATAの8フレームは未翼。美麗のスペアを受けての1投目は9本。10番ピンが残っている。



~ボウリング場

樋口美彩:みれいちゃんの1フレームと一緒。10番ピン残りだから、6番ピンは倒れてないけど、そこがヘッドピンだと思って投げてみて。あと、ガターの溝は見ないこと。頑張って!


河井未翼:はい。



//

  未翼は、1投目を投げるとき、右から5番目スパットのある板の1枚右に左足を置く。今回はそこから左に9枚のところに立つ。深呼吸をしてから投じた2投目。まっすぐに転がるボール。10番ピンに当たって倒れる。スペア。



~ボウリング場

河井未翼:やった!!


樋口美彩:(拍手しながら)みはちゃん、ナイススペア!(席に戻る未翼とハイタッチ)


今井莉世:(未翼とハイタッチ)ここまでミスなし。完璧だね。


鷲尾美麗:(未翼をハグ)ほんと、すごいね。才能あるんじゃない?


河井未翼:そんなことないです。ビギナーズラックで、今日は運がいいだけです。


樋口美彩:10フレーム、みはちゃんに任せるね。


河井未翼:分かりました。



//

  混成チームの9フレーム、星南は3連続となるストライク。9フレームを終えて、暫定85点。



~ボウリング場

樋口美彩:(星南のストライク連発に)もう、ガチなんだから、…


池谷星南:わたくしの予想では、楽勝のはずだったんですよ。(微笑み)


人見この花:勝てますか。


池谷星南:10フレームをパンチアウト、投じることのできる最大3投を全部ストライクできれば、135点までいける。あとは、NIIGATAさんしだい。次の1投目が勝負の分かれ目になると思う。


樋口美彩:星南さん、自信ありそうだから、りせちゃん、このフレームにかかってるからね!


今井莉世:プレッシャーかけないでくださいよ~


鷲尾美麗:リーダーとしては、1回くらいスペアが欲しいね~(微笑み)


今井莉世:みれい、プレッシャーかけるの止めて~


河井未翼:りせちゃん、1投目に集中しましょう。


今井莉世:そうね。集中、集中!



//

  a-Force NIIGATAチームの9フレーム、莉世の1投目。未翼のスペアを生かすためにも、多くのピンを倒しておきたい場面。深呼吸してリラックス。そして、投球に入る。最後に踏み出した左足が滑り、体勢が崩れたままボールが投げ出されてしまう。膝をつき、ボールの行先を見る莉世。



~ボウリング場

今井莉世:お願い、当たって~!!


鷲尾美麗:いや~ ガターになっちゃう。



//

  莉世の手から離れたボールは、勢いなく左へ左へとそれていく。そして、7番ピンだけが倒れる。



~ボウリング場

今井莉世:いや~ん、どうしよう、…


樋口美彩:まだ大丈夫。2投目で挽回しよう。


河井未翼:1投目のことは忘れて、2投目に集中しましょう。


鷲尾美麗:りせりせ、負けたら、私とみはちゃんに高級焼肉おごってね。(微笑み)


今井莉世:(信じられないといった表情で)みれい、こんなときになんてこというの!


河井未翼:そうですね。それ、いいかもです。(微笑み)


今井莉世:もう、みはちゃんまで!(頬をふくらませる)



//

  負けたら、莉世が罰ゲームといわんばかりのいい方。未翼も便乗したことに、莉世はカチンと頭にくるが、それがかえって肩の力を抜くことに。莉世の2投目、体勢を崩すことなく投じられたボールは、レーンの中央をまっすぐに進む狙い通りのコース。ヘッドピンに薄く当たって、残っていたピンの一掃はできず1本残る。9フレームを終えて、a-Force NIIGATAチームは118点。



~ボウリング場

今井莉世:(未翼と美麗に)1回もスペア出せなくて、本当にごめんなさい。


鷲尾美麗:3回とも8本以上は倒したんだから、普通なら上出来でしょ。気にしない、気にしない。(微笑み)


河井未翼:いいときもあれば、悪いときもあります。気にしないでください。あとは、私に運があるかですね。


樋口美彩:みはちゃんには、神さまがついている。みはちゃんならできる。頑張って!


可奈子:星南さんの調子だと、勝てそうですよね?


人見この花:私も勝てる気がしてきました。


池谷星南:完璧に投げられることができたと思っても、ストライクにならないことはよくあることだから、やってみないことにはなんとも、…


可奈子:そうだとしても、3本連続のストライク、パンチアウト狙っていくんですよね?


池谷星南:もちろんです。


人見この花:頑張ってください。



//

  混成チームの最終10フレーム、引き続き星南が投げる。ここまで3連続ストライク。10フレームでもパンチアウトを狙う。1投目、回転のかかったボールは、カーブしてポケットを捉えると、快音とともに10本のピンをなぎ倒す。



~ボウリング場

人見この花:ストライク来た~!


可奈子:あと2本! あと2本!


池谷星南:(微笑みながら)まだ興奮するのは早いですよ。



//

  a-Force NIIGATAチームの最終10フレーム、当初投げる予定にしていた莉世から未翼に交代。1投目、レーンの中央をまっすぐに転がったボールは、ヘッドピンと3番ピンの間、ポケットを捉える。しかし、7番ピンだけが残る。



~ボウリング場

樋口美彩:(頭を抱え)どうして倒れないのよ!


鷲尾美麗:ストライクだと思ったのに~


今井莉世:(両手を握って祈るように)みはちゃん、お願い!


河井未翼:私、神さまじゃないですよ。(微笑み)



//

  混成チームの最終10フレーム、星南の2投目、ダイナミックなフォームから繰り出されたボールは、回転がかかり、カーブしてポケットを捉える。またも快音とともに10本のピンをなぎ倒す。残り1投を残し、暫定125点。



~ボウリング場

人見この花:(興奮して立ち上がり)ストライク来た~!


可奈子:(興奮して立ち上がり)あと1本! あと1本!


池谷星南:これで未翼お嬢さまがスペアを取ることができなかったら、127点止まり。ほぼわたくしたちの勝利です。


人見この花:あっ、そうですね! 高級焼肉がすぐそこ!(笑顔)


可奈子:焼肉! 焼肉!(笑顔)


樋口美彩:大丈夫。みはちゃんならできる! 今日のコントロールは抜群だから、絶対にスペア取れるよ!


今井莉世:(両手を握って祈るように)みはちゃん、お願い!


鷲尾美麗:(両手を握って祈るように)私も! みはちゃん、お願い!


河井未翼:みれいちゃんまで、… 神さまじゃないのに、…(微笑み)



//

  未翼は、1投目を投げるとき、右から5番目スパットのある板の1枚右に左足を置く。今回はそこから右に9枚のところに立つ。深呼吸をしてから投じた2投目。まっすぐに転がるボール。7番ピンに当たって倒れる。スペア。



~ボウリング場

樋口美彩:(両拳を突き上げて)みはちゃん、やったー!


河井未翼:またスペア取れちゃいました。(微笑み)


今井莉世:(未翼とハイタッチ)崖っぷち回避してくれてありがとう。


鷲尾美麗:(未翼をハグ)本当にすごいよ、みはちゃん!


河井未翼:まだ終わっていませんよ。最後の1投が残ってます。


人見この花:(落胆し)私が足を引っ張ったせいです。


可奈子:(表情が曇り)掴みかけていた高級焼肉が、手のひらからこぼれ落ちた感じです。


池谷星南:最後1投ずつ。まだ何が起きるか分かりませんよ。



//

  混成チームの最終10フレーム、星南の最終3投目、これまで同様にダイナミックなフォームから繰り出されたボールは、回転がかかり、カーブしてポケットを捉える。快音とともに10本のピンをなぎ倒す。パンチアウトで締めくくり、6投すべてでストライク。混成チーム135点でゲーム終了。



~ボウリング場

池谷星南:(笑顔で)久々のボウリング、本当に楽しかった~


人見この花:みはちゃんが8本倒したら、私たちの負けですよ。私のせいです。ごめんなさい。(涙がこぼれる)


池谷星南:この花さんのせいではないですよ。わたくしが練習のときにちゃんと教えていたら、結果は違っていたはずです。気に病むことはありません。


可奈子:もしも同点になった場合は?


池谷星南:順位の決め方、同点のときは、ストライクの数が多い方が上位になっていましたね。


可奈子:それじゃあ、7本以下だったら、私たちの勝ちですね。


池谷星南:そうなりますね。でも、未翼お嬢さま、1投目で毎回8本以上倒してますから、それは難しいでしょう。



//

  a-Force NIIGATAチームの最終10フレーム、未翼の最終3投目。莉世、美麗、樋口の3人は、両手を握って祈る。未翼は深呼吸してリラックス。目標を確認し、最後の投球。レーンの中央をまっすぐに転がったボールは、ポケットを捉える。そして、すべてのピンが倒れ、ストライクで締めくくる。a-Force NIIGATAチーム138点でゲーム終了。



~ボウリング場

河井未翼:勝っちゃいましたね。(微笑み)



//

  莉世、美麗、樋口の3人が未翼のところに集まり、勝利に沸く。



~ボウリング場

樋口美彩:みはちゃんがいなかったら、勝てなかったよ。ありがとうね。(涙)


今井莉世:みんなで高級焼肉店に行けるね。本当にありがとう!(涙)


鷲尾美麗:みはちゃん、本当にボウリング初めて?(微笑み)


河井未翼:ボウリング初めてですけど、本当に私たちが優勝したんですか。


樋口美彩:(涙を拭い)あっ、そうだ。大丈夫なはずだけど、確認するね。



//

  樋口は、ほかのチームのスコアを確認しに行く。まだゲーム中が4チームあったものの、逆転可能なチームはなく、a-Force NIIGATAチームの優勝が確定となる。



~ボウリング場

池谷星南:(a-Force NIIGATAチームに)優勝おめでとうございます。


今井莉世:ありがとうございます。


樋口美彩:私としては、勝ててほっとしていますけど、星南さんみたいなほぼプロみたいな人がいて大誤算でした。(笑) 楽勝のはずだったんですよ。あれっ!? 誰かもいっていたような?(笑)


池谷星南:それ、わたくしです。ほんの少し練習したくらいで、スペアやストライクをバンバン取ってくるとは、わたくしも大誤算でした。(微笑み)


人見この花:NIIGATAさん、優勝おめでとうございます。私のせいで負けちゃって悔しいので、ボウリング練習してきます。1年後、リベンジマッチしてください。お願いします。


池谷星南:わたくし、 "VENUS AWARD" にやっと引っかかった程度で、来年はランクインできるかどうか分からないですけど。それに、来年もボウリング大会があるとは限りませんし、あったとしても、同じチームになるとも限りません。


人見この花:確かにそうです。でも、この悔しい気持ちをどうしたらいいですか。


池谷星南:練習を重ねて、準備だけはしておきましょう。目標、平均スコア120点くらい出せるように。(微笑み)


可奈子:私も練習しておいた方がいいですか。


鷲尾美麗:ホテルにボウリング場併設されてないと、まずボウリング大会は行われない気がします。ホテルから移動してまでやらないと思うんですよね。


池谷星南:来年への期待が一気に冷めましたね。(微笑み)


河井未翼:2位ファミリーレストランのクーポン10,000円分獲得おめでとうございます。これでよろしいのではないでしょうか。(微笑み)


樋口美彩:クーポンをいただけるのは、明日の夕食会だそうなので、それまでお預け。配分は均等。端数の1円でケンカしないでくださいね。


可奈子:1円多いのは、星南さんで。


人見この花:いただいていいのか疑問が残ります。


樋口美彩:均等配分がルールなので、3人でいただいてください。



//

  ゲーム終わり、ボックス内で談笑しているところに、マネージャーの杵渕がやって来る。



~ボウリング場

杵渕巴亜斗:お話中ごめんなさい。みれいちゃんとみはちゃん、明日は観光したいよね? したいんだったら、私について来て。


鷲尾美麗:りせりせは?


杵渕巴亜斗:りせちゃん、みさみさの試合を応援してて。それじゃあ、行きましょう。



//

  未翼と美麗は、杵渕とともにボウリング場を後にする。



~ボウリング場

今井莉世:みはちゃんとみれい、この前のお仕事の続き?


樋口美彩:さあ? 何も聞いていないから、何なんでしょうね。


みやび:(席を外す未翼が見え)ねえねえ、りせちゃん。みはちゃん、どこに行ったの?


今井莉世:詳しいことを聞いていませんけど、緊急のお仕事だと思います。


みやび:え~ みはちゃんとお話することもできないの~(しょぼん)


今井莉世:どうも噛み合わないみたいですね。(微笑み)






【 25 】



//

  マネージャーの杵渕に呼ばれた未翼と美麗。ふたりは自室に戻り、自身のタブレットを抱え、杵渕と樋口が宿泊している部屋へと移動。説明を受ける。



~ホテル・マネージャーの部屋

杵渕巴亜斗:スケジュールは厳しいんだけれども、1st写真集でふたりの希望も参考にしたいということで、気に入ったスチルにいいねをマークしてくださいということです。締切が週明け月曜日のお昼。スケジュール的にこちらを先に終わらせてしまって、次に締切が火曜日夕方のアーティストブックの原稿を仕上げるがいいと思う。


鷲尾美麗:月曜日のお昼締切で、今からですか。


杵渕巴亜斗:ショートムービーと並行して撮影したでしょ? 時間かけられないから、スチルのシャッター多めに切っているから、枚数とても多いからね。みはちゃんは、東京駅で新幹線待っている間に少しやっているから、その分少ないと思うけど、どちらも4桁あるから頑張ってね。


鷲尾美麗:4桁ということは、1,000枚以上あるんですね。(指定されたリンクを開く)2,400枚ちょっとある! みはちゃんは?


河井未翼:私は3,000枚くらいです。岡本さんの好きすぎる気持ちが、枚数に現れていると思います。(苦笑)


鷲尾美麗:1枚確認するのに要する時間を5秒だとすると、3時間20分もかかるのか~ (時間を確認する)今日、どこまで進められるかな。先が思いやられる。


河井未翼:どんどん次のスチルに進めながら、直感でいいねをマークすれば、時間も短縮できるかもしれません。


鷲尾美麗:でも、みはちゃんは3,000枚もあるから私より大変。


河井未翼:この前やった分にはいいねマークが残ってますから、その最後のいいね以降を確認すればいいので、枚数は減ると思います。


鷲尾美麗:私と同じくらいになりそう?


河井未翼:(最後のいいねを確認し)2,700枚くらいですね。


鷲尾美麗:少しやっていてもまだ私より多いんだね。


河井未翼:頑張ります。(微笑み)


杵渕巴亜斗:22:00までだからね。あとは、自分たちの部屋に戻って、お風呂に入って、寝る! みれいちゃん、みはちゃんと一緒だから、早く終われてよかったね。(微笑み) 目標は半分くらいまでかな。2時間頑張って!


鷲尾美麗:自分のより、みはちゃんのスチルにいいねしたいな~


杵渕巴亜斗:いいね複数設定できるから、自分のが完了したら、みはちゃんのスチルにいいねしてもいいわよ。(微笑み)


鷲尾美麗:自分のだけにしておきます。



//

  未翼と美麗が作業を始めると、杵渕は席を立ち、しばらくして戻って来る。手にはコンビニの袋。袋の中からお菓子、飲料を取り出してテーブルに広げる。



~ホテル・マネージャーの部屋

杵渕巴亜斗:小腹も空くでしょうから、好きなものを食べて、飲んでね。(プシュと缶ビールを開ける)


鷲尾美麗:(音の先に目をやり)あっ!? みはちゃんの前でひとりだけビール飲むの? というか、はあとちゃん、お仕事でしかお酒飲まないんじゃなかったの? どういうこと?


杵渕巴亜斗:今日の私の仕事は、ふたりに作業を始めさせることろまででおしまい。せっかく、沖縄に来て、明日は引率役兼運転手役? とはいえ、オフなんだから、缶ビール1本くらい飲んでもいいでしょ?


鷲尾美麗:メンバー同士でお食事に行くときは、20歳未満がいるとお酒だめなのに、スタッフがいるとOKというのは、納得いかないとりせりせ、るながよくいってるけど、私も本当にそう思う。身勝手!


杵渕巴亜斗:(微笑みながら)ごめんなさいね、スタッフの特権行使しちゃって。(缶ビールを1口飲む)


河井未翼:はあとちゃんがビールを飲んでもいいと思いますけど、みさちゃんのボウリングの応援には行かないんですか。


杵渕巴亜斗:みさみさには悪いけど、ふたりの進捗監視が優先。


鷲尾美麗:監視もお仕事でしょ? 応援に行きたくない口実?(疑いの目)


河井未翼:ビールを飲みたい口実?(微笑み)


杵渕巴亜斗:確かに監視もお仕事かもしれないけど、私は作業にノータッチだから、いいことにして貰って。でも、みれいちゃんがみはちゃんに手を出すといけないから、監視する必要はある。(ひとり納得) ビールの件は、さっきいったので省略。


鷲尾美麗:私、みはちゃんの同期くらいの親密な仲になるまで大人でいようと決めたので、みはちゃんに手は出しませんよ。


杵渕巴亜斗:えっ!? いつから?


鷲尾美麗:昨日の夜から。だから、いちゃいちゃしないので、みさちゃんの応援に行ってくださいね。


杵渕巴亜斗:みはちゃん、本当なの?


河井未翼:本当ですけど、… みれいちゃんのいうところの親密な関係、私のそれとちょっと違う気がして、親密になったら、何をしようとしているのか分からないので、不安もあるんですけど、…


杵渕巴亜斗:みはちゃんが不安というのなら、監視は必要ね。はい、そのまま作業続けて。


鷲尾美麗:みはちゃ~ん、最後のひとことよけい。(頬をふくらませる)


河井未翼:…(ニコッと.笑う)


杵渕巴亜斗:ところで、ボウリング大会あなたたちは何位だったの?


鷲尾美麗:はあとちゃん、もしかして、まったく見ていなかった?


杵渕巴亜斗:まったく。応援に行こうと思ったら、これを至急対応してと連絡が来て、内容と確認とスケジュール調整していたら、ふたりを呼び出しに行ったのがあの時間。


鷲尾美麗:ちゃんと私たちのためにお仕事してくれてたんだ。はあとちゃん、ありがとう。


杵渕巴亜斗:(胸を張って)当然です! それで、順位はどうだったの?


鷲尾美麗:みさちゃんの指導とみはちゃんの活躍で優勝しました!(拍手)


杵渕巴亜斗:本当に? おめでとう!(拍手)


鷲尾美麗:でもね、一緒のボックスだったBoarder Lineの星南さんが、中学までプロ目指していたそうで、めっちゃくちゃボウリングがうまくて、プロ級の腕前。投げた6投全部ストライク。最後、スペアを取らないと負けってところで、みはちゃんがスペア取ってくれて、なんとか勝てました。


杵渕巴亜斗:へ~ 見たかったな。


河井未翼:みさちゃんの指導がよかったのと、ビギナーズラックでたまたま運がよかっただけです。


杵渕巴亜斗:優勝できるなんて、本当にすごいね。それでは、私も高級焼肉店、よろしくお願いします。(頭を下げる)


鷲尾美麗:はぁ? 指導してくれたみさちゃんには、その権利あるけど、はあとちゃんにはその権利ないでしょ。応援にも来ていないし。(いたずらっぽい笑顔) 30,000円を4等分ならまだしも、5等分となると、ひとり当たり半分に近くなる。


河井未翼:1品頼んだら、2品目を頼めないとなったら、とても悲しいですね。


杵渕巴亜斗:そこをなんとか、お願いします!(両手を合わせる)


鷲尾美麗:私の一存では決められないので、りせりせ加えて、3人で相談して決めます。


杵渕巴亜斗:何とぞよろしくお願いします。(左手の甲を右の手のひらでこする)



//

  その後、未翼と美麗はもくもくと作業。杵渕はスマートフォンで調べものに勤しむ。作業開始から1時間を迎えようとするころ、杵渕のスマートフォンに着信がある。



~電話

杵渕巴亜斗:びっくり!!(未翼と美麗の視線に苦笑い) もしもし、はあとです。


樋口美彩:みさです。ボウリング大会で優勝しました~!! イエーイ!!


杵渕巴亜斗:すご~い! ダブル優勝だ!


樋口美彩:私も高級焼肉店のクーポンゲット!


杵渕巴亜斗:4人で40,000円分になるね。羨ましいな~


樋口美彩:何? そのいい方。もしかして、高級焼肉店に連れて行ってごちそうして欲しいな~ っていいたい?


杵渕巴亜斗:えっ!? いいの。ありがとう。持つべきは友ね!


樋口美彩:待って、待って! 誰もごちそうしてあげますとはひとこともいっていませんから! そうじゃなくて、ボウリングの話は置いておいて、みれいちゃん、みはちゃん、私たちの部屋にいるんだよね? 私、そっちに戻らない方がいい?


杵渕巴亜斗:22:00には作業終わらせるから、それまではりせちゃんと時間潰してくれると助かる。


樋口美彩:了解。じゃあ、切るね。


杵渕巴亜斗:またあとで。(電話を切る)



~ホテル・マネージャーの部屋

河井未翼:みさちゃんも優勝したんですね。すごい気合入ってましたものね。(微笑み)


鷲尾美麗:はあとちゃんは、どうしても高級焼肉にありつきたい訳?(笑)


杵渕巴亜斗:はい。(即答)


河井未翼:五十嵐GM含めてスタッフさんで食事するとき、高級焼肉店に行ったりしないんですか。


杵渕巴亜斗:五十嵐GMは、財布の紐が堅い! 年1回くらいあってもいいのにな~ と思って、早5年目に突入。


鷲尾美麗:そういうことなら、おねだりしたい気持ちも分からないではない。


杵渕巴亜斗:分かってちょうだい。(微笑み)


鷲尾美麗:りせりせ加えて、3人で相談することは変わりません。


杵渕巴亜斗:少しリフレッシュ。休憩タイム。さあさあ、(お菓子を)食べて食べて!(笑顔)


鷲尾美麗:はあとちゃんには、呆れますね。(微笑み) ところで、みはちゃんはどこまで進んだ?


河井未翼:新潟みなとビルの展望室まで終わりました。これから、ランチを買いに行くシーンに取りかかります。


鷲尾美麗:みはちゃん、枚数多いのに早いね。私、やすらぎ堤のランチのシーンに入ったばっかり。追いつかれそう。


杵渕巴亜斗:1日撮影したうち、もうお昼ごろまで進んでいるということは、ふたりともいいペース。今日で水族館くらいまで進めるんじゃないかな。そうしたら、明日が楽になる。


河井未翼:水族館、… 明日の水族館も楽しみです。


鷲尾美麗:す~ごくおっきな水槽があって、おっきなジンベエザメとかエイとかいるんだって。楽しみ!


杵渕巴亜斗:ふたりが行きたいところはそこだけ?


鷲尾美麗:絶対に行きたいところは水族館だけです。りせりせも行きたいところを検索していましたから、どこかあるはずです。


杵渕巴亜斗:天候しだいというところもあるから、風光明媚なところ、今回はパスなのかな? りせちゃんに確認しないといけないね。


鷲尾美麗:私とみはちゃんが部屋に戻ったところで、明日行きたいところの情報共有しますね。


杵渕巴亜斗:お願い。りせちゃん、自分でクルマ運転したいかも確認して貰おうかな。


鷲尾美麗:了解です。






【 26 】



//

  マネージャー・スタッフ部門ボウリング大会を終え、出場した樋口、応援していた莉世のふたりは、リゾートホテル内のコンビニで缶ビールとおつまみを購入。未翼、莉世、美麗が宿泊する部屋でくつろいでいる。



~ホテル

今井莉世:みはちゃんとみれい、この前のお仕事の続きですか。


樋口美彩:さっきいったでしょ。何も聞いていないから、何なんでしょうねって。


今井莉世:でも、ふたりってことで、この前のお仕事の続きじゃないかって、薄々は気づいてますよね。


樋口美彩:この前のお仕事っていわれても、私はタッチしてないから、分からないのよね。ごめんなさいね。


今井莉世:そんなに秘匿しておかなければならないことなんですか。みれい、雑誌とのインタビューで、オフレコですけど、みはちゃんとの公式ユニット頑張りますみたいなこといってますよ。私、リーダーなんですから、隠さないで教えてください。


樋口美彩:そういわれてもね。分からないことは教えようがないし。その雑誌とのインタビューのとき、私が立ち会っていた? はあとちゃんじゃないの?


今井莉世:はあとちゃんだった気がします。


樋口美彩:フロントの全員が情報を共有しているとは限らないのよ。


今井莉世:みはちゃんとみれい、別々に撮影していたって情報がU-timeにあったんですよ。マネージャーひとりってことはないはず。経験のまだ浅いななちゃんが任されるとは思えないし、男性マネージャーも外れる。残るは、はあとちゃんとみさちゃん。知らないはずないと思うんですけど?


樋口美彩:私はノータッチ。分からなくてごめんなさいね。


今井莉世:もういいです。諦めます。


樋口美彩:それが正解!(微笑み) ところで、明日行くところは決まった?


今井莉世:みれいとみはちゃんが水族館。私は古宇利大橋、ハートロック、今帰仁城跡、瀬底ビーチ。天候が回復するといいんですけどね。


樋口美彩:りせちゃん、欲張り。(笑)


今井莉世:快晴のもと、オープンカーをドライブしたら、気分いいだろうなと思って選びました。


樋口美彩:運転する?


今井莉世:天候悪そうなので遠慮します。なので、飲みます。(笑)


樋口美彩:(ビール)2本で足りるんだ?


今井莉世:いつもだったら、飲んでも1本ですから、もう1本はご褒美。(笑) みさちゃんは?


樋口美彩:ボウリング大会ダブル優勝できたから、2本ともご褒美。(笑)


今井莉世:うまいこといいますね。(笑)


樋口美彩:りせちゃん、お酒が入ると、笑うタイプ?(笑)


今井莉世:そうかもしれません。(笑) みさちゃんもそうじゃないですか。


樋口美彩:私? 私は、すぐ酔っちゃって、すぐ寝ちゃうタイプ。だから、この部屋で寝ないようにしないと。


今井莉世:お酒、弱いんだ、…(微笑み)


樋口美彩:もし、眠そうにしてたり、寝ちゃったりしたら、起こして貰える?


今井莉世:22:00くらいには、あのふたりもこの部屋に戻ってくると思いますけど、そこまで起きていられない感じですか。


樋口美彩:2本だからな~ どうだろう?


今井莉世:(笑いながら)いいですよ。起こしてあげます。


樋口美彩:ありがとう。



//

  莉世と樋口のふたりは、莉世が明日行きたいというスポットやお土産など、沖縄の話で盛り上がる。ビールも進み、おつまみも減ってくる。



~ホテル

樋口美彩:ちょっとトイレに行ってくる。


今井莉世:酔ってるから転ばないでくださいね。


樋口美彩:はーい。



//

  樋口がトイレに立つと、莉世は樋口の飲み終わりそうな2本目のビールを、手を付けずに残しておいた自分のビールと差し替える。樋口にビールを3本飲ませて完全に酔わせ、未翼と美麗が先日何をしたのか聞き出そうという作戦。しばらくしてトイレから戻った樋口。ビールをひと口飲んだあと、首を傾げる。



~ホテル

樋口美彩:あれっ!? 2本目かなり飲んでいたはずだけど、まだこんなにある?


今井莉世:酔って記憶が飛んだんじゃないですか。(笑) 私、2本目終わりそうです。(軽く振ってみせる)


樋口美彩:おかしいな~


今井莉世:ダブル優勝のご褒美なんですから、味わって飲んでください。(微笑み)


樋口美彩:美酒だものね。そうする。



//

  ビールを飲みながら、莉世と話を続ける樋口。酔いが回り、しだいに話すペースは遅くなり、目も虚ろになっている。



~ホテル

今井莉世:みさちゃん、眠っちゃだめですよ。


樋口美彩:(目を見開き)大丈夫。まだ、だ・い・じ・ょ・う・ぶ・れ・す。


今井莉世:月曜日、写真集撮影のお仕事したんですか。


樋口美彩:そうらよ~ はあとちゃんがみはちゃんに~ 付き添い。わらひが~ みれいちゃんに付き添い。みれいちゃん、最初緊張しれ~ 撮影進まなくて大変らったんらよ~ ヒック!



//

  樋口は完全に酔いつぶれて寝てしまう。



~ホテル

今井莉世:あ~ん、もう! もっと聞き出したかったのに!(悔しがる) 写真集撮影だったことは分かったけど、ドラマ撮影とどうつながるんだろう? CM映像かな? 情報解禁まで待つしかないか。ちょっと残念。



//

  22:00近くなり、莉世は杵渕に電話。酔いつぶれた樋口の回収を依頼。未翼、美麗とともに部屋にやって来た杵渕は、酔いつぶれた樋口をおんぶして部屋を出ていく。



~ホテル

鷲尾美麗:みさちゃん、あんなに酔っ払って、ビール何本飲んだの?


今井莉世:2本。


鷲尾美麗:(テーブルの上の缶ビールを数え)りせりせも2本。みさちゃん、弱いんだね。


樋口美彩:ボウリング大会ダブル優勝のご褒美だからって、2本飲んだけど、すぐ酔っちゃって、すぐ寝ちゃうタイプなんだってさ。


鷲尾美麗:りせりせが酔わせた訳じゃないんだ?


今井莉世:みさちゃん、自分で酔った。(微笑み)


河井未翼:みさちゃんが酔ったのに乗じて、私とみれいちゃんが何をやっているのか、聞き出そうとしませんでしたか。(疑いの目)


鷲尾美麗:酔って意識がもうろうとしていることをいいことに、まさか?(疑いの目)


今井莉世:(つくり笑顔で)ほほほほほっ、いったい何のことかしら。


河井未翼:これは、情報が漏洩したとみるべきです。


鷲尾美麗:りせりせがこんな卑怯な手段を用いるとは、完全に迂闊だった。みさちゃんとふたりにしたのが失敗だった。


河井未翼:どこまで聞き出したんですか。(追求の目線)


今井莉世:ぜ~んぜん! みさちゃん、すぐ酔っ払って寝ちゃうんだもん。(笑)


鷲尾美麗:りせりせ、絶対に何か聞き出したはず。手を変え品を変え、まだ聞き出そうとするはずだから、油断しちゃだめよ、みはちゃん。


河井未翼:もちろんです。


今井莉世:あ~あ、そうやって私だけのけものにする。(笑) それで、肝心のお仕事は終わったの?


河井未翼:明日の夜も継続です。


今井莉世:そうすると、明日の夜は、この部屋に私ひとりになっちゃうんだね。


鷲尾美麗:お食事会がどのくらいに終わるか分からないけど、そのあとに始めて1時間くらいで終わると思うよ。ひとりでお酒飲んでるのが退屈だったら、メンバーの誰かのところに遊びに行ったら?


今井莉世:人を飲兵衛みたいにいわないで貰える?(笑) でも、誰かのところに1時間だけ遊びに行くのも何だし、お酒に頼るかな。(苦笑)



//

  就寝前のひととき、未翼はメッセンジャーの着信を確認。メッセージへの返信を続けている。メッセージの内容を確認したものの、返信しなかった椎名からのメッセージを改めて読み返す。






【 13 】


  五十嵐GMから、相談したいことがあるので事務所に来れるかってメッセンジャーに連絡が来たから、明日行くことにしたよ


  「いきなりですけど、しいなさんのことで?」と未翼は返信する。すると、すぐに椎名からのメッセージ。


  相談したいだから、みはちゃんやグループのことじゃないかなと思ってる。明日なのは、五十嵐GMが時間の都合をつけやすいからという理由もあって、明日にして貰ったんだよ。


  「それならいいんですけど。終わったら、内容を教えて貰えますか」と未翼は返信する。すると、すぐに椎名からのメッセージ。


  いいよ。夜に連絡するよ。3日目も頑張ってね。おやすみ






【 26 】



~ホテル

河井未翼:おやすみって、早い、…


鷲尾美麗:(未翼の声に反応し)みはちゃん、もしかして、しいなさんと連絡取り合ってた?


河井未翼:はい。


鷲尾美麗:テキストでもの足りないなら、電話すればいいのに。(微笑み)


河井未翼:いいんです。明日も連絡貰えますから。


鷲尾美麗:遠慮しなくていいのに。(微笑み)


今井莉世:家では、しいなさんに甘えたりしてるの?


河井未翼:起こして貰ったり、食事やお弁当をつくって貰ったり、送り迎えして貰ったりしているので、甘えているということになるんだと思いますが、もうちょっと関係を深めたいなというか、距離を詰めたいなと思っているんですけど、バリケードがあるみたいで、距離を置かれています。


今井莉世:そういう関係なのね。私もお泊りしに行っていい?


鷲尾美麗:(間髪入れず)だめ! 絶対にだめ!


河井未翼:予約順があるので、その順でよければ。


鷲尾美麗:りせりせはだめだって。みはちゃんが寝ている隙に、しいなさんに何するか分からないでしょ?


河井未翼:みれいちゃんは、しいなさんと夫婦、私が子どもの設定で、ひとり寸劇しましたよね。(微笑み)


鷲尾美麗:(動揺しつつ)あ、あ、あ、… ばらさなくても、…(赤面)


今井莉世:(笑いながら)みれい、そんなことしたの。やって見せてよ。


鷲尾美麗:絶対にしません!


今井莉世:みはちゃんがその寸劇OKなら、私もそこまでならやってもOKよね?


河井未翼:しいなさんと私を巻き込まないで、ひとりで完結するならOKです。


今井莉世:(笑いながら)巻き込んじゃだめか。


鷲尾美麗:夫婦役をいいことに、既成事実化しようと企んだでしょ?


今井莉世:みはちゃんのガードも堅い。(苦笑) それで、予約しているのは誰?


河井未翼:お泊りまだしていないメンバーで名乗り出たのが一番早いのは、るなちゃん。でも、遊びに来る約束したのは、あおいちゃんが一番早いので、あおいちゃん、るなちゃん、さらちゃん、そして、りせちゃんだと思います。


鷲尾美麗:さらは、除外していいよ。危険すぎる。あと、まどちゃんがお泊りしたいといっても、絶対に拒絶すること。


今井莉世:ほんと、要注意人物の多いグループだこと。


鷲尾美麗:りせりせもだからね! 対みはちゃんでなくて、対しいなさんだけど、自覚してね!


今井莉世:(肩をすくめ)はい。心に刻んでおきます。


鷲尾美麗:りせりせがお泊りするときだけど、忘れ物防止タグの警告音では、みはちゃんが起きることできないだろうから、私も一緒にお泊りしに行くよ。そうしないと、安心できないでしょ?


河井未翼:それ、採用です!(微笑み)


今井莉世:みれいの方が危険だと思うけど、いいのそれで?


河井未翼:相互監視で安心できると思います。


鷲尾美麗:繰り返しになるけど、みはちゃんに信頼して貰わないといけない立場なので、危険とは無縁。


今井莉世:みれいとくされ縁みたいな関係になるのはいやだけど、仕方ないか。妥協しよう。


河井未翼:では、みれいちゃん付きでりせちゃんのお泊り予約いただきました。(微笑み)






【 27 】



//

  ミュージックビデオ撮影3日目は、前日に撮了したため、フリーの1日。天候は雨。未翼、莉世、美麗の3人は、同行するマネージャーの杵渕、樋口とともにレンタカーで沖縄観光。3人が行きたいとしていた古宇利大橋、ハートロック、今帰仁城跡、水族館、瀬底ビーチを巡り、途中、お土産も購入して、リゾートホテルに戻って来る。



~ホテル

今井莉世:今日、少しも太陽が顔出さなかったね。せっかくフリーになったのに残念。来年も沖縄でミュージックビデオ撮影してくれないかな。快晴の沖縄をオープンカーでドライブしたい。


鷲尾美麗:オープンカーでドライブ、いいね。私も免許取ろうかな。


今井莉世:運転する、しないは置いておいて、免許は取れるうちに取っておいた方がいいと思うよ。


鷲尾美麗:今までクルマに乗せて貰うことしか考えてなかったけど、運転できると行動範囲も広がるし、真剣に考えよう。


今井莉世:退団後に東京の事務所所属になって、向こうに住むことを考えているなら、新潟にいるうちに免許を取ることを勧める。


河井未翼:みれいちゃん、東京のモデル事務所に移籍? することを考えているんですか。


鷲尾美麗:五十嵐GMには、私の夢も話してあるし、みはちゃんとのユニットのことも私が退団したら解消ということにしたくないとも伝えてある。いい方法が見つかることを信じてる。


河井未翼:五十嵐GMにユニットの将来についても気持ちを伝えてくれてたんですね。


鷲尾美麗:いつの間にと思ったかもしれないけど、みはちゃんと違って、在籍できる期間短いからね。はい。湿っぽくなると嫌なので、私の将来の話はここまで。


今井莉世:来年の "VENUS AWARD" でみはちゃんが1位になったら、高校生だし、水着NGってことで、ミュージックビデオの撮影地が沖縄とか暖かい地域じゃない可能性が高いかもね。


河井未翼:私が "VENUS AWARD" で1位にならない可能性がずっと、ずっと高いですよ。


今井莉世:確かにそうだけど、私たちa-Force NIIGATAのメンバーの中では、みはちゃんが1位になる可能性が一番高いでしょ。それに私、来年が最後だし、みんなといっぱい思い出つくりたい。今年の全国ツアーは、初めての都市が名古屋、大阪、岡山。来年、みはちゃんが1位になってくれたら、もっとたくさんの都市に行けるだろうし、 "VENUS AWARD" のご褒美ライブでどこかのドームスタジアムでもライブができる。みはちゃん、活動2年目に入ったばかりだけど、期待させて貰ってるからね。


鷲尾美麗:後輩頼みみたいな感じで頼りない先輩だけど、私たちにできることはフォローしていくから、一緒に頑張っていこうね。


河井未翼:ありがとうございます。でも、忘れて欲しくないのは、私の3位は、まったく実績のない期待値の3位です。この1年で実績、結果を残せなかったら、あとは下がるだけです。もっと冷静でいてください。


今井莉世:と、アーティストブックのインタビューページにも書いて貰おうね。(微笑み)


鷲尾美麗:何? これ、インタビューの練習だったの?(笑)


今井莉世:そのつもりはなかったけど、使えそうでしょ?(微笑み) アーティストブックの個人ページの原稿、締切近いから忘れずにね!


鷲尾美麗:みはちゃんとのお仕事終わったら、続けてやっちゃおうかな。


河井未翼:アーティストブックの原稿、そんなに量を必要としていないので、やっておいた方がいいですね。


今井莉世:原稿書きもはあとちゃんたちの部屋でする?


鷲尾美麗:こっちに戻ってから原稿書きすればいいんでしょ。(微笑み)



//

  未翼、莉世、美麗の3人は、しばらくして夕食会が行われる宴会場へと移動。丸いテーブルの上に置かれたネームプレートに従い、座席につく。同じテーブルには、ボウリング大会で同じBOXだったシンガーソングライターの可奈子、a-Force OKAYAMAの人見この花、Boarder Lineの池谷星南の座席が用意されているが、まだ会場には来ていない。ほかのテーブルもメンバーやスタッフはまばら。



~宴会場

今井莉世:早く来すぎちゃったみたいね。


鷲尾美麗:15分前集合しておけば、とりあえず問題なし。でも、タブレット持ってくればよかった気がする。


今井莉世:原稿書き?


鷲尾美麗:そう。(未翼を見る)みはちゃん、もしかして、スマートフォンで原稿書きしてる?


河井未翼:はい。始まるまでもう少しかかりそうですから、今のうちに進めておこうと思いまして。


鷲尾美麗:私もみはちゃんを見習って、原稿書き始めようっと。りせりせもする?


今井莉世:このあとでひとりビール飲んで、ふたりが部屋に帰ってきてから原稿書きするのもだるいから、今から初めて、終わってからビール飲むことにする。


鷲尾美麗:それでもいいけど、私たちが原稿書いてる横で、ビール飲みながら絡んでこないでね!


今井莉世:そこは気をつけます。(微笑み)



//

  夕食会の開催時間が近づくにつれ、しだいにメンバー、スタッフが集まってくる。同じテーブルの可奈子、この花、星南に続いて、Afroditiのはるか、あんり、みやびの3人もやってくる。



~宴会場

みやび:a-Force NIIGATAのみんなは、スマートフォンとにらめっこして何してるの?


今井莉世:みなさんが集まるまでに時間があったので、提出しないといけない書き物をしています。


みやび:大変なのね。


今井莉世:みはちゃんとみれいは、もうひとつ仕事を抱えてるみたいです。


みやび:そうなんだ。私たちより忙しいんじゃない?(苦笑)


あんり:(呆れ顔で)ミュージックビデオ撮影以外のお仕事入れないで貰ってるからでしょ。


はるか:それより、みはちゃん。


河井未翼:何でしょう?


はるか:私、あんり、みはちゃんとの楽曲「bling-bling」のフリVが届いたから、一緒に観ない?


河井未翼:お願いします。


あんり:私たちも初めて観るんだけど、みはちゃんのところのマネージャーさんから情報共有あるはずだから、あとで確認してみてね。



//

  あんりが持参したタブレットを未翼の前に置き、「bling-bling」の振り付けビデオを再生する。シンセサイザーのブラスサウンドによる壮大なイントロの静から、ビートの効いたロックサウンドにシンセサイザーのメロディーが奏でられる動へと急転換。激しい動きとシャープな動きが続くダンス。1番終わりには、はるかのソロダンス、あんり&未翼のデュオダンスパートがあり、より激しくダイナミックで、かつ、シャープな動きが求められる振り付けになっている。ダンススキルと体力も必要な内容。



~宴会場

みやび:めっちゃかっこいいけど、この曲、歌って踊れるの?(はるかを見る)


はるか:ダンス、難しくなるとは聞いていたけど、予想の遥か上をいってる。ダンスしながら歌えないかも、…


あんり:プロのダンサー向けという感じ。各自あるみたいな話があったダンスパートは、はるかだけになったけど、みはちゃんとのデュオダンスは、左右対称の動きが求められるから、同調しないと見た目悪くなりそう。


今井莉世:みはちゃん、a-Force NIIGATAのダンスにはない段違いのレベルだけど、踊れそう?


河井未翼:エネルギッシュでしかも、シャープな動き。やったことないので、挑戦になりますね。あんりさんとのデュオダンスパートは、私がステージに向かって右、対になる動きで左腕を動かすことが多いので、頑張らないといけませんね。


みやび:みはちゃんみたいなかわいい子が踊るダンスじゃないよね、難しいにもほどがある。まったく!(怒り気味)


はるか:でも、アルバム収録曲の中で魅せる楽曲の1曲として、コリオグラファーが振り付けしてくれたんだから、私たちはその期待に応えないといけない。踊れないから振り付けのレベル下げてとはいいたくない。


みやび:はるかが、振り付けが難しい、体力が続かないから簡単にしてといえば済むことじゃん。あんりとみはちゃんを巻き込まないであげて。


はるか:この曲に関しては、みやびは部外者。黙ってなさい。


みやび:ひどい! みんなのことを思っていってるのに、…


あんり:この振り付けで進めるけど、このハードなダンスで歌えないんだったら、早く決断しなさいね、はるか。


はるか:分かったわ。


あんり:ということで、頑張ろうね、みはちゃん。


河井未翼:はい。よろしくお願いします。



//

  あんりは、タブレットを取ると、はるか、みやびとともに自分たちのテーブルへと向かう。



~宴会場

鷲尾美麗:みはちゃん、あんな激しいダンスしたら、身体が引きちぎれるんじゃない?(笑)


河井未翼:動きも早いですけど、引きちぎれるほどのスピードに到達できないことも考えられます。


鷲尾美麗:あんまり真に受けないでね。


河井未翼:はい。冗談でいったんですよね。(微笑み)


鷲尾美麗:それならいいけど。できそう?


河井未翼:今までやったことのない身体の動かし方もありますし、不安だらけです。最初は、スロー再生しながら、少しずつ覚えるしか方法はないような気がします。


今井莉世:みはちゃん、ライブの定番曲は覚えたといっても、まだこれから覚えないといけない楽曲もあるのに、こんな難しい振り付けの楽曲にしちゃって。みやびちゃんじゃなくても、簡単にしてといいたくなる。


鷲尾美麗:踊れない、歌えないといった弱音を吐きたくないっていうプライドが、はるかさんにあるんでしょうね。そんなプライドに付き合わされて、みはちゃんがどこか痛めたりしたら許さないんだけど。


河井未翼:周囲に聞こえちゃいますよ。


池谷星南:同じテーブルなので、聞かないようにというのは無理です。美麗お嬢さまのご心配はごもっとも。わたくしは、未翼お嬢さま、美麗お嬢さまのお味方ですのでご心配なく。


可奈子:はるかさんは苦手なタイプなので、星南さんと同様にお味方します。


人見この花:a-Force NIIGATAさんともっとお近づきになりたいので、私もお味方します。


今井莉世:みはちゃんのことだからって、あんまりムキになっちゃだめよ、みれい。わざわざ敵を増やす必要ないんだからね。


鷲尾美麗:…(肩をすくめる)



//

  夕食会は、ボウリング大会の表彰式から始まる。マネージャー・スタッフ部門、メンバー部門の順で行われ、最後にa-Force NIIGATAチームの未翼、莉世、美麗が登壇。ボウリング大会を主催したプロデューサーから賞品の高級焼肉店のクーポン30,000円分の目録を受け取る。



~宴会場

プロデューサー:これから食事会の乾杯するから、3人の中でボウリング大会で活躍したという河井未翼さんに、乾杯の音頭を取って貰っていいかな?


河井未翼:したことありませんけど?


プロデューサー:では、先輩に教えて貰って。



//

  プロデューサーからホテルのスタッフに声がかけられ、乾杯の準備が始まる。未翼は、莉世と美麗から乾杯の音頭をどうしたらいいか確認している。



~宴会場

プロデューサー:(宴会場内に向け)みなさん、乾杯の準備をお願いします。メンバーは20歳以上であっても、この宴会場内での飲酒は禁止です。スタッフもメンバーにお酒を強要したり、グラスなどにお酒を仕込ませて酔わすなんてことはご法度ですから。会長にバレて、解雇にならないように、安心安全に飲食を楽しんでください。みなさん、ご準備はよろしいでしょうか。(見渡す) それでは、乾杯の音頭をボウリング大会で活躍されたこの方にお願いしたいと思います。


河井未翼:a-Force NIIGATAの河井未翼です。ミュージックビデオ撮影お疲れさまでした。乾杯!(グラスを上げる)



//

  「乾杯!」の声とともに、グラスを合わせる音が響く。未翼も美麗、莉世、プロデューサーとグラスを合わせる。ひと口ジュースやお酒を飲む間が空いたあと、拍手が沸き起こる。



~宴会場

プロデューサー:みなさん、いっぱい食べて、飲んで、疲れを吹き飛ばしてください!



//

  未翼たちがテーブルに戻る。テーブルには、沖縄の郷土料理などいろんな料理が並んでいる。可奈子は、よほどお腹が空いていたのか、ガツガツと食べている。この花と星南は、食べものの品定めをしている。



~宴会場

可奈子:(もぐもぐしながら)先にいただいてます。


今井莉世:どうぞ、どうぞ。お腹空きましたよね。(微笑み)


鷲尾美麗:テビチとかミミガーには、まだ誰も手を出していない感じですね。(微笑み)


池谷星南:わたくし、去年はそのふたつどちらも手を出せなかったんですよ。


人見この花:私もです。


可奈子:みんなが食べないんだったら、私があとでいただきます。


河井未翼:テビチとか、ミミガーってあ料理名のことだと思いますけど、どれのことですか。


鷲尾美麗:(指差し)テビチがこれ、ミミガーがこれ。


河井未翼:(指差し)テビチっていうお料理のお肉の真ん中に丸い白いものが見えますけど、骨ですか。


鷲尾美麗:そう、豚の足の骨。


河井未翼:豚足のお料理ってことですね。


鷲尾美麗:そういうこと。私も初めて食べるから楽しみ。


河井未翼:では、(指差し)このミミガーは?


鷲尾美麗:ミミガーもね、…


今井莉世:(割り込む)豚の耳。おいしいから食べてみて!


鷲尾美麗:りせりせは、どうして割り込むのよ!(不満顔)


今井莉世:お姉さんぶって、みはちゃんに教えてるのが、ちょっとだけ目障り。(微笑み)



//

  未翼は、そんなふたりをよそに、皿にテビチを取り分けている。3皿取り分けると、可奈子、星南、この花に配る。



~宴会場

池谷星南:(席を立ち)未翼お嬢さまにとんだご無礼をさせてしまいました。わたくしめがやらねばならぬことをなのに。どうかお許しくださいませ。(頭を垂れる)


河井未翼:せなさん、私はお嬢さまではないので、みはちゃんと呼んでください。


池谷星南:Border Lineのほかのメンバーに示しがつきませんので、それはできません。お慣れください。そして、わたくしのことは、せなと呼び捨てでお呼びくださいませ。


河井未翼:みれいちゃん、どうしたらいいですか?


鷲尾美麗:お嬢さま呼びに慣れましょう。(苦笑)


池谷星南:美麗お嬢さま、感謝申し上げます。


河井未翼:もう、…(困惑) (急にひらめき)そうだ! こういうことにしませんか? せなさん、テビチ苦手なようなので、取り分けた分を完食できたら、せなさんのお嬢さま呼びを受け入れますし、私もせなと呼び捨てすることにします。でも、完食できなかったら、せなさんの私へのお嬢さま呼びは禁止、私のせなさん呼びを受け入れてください。どうですか?


池谷星南:先ほど申しましたように、Border Lineのほかのメンバーに示しがつかないので、賭けに勝ったらどうとか、負けたらどうといったことはできません。お許しくださいませ。


河井未翼:逃げるんですか?


今井莉世:みはちゃん、好戦的!


鷲尾美麗:そんなにお嬢さま呼びが嫌なの?(苦笑)


今井莉世:特定の個人に対して無理ならば、Border Lineのメンバーがa-Force NIIGATAのメンバーに対して、賭けに勝ったら、お嬢さま呼びを許可。賭けに負けたら、ちゃん付けやニックネームで呼ぶ。これなら、Border Lineのほかのメンバーにも示しがつくんじゃないでしょうか。


鷲尾美麗:りせりせ、そういう作戦で回避しようとするか。(笑)


池谷星南:未翼お嬢さまが莉世さんの提案で差し支えなければ、その提案、賭けを受入れます。どうなさいますか。


河井未翼:りせちゃんの提案に賛成します。


池谷星南:では、未翼お嬢さま特定ではなく、a-Force NIIGATAさんグループに対してということで。


人見この花:ちょっと待ってください。a-Force NIIGATAさんにOKAYAMAも加えていただいていいですか。


池谷星南:いいですけど、わたくしもメンバーもOKAYAMAさんで関心を寄せるメンバーいませんけど。


人見この花:この期間で結構距離縮まったと思いますけど、私がロリィタファッションしてもだめですか。


池谷星南:この花さんはおきれいですけど、関心がないので、その場面に遭遇しないと思います。


人見この花:だめですか、…


池谷星南:まあまあ、そう落ち込まずに。(苦笑) a-Force NIIGATAさんはみんなおきれいだったり、かわいかったりするので、わたくしたちメンバーで情報交換し合って、今すぐU-ch観て! とか、このロリィタブランドのお洋服着て欲しいとかいったりしてます。


今井莉世:そこまでチェックしているということは、完全に私たちのファンですよね?(微笑み) 推しとかいたりします?


池谷星南:…(顔がみるみる赤くなる)


今井莉世:この中にいます?(微笑み)


人見この花:確実にいます!(笑)


可奈子:理性を保つのも限界って感じ。(ニヤッと笑う)


池谷星南:(息を大きく吐いて)テビチ食べればいいですよね。


鷲尾美麗:食べきったら、みはちゃんが泣きますよ。


河井未翼:えっ!?



//

  否定しようとする未翼に、美麗は目配せして静観させる。



~宴会場

人見この花:星南さん、豚足ですよ、豚足! おっきな体を支えていた足。


池谷星南:この花さん、今はa-Force NIIGATAさんの味方ですよね。食べきって、決着をつけてしまいましょう。


可奈子:ブー、ブー!(ニヤッと笑う)


池谷星南:豚肉には変わりませんからね。大丈夫。食べきります。



//

  星南は、テビチに鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、箸を入れる。柔らかく煮付けてあり、箸で程よい大きさに切ると、口に運ぶ。



~宴会場

池谷星南:食べる前に気になっていた臭みはなくて、甘辛い味付けにプルプル食感。ラフテーの方が好みですけど、このテビチもいけます。完食余裕です。(笑顔)


河井未翼:そんな~


鷲尾美麗:せなさんが勝ったら、みはちゃん、本当に泣いちゃいますよ。


池谷星南:その場合は、わたくしが慰めて差し上げますので、お気遣いなく。


河井未翼:(胸の前で両手を握り)せなさん、お願い。


池谷星南:さん付けは、これが最後になります。お嬢さまと呼ばさせていただきます。(微笑み)



//

  未翼の嘆願も受け入れることなく、星南はテビチを食べ続けて完食する。



~宴会場

池谷星南:完食いたしました。賭けは、わたくしの勝利ということで、わたくしはお嬢さまと呼ばさせいただきます。わたくしのことは、せなと呼び捨てでお呼びくださいませ。(笑顔)


今井莉世:単なる悪あがきで終わったね。(苦笑)


鷲尾美麗:全員じゃないですけど、これからもロリィタやゴシックロリィタするメンバーが出てくる予定なので、楽しみにしておいてください。あっ、さっきの赤面状態からすると、ほかのメンバーよりも私たち3人の中に推しがいるんだっけ。誰だろう?(未翼と莉世を見る)


今井莉世:(手を振って)私じゃないでしょ。


人見この花:ボウリング大会のとき、みはちゃんの正義の味方になったんですから、みはちゃんでしょう。(ニンマリ)


河井未翼:せなさん、私推しですか。


池谷星南:未翼お嬢さま、せなと呼び捨てするお約束ですよ!


河井未翼:ごめんなさい。せな、私推しなんですか。


池谷星南:申し訳ございません。少し席を外します。(席を立つ)


人見この花:分かりやすっ!(笑)


鷲尾美麗:みはちゃんのロリィタ姿見たら、誰もが羨むかわいさときれいさを兼ね備えているから、同性でも惚れちゃうのはやむを得ない。だからといって、何をしてもいいとは限らない。


人見この花:みはちゃんのロリィタ、今でも見ることできます?


河井未翼:この花さんのようなスタイルがよくてきれいな人には、何の変哲もない姿なので、見なくて大丈夫です。


鷲尾美麗:みはちゃんのU-ch内のムービーにアップされてます。


河井未翼:もう、みれいちゃん!(困惑)


鷲尾美麗:検索すれば出てくるんだから。減るものじゃないので、いいことにしなさい。(微笑み)



//

  この花は、美麗に教わった未翼のムービーにたどり着く。



~宴会場

人見この花:すごい! 20,000,000回以上再生されてる。


鷲尾美麗:全然大したことないですよ。みはちゃん、U-chライブストリーミングすると、1,000,000人以上の視聴者がいるので、公開から3週間でそのくらいなら、毎日1回くらいしか視聴していない計算。みはちゃん初の絶対領域公開なのに、ありがたいのは思わんのか?(笑)


人見この花:(再生する)えっ!? 脚、ながっ!! 腰の位置、高過ぎません?


鷲尾美麗:ショートレングスをみはちゃんが着ると、ミディアムレングスになる。(笑) そして、もうひとつ。ウエストの細さ。お尻は小さいけど、どれだけスタイルいいのって話。


河井未翼:私よりスタイルいい人もたくさんいます。かわいい人もきれいな人もたくさんいます。なので、そんなに褒めないでください。


人見この花:みはちゃんがa-Force OKAYAMAにいたら、全員公開処刑レベル。(冷汗)


河井未翼:a-Force OKAYAMAのみなさんはDoll系ということもあって、全員がスタイルいいので、公開処刑にはなりません。


鷲尾美麗:公開処刑、気持ち分かります。(頷く)


人見この花:みれいさんが公開処刑されることなんてあるんですか。


鷲尾美麗:U-chライブストリーミングで現役高校生のみはちゃんと一緒に、制服のコスプレさせられました。まあ、したから、私がここにいられるんですけども、…(苦笑)


人見この花:みはちゃんに公開処刑されると人気が出るんだったら、公開処刑されてもいい。


今井莉世:切実な感じですね。


人見この花:それはもう。a-Force NIIGATAさんは3人もランクインされて、ふたりは "VENUS 12"  私たち、1年遅れで発足して、まだ誰も "VENUS 12" に届いていないんです。お荷物なんていわれないように頑張ってはいるんですけど、結果が出せなくて困っているんです。


池谷星南:(席に戻る)お悩み相談ですか。


人見この花:みはちゃんに赤面しているところを見られるのが恥ずかしくて、どこに行ってたんですか。


池谷星南:なっ、… (冷静を装い)ただのお花摘みです。いけませんか。


今井莉世:みれい、ロリィタのときは、トイレじゃなくて、お花摘み。忘れちゃだめよ。(笑)


鷲尾美麗:りせりせ、ここは邪魔しないの。


人見この花:みれいさんがみはちゃんと一緒に制服コスプレして公開処刑させられて、それで人気が出たらしいので、私も公開処刑されたいという話をしていました。


池谷星南:そういうお話されていたんですね。わたくしたちBorder Lineとa-Force NIIGATAさんで、いつかロリィタコラボできたらいいですね。コラボした瞬間に、わたくしたちの存在意義が失われて消滅しちゃうかもしれませんけども。(苦笑)


人見この花:星南さん、抜け駆けは止めてください。


池谷星南:こういうことは、先にやったもの勝ち。(笑) 本気でなくてもいいので、頭の片隅にでも覚えておいていただけたら嬉しいです。


今井莉世:ほかのグループと一緒にコラボするということは、これまでやったことないので、フロントに要望として出しておきます。


池谷星南:ありがとうございます!(笑顔)


人見この花:羨ましい! 私たちa-Force OKAYAMAともぜひコラボお願いします。


今井莉世:分かりました。伝えておきます。


人見この花:ありがとうございます。(微笑み)


可奈子:お話も楽しいと思うけど、食べないんだったら、私がみんな食べちゃうよ。(笑)


人見この花:これから食べますけど、可奈子さんは食べ過ぎなんじゃないですか。


可奈子:私は容姿で売ってる訳じゃないし、ここ以外でダンスすることないから、体重気にする必要ない。だから食べる。(笑)



//

  可奈子においしいものを食べられまいと、未翼、莉世、美麗、この花、星南も会話をほどほどにして、食べることに専念する。お腹が満たされると、会話が戻ってくる。



~宴会場

池谷星南:(未翼のところにやって来て)未翼お嬢さま、お願いがございます。


河井未翼:何でしょうか。


池谷星南:セルフィーを撮らせてくださいませ。


河井未翼:いいですよ。私に最初に声をかけてくれたということは、私推しということでいいですね。せな、逃げずにはっきり答えなさい!(微笑み)


池谷星南:あ、… あの、…(だんだん顔が赤くなる)


河井未翼:答えてくれないということは、私が嫌いということでいいですか。それでもセルフィーを撮りたいと?


池谷星南:す、… す、き、… 大好きです。未翼お嬢さまのことが大好きでございます。(顔が真っ赤になる)


河井未翼:それなら結構です。撮りましょう。(微笑み)



//

  ポーズやアングルを変えながら、未翼と星南はスマートフォンでツーショット撮影する。



~宴会場

鷲尾美麗:全身のスチル、撮ってあげましょうか。


池谷星南:美麗お嬢さま、おことばに甘えてお願いします。終わりましたから、美麗お嬢さまもご一緒にセルフィーを撮らせてくださいませ。


鷲尾美麗:まずは、撮影する側から。そして、みはちゃんのおまけで一緒に撮影ですね。(微笑み)


池谷星南:美麗お嬢さまがおまけなんて、滅相もありません。アイドル界至上のおふたり、未翼お嬢さまも美麗お嬢さまもお慕いいたします。


鷲尾美麗:まあ、よしとしましょう。(微笑み)


今井莉世:みれい、たまには謙遜くらいしなさい。(苦笑)



//

  美麗は、未翼と星南の全身のツーショットを撮影する。そして、自身も加わり、ポーズを変えながら、スリーショット撮影する。



~宴会場

鷲尾美麗:りせりせ、私たちのスリーショット撮ってくれない?


今井莉世:いいけど、私には、せなちゃんからお声はかからない訳ね、…(苦笑)


池谷星南:大変失礼を。莉世さんも、ついでに一緒にスチル撮らせてください。


今井莉世:ついで、…(苦笑)


池谷星南:莉世さんもロリィタやゴシックロリィタを披露してくれれば、お嬢さま呼び対応いたします。


今井莉世:それでもふたりとの格差を感じるんだろうな、…


池谷星南:アイドル界至上のおふたりとでは、致し方ありません。


今井莉世: "VENUS AWARD" のランキングで判断していないことは評価しよう。


鷲尾美麗:りせりせ、は・や・く!


今井莉世:はい、はい。撮って差し上げますよ。(苦笑)



//

  莉世は、未翼、美麗、星南の全身のスリーショットを撮影する。そして、自身も加わり、ポーズを変えながら、フォーショット撮影する。



~宴会場

人見この花:この流れで行くと、私と可奈子さんにはお声かからなそうだから、ボウリング大会の優勝チームと2位チームの撮影ということで、仲間に加えて貰えませんか。


今井莉世:私たちは大丈夫ですけど、せなちゃんしだい?


池谷星南:そうですね。ボウリング大会の記念ということで撮っておきましょう。



//

  可奈子、この花も加わり、撮影は続く。この様子を遠くのテーブルから見ていたAfroditiのみやびがやって来る。



~宴会場

みやび:私もみはちゃんと撮りたいから仲間に入れて~(笑顔)


河井未翼:いいですけど、その前に、ボウリング大会1位と2位の私たち6人を撮っていただけませんか。


みやび:OK!



//

  みやびは、目録を手にした両チームのかしこまった姿、喜んだ姿などを撮影する。



~宴会場

みやび:さあ、終わったから、みはちゃん、セルフィー撮ろう!(笑顔)


池谷星南:(間に割って入り)事前に注意喚起いたします。未翼お嬢さまに、むやみにボディータッチしてはいけません。未翼お嬢さまが嫌がるポーズを強要してはなりません。よろしいですね。


みやび:もう! せなちゃんは、昨日も今日もみはちゃんのことを未翼お嬢さまって、みはちゃんの何なのよ!(怒り心頭)


池谷星南:今は、未翼お嬢さまと美麗お嬢さまの従者でございます。


みやび:みはちゃ~ん。(一歩横に出て助けを求める)


河井未翼:普通の庶民でしかないんですけど、そういう関係になっちゃいました。確定事項なので、諦めてください。(苦笑)



//

  みやびは、星南を疎ましく思いつつも、未翼とのセルフィーを撮り始める。



~宴会場

河井未翼:みやびさん、笑ってください。(微笑み)


みやび:はーい。ニコッ!(微笑み) ねぇ、みはちゃん。私のこと、さん付け止めない? a-Force NIIGATAさんだと、年上、先輩でもちゃん付けでしょ。みやびちゃんって、呼んでくれないかな。いや、待って。みーちゃんって呼んで!


河井未翼:みやびさんもそんなこと求めてくるんですか。(困り顔)


みやび:みはちゃんの困った顔もかわいいね~(笑顔)


池谷星南:未翼お嬢さまの困った表情、かわいすぎて悶絶いたします。(微笑み)


みやび:(軽蔑の眼差しで)せなちゃん、割り込んでこないで。


池谷星南:わたくしのことはお気になさらず。続けてください。(微笑み)


みやび:気になるつぅ~の!(不満たらたら)


河井未翼:みやびさん、スマイル、スマイル。(微笑み)


みやび:ちがう! みやびさんじゃなくて、みーちゃん!


河井未翼:はい、はい。みーちゃんですね。(美麗に困惑の表情を見せる)


鷲尾美麗:人気者は大変ね。(苦笑)



//

  美麗や星南が監視する中、未翼とみやびはセルフィーを撮り終える。



~宴会場

みやび:みはちゃん、連絡先交換しよう!


池谷星南:未翼お嬢さま、わたくしともぜひ交換お願いします。(微笑み)


河井未翼:みれいちゃん、どうしたらいいですか。


鷲尾美麗:交換すること自体は問題ありませんが、みはちゃんは現役高校生で学業もあります。連絡する時間帯などを配慮してください。


池谷星南:かしこまりました。


みやび:毎日連絡したり、すぐ返信を欲しがったりする重い女じゃないので、安心してね。


河井未翼:それだと助かります。(微笑み)



//

  未翼は、みやび、星南と連絡先を交換する。



~宴会場

池谷星南:美麗お嬢さまも交換お願いできませんか。


鷲尾美麗:私の連絡先いる? 推しはみはちゃんでしょ。


池谷星南:アイドル界至上のおふたり、甲乙つけられるものではございません。


鷲尾美麗:私とみはちゃんのセットで一緒にスチル撮る。連絡先を交換するっていうミッションを自分に課していたりする? Border Lineのメンバーに私たちと仲よくなった証拠見せたいとか、そういうことかな?


池谷星南:あっ!? いや、… 仲よくしたい気持ちは当然ありますが、なんといいますか、来年もランクインできるか分からない身なので、できることなら早いうちにと思ってのことです。


鷲尾美麗:おまけ感あるけど、まあ、いいことにしますか。


池谷星南:美麗お嬢さま、ありがとうございます。(微笑み)



//

  美麗は、星南と連絡先を交換する。ほかのテーブルでも食事を済ませ、メンバーの交流が進んでいる。未翼たちのテーブルには、みやびのあともYuiYuiのふたり、a-Force AICHIのふたり、a-Force OSAKAのふたりも訪れる。



~宴会場

はるか:(遠目で未翼たちのテーブルを見やり)あの子のどこがそんなにいいのよ?


あんり:若い、かわいい、顔が小さい、背が高い、脚が長い、スタイルがいい、ウエストも細いらしい、歌える、踊れる、謙虚、ガツガツしてない、女の子にも人気があるらしい。こんなところ。


はるか:呆れた。あんり、あの子のことを研究でもしているの?


あんり:現在進行形じゃなくて、過去形だけどね。 "VENUS AWARD" の期間中にメールの返信で、みはちゃんの存在を知って、そこで調べたら、みはちゃんの注目ポイントやいいところの紹介が次から次へと出てくる。ピュアだとか、ハイスペックとか、いろんなことばでみはちゃんをいい表そうとしていて、それだけ注目されている証拠だと思う。メディアもアイドル界の新星として注目しているみたいだから、はるかも気になるんでしょ?


はるか:特に目立った実績もないアイドル1年目を終えたばかりの子、しかも、地方組の子が "VENUS AWARD" 3位って、世も末!


あんり:それじゃあ、みはちゃんのU-ch視聴者1,000,000人は、決まり切った閉塞感あるアイドル界に救世主を見出したい集団ということなのかもね。(微笑み)


はるか:いい例え話ができたとでも思ってるの? むかつくだけなんですけど。


あんり:はるかは、みはちゃんのことを石炭だと思ってるかもしれないけど、少なくともみはちゃんのファンだったり、U-ch視聴者はダイアモンドだと思ってるはずだよ。


はるか:もう、例え話はいいから! あの子のことを持ち出すんじゃなかった。


あんり:ライバル視するのはいいけど、敵視しないでね。


はるか:地元札幌での "VENUS PROJECT" ライブで、あの子に格の違いを見せつけてあげる。






【 28 】



//

  同じ日の午後、a-Force NIIGATAの五十嵐GMに、相談したいことがあると声をかけられた椎名は事務所に出向いている。招き入れられた会議室には、プロジェクターが用意されている。



~事務所

五十嵐あゆ:川原さん、わざわざお越しいただきありがとうございます。


川原椎名:時間はある程度融通が利くので、お気になさらず。



//

  GMの五十嵐は、椎名の飲み物の好みを確認し、スタッフにアイスコーヒーを用意させる。



~事務所

五十嵐あゆ:では、お飲みいただきなからご意見ください。


川原椎名:その前に、hareitionの印税の件、本当に私がいただいてもよろしいのでしょうか。


五十嵐あゆ:今後も企画、提案していただけたらと考えています。途中からというのも変ですので、最初からがいいとの判断です。


川原椎名:それでは、素人の浅知恵でもよろしいのであれば、今後も提案させていただきます。


五十嵐あゆ:未翼と美麗のユニット名称hareitionだけでなく、写真集の原案も浅知恵レベルとは思っておりません。今現在、何か提案できるものがおありでしたら、ぜひお聞かせください。


川原椎名:あります。


五十嵐あゆ:それでは、せっかくなので、私からの件は後回しにして、お聞かせ願えますか。


川原椎名:アーティストブックの発売が発表されました。次期アーティストブック、メンバーが撮影したセルフィー日記はいががでしょう。ページのデザインを黒板のようにして、日付と日直、撮影者と短い日記執筆者のメンバー名を記載。スチルがメインで、短い日記が添えられる。こんなイメージです。5月の "VENUS AWARD" 明けに遡って起点とし、来年の "VENUS AWARD" を終点とする。メンバーの普段の素顔だったり、1年間の変化などを知ることができて、ファンには嬉しい1冊になると思います。


五十嵐あゆ:メモさせていただきます。これは、1日1ページを想定されていますか。


川原椎名:限定せず、複数ページのときもあれば、ない日があってもいいと思います。メンバーの行動パターンが特定されても困るでしょうし。


五十嵐あゆ:それは留意すべき点なので、こちらとしても助かります。あと、a-Force NIIGATAとしての活動や仕事のみを対象とするのか、プライベートまで対象とするのかですが。


川原椎名:プライベートがあって、メンバーへの親近感が湧くこともあるので、プライベートは含めるべきと思います。かといって、U-Timeに掲載したプライベートなスチルをそのまま掲載するのは、新鮮味にかけます。プライベート過ぎる家族や友人を掲載するのも考えものです。ページ数との絡みもあるので、バランス感覚が必要だと思います。


五十嵐あゆ:分かりました。アーティストブックについては、こんなところでしょうか。


川原椎名:そうですね。


五十嵐あゆ:ほかにご提案いただけるものはありますか。


川原椎名:hareitionの写真集でしたら、次作を紅葉シーズンに魚沼エリアで。その次を冬のスキー・スノーボードシーズンに魚沼エリアか妙高エリアで。シリーズ完結編を桜のシーズンに高田城址公園の観桜会で。


五十嵐あゆ:3部作ならぬ、4部作をお考えなのですね。ほぼ1年に渡っての作品になります。そこまでのニーズがあるといいですね。


川原椎名:後日公開されるショートムービーによって、2段ロケットのように1st写真集がロングランで爆発的に売れることを期待しています。実は、桜で完結編といいながら、特別編も考えています。長岡まつり大花火大会です。先日撮影したショートムービーのストーリー展開を把握できていませんが、アドリブのセリフで最後までムービーとしてもストーリーがつながったらいいなと思っています。そうすれば次作で、その点を考慮するようにふたりにはいうつもりです。


五十嵐あゆ:ショートムービーの件、未翼から何も伺ってないのですか。


川原椎名:はい。聞きそびれたままになっています。


五十嵐あゆ:写真集のラスト、砂浜で日没を眺めるふたりになっています。ショートムービーでは、このあとにもう少しあって、美麗が未翼にキスしようとして、未翼が寸前でこれに気づいて、頭を後方に動かして回避。美麗が諦めて終わる。このような流れになったと、マネージャーから報告を受けています。


川原椎名:どういう台詞のやり取りがあったのか不明ですが、次作を期待させる雰囲気はありそうですね。


五十嵐あゆ:美麗には、未翼とラストシーンで絶対にキスするなといっておきましたので、そこだけは守ることができたようです。


川原椎名:みれいちゃん、アドリブの台詞も攻めたんだろうな、きっと。


五十嵐あゆ:公の場ではいちゃつかないようにいっておいたのですが、フィクションをいいことに、未翼と恋人繋ぎしたり、未翼を独り占めしたいとかいったようです。(呆れ顔)


川原椎名:みれいちゃんの欲望のままにといった感じですね。(笑顔)


五十嵐あゆ:原案の姉妹関係のようなイメージから、かなりガールズラブの世界に踏み込んだような内容になったと報告を受けています。これでよかったのでしょうか。


川原椎名:来年の "VENUS AWARD" でみれいちゃんが2位になるきっかけのひとつになってくれたら、それでいいと思っています。


五十嵐あゆ:hareitionのふたりで、1位・2位フィニッシュを期待していらっしゃるんですね。


川原椎名:期待ではなく、みれいちゃんの美貌を持ってしても、hareitionの残念な方といわれないために、2位獲得は必須条件だと考えています。それにより、a-Force NIIGATAへの注目度もより高まると考えています。


五十嵐あゆ:未翼の夢にも近づくと?


川原椎名:はい。そう思っています。


五十嵐あゆ:ほかにもご提案ありますか。


川原椎名:月ごとにひとりのメンバーが登場する4月始まりのカレンダー発売。使用後は、ミシン目で切り離すとポスターにできる仕様になっていると、とても嬉しいです。


五十嵐あゆ:月とメンバーの数が一緒なので、ひとり1回ずつ登場できるのでいいですね。これは、来年の11期から毎年発売できるようにします。まだほかにありますか。


川原椎名:提案ではなく、要望や質問でしたらあります。僕だけ話してても悪いので、相談ごとをお聞かせくださいませんか。


五十嵐あゆ:それではこちらを。



//

  五十嵐GMは、タブレットに用意したデータをプロジェクターで映し出す。


  ・未翼の未来


  ・複数メンバーの休演対応


  ・全国展開



~事務所

五十嵐あゆ:この3点についてご意見を伺いたいと思います。まず、未翼についてです。将来の夢への一歩として、ソロシングルリリースの打診をしたことがあるのですが、a-Force NIIGATAの秋シングルでP0に立てるように専念して、その売上に成果が伴ったら、そのときに考えますとの回答でした。a-Force NIIGATAを牽引する存在として、来年の "VENUS AWARD" 1位を目指す意味でもソロシングルリリースは、実績づくりによいと判断しての打診でした。現状、秋シングルのP0決定前で、どう展開するのか分からない状況ですが、親族、ファンのひとりとして未翼の未来について、どう考えですか。


川原椎名:ソロシングルリリースについては、みはちゃんから聞いています。みはちゃんの考えに同意するとも伝えています。


五十嵐あゆ:先ほどのお話からすると、ソロシングルリリースなくても来年の "VENUS AWARD" 1位は手中にあるとお考えのようですけど、個別の活動を何か期待してらっしゃいますか。


川原椎名:今年は、いろんなことに慣れる、吸収する1年にして欲しいと思っています。個別の活動は、何かできたらいいなと思いますけど、特にこれをやって欲しいというものは考えていません。


五十嵐あゆ:現段階では、a-Force NIIGATAとhareitionの活動に集中といったところでしょうか。


川原椎名:7月半ばまでは、 "VENUS PROJECT" の活動もそうですね。


五十嵐あゆ:おっしゃる通りです。では、近未来については、どうお考えですか。


川原椎名:高校3年生の来年までは、仕込みの時期と考えています。来年、ソロデビューとコンサート。社会人となる2年後に全国ツアーとドームコンサートができるようになったらいいねと、みはちゃんには伝えてあります。


五十嵐あゆ:ロードマップをお考えなのですね。それを聞いた未翼は、何かいっていましたか。


川原椎名:実は、3年後以降のことも使えていまして、壮大過ぎるといわれて、聞かなかったことにするといわれました。


五十嵐あゆ:ということは、全国アリーナツアーやドームツアーもロードマップに含まれたのですね。(微笑み)


川原椎名:アジアでのコンサートやアジアツアーも含みましたので、呆れられたんだと思います。(笑顔)


五十嵐あゆ:確かに、アジアツアーまでとなると、スケールが大きすぎます。(微笑み) ここまでのロードマップは、a-Force NIIGATA在籍期間中のものですか。


川原椎名:そうです。実現すると、国民的アイドルにとどまらず、アジアの歌姫になっていることになりますね。


五十嵐あゆ:これは、私たちが尻を叩かれた気分になります。(苦笑)


川原椎名:パフォーマンスする者だけでは、国民的アイドルやアジアの歌姫にはなれませんから、制作、マネージメントの力も問われることになります。期待させていただきます。


五十嵐あゆ:日本のミュージック発信地がすべて東京である必要はないと思っています。 "a-Force PROJECT" は、地方にエンターテイメントを根付かせる試みであると私は考えていまして、文化として定着させるためにも、これからの舵取りがとても重要だと考えています。


川原椎名:新潟にアイドル、音楽文化を定着させるために、みはちゃんを使ってください。みはちゃんのようになりたいというフォロワーもたくさん現れるでしょう。それがスターの証。みはちゃんもそれを拒むものではないはずです。


五十嵐あゆ:未翼のようになりたいとa-Force NIIGATAに入団した子が、未翼を超える存在になるかもしれませんが、それでもよろしいですか。


川原椎名:そうだとしたら、みはちゃんがそこまでの能力と運しか持ち合わせていないということ。仕方ありません。


五十嵐あゆ:特定のメンバーに肩入れしすぎとはいわれたくないので、そういっていただけると、少しは気が楽になります。でも、まずは未翼をトップスターに押し上げるところからですね。


川原椎名:みはちゃんのために、いい楽曲を用意してください。お願いします。


五十嵐あゆ:心得ていますのでご安心を。未翼については、川原さんのロードマップに沿う形で進めさせていただきたいと思います。


川原椎名:アジアツアーまですべて?


五十嵐あゆ:どうでしょう。ロードマップとタイムラインが一致できるのは、最初の方の全国ツアーやドームライブまでかと。海外のニーズは未知数すぎて、何も申しあげられません。


川原椎名:そうですよね。夢物語にそう真剣には付き合えませんよね。失礼いたしました。


五十嵐あゆ:では、次の休演対応です。これまでは、事前に3人が休演となる場合は、公演を実施していませんでした。今後、複数メンバーの休演が常態化することが考えられます。セットリストに手を加えるなど、対策として何かできることはありますでしょうか。


川原椎名:その前に、8月からのユニットシャッフル、「Swan ~届かぬ想い~」を次に誰が担当するか。その問題に片がついたのでしょうか。


五十嵐あゆ:その件、ご存知でしたか。(苦笑) メンバーには、まだ調整中と伝えていますが、「Swan ~届かぬ想い~」については、衣装の問題に加えて、誰もやりたがらないので、シャッフルしないことにしました。未翼が休演のときは、美咲と遥香のふたりに任せることにしました。


川原椎名:GMに全権があるとはいえ、いいのですか。


五十嵐あゆ:3人が適役で、かつ、高いパフォーマンス力を見せつけられると、ほかのメンバーも比較対象となることが嫌なのでしょう。仕方ありません。


川原椎名:では、ユニットシャッフルの件はいいとして、本題ですね。休演人数にもよりますが、舞台やドラマ出演などで長期離脱となる場合、毎公演少ない人数での公演は、ファンとしては寂しい限り。そこで提案です。エンターテイメントスクールの生徒に出演して貰うというのはどうでしょう。生徒がメンバーと同じステージに立てる。パフォーマンスやモチベーションの向上につながり、よりアイドルを目指したいと思ってくれるのではないでしょうか。それが先のアイドルの文化を定着させることにもつながると思います。


五十嵐あゆ:スクール生の起用、… 報酬、条件、怪我をした際の補償など、越えなければならない問題が多そうです。


川原椎名:付け加えると、スクール生が何回ステージに立ったら、a-Force NIIGATAのオーディションに最終審査から参加できるといったおまけがあったら、やりたいと思うスクール生はたくさんいると思います。


五十嵐あゆ:追加オーディションで入団した6人のうち、新潟校出身者は零だけ。う〜ん。(考え込む)


川原椎名:お気に召さないアイディアでしたか。


五十嵐あゆ:そんなことはありません。ただ、スクール生のひとりひとりに目標があり、アイドルになることが目標とは限りません。アイドルが目標だったとしても、a-Force NIIGATAらしい生徒とは限らないのが難点です。スクールの指導者や私たちから、あなたは対象、あなたは非対象とはいえません。


川原椎名:(あっさりと)そうですか。ルックス面、礼儀、ことば遣いなど、a-Force NIIGATAの基準をクリアした生徒から、ステージに立ってみませんかと声をかければいいだけのことだと思います。


五十嵐あゆ:そこから審査するということですね。それなら大丈夫か、… いや、それ以前に、ルックスでクリアできるスクール生がいない予感。


川原椎名:ルックス重視のa-Force NIIGATAなので、レベルが高すぎていませんか。女の子、お化粧で変わりますよ。


五十嵐あゆ:化粧でも変わりますし、中高生くらいは、顔もかなり変わるんですね。今度、メイクアップアーティストとスクール生の練習を見に行ってみることにします。


川原椎名:スクール生が何人か集まった下部組織みたいなものができたら、ファンの楽しみも広がるかもしれません。


五十嵐あゆ:下部組織、考えたこともなかったですね。ニーズがあるでしょうか。


川原椎名:僕にもさっぱり分かりません。ただ、全国ツアーで劇場を長期に空けることになった場合、下部組織が代替公演を行うのもありかなと思いまして。


五十嵐あゆ:ニーズを探りつつですね。休演対応についてのご提案は、こんなところでしょうか。


川原椎名:こんなところです。


五十嵐あゆ:では、最後の全国展開についてです。こちらのグラフをご覧ください。



//

  グラフは、 “VENUS AWARD” 期間中に全メンバーのU-chライブストリーミングを視聴したログインユーザーの視聴時間を都道府県別に集計したもの。人口の多い三大都市圏で突出して伸びているほか、地元の新潟や隣接各県、a-Force OKAYAMAの岡山県あるでも伸びている。



~事務所

五十嵐あゆ:これを参考に、今年のツアーを決定しました。メンバーには伝えていますが、一般への情報公開は8月の予定です。今年のツアーでは、新潟県内3カ所、新潟市、長岡市、上越市。そして、隣接県5カ所、山形市、会津若松市、前橋市、長野市、富山市。そして、東京都内。加えて、名古屋市、大阪市、岡山市でもコンサートを実施することにしました。


川原椎名:新潟と三大都市圏では、アリーナでの副数日開催でも集客可能だと思いますけど、ホールツアーですか。


五十嵐あゆ:ホールツアーです。ツアーファイナルで新潟でもう一度やることにしていまして、新潟みなとコンベンションセンターで行う予定です。東京、名古屋、大阪は、今年の状況を踏まえ、来年にアリーナで開催できたらと考えています。


川原椎名:それですと、1週遅れに思います。 "VENUS AWARD" 明けの劇場公演の倍率が40倍以上でしたよね。250人のキャパに対して、20,000人以上。ツアーでは、追っかけしたいファンもいるでしょういから、三大都市圏のアリーナは必須。もう、会場の確保ができませんか。平日でも埋まりますよ。


五十嵐あゆ:未翼のロードマップといい、強気の見積もりですね。


川原椎名:名古屋、大阪は、出張公演の申込倍率を見て、ツアーの会場選択に失敗したと後悔しないようにしてください。


五十嵐あゆ:甘いですかね。


川原椎名:そう思います。もうしばらくの間、会場変更が可能ならば、hareitionの写真集予約状況で判断するのもいいかもしれません。


五十嵐あゆ:写真集の予約状況から判断ですか、… ひとつの判断材料としてはいいかもしれません。川原さんは、写真集の売上、どの程度を想定されているのですか。


川原椎名:プロデューサーの大竹さんとお話させていただいたときには、120,000部と720,000部のふたつの数字を伝えてあります。これは、Afroditiの3人の "VENUS AWARD" での総獲得ポイントと、U-chの視聴者数をhareitionのふたりと比較して計算した数字です。


五十嵐あゆ:720,000部なんて、天文学的な数字で想像もつきません。


川原椎名:Afroditiを超えて欲しいと願ってますので、720,000部が僕が合格ラインとしている最低の数字。ふたりの両表紙で、両サイドからそれぞれのストーリーが展開。ストーリーがひとつになったあとも、ふたりのフォトグラファーによる世界観で紡いでいく。あとで公開されるショートムービーも売上の後押しをしてくれて、ロングランで売れ続けてくれたらいいなと思います。できることなら、1,000,000部の大台に乗って欲しい。そして、2nd写真集に続くという流れになったら、僕としては最高です。


五十嵐あゆ:1,000,000部、… 最終売上の話は置いておいて、予約状況は参考にさせていただきたいと思います。


川原椎名:北海道や九州でライブしなくて大丈夫ですか。ホールならいけると思います。


五十嵐あゆ:グラフのデータからすると、北海道や九州でも可能と思っています。ただ、L-Platz NIIGATAや姉妹グループの劇場に足を運んで貰いたいという裏テーマというものがありまして、開催地を決めました。


川原椎名:名古屋、大阪、岡山の姉妹グループのファンを総取りするという裏テーマではなくて?(笑)


五十嵐あゆ:川原さん、意地悪ですね。(微笑み) a-Force NIIGATAのことも知って貰えたら、そのくらいの気持ちです。L-Platz NIIGATAは遠くて来ることができなくても、姉妹グループの劇場に足を運んでくれたら、地方組として相乗効果も期待できます。将来的に岡山以降の5つ目、6つ目のグループ誕生につながればとも考えています。


川原椎名:姉妹グループのことも考慮されているんですね。


五十嵐あゆ:東京事務所と地方組では、割り振られる予算も異なります。互いに協力できる部分は協力して、地方にもっと予算を配分して貰えるように実績も示していかないといけないのです。


川原椎名:その予算という点においては、 "VENUS AWARD" でみはちゃんが3位に入って、来年度予算に好材料になったということですね。


五十嵐あゆ:細かいところまでは申し上げられませんが、そういうことになります。ツアー関連以外で何かありますか。


川原椎名:hareitionに限定しませんが、近い将来にa-Force NIIGATAのメンバーが全国ネットのテレビやラジオ、CMに出演できるといいですね。全国ネットで冠番組を持つのは難しいかもしれませんが、U-chのエンタメビジョンに冠番組を持つことができたらいいなと思います。


五十嵐あゆ:出演する番組については、内容を吟味したいと思っています。冠番組は、地方のハンデをどう克服するかだと思います。


川原椎名:地方のハンデというと、出演や収録のたびに遠征が必要ということですね。


五十嵐あゆ:特定のメンバーが、レギュラー出演のために東京に出向くのは構いませんが、メンバー全員が毎週となると困りものです。地元ローカル局制作で地元収録がベストです。


川原椎名:エンターテイメント専門学校新潟校に協力を請うことはできませんかね。


五十嵐あゆ:単発でしたら可能かもしれませんが、定期的な番組になると難しいと思います。今回のアーティストブックのように、メンバーだけでやってしまうのもありではないかと思っています。


川原椎名:メンバーが企画から撮影、編集まで行うということですか。


五十嵐あゆ:コンスタントに制作できないでしょうし、クオリティーも望めませんので、エンタメビジョンの番組としても難しいと思いますけど。


川原椎名:a-Force NIIGATAがアイドルのトップグループにならないと、思うようにならないことが多そうですね。


五十嵐あゆ:トップグループになったとしても、意のままにはできないと思います。


川原椎名:そうですか。難しい世界ですね。


五十嵐あゆ:全国展開について、この辺でよろしければ、川原さんのご要望やご質問を伺います。


川原椎名:要望は、メンバーの安全確保です。今回の "VENUS AWARD" によって、ファンが急増しています。それに伴って、ファンにふさわしくない輩も増えていると予想されます。メンバーやメンバーの家族の住んでいるところを見つけ出して、つきまとったり、隠し撮りしたりといった迷惑行為を起こさないためにも、メンバーとファンの関係を今一度見直すときだと思います。罰則を含めたルール改正をお願いします。ファンの迷惑行為により、メンバーが辞めることのないよう、メンバーにも安全のための総点検をお願いします。


五十嵐あゆ:確かに、大都市圏とは異なり、規模の小さい新潟市内では、メンバーと遭遇することもあります。早急に見直しすることにします。未翼には、この件で何か伝えていますか。


川原椎名:ひとりでは外出しないようにいってあります。便利なところに住んでいますので、ひとりでちょっとそこまで買い物して、すぐに戻って来るといったことをさせないように、口酸っぱくいわないと思っています。


五十嵐あゆ:今のところは大丈夫ということですね。


川原椎名:はい。セキュリティーの面では、実家やひとり暮らししているメンバーが心配です。ファンが押しかける、遭遇することがないといいのですが。


五十嵐あゆ:住まいから安全確認が必要ということですね。


川原椎名:一般の賃貸物件ですと、オートロックである程度の安全は確保できたとしても、隣人は選べませんからね。寮のように関係者ばかりだと安心ですけれど。


五十嵐あゆ:全員を寮住まいにさせることができたら、管理する側としては安心できますが、必要以上に束縛することもできません。そうでなくても、決まりごとが多くて、不満を持っているメンバーもいるので、理解を得ながらということになります。


川原椎名:a-Force NIIGATAのイメージを崩さないために、洋服や化粧、しゃべり方から仕草まで、いろいろあるようですからね。窮屈感があっても仕方のないことだと思います。


五十嵐あゆ:メンバーが辞める事態にならないよう、早急に安全面の見直しをしていきます。


川原椎名:最後に質問よろしいですか。


五十嵐あゆ:何でしょうか。


川原椎名:メンバーの尻尾切り。なんとかならないものでしょうか。


五十嵐あゆ:まどかやりりあのことですか。それでしたら、答えはNOです。芸能人を育成するという "a-Force CONCEPT" の精神からしても、成長、グループに貢献のない者には、グループにいる資格はありません。姉妹グループで、ほかにこのようなルールを設けているところはありませんが、これがあるからこそ、グループの活性化ができていると確信しています。


川原椎名:そうだとしても、初回契約が2年契約、それ以降が1年契約というのは、とても厳しいと思います。石の上にも三年ということばがあるように、もう少し長い目で見てもよいのではないかと思います。


五十嵐あゆ:ふたりともオープニングメンバーなので、3年は経過していますけどね。いずれにせよ、このルールを変えるつもりはありません。向上心があり、ファンを引き付ける魅力を持った者だけが残ることで、グループの進化は継続できます。


川原椎名:メンバーとの個別面談を比較的こまめに行なっているようですね。尻尾切りは、営業成績の悪いメンバーに解雇通知することに等しいと思っています。面談では、営業成績の詳細について、劣っている項目や数値をメンバーに伝えているのでしょうか。まどちゃんやりりあちゃんは、劣っている項目はある程度把握していても、劣っている分の数値、不足の売上金額やら、不足しているファンの新規獲得数といったものまでは把握していません。明示されていないと思いますが、これでメンバーがすぐに改善できるとは思いません。非情ではありませんか。


五十嵐あゆ:生々しいので細かい数字までは伝えていません。不足している数字分だけ改善して、それで満足して欲しくないという気持ちもあります。例えば、Tシャツ200枚売り上げたら、ポジションを解消できる。そう分かれば、最小限のTシャツ200枚を売り上げることだけに執着してしまう。それではだめだと思っています。


川原椎名:メンバーに細かい数字まで開示する予定はないということですね。残念です。


五十嵐あゆ:メンバーを思う気持ちはありがたく思います。でも、ここは競争社会です。停滞は後退に等しいとも思っています。ご理解ください。ほかにご質問は?


川原椎名:10期生でみさきちゃん、はるちゃんが入団しました。かわいい系メンバーは初めてです。ルックスの評価基準や比重が変わったのでしょうか。


五十嵐あゆ:かつては、顔だけ、きれいなだけのグループといわれていましたからね。(苦笑) シングル表題曲のPCは、パフォーマンス75%、人気25%で評価しています。口外しないでいただきたいのですが、オーディションについては、各項目に割当てられた点数を加算した合計値を評価としています。追加オーディションが始まった8期生の紗羅のときから何も変わっていません。ただ、オープニングメンバーオーディションのときの評価基準とは大きく異なっています。


川原椎名:きれい、かわいく関係なく、ルックスがよければ採用されるということですね。ルックス項目の点数は大きいんでしょうね。(微笑み)


五十嵐あゆ:お答えいたしかねます。(微笑み)


川原椎名:身長項目の点数もあるんですよね? 160cm以上あると何点とか。


五十嵐あゆ:これまで160cm未満のメンバーはいませんでしたが、これは偶然です。各項目は加点のみで、減点はありません。ただ、身長の凸凹をなるべく避けたい思惑がありますので、比例加点ではありません。


川原椎名:ルックスがよくて、平均身長以上が必須条件だと思っていましたが、そうではないのですね。各項目に割当てられた点数の合計で評価することにしたということは、顔だけ、きれいなだけのグループからの脱却を考えての判断ということでしょうか。


五十嵐あゆ:それだけではありませんが、そう考えていただいても差し支えありません。


川原椎名:今後はますます注目されるグループになるでしょうから、みさきちゃん、はるちゃんのようにパフォーマンス力も兼ね備えていないと、メンバーになるのは難しくなりそうですね。


五十嵐あゆ:美咲と遥香は、バレエの経験が活かせるダンスでは魅せてくれますが、アイドルのダンスはこれからです。オーディション時点の実力と将来性を評価するのは、とても難しいことです。当たりを見逃してしまうこともあるでしょうし、ハズレを引いてしまうこともあると思います。


川原椎名:ハズレの可能性もあるから、尻尾切りがある。そういうことですか。


五十嵐あゆ:こちらが当たりと思っても、メンバーの心変わりで夢や目標が変わり、モチベーションが低下することもあります。その影響でポジションを下げてしまうこともあります。グループの士気を低下させないためにも必要です。


川原椎名:夢のアイドルになっても、思い描いていたものと違ったりもします。難しいものですね。


五十嵐あゆ:周囲の環境がまるで変わりますからね。進路のターニングポイントとなる年齢をできるだけ排除したい意向があって、追加オーディションの対象年齢設定をしているんですよ。


川原椎名:なるほど。そういうことでしたか。でも、これまで加入期に16歳となるメンバーしか採用していないのは、年齢の点数で16歳が一番有利になっているということでしょうか。


五十嵐あゆ:年齢による点数の割当は行っていません。オーディション初参加の子が多くて、右も左も分からない子だからこその表情だったり、受け答えだったり、パフォーマンスだったりが、光るんだと思います。年齢で差別してはいませんので、そのうち、17歳の子や18歳の子が入団することもあろうかと思います。


川原椎名:隣接県メンバーについても偶然ですか。さすがにこれは点数の割当してますよね。


五十嵐あゆ:ブラックボックスに関することを少しいい過ぎてしまった感があるので、回答を控えさせていただきます。


川原椎名:隣接県出身者には、点数が加算されて有利な条件でオーディションを受けられるんですね。(微笑み)


五十嵐あゆ:絶対はありませんので、隣接県出身のメンバーが不在となることもあろうかと思います。


川原椎名:大幅な点数が加算される訳ではないので絶対ではないけれども、みさきちゃん、はるちゃんは採用となった。りりあちゃんの後継者か、まどちゃんの後継者がそれぞれの出身地と一緒だったら、やっぱりそうなんだと思うことにします。(微笑み)


五十嵐あゆ:川原さん、本当に意地悪ですね。(苦笑) 新潟県のマーケットを考えたら、どんな手段が有効か、お分かりいただけますよね。


川原椎名:失礼しました。a-Force NIIGATAが全国規模のアイドルグループになれば、それを考慮する必要がなくなります。頑張ってください。


五十嵐あゆ:ありがとうございます。ほかにご質問は?


川原椎名:根掘り葉掘り質問して、何もかも分かってしまうのもおもしろくないので止めておきます。


五十嵐あゆ:それでは、今日はこの辺で終わりにさせていただきたいと思います。わざわざお越しいただいてありがとうございました。


川原椎名:素人の好き勝手な話を聞いてくださり、こちらこそありがとうございました。(席を立つ)


五十嵐あゆ:あの、川原さん。


川原椎名:何でしょうか。


五十嵐あゆ:ご相談させていただきたいことが今後もあろうかと思います。またお声がけさせていただきますので、よろしくお願いいたします。


川原椎名:僕でよければ、気軽に声をかけてください。


五十嵐あゆ:ありがとうございます。あの、…


川原椎名:まだ何か?


五十嵐あゆ:今度、お食事しながらでもよろしかったですか。少しリラックスした雰囲気の方が、インスピレーションも湧くと思いますのでいかがでしょうか。


川原椎名:お任せします。


五十嵐あゆ:ありがとうございます。(平静を装い、心の中でガッツポーズ)






【 29 】



//

  夕食会を終えた未翼と美麗は、前日に引き続き、マネージャーの杵渕と樋口の部屋へと移動。1st写真集で気に入ったスチルにいいねをマークする作業に入る準備をしている。未翼は、通知の届いていた椎名からのメッセージに目を通す。


  五十嵐GMの相談ごと、みはちゃんの今後について、公演の休演対応について、グループの全国展開についての3件だったよ。


  みはちゃんの今後については、以前に話したことある壮大な計画を伝えておいた。(笑)


  公演の休演対応については、エンターテイメントスクール生でメンバーになりたい生徒の活用を提案しておいた。


  全国展開については、今年計画している全国ツアーの会場、特に大都市の会場が甘い見立てだったから、再考するように伝えておいた。


  僕からは、メンバーの安全確保についてお願いしておいた。詳しくは、みはちゃんが帰ってきてから話すよ。


  「連絡ありがとうございます。明日、詳しい内容聞かせてくだいね。おやすみなさい」と未翼は返信する。



~ホテル・マネージャーの部屋

鷲尾美麗:しいなさんからのメッセージに返信したの?


河井未翼:ばれちゃいました?


鷲尾美麗:昨日、連絡が来るようなことをいっていたし、今日も着信通知が届いていないかチェックしていたでしょ。そんな気になる案件なの?


河井未翼:五十嵐GMが、しいなさんに相談ごとがあるって。


鷲尾美麗:それは気になる。


杵渕巴亜斗:マネージャーの私でも気になる。


樋口美彩:五十嵐GMが、アイドル虎の穴に直接意見を求めるって、いったいどんなこと?


河井未翼:私の今後、公演の休演対応、グループの全国展開についてだったそうです。全国展開で今年のツアーについては、会場の見立てが甘いと話したみたいです。特に大都市の会場。


鷲尾美麗:私たち、開催都市は聞いてるけど、会場までは聞いてない。どこなんだろう?(杵渕と樋口を見る)


河井未翼:スケジュールに、ツアーの予定と会場くらいはもう入っていますよね。(微笑み)


杵渕巴亜斗:そんな風に誘導しないの。(苦笑) 確定情報じゃないから、まだ伝えることできません。


鷲尾美麗:そういえば、誰かさん、ビールで酔って、hareitionで写真集撮影したことをりせりせに話しちゃいましたよね!(樋口を睨む)


杵渕巴亜斗:そうなの?(樋口を見る)


樋口美彩:(手を横に振って)いった覚えない。


鷲尾美麗:ビールで酔って、記憶が飛んでるだけですよね。サイテー。


杵渕巴亜斗:どこまでバラしちゃったんだか、… りせちゃんのことだから、ほかのメンバーに漏らしたりはしないだろうけど、五十嵐GMの耳に入ったら、叱責されるレベル。(呆れる)


河井未翼:しいなさんが、大都市の会場の見立てが甘いと感じたということは、ホールからアリーナへの変更を求めたと思うんです。ホールツアーを計画しているんですよね?(杵渕を見る)


杵渕巴亜斗:(美麗と樋口にも見られ)どうして私を見るの! まだ伝えることができないといったでしょ?


河井未翼:ホールツアーということが分かれば、今のところはそれでOKですけど。


杵渕巴亜斗:みはちゃん、そんなに追求しないで。


鷲尾美麗:五十嵐GM、来年のツアーでもっと多くの都市で、大きな会場で開催できるようにといっていたから、もしかすると、今年の大都市はアリーナで、来年はドームかも?


杵渕巴亜斗:ドーム? 気が早くない?


鷲尾美麗:やっぱり、今年の大都市はホールで、来年はアリーナの予定みたいだね。


河井未翼:みれいちゃん、誘導尋問お上手。(微笑み)


杵渕巴亜斗:…(苦虫を噛む)


鷲尾美麗:みはちゃんの人気を甘く見積もってる。a-Platz NIIGATAの劇場公演が倍率上がって観ることのできないファンが多いんだから、コンサートは大きな会場でやって、ファンにたくさん来て貰って、ランクインできなかったメンバーが見つかる機会をつくることも必要だと思うんだけどね。


河井未翼:鉄は熱いうちに打てといいたいんですね。


鷲尾美麗:そういうこと。はあとちゃん、みさちゃんからも五十嵐GMにそれとな~くアプローチしてくれたら嬉しいな。


杵渕巴亜斗:求めるのがそれだけならば、最大限善処します。


鷲尾美麗:よろしく。


杵渕巴亜斗:それじゃあ、お仕事を頑張って終わらせてね。



//

  未翼と美麗は、「はーい」と声を揃えると、1st写真集で気に入ったスチルにいいねをマークする作業に取りかかる。1時間近く没頭し、未翼が作業を終える。美麗が作業を終えるまで、杵渕に情報共有して貰ったAfroditiのはるか、あんりとの楽曲「bling-bling」の振り付けビデオを再生。振り付けを確認する。しばらくして、美麗も作業を終える。



~ホテル・マネージャーの部屋

鷲尾美麗:みはちゃんに先を越されるのは想定内だったけど、それにしても早いね。


河井未翼:直感ですけどね。


鷲尾美麗:早く終わって、夕食会で観た楽曲を再確認していたのね。偉いね。


河井未翼:とても難しいので、どうやったら早く習得できるか考えていました。


鷲尾美麗:いい方法見つかった?


河井未翼:いいえ、まだ。


鷲尾美麗:しいなさんに、いい方法がないか確認してみたら?


河井未翼:しいなさん、ダンス経験者ではありませんよ。


鷲尾美麗:クロマキーとAIで映像つくってくださったりしてるから、何かいい方法を考えてくれるかもよ。


河井未翼:そうですね。相談してみることにします。


杵渕巴亜斗:話はそれで終わりでいいわね。次の指令です。


鷲尾美麗:指令?


杵渕巴亜斗:明後日の夜公演で、hareitionの活動開始の告知と1st写真集発売の情報解禁、写真集お渡し会の告知を行うことが決定しました。


鷲尾美麗:もう情報解禁ですか。


河井未翼:写真集の発売日まで、あと3週間くらいですよ。遅いくらいだと思います。


杵渕巴亜斗:撮影日から発売日まで1カ月弱だから、出版社も大変だと思う。


鷲尾美麗:明後日の告知の予定、元々決まっていたんでしょ?


杵渕巴亜斗:ふたりの作業が早く終わったので、出張公演後の予定だったものを前倒し。


樋口美彩:1週間以上早まるから、前倒し効果で予約がいっぱい入るといいね。



//

  冷めた目で樋口を見る、未翼、美麗、杵渕の3人。



~ホテル・マネージャーの部屋

樋口美彩:えっ!? 私、そんなに重罪人?


杵渕巴亜斗:レッドカードではない。イエローカードでもないかもしれないけれど、限りなくイエローカードに近い気がする。五十嵐GMのさじ加減ひとつ。


鷲尾美麗:みさちゃん、私たちの同行者から外されるんじゃない? 次から、ななちゃんが同行者になる。(微笑み)


杵渕巴亜斗:今後ずっとではないかもしれないけど、一定期間外されることはありえるかもね。(微笑み)


河井未翼:酔うと怖いですね。何が起きるか分からない。(微笑み)


樋口美彩:もう~ みんなで意地悪しないで!(涙目)


杵渕巴亜斗:みさみさをいじるのはここまでにして。(微笑み) hareitionの紹介映像、1st写真集の告知情報を共有するから、当日に補足することなどをふたりで考えておいて。


鷲尾美麗:了解。


河井未翼:シングルもそうですけど、写真集が出来上がっていないのに、発売情報だけが先行するって、違和感ありますね。


杵渕巴亜斗:何ごとにも準備期間は必要だからね。いきなり、ドン! だと困っちゃう。


河井未翼:確かにそうですね。


杵渕巴亜斗:アーティストブックの原稿も忘れずにね! 私からは以上。お疲れさまでした! 



//

  1st写真集で気に入ったスチルにいいねをマークする作業を終え、自室に戻った未翼と美麗。ひとり部屋で待っていた莉世は、酔い潰れてソファーで眠っている。



~ホテル

鷲尾美麗:私だったら、こんな姿を男性には見せたくないな。


河井未翼:起こしてあげます?


鷲尾美麗:そのうち起きるだろうから、このままにしてあげましょう。それより、みはちゃん。一緒にお風呂に入らない?(微笑み)


河井未翼:どうぞお先に。私、ダンスの件でしいなさんにお願いしておこうと思っているので。


鷲尾美麗:すぐ回答が得られるものじゃないから、連絡するのはあとでいいでしょ。せっかくの南国リゾートなんだから、一緒にお風呂に入ろうよ!(微笑み)


河井未翼:バスタブひとりサイズですから、おひとりでゆっくり疲れを癒やしてください。


鷲尾美麗:何か心配ごとある? この前、みはちゃんの家にお泊りしたときは、一緒にお風呂に入ったけど、何もなかったでしょ?


河井未翼:そうでしたけれども、家のバスタブは4人入れて大きいからいいですけど、ここはひとり用で小さいです。ひとりでゆっくり入った方が疲れが取れますよ。


鷲尾美麗:もう、みはちゃんたら、恥ずかしがらなくても、…


河井未翼:(美麗に手首を捕まれ)え~



//

  美麗が未翼の手を引っ張り、バスルームへ向かおうとする。



~ホテル

今井莉世:待ちなさい!(目をこすりながら起き上がる)


鷲尾美麗:りせりせ、起きてたの?


今井莉世:そんなことはどうでもいい。それより、みれい。大人の対応とかいっていたけど、やっぱり、みはちゃんに手を出そうとしているでしょ!


鷲尾美麗:さっきの私とみはちゃんのやり取り聞いていたでしょ? お泊まりに行ったときは、一緒にお風呂に入っても何も問題なかったんだから。なおかつ、信頼関係が深まるまで大人になるといっているのだから、何も心配することはない。


今井莉世:でも、みはちゃんは心配してる。ねっ?(未翼を見る)


河井未翼:はい。(頷く)


鷲尾美麗:そんな、みはちゃ~ん。


今井莉世:はい。みれい、ひとりでお風呂に入る!(バスルームを指差す)



//

  美麗は、反論することなく、入浴準備を済ませて、ひとりバスルームに消える。



~ホテル

今井莉世:みはちゃん、みれいとのコンビ、本当に大丈夫? 嫌っていってもいいんだよ。


河井未翼:心配ではありますけど、私への愛情がちょっと強いだけで、自制もしてくれているので、大丈夫です。


今井莉世:同期のれいちゃん、あおちゃんみたいに信頼関係が深まったら、大人の対応を取り払って、いちゃいちゃしてくるかもしれないよ。それでも大丈夫?


河井未翼:みれいちゃんは、私の憧れの人でもあるので、そうならないと信じています。


今井莉世:複雑な心理状態だね。みはちゃんにこんなことで悩んで欲しくないけど、夕食会の最後、みはちゃん撮影会みたいだったものね。同性にもモテモテだから、みれいだったら、許せる範囲なのかな?


河井未翼:さらちゃんやみやびさんみたいに、グイグイ攻めて来る人は、ちょっと苦手です。(苦笑)



//

  沖縄最後の夜、未翼、美麗、莉世の3人は、アーティストブックの原稿書きをして過ごす。






【 30 】


  昼過ぎ、沖縄でのミュージックビデオ撮影から新潟に戻ってきた未翼。新潟駅に出迎えに来た椎名とともに帰宅する。



~川原宅リビング

川原椎名:みはちゃん、夜まで時間あるけど、優先的にやっておかないといけないことある? あ、あれはだめだよ。沖縄の疲れを取らないといけないし、明日の2公演をベストなコンディションで臨まないといけないからね。


河井未翼:あれって、嫌だ~(椎名の腕をパチンと叩いて、くすくす笑う) 今すぐにでもしたい気持ちはあるんですけど、昨日の遅くにメッセンジャーで送った件、出張公演に出かける前にある程度は形にしておきたいんです。何かいい方法ありませんか。



//

  沖縄に出発する日の朝、機嫌の悪かった未翼が、いつもの未翼に戻っていることに、椎名は安堵する。



~川原宅リビング

川原椎名:Afroditiのはるか、あんりのふたりとみはちゃんのトップ3ユニットの楽曲「bling-bling」の件だね。バリバリのダンスナンバーってことだけど、まずは振り付けのビデオ観せて貰おうか。


河井未翼:今、タブレット出しますね。


川原椎名:キャリーケース開くついでに、洗濯物も出しておいて貰おうかな。出張公演のときにも持っていくものもあるでしょ。


河井未翼:ありますね。それじゃあ、まずは映像を確認していただいて、その間に洗濯物をボックスに入れてきます。



//

  未翼は、タブレットをキャリーケースから取り出すと、「bling-bling」の振り付けビデオを再生させる。



~川原宅リビング

河井未翼:向かって右側の「3」のビブスをつけたダンサーが、私のポジションになります。3人での映像のあと、私の担当だけの映像が続きます。



//

  未翼は、その場をいったん離れ、洗濯物を置きに行く。途中、ダイニングテーブルにお土産を並べて、リビングに戻って来る。映像を観ている椎名の隣りに座る。



~川原宅リビング

川原椎名:アイドルの領域を超越したダンスになっているけど、本当にやるの?


河井未翼:はるかさん、踊りながら歌えないかもと不安も口にしていましたけど、収録曲の中で魅せる1曲だから、踊れないから振り付けのレベル下げてといいたくないそうです。それで、このまま挑戦することになりました。


川原椎名:はるかって、プライド高いんだね。困ったものだ。それで、映像観ながら振り入れするときって、普段はどうやっているの?


河井未翼:左右反転した映像を等倍速で再生させながら、振りを覚えていきます。動きが細かい箇所は、スロー再生を使う場合もあります。通しで踊れるようになったら、映像を撮って比較。修正していくといった流れでやっています。


川原椎名:この「bling-bling」の場合、等倍速再生では、振り入れ難しそうだね。スロー再生でひとつひとつ動きを確認しながらやっていく感じにしないと、形にならない気がする。


河井未翼:スロー再生を使うことはいいとしても、その動きを真似てみて、それがきちんとできているか確認しないと、あとあと大変なことになりそうです。かといって、ひとつひとつ撮影、再生、確認していては、なかなか進みません。


川原椎名:みはちゃんが踊っているところを撮影しながら、振り付けビデオと一緒にプロジェクターで投影して、リアルタイムで比較しながら進める?


河井未翼:そんなことできるんですか。


川原椎名:やったことないけど、できると思うよ。このタブレットに、みはちゃんを撮影する用のスマートフォンかムービーカメラ、あとは、プロジェクター。


河井未翼:いつも持ち歩いているものだけでできそうですね。


川原椎名:あと、みはちゃんを撮影する用にスタンドも必要だった。ダンスルームでできるか確認してみようか?


河井未翼:お願いします!



//

  未翼と椎名は、ダンスルームへ移動。振り入れのための機器の準備をする。椎名は、未翼を立たせると、スマートフォンをスタンドに取り付け、高さ調整。インカメラで未翼を撮す。この映像をタブレットに転送。タブレット上で振り付けビデオと転送した未翼の映像を並べ、プロジェクターに出力する。



~川原宅ダンスルーム

河井未翼:しいなさん、すごい! もう環境が整っちゃいました。ありがとうございます!


川原椎名:感謝するのは、振り入れができて、ちゃんと踊れるようになってからでいいよ。頑張って。(ダンスルームをあとにしようとする)


河井未翼:しいなさん、待って!


川原椎名:まだ何か用?


河井未翼:この曲を完璧に踊れるようになって、a-Force NIIGATAにも踊れる子がいるんだよって、 "VENUS PROJECT" のライブを観に来てくれた全員に思って貰えるように頑張ります。約束します。


川原椎名:夕食ができたら、呼びに来るよ。それまで振り入れする?


河井未翼:はい。あと、沖縄のお土産をダイニングテーブルに並べておきました。よかったら食べてください。


川原椎名:ありがとう。沖縄の話や五十嵐GMとの話は、夕食のときでいいね?


河井未翼:はい。



//

  未翼は、着替えてから「bling-bling」の振り入れに移る。再生速度を振り入れ可能なところまで遅くし、振り付けビデオと自身が踊っている映像を比較しながら、ひとつひとつ丁寧に振りを入れていく。振り入れが終わり、通しで踊ってみる。通しで踊れそうなことを確認し、今度は踊っているところを録画。タブレットで振り付けビデオと踊っているところを録画したビデオを同時に再生させ、ミスした部分をチェックしていく。



~川原宅ダンスルーム

川原椎名:みはちゃん、夕食できたよ!


河井未翼:(声が聞こえる方に顔を向け)もうそんな時間ですか。


川原椎名:19:00過ぎたよ。区切りが悪い感じ?


河井未翼:振り入れが終わって、通しで踊っているところを録画。振り入れビデオと同時再生して、ちゃんと踊れているか確認していたところです。なので、大丈夫です。


川原椎名:それにしても、すごい汗だね。シャワー浴びてからにする?


河井未翼:お待たせしちゃいますけど、それでもいいですか。


川原椎名:いいよ。急がなくていいから、ちゃんと服を着てからダイニングに来てね。(微笑み)


河井未翼:は~い。タブレットを持って行って貰っていいですか。


川原椎名:いいよ。(タブレットを受け取る) 汗を流してスッキリさせておいで。


河井未翼:20分くらい待っていてください。行ってきます。


川原椎名:30分かかってもいいからね。



//

  椎名の声が届くより早く、未翼はダンスルームをあとにする。椎名は、再生中のビデオに見入る。再生速度「0.6x」の表示になっている。



~川原宅ダイニング

河井未翼:しいなさん、お待たせしましました。(微笑み)


川原椎名:みはちゃん! ちゃんと服を着てねっていったよね?



//

  シャワーを浴びてきた未翼。見た目、白いTシャツしか着ていないように見える。



~川原宅ダイニング

河井未翼:下もちゃんと穿いてますよ。(微笑み)



//

  未翼は、白いTシャツを少しめくり、デニムのショートパンツと見せパンの赤いショーツを見せる。



~川原宅ダイニング

川原椎名:穿いているならいいけど、目のやり場に困るから、もう少しなんとかしない? この前の下着にYシャツだけとか、そういう格好するの好きなの?


河井未翼:彼女感あっていいと思うんですけど、お嫌いですか。(微笑み)


川原椎名:だから、目のやり場に困るって。


河井未翼:そんなに恥ずかしがらなくても、…(微笑み) じゃあ、こうしましょう。



//

  未翼は、白いTシャツの裾を結び、キュッと引き締まって細いウエストとデニムのショートパンツが見えるようにする。



~川原宅ダイニング

川原椎名:それも目のやり場に困るよ、…(困惑) デニムのショートパンツ、これまで穿いているところを見たことなかったけど、好きなの?


河井未翼:沖縄に行って、穿く機会があるかなと思って、こっちで買って持っていったんですけど、天候が悪かったのと、 "VENUS PROJECT" の一部メンバーの目線が気になりそうで、穿かずに終わっちゃいました。


川原椎名:その話、おもしろそうだけど、中断してご飯にしようね。



//

  椎名は、席を立ってキッチンへと向かう。未翼も手伝おうと席を立つ。



~川原宅ダイニング

河井未翼:並べるのを手伝いますね。何を並べたらいいですか。


川原椎名:冷蔵庫の中に入っているサラダを持って行ってくれる?


河井未翼:サラダだけでいいですか。ドレッシングはテーブルにありましたけど、お茶碗とかなかったですけど。


川原椎名:丼にするから、お茶碗はいらないよ。


河井未翼:この匂い、麻婆豆腐ですか。


川原椎名:そう。麻婆豆腐丼にするから、ちょっとだけ待っていて。サラダ食べて待っていて。


河井未翼:はーい。



//

  椎名は、未翼のシャワーが終わるのを待っている間に冷めてしまった麻婆豆腐と中華スープを温め直す。丼のご飯に、温めた麻婆豆腐をたっぷりかけ、アクセントに山椒を少し乗せる。中華スープを器によそい、ダイニングテーブルに運ぶ。



~川原宅ダイニング

川原椎名:どうぞ。(麻婆豆腐丼と中華スープを並べる) 沖縄でおいしいものたくさん食べて、もの足りないかな。


河井未翼:天ぷらとか、お肉とか多かった印象なので、リセットにいいと思います。


川原椎名:天ぷら? 有名なの?


河井未翼:お弁当に天ぷらがいっぱい入っていました。地元で有名らしいです。


川原椎名:お肉は、ラフテーとか?


河井未翼:ラフテー、テビチ、ミミガー、ソーキとかですね。(麻婆豆腐丼に鼻を近づけ)いい香りがします。


川原椎名:香り付けに山椒を少し乗せたんだよ。今日の麻婆豆腐、これまでで一番辛いからね。中華スープを飲む準備をしておいた方がいいかも。


河井未翼:脅かさないでください。



//

  未翼は、レンゲで麻婆豆腐をひとすくい。口に運ぶ。もぐもぐと噛み始めて、急に止まる。



~川原宅ダイニング

河井未翼:(手で口を抑え)う~、…


川原椎名:辛いでしょ? 中華スープ飲んで。


河井未翼:(涙目で)痺れる辛さっていうんですかね。でも、味に深みがあって食べられる辛さです。


川原椎名:シャワー浴びたのに、この辛さで汗が吹き出そうだね。(麻婆豆腐を食べ始める)


河井未翼:汗、きっと吹き出ます。そしたら、一緒にシャワー浴びません?(椎名を見る)



//

  椎名は、未翼の声を完全に無視。もくもくと麻婆豆腐を食べ続ける。



~川原宅ダイニング

河井未翼:もう! 無視しないでくださいよ~(頬を膨らませる)


川原椎名:沖縄の話、 "VENUS PROJECT" の一部メンバーの目線が気になりそうの続きを聞かせて。


河井未翼:(少々呆れ気味に)はいはい。Afroditiのはるかさんに、さらちゃん並みにグイグイ来る系で気に入られちゃって。あと、ロリィタ姿を披露したことで、Border Lineのみなさんにも気に入られたみたいで、せなさんには、未翼お嬢さまって呼ばれることになり、私は呼び捨てで呼ばなければならない関係になってしまって。そんなふたりの前で、ショートパンツで脚を見せたら、危ないかなと思って穿くのを止めたんです。


川原椎名:その判断、正解だったと思うよ。


河井未翼:ですよね。


川原椎名:みれいちゃん、みはちゃんは私の妹のような存在なんです。馴れ馴れしくしないでください! みたいにふたりに苦情をいったりはしなかったの?


河井未翼:(少し考えて)それはなかったと思います。せなさん、私のことを大好きだと思うんですけど、理性だけは保とうとしていて、みやびさんがグイグイ来ようとするのをガードしてくれたりしていたので、みれいちゃんは一歩下がって様子を見ていた感じです。りせちゃんには、しっかりマークされていましたけど。(微笑み)


川原椎名:(スマートフォンを操作し)Border Lineのせなちゃんね、… ロリィタ、ゴシックロリィタを衣装とする5人組。せなちゃんがP0を担当。グループの顔になっているメンバーなんだね。年齢は、… みれいちゃんと一緒。去年もランクインしていたんだ。知らなかった。


河井未翼:Border Lineというグループの存在から知らなかったみたいですね。


川原椎名: "VENUS 12" に入ってくるアーティストやグループについては、それなりに知っているけど、 "MUSE 12" は怪しい。Border Line、ニッチなグループみたいだね。 "MUSE 12" とはいえ、2年連続ランクインしているということは、それなりに支援もないとランクインできない。ニッチな層に受けているんだろうね。


河井未翼:私は、今年の "VENUS AWARD" のファイナルに行くとき、去年ランクインされた方を確認してから出かけたので、グループ名とお顔だけは知っていました。


川原椎名:偉いね。


河井未翼:せなさんなんですけど、2日目の夜、一昨日の夜にあったボウリング大会ですごかったんです。3人でチームになって、8チームの対抗戦したんです。私は、a-Force NIIGATAの3人でチーム。せなさんは、可奈子さん、a-Force OKAYAMAのこの花さんの混成チーム。この2チームが同じブロックで、座席向かい合って座って。私たち、ボウリングが趣味の樋口マネージャーに、練習でみっちり指導受けて、優勝を目指したんです。練習のときには、ゆっくりところころ転がったガターばかりだったせなさんが、本番ではカーブをかけて全部ストライク。すごくないですか。


川原椎名:猫かぶっていたんだね。


河井未翼:そうなんです。中学生のころ、プロを目指していたそうなんです。ベストスコアが300点満点で、ほぼプロですよね。それにしても、人生ってどうなるか分からないですね。


川原椎名:夢ややりたいことが変わったからアイドルやっているんだろうけど、もったいない気がする。みはちゃんも、僕なんかにうつつを抜かして道を間違えないでね。


河井未翼:心配しないでください。私が歌って踊れるソロアーティストになる夢を叶えることで、私のファンであるしいなさんは大満足。さらに、私との関係もラブラブで大・大・大満足! にさせてあげますね。(ニコッと笑う)


川原椎名:で、せなちゃんに優勝を奪われちゃったのね。残念だったね。


河井未翼:もう! また無視して~(頬を膨らませる) 10フレームでせなさんにパンチアウトされて、負けたと思いましたけど、私の最後の1投で逆転して優勝できました!(自慢げ)


川原椎名:よかったじゃない。優勝して何か貰えたの?


河井未翼:はい。3人で高級焼肉店のクーポン30,000円分。マネージャー部門で樋口マネージャーも優勝して10,000円分貰っているので、一緒に行くことになったら、40,000円分の高級焼肉が食べられます!


川原椎名:それはすごい。ボウリング大会とか、余興は毎回やっていたのかな。


河井未翼:去年はなかったそうです。あったのは、じゃんけん大会とビンゴ大会。その前、どうなんでしょう。聞いていないので分かりません。


川原椎名:まあ、一緒に活動する期間は限定的なんだし、余興があった方が、思い出になるね。ボウリング大会以外に何かした?


河井未翼:天候の都合もあって、1日目、2日目でミュージックビデオ撮影終わらせたので、3日目の昨日はオフでした。レンタカーを借りて、みんなで観光に行ったんですけど、1日中ずっと雨。風光明媚なところを何箇所か廻ったんですけど、雨だと映えなくて残念でした。りせちゃんが、オープンカーをドライブしたいといってたんですけど、私は、しいなさんが運転するオープンカーの助手席に座りたいな~(微笑み)


川原椎名:気分よさそうだけど、休み取れないでしょ?


河井未翼:a-Force NIIGATAに在籍中は、夏のいい時期にお休みを3日間とか4日間とかいただけそうにないです。


川原椎名:みはちゃん、僕関連の夢というか、妄想がたくさんあるみたいだから、加えておいたら?


河井未翼:それは妙案です! しいなさんとやりたいリストつくります。一緒に叶えましょうね~(微笑み) 沖縄のオープンカードライブの前に、新潟でドライブデートしませんか。


川原椎名:りせちゃん、みれいちゃんに先を越されないように、今のうちにドライブデートしておきたいってこと?


河井未翼:それもありますけど、街中で歩いてのデートは目立ち過ぎます。


川原椎名:みはちゃん、頭の中は大丈夫?


河井未翼:無視の次は、バカにするんですか。もう!(頬を膨らませる)


川原椎名:みはちゃんって、こんなに怒る子だっけ? イメージ変わったな~


河井未翼:しいなさんが子ども扱いするから。


川原椎名:大人扱いして欲しいの?


河井未翼:もちろんです。その上で、しいなさんと大人の恋愛を。(ウインク)


川原椎名:それなら、すぐに怒らないようにしないと。


河井未翼:しいなさん、私のことを嫌いになってはいませんよね。嫌いではないけど、一推しじゃなくなったとかないですよね。


川原椎名:変わってないよ。


河井未翼:揺るぎない感じですか。ジェンガみたいに、ゆらゆら揺れ動いてないですか。


川原椎名:揺るぎないよ。でも、どうしてジェンガに例える?


河井未翼:ミュージックビデオに使われるか分かりませんけど、りせちゃん、みれいちゃんとジェンガで遊んだんです。


川原椎名:なるほどね。ジェンガで勝てた?


河井未翼:勝敗がつく前に、枕投げをしようと部屋に乱入してきたa-Force OSAKAのみるさんに倒されちゃいました。


川原椎名:りせちゃんと同い年で、来年がグループでの活動最終年なのに、ガキんちょレベルだね。(苦笑)


河井未翼:りせちゃん、先輩のみるさんに怒ってましたからね。カチンときたんだと思います。(笑)


川原椎名:天候だけでなく、そんなハプニングありつつのミュージックビデオ撮影だったんだね。沖縄のお土産話は、こんなところかな。


河井未翼:まだありますけど、全部を話してしまうと、ミュージックビデオ公開後のエピソード披露で楽しみがなくなりますよ。それより、hareitionの1st写真集、私とみれいちゃんの好きなスチルをお気に入りとして申告したので、使って貰えるかもしれません。


川原椎名:発売まで日数少ないから、あとは完成待ちだと思っていたけど、心遣いが気持ちいいね。ある程度の絞り込みができているんだ。楽しみだね。


河井未翼:ある程度の絞り込み? 出版社側で進んでいるのかもしれませんけど、私とみれいちゃんには、NG以外のスチル全枚数からお気に入りを申告しました。


川原椎名:それって、大仕事じゃない。そんな時間あったんだ。


河井未翼:2日目、3日目の夜にやりました。みれいちゃんが2,400枚くらい、私が一部やっていたので、残りの2,700枚くらい。


川原椎名:徹夜?


河井未翼:徹夜はしていません。どんどん処理しない終わらないので、もう直感で処理しましたよ。作業が終わったことで、hareitionの活動開始と1st写真集の発売の告知を明日の夜公演で行うことになりました!


川原椎名:おおっ、それはすごい。


河井未翼:新潟と東京でお渡し会もします。しいなさん、家族の特別枠を用意しましょうか。新潟は発売日の7月7日です。


川原椎名:新潟、本とかの発売日は1日遅れになるよね? 発売日にお渡し会できる裏技があるの?


河井未翼:しかも、サイン付き! 事前にブルースカイパブリッシングが特別に用意してくださるということです。


川原椎名:行きます! 行きます! 行きます!


河井未翼:(笑いながら)3回もいわなくても聞こえます。私の告白にもその勢いで応えてくれませんか。


川原椎名:あっ、…(苦笑)


河井未翼:クレジットに "Sheena" も入って、お仕事で初の共同作業ですものね。分かち合わないといけませんよね。(微笑み) あと、石狩ドームの "VENUS PROJECT" のライブでしたね。お願いはしてあるので、どうなったか確認しますね。


川原椎名:よろしく頼みます。


河井未翼:7月下旬発売のアーティストブックも順調に進んでますからね。楽しみにしておいてください。


川原椎名:そのアーティストブックなんだけど、昨日、五十嵐GMに来年の企画を伝えておいたから。メンバーが撮影したセルフィー日記。スチルと短い日記を綴る内容。1年間のメンバーの素顔や成長がファンに伝わったらいいなと思ってね。そして、期間が今年の "VENUS AWARD" 終わりから来年の "VENUS AWARD" まで。ドキュメンタリーみたいな雰囲気も出せたらいいなと思う。


河井未翼:いいですね、その企画。メンバーのスマートフォンに過去に撮影したスチル残っているでしょうから、遡ることもできますしね。でも、日記部分は記憶が薄れていくから、スタートするなら、早いうちにしないといけませんね。五十嵐GMとのお話、もっと聞かせてください。


川原椎名:ほかに伝えたのは、hareitionの2作目以降の写真集の撮影地、4月始まりのカレンダー。毎月ひとりのメンバーが登場するポスター大のカレンダーは、みんな欲しいでしょ。


河井未翼:ポスター大になるカレンダーいいですね。


川原椎名:カレンダーとして使用後、ミシン目で切り離すとポスターにできる仕様になっていると嬉しいとも伝えてある。


河井未翼:そんな配慮もしてあったら、最高ですね。ところで、写真集の2作目移行の撮影地を五十嵐GMに伝えたということは、しいなさんは1st写真集が売れて、2nd写真集、3rd写真集と続くという予想しているってことですね。そんなに次々と出せるものでしょうか。


川原椎名:プロデューサーの大竹さん、五十嵐GMには、1st写真集の売上を120,000部と720,000部のふたつの数字を伝えてある。この数字は、Afroditiの3人の "VENUS AWARD" での総獲得ポイントと、U-chの視聴者数をhareitionのふたりと比較して計算した数字。120,000部だと、2nd写真集の話が出るまで時間がかかってしまって、僕の提案した撮影地の最適な時期にはならないと思う。だから、720,000部は売れて欲しい。


河井未翼:720,000部って、写真集って、そんなに売れるものなんですか。日本で一番売れた写真集って、どれくらい売れたんでしょう。


川原椎名:日本で一番売れた写真集は、1,550,000部売れたそうだよ。hareitionはふたりだから、2倍ということで、1,440,000部を目標にする? いや、せっかくだから、1位を目指そう。


河井未翼:絶対にそんなに売れません。


川原椎名:みはちゃんとみれいちゃんのダブル表紙。それぞれのストーリーも両サイドから展開する。そうすると、比較しながら見たくなって、2冊欲しくならない?


河井未翼:そうかもしれませんけど、普通1冊しか買いませんよ。


川原椎名:オタクは、保存用でも買ってくれるからね。売上が伸びると信じてる。それに、あとから公開されるショートムービー。口コミで広がって、写真集もロングランで売れることになると思うよ。


河井未翼:夢物語ですね。


川原椎名: "VENUS AWARD" では、 "VOTE GP" 5位、ファイナルで3位になったでしょ。当初の予想より結果がよくなることだってあるんだよ。


河井未翼:確かにそうでした。でも、予想値というか、期待値が高過ぎませんか。


川原椎名:みはちゃんには、夢を叶えて欲しいのはもちろんだけど、高校生でトップアイドルも目指して欲しいんだ。だから、来年の "VENUS AWARD" も1位。1位になれば、歴史にも名を刻める。高校生初の1位であると同時に、最年少での1位。そして、地方組初の1位。



//

  未翼は、椎名との会話で止まっていた麻婆豆腐を食べることを再開している。



~川原宅ダイニング

川原椎名:今度は、みはちゃんが無視?(苦笑)


河井未翼:麻婆豆腐が冷たくならないうちに食べきっちゃおうと思って。ちゃんと聞いてますよ。休演メンバーがいるときの対応、エンターテイメントスクール生を活用するって案を提案したということだったですけど、五十嵐GMの反応はどうだったんですか。


川原椎名:(麻婆豆腐をひと口食べる)スクール生の起用は、思考の範囲外だったみたい。スクール生を集めた下部組織ができたらいいなという話もしておいた。条件面など敷居が高そうだから、実現できないかもしれない。少ない人数で演目を変えずに披露するのもいいかもしれないけど、メンバー構成が毎回のように違ったら、対応するのは大変。このメンバーが休演したら、このスクール生が代理出演するみたいにある程度決まっていたら、メンバーへの負担も軽くなる。そう思ってね。(また麻婆豆腐をひと口食べる)


河井未翼:スクール生の起用、おもしろいですね。メンバーと同じステージに立ちたいと、全国からアイドルになりたい子がいっぱい集まってくるんじゃないですか。新潟校って、そんなキャパあるんですかね。


川原椎名:そこは、敷居を高く設定しておけば、数も抑制できる。a-Force NIIGATAのステージに、らしくないスクール生が立っても、ファンは喜ばないでしょ。将来、メンバーになると想像できたら、ファンも応援する。


河井未翼:敷居を高く?


川原椎名:そう。スクール生としてステージに立ちたいと思っても、a-Force NIIGATAのメンバーとして一緒にステージに立ってもよいとする基準に到達した生徒だけにしか権利を与えなかったら、気安く新潟校に入校しようとは考えないでしょ。


河井未翼:敷居を高くしていることは、公にしておくってことですね。


川原椎名:そういうこと。それでも、ルックスがよくて、性格もよくて、スキルもあるスクール生がたくさん集まったら、みんなにメンバーになって欲しくなるだろうね。


河井未翼:オーディション、審査する側は悩んじゃうんでしょうね。


川原椎名:口外しないでといわれたから、みはちゃんにもいえないけど、オーデション審査に感情の入り込む余地はない感じだよ。


河井未翼:機械的ってことですか。


川原椎名:口外しないでといわれたから、質問しない。(苦笑)


河井未翼:それなら、審査する側は悩んじゃうんでしょうねって尋ねたときに、そうだねと答えてくれたらいいのに。気になります。


川原椎名:そうだね。失敗した。(麻婆豆腐を食べきる) あとは聞いておきたいことある?


河井未翼:全国展開のツアーの件、大都市の会場の見立てが甘いということでしたけど、ホールツアーの計画なんですよね。


川原椎名:そういうこと。大都市なら、平日でもアリーナ埋められますといっておいた。


河井未翼:アリーナで単独ライブができたら、夢がひとつ叶います。


川原椎名:五十嵐GMが再考してくれて、会場を見直してくれるといいけどね。


河井未翼:来週の富山と長野の出張公演は、チケットが当たらなかった人がとても多くて、ホールでコンサートしても埋まってくれるんじゃないかなって期待はあります。でも、アリーナとなると、規模が違います。スカスカになったりしませんか。


川原椎名: "VENUS AWARD" 明けの報告会したときのチケット申込倍率が40倍を超えていたでしょ。平日の公演で。大都市のアリーナ、土日に会場確保できないとしても、平日なら確保できる可能性があると思う。今の人気なら、平日に埋めること、意外に簡単だと思うけどね。姉妹グループのホームでの出張公演のチケット申込倍率で、結果は分かると思うけど、それからだと会場変更は難しいだろうね。


河井未翼:そのままホールツアー行って、大都市で追加公演をアリーナでしたらどうですか。


川原椎名:みはちゃん、欲張り。(微笑み)


河井未翼:あはは、…(微笑み)


川原椎名:a-Force NIIGATAとして初めての全国ツアーだから、アルバムをリリースして、その上でツアーして欲しかった。という要望を五十嵐GMにいい忘れたよ。(苦笑) 明日、伝えておいて貰える? それとも、メンバーだけには話してあるのかな。


河井未翼:アルバムの話は聞いていないです。秋シングルだけです。五十嵐GM、秋シングルを引っ提げて、秋ツアーを実施するとのことでしたので、アルバムリリースはないと思います。


川原椎名:ちょっと残念だな。


河井未翼:確かに、メジャーなアーティストやバンドは、アルバムをリリースしてツアーを行うイメージがあります。


川原椎名:それもあるけど、今年は "a-Force CONCEPT" によるa-Force AICHI誕生から10年。通期制採用しているから、今年は10期だよね。これを記念してa-Force AICHIが10周年記念アルバムをリリースして、全国ツアーをするんじゃないかなって思ってる。a-Force AICHIがアルバムをリリースするとしたら2枚目。5年に1枚のペース。a-Force NIIGATAも5年。1stアルバムのリリースがあってもおかしくないでしょ。


河井未翼:そういわれると、アルバムリリースしたいですね。


川原椎名:だから、五十嵐GMにアルバムリリースしましょうって伝えてね。


河井未翼:まだ口外していないだけかもしれないですけど、しいなさんの要望ということで伝えますね。(麻婆豆腐を食べきる)


川原椎名:口の中が辛さで充満しているだろうけど、食後のデザート食べる? お土産を食べる?


河井未翼:辛さが残って、デザートの魅力を打ち消しますよね。(お土産に目をやる) 牛乳ってありますか。辛さを和らげるのに効果的みたいなんですけど。


川原椎名:あるよ。食べたいお土産があるから、牛乳を飲んでから食べる?


河井未翼:はい。(微笑み)



//

  未翼、椎名は、食べ終えた食器などを片付ける。冷蔵庫の中にあるパック入りの牛乳とグラスを持って、ダイニングテーブルに戻る。紅いもタルト、ちんすこう、サーターアンダギー、黒糖チョコレート、シーサーの置物がテーブルに並んでいる。1体15cmほどのシーサーの置物以上に目立つのは、サーターアンダギーの山。9個入りの袋が5袋積まれている。



~川原宅ダイニング

川原椎名:サーターアンダギーは、メンバーへのお土産?


河井未翼:メンバーへの食べる系のお土産は、りせちゃんとみれいちゃんにお任せしたので、全部が私としいなさん用です。


川原椎名:サーターアンダギー、多過ぎるでしょ?(苦笑)


河井未翼:試食したらとてもおいしくて、もっと買いたかったんですけど、キャリーケースに入らないので諦めました。プレーン、黒糖、紅いもの3つのフレーバーがあって、どれもおいしいんです! サーターアンダギー、しいなさんは食べたことあります?


川原椎名:あるよ。デパートの沖縄展とかの催事で販売されていると、1袋は買うね。


河井未翼:あら、ということは、お好きってことですね。


川原椎名:催事でそんなに頻繁に出店がある訳ではないから、買うのは年2回くらいだと思うけど。


河井未翼:そうでしたか、…


川原椎名:僕にいっぱい食べて貰おうと思って、たくさん買ってきてくれたの?


河井未翼:初めて食べて、おいしい! っていってくれることを期待していました。でも、お好きなら全然大丈夫です。紅いもタルト、ちんすこう、黒糖チョコレートは、食べたことありますか。


川原椎名:紅いもタルトとちんすこうは食べたことある。黒糖チョコレートは食べたことない。


河井未翼:黒糖チョコレートを食べることにしましょうか。


川原椎名:サーターアンダギーでいいよ。各フレーバー1個ずつね。


河井未翼:それじゃあ、私も。



//

  未翼は、サーターアンダギーの3種類のフレーバーを2個ずつ取り、器に移す。



~川原宅ダイニング

河井未翼:しいなさん、どれがどのフレーバーか分かりますか。


川原椎名:色が淡い方から、プレーン、紅いも、黒糖。


河井未翼:余裕の回答ですね。(微笑み) 一番好きなフレーバーはどれですか。


川原椎名:甲乙つけがたいけど、プレーンかな。


河井未翼:私も甲乙つけがたいですけど、ひとつだけ選ぶとしたら黒糖です。


川原椎名:黒糖のサーターアンダギーがおいしかったから、黒糖チョコレートも買ってみたって感じかな。


河井未翼:分かりました?


川原椎名:何となくね。それで、シーサーの置物はどうするの?


河井未翼:差し支えなかったら、玄関に置いて貰えたらなと思って。


川原椎名:いいけど、魔除けのために置くんだよね?


河井未翼:しいなさんの心を乱そうとする魔女の心を持った女性を家に招き入れないためです。(真面目な表情から一転して笑顔)


川原椎名:(笑いながら)それって、みれいちゃんやりせちゃんのこと?


河井未翼:誘惑しようとする心、気持ちだけ家の外に置いてきてくれたら、全然ウェルカムです。


川原椎名:みはちゃんに、いったんは諦めさせられたけど、それは在籍中の話。でも、心の中は分からないから、用心の意味があるのかな?


河井未翼:この置物を買うとき、りせちゃん、みれいちゃんもいて、それとなく購入目的を示唆しておきましたから、欲望を抑えて欲しいものです。


川原椎名:(笑いながら)みはちゃんの欲望は?


河井未翼:私の欲望? はて、何のことでしょう?(グラスに入れた牛乳を飲む)


川原椎名:(グラスに牛乳を注ぐ)演技派女優も目指すの?(牛乳を飲む)


河井未翼:(紅いものサーターアンダギーをひと口食べ)CDお渡し会のときのしいなさんとの演技や、写真集のときのようなショートムービーがやっとです。演技に深入りしてしまうと、男性とキスとか、それ以上のことをする場面も出てくるでしょう。私は、しいなさん以外の男性とするつもりは毛頭ないので、女優はしません。それっぽく見せたいとも思いません。(サーターアンダギーの残りを頬張る)


川原椎名:(プレーンのサーターアンダギーをひと口食べ)アイドルの登竜門、ホラー映画に主演! みたいなことは、考えたことない?(サーターアンダギーの残りを頬張る)


河井未翼:考えてないです。(プレーンのサーターアンダギーを食べる)


川原椎名:(黒糖のサーターアンダギーを食べる)アイドルとしては、女優以外できることをするってことかな。


河井未翼:私ができそうなものでしたら。しいなさんも私が女優業もしたとして、ほかの男性とキスしたりするところ、観たいとは思いませんよね。(紅いものサーターアンダギーを食べる)


川原椎名:女優になったら、当然のことだよね。(紅いものサーターアンダギーを食べる)


河井未翼:恋人、… 最愛の人が演技だとしてもほかの男性とキスして、何とも思わないんですか。(ちょっと怒り気味)


川原椎名:恋人、最愛の人ではなく、推し。(黒糖のサーターアンダギーを食べる)


河井未翼:(両手を合わせて)ごちそうさまでした。(ダイニングテーブルを両手で軽く叩いて立ち上がる)


川原椎名:お怒り?


河井未翼:その都度、その都度、怒っていたら、また子どもだねっていわれますから、怒りません。(といいつつ、あっかんべーをする)


川原椎名:まだまだ子ども!(笑)



//

  自分の部屋に戻った未翼は、U-timeの更新、ファンMailの送信、U-chライブストリーミングを済ませたあと入浴。夕食のため中断していた、「bling-bling」の振り付けビデオと踊っているところを録画したビデオを同時に再生させ、ミスした部分をチェック。就寝時間は、いつもと変わらない時間になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る