第3話私、もふもふになってしまいました。

「気がついた?」



 人間、絶望しすぎると気を失うものなのか…。


最悪の展開だ。


 起きたらクロード殿下の腕の中だった。




 いや、ゲームの中でアンドレアがあそこまでクロード殿下に執着した理由がようやく理解できましたよ。


 人間の感覚では獣人の性は、理解できなかっただろう。


 特にアンドレアは他の獣人より獣性がきつい。


 獣人が運命の番を認識するのは、成人してからが一般的なのに。アンドレアは、まだ五歳だ。


 五歳でこれなら、成人したらどうなるか、悪役令嬢まっしぐらな未来しか見えない。




 ん?



 考えに没頭していた私は視界がおかしいのに気がついた。


 手を動かす。手がもふもふ?


 キラキラと輝く白いもふもふ。それが、私だった。



「くぅーん。」


 あ、しゃべれない。



「君は獣化して、気を失ったみたいだ。」


 えーっ。



「誰にも知られないよう、ここに運んだから大丈夫だよ。」


 一番お近付きになりたくない人に弱味を握られてしまったんですけど。



「ずっと、もふもふを触るのが夢だったんたよ。」


 キラキラ笑顔のちびクロード殿下にが可愛いらしすぎる。番の夢なら叶えてあげても良くてよ。 



「ブラッシングしてもいいかな?」



「くぅーん。」


 仕方ないわね。




 ブラッシングは本来、求愛行動だ。


獣性のないクロード殿下はわからないだろうけど…。


 完全獣化しなくなった現代でも、しっぽや耳を番以外が触るのはご法度だ。


 すごくデリケートな部分なので、番以外に触られるなんて、耐えられないのだ。


 自分に耳やしっぽが無いから触りたいんだろうな。


前世の自分がもふもふを思う存分もふりたいのと同じだ。


勘違いしないよう気を付けなければ…。



 ああ、ブラッシング気持ちいいー。反対の手で顎の下を撫でられる


 番の匂いがたまらない。あたまがぽわぽわする。


 理性が飛んで、我慢できなくなってクロード殿下の指先を舐める。


 しあわせ。


 どさくさに紛れてお顔も舐めちゃおう。スチルで見た五歳のクロード殿下より、実物の方がキラキラがしてる。


はぁー。好きー。



 私、頭の中まで獣人から獣になったみたい。貴族令嬢としての矜持ってどこにいっちゃったんだろう。


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