けもみみ悪役令嬢は婚約回避する。~前世の推しを諦める決意をしたのに運命の番なんて~
降魔 鬼灯
第1話私、悪役令嬢なんでしょうか?
真っ白いサラサラで艶やかな髪。ピコピコ動く可愛らしい猫科だけど丸いお耳。澄んだブルーの瞳。綺麗に整った顔。ぷるぷるのお肌。侯爵令嬢という地位。天は私に全てを与えたといっても過言じゃないはず。
私、アンドレア・サンダーウッドは間違いなく勝ち組だった。
前世、学歴もコネもない平凡顔の社畜のOLの私とは比べ物にならない恵まれた環境。今世こそは、幸せになるぞ!過労死なんてしないから!
でも、私は知っている。ここが前世はまったゲーム『あなたに天上の音を』の世界だということを。
そして、アンドレア・サンダーウッドが救いようのない悪役令嬢だということを。
『あなたに天上の音を』略して『あな天』でアンドレア・サンダーウッドは第一王子クロード殿下の婚約者だ。主人公レンを執拗に排除する苛烈な悪役。
あまりの苛烈さにユーザーも若干ひき気味だった。
『あな天』の世界は、獣人が中心の社会。アンドレア・サンダーウッドは白虎獣人として産まれた。虎獣人は多くとも白虎は珍しい。その上ここ数世代存在しなかった完全獣化を成し遂げた。いわば獣人社会のエリート中のエリートだ。
一方、クロード殿下は第一王子として産まれながら、獣人として当然持っている筈の耳やしっぽをもたなかった。獣人としての本能も持っていない彼は半人前として蔑まれ、遠巻きにされながら育つ。
彼の不足を補う為宛がわれた婚約者がアンドレアだった。
恵まれたアンドレアにコンプレックスを抱き、心を閉ざすクロード殿下。そんな彼は獣人の世界に迷いこんだ主人公レンと出会う。
人間であるレンと出会って真実の愛を知り、獣化に成功。クロードが本当は王家の始祖と同じ伝説の黄金竜だったことがわかる。
種族の違いや身分差に思い悩む二人のもだもだに涙したよ。
どのルートに入ろうがクロードがレンに恋し、黄金竜に変化する流れは変わらない。当然。どのルートでもアンドレアは、レンを廃除しようと動く。
その後のアンドレアのざまあ展開は悲惨だ。今までの恨みを晴らすように、生きたままバリバリ喰われるか、監禁孕ませルートの二択しかない。いや、後者も最後は黄金竜に喰われるから、事実上は黄金竜のお腹の中一択ということになる。
ルートはたくさん存在するのに、アンドレアは、黄金竜の餌一択なんて…。詰んでる。
コンプレックスの塊だったクロードが底辺から這い上がる様が大好きだったんだ。顔も声も好みだった。
でも、今回は逃げようと思います!
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