第55話 襲撃、そして報酬
エクセイシアの王都に来てから私は日夜、グランドミッションを探していた。
悪徳貴族達の討伐ミッション、魔導士討伐ミッション。
どれもおいしかったけどここ最近はミッションが発生しない。
さすがにそう何人も国内に悪徳貴族がいるわけないか。
そうなると私の次の目標としては、王都にある魔導士協会の支部かな。
でも今のところ、それらしいミッションが発生していない。
といったことを王都内の喫茶店でミリータちゃんとフィムちゃんに相談していた。
「ねぇミリータちゃん。どう思う?」
「まぁ少しは休んでもいいべ。このブラッドヘルサンダーフラッペうんめぇ」
「確かにこれはうんめぇけどさ」
「むむ……」
フィムちゃんがブラッドヘルサンダーフラッペを前にして躊躇している。
確かに心地いい名前じゃないけど、そんなに悩むことかな?
「これは明らかに糖分過多……。今後の行動に影響を及ぼす可能性がある……」
「糖分は体を動かすエネルギーだよ。摂取しておかないと途中で倒れるかもね」
「ハッ! そうでしたか! さすがは師匠……!」
「うん、素直でよろしい」
フィムちゃんが目の色を変えてがっついて、そしてこめかみを押さえている。
冷たい食べ物の洗礼を受けたか。エルフでもこうなってくれるのは親近感が沸いて嬉しい。
「この痛み……なるほど。師匠の言葉の意味がわかりました。摂取する過程ですらこれに耐えられないようであれば、生き残ることなどできませんか」
「そうだね」
私は勇者の師匠。もうこれでいい。
そう投げやりになるくらい眠くなってくる。
のどかな昼下がりの午後、久しぶりにのんびりできてこれはこれでいいかもしれない。
ミッション疲れを癒すいい機会だ。
「ごめん。私、魔道車で寝て」
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ミッションが発生!
・プリンプルンを討伐する。 報酬:プルン抱きまくら
・マジックゴーレム(火)を討伐する。 報酬:ゴッドエナジー
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「あぁ!?」
瞬時に私はミッション臭がする方角を向いた。
おおよそ王都南西部、十七番地の中心部。
超高速、最短で会計を澄ませてから私は店を出た。
ミリータちゃんとフィムちゃんが続いて、私はより嗅覚を研ぎ澄ます。
そして走っている途中で燃えている民家があった。
住民らしき人が何か叫んでいる。
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ミッションが発生!
・民家から子どもを救出する。報酬:イフリートの角
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「だ、誰か! まだ子どもが中に!」
「フィムちゃん! 水神のストールでウォーターガンが使えるから使って!」
「わかりました!」
フィムちゃんがウォーターガンを燃え盛る炎の家に放つ。
そして消火作業をしながら家に突入したフィムちゃんが子どもを抱えて出てくる。
直後、家が炎で崩れて完全に崩壊した。
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・ミッション達成! イフリートの角を手に入れた!
効果:幻の素材。鍛冶で使用。
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「あ、ありがとうございます! このお礼はなんと言って」
「次ァアァーーーーーー!」
「えぇっ!?」
子どもの両親が何か言ってた?
それより目標地点は近い。
より濃くなってきたミッション臭のおかげで、さっきまでの眠気なんか吹っ飛んだ。
「お礼などいらないということか……。すごい……」
また何か勘違いされた予感がしたけど次、次!
早くイフリートの角を鍛冶で使ってほしいんだからさ!
「何か見えたべ!」
「先客がいるぅぅ!?」
スライムらしき球体にニコちゃんマークみたいな顔が書かれたプリンプルンらしき魔物。
炎に包まれた岩のゴーレム。
そしてその前にはすでに武器を構えている集団がいた。
「化け物め、ここに誰がいると思っている? 一級冒険者パーティ、紅の刃がお前を仕留める! いくぞ!」
「ぷるるりーん!」
「あぁぁーーー! 粘液が体にぃー!」
冒険者達が液体に包まれていって、あっという間に身動きがとれなくなった。
プリンプルンから放たれた液体は周囲の王都警備隊をも飲み込んでいく。
そしてマジックゴーレムが両手を上げた途端に炎が拡散された。
「ウォタウォウォウォタタタタタタァァーーーーーーー!」
建物に燃え移ったところでフィムちゃんがウォーターガンを連発して消火してくれた。
それにしても恥ずかしい掛け声だ。
誰の真似か知らないけど、ここには大勢いるからあまり恥ずかしいことはしないでほしい。さて。
「ファファファファファファファファファアアボォァルゥゥアアァァ!」
「プリンギャアアアァァァァーーーーー!」
目の前のすべてに私は火の玉を放った。
プリンプルンが一瞬で蒸発して、マジックゴーレムが爆散する。
意外と断末魔の叫びが怖かった。
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ミッション達成!
プルン抱き枕をを手に入れた!
効果:これを抱いて寝るとすべての疲れが吹っ飛ぶ。
ゴッドエナジーを手に入れた!
効果:飲むと体力の消耗を極限まで抑える体になる。
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「うわぁぁかわいいぃーーー!」
「気持ちよさそうだべ!」
「さすが師匠!」
ぷるぷるとした抱き枕はいかにも抱き心地がよさそう。
これを使いまわして、皆で寝ようか。
これとゴッドエナジーのおかげで、よりミッションライフが捗る。
「あれ? あ、そういえばだれか巻き込んだような……」
「お、俺達、紅の刃もろとも攻撃するとは……そしてまたお前か……」
「えーと」
誰かと思えば、いつかの四天王に完敗した人達だ。
ひとまず助かったんだから文句は言わないでほしい。
ヒールしてあげるから許して。
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