第22話 国家権力も大変ですね

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ミッション達成! ユグドラシルの枝を手に入れた!         

効果:世界で一本しかない世界樹の枝。鍛冶の素材。

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 ユ、グ、ド、ラ、シ、ル!

 このワードでときめかないファンタジー好きはいない!

 これ鍛冶の素材だとしたらすごいのができるのは確定だし、やばい早く鍛冶鍛冶鍛冶鍛冶!


「うぅッ…ご、ごふッ……」


 あれ、ブライアスがくの字になって倒れ込んだ。

 血を吐いて、洒落にならない重傷を負っている。

 ミッション成功みたいだし私、勝っちゃった?

 いや、でもこの人達はいわゆる国家権力だ。

 理由はどうあれ、逆らっちゃいけないでしょ。ダメ。


「ミ、ミリータちゃん。冷静に考えたらかなりまず……」


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ミッション達成! 全上昇の実×2を手に入れた!         

効果:全ステータスが+100される。

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「なんだって?」

「いや、なんでもない」


 遅かった。

 すでにミリータちゃんの足元には兵士達が倒れてうずくまっている。

 あんた、国相手はまずいって。

 これで私達、お尋ね者とかになるわけでしょ。

 しかも冒険者ギルドの前なものだから、人だかりが出来てしまっているわけで。


「ブライアスが一撃……?」

「何かのイベントか?」

「いや、明らかに血を吐いてるぞ……」


 うわぁぁぁあまりの現実感のなさに皆、今はわかってないけど時間の問題だ!

 どうする、どうする! このまま逃げる?

 クリア報酬でテンション上がったけど、追われる身になるのは勘弁だ。

 何せ追手を討伐してもミッションが発生するとは限らない。

 そうなるとひたすら無駄な戦いを続けなきゃいけなくなる。

 それはそれとして報酬おいちい。


「まずは全上昇の実を食べて落ち着こう。ミリータちゃんも食べていいよ。ぱくり」

「ぱくりっ! んー、味はしねぇだな」

「そりゃね」


 ポリポリと食べたら少しは落ち着いてきた。

 そんな私達を見て、野次馬が次第に騒がしくなる。


「この状況で何を食ってるんだ……」

「え、衛兵に通報してくる!」

「バカ! ブライアスがあの様だぞ!」


 ようやく状況を正しく認識し始めた。

 いよいよ逃走が視野に入ってきた時、呻きながらブライアスが剣を杖代わりにしてようやく立ち上がる。

 それでもまたよろめきながらも、私を睨みつけた。


「と、とてつもない、力だ……ハァ……ぐっ」

「あの、まずごめんなさい」

「これは仕方ない……」

「え?」


 まずい。何かしてくる?

 いや、もう立っているのがやっとのはずだ。

 我ながら王国最強の人を一撃でここまで追いつめるとは。

 考えてみたら私、攻撃が1000を超えているんだ。

 このくらいの攻撃があれば王国最強も戦闘不能にさせることだって出来るわけか。

 だとすればミリータちゃんにやられた兵士達の安否が心配になる。


「私の負けだ……」

「は、はい」

「君の目的は、わ、からないが……好きに、しろ……私では、止められん……からな……」

「はぁ……」


 なんだか潔いなぁ。

 私が言うのもアレだけど、仮にも国家権力ならこんなに簡単に諦めちゃダメだと思う。

 でも命ある限り戦うとか言い出すよりマシか。

 膝をついて諦めムードだし、これは一つ試してみよう。


「ブライアスさん。なんとなく話が通じそうだからもう一度だけ謝るね。ごめんなさい。それで勝者の特権として聞くけど、あの王様の命令で私を捕まえにきたの?」

「そうだ……。陛下は……君を、連れ戻し、て……支配下に置こうと……考えている、はずだ……君の……ス、スキルは……やはり有用、だと……考えたのかも、しれん……」

「うわぁもう最低」


 自分で追放して殺しかけて、やっぱり手元に置いておこうってね。

 この話を皮切りに野次馬達が明らかにドン引きし始めた。


「スキル目当てで一人の女の子のためだけに兵隊を動かしたのかよ……」

「クソスキル税なんてものを導入するくらいだ。あれのせいで国境付近が難民で溢れてるらしいぜ……」

「俺もクソスキル税免除を受けられなくてさすがに限界だよ」

「遠い親戚の子がブロンズソードと100ゴールドを持たされて魔王討伐に行かされたよ。かわいそうに……」


 クソスキルの人から更に巻き上げてどうする。

 こういうのは普通、稼いでる人ほど取られるものでしょ。

 しかもこの世界、さらっと魔王とかいるみたいだし思ったより物騒だ。

 100ゴールドで倒せるなら苦労しないだろうし、私にとって重要なのはミッションだ。

 この先、魔王討伐のミッションが起こるかどうか。

 それがわからないから、自分の足で色々な場所を旅するしかない。

 なんか漲ってきた!


「マテリといったか……。君のクリア報酬はとんでもないスキルだ……ごふっ!」

「あ、ヒールヒールヒールヒールヒールヒール以下略!」

「き、傷が……」


 倒れている兵士達にもがんばってヒールしてあげた。

 ぜぇぜぇと息を切らしてようやく終えると、ブライアスは改めて戦意がないと私に告げる。

 兵士達は納得してなかったけど、ミリータちゃんが槌をぶんぶん振り回したら理解してくれた。


「ま、まさかヒールリングか? そんなものまで……なるほど。クリア報酬か……確かにこれは恐ろしい……」

「あの、ブライアスさん。とにかく私の邪魔をしないでもらえるってことでいいのかな?」

「あぁ、私は任務失敗を陛下に報告する」

「それじゃ……」


 そんなことしたら、この人が無事でいられるわけない。

 スキル狂の王様に何をされるか。

 悪い人じゃなさそうだからちょっと気の毒だ。

 んんー、そうだなぁ。到達報酬も欲しいことだし、ここは――。


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新たなミッションが発生!         

・デス・アプローチを討伐する。報酬:聖命のブローチ

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 なんかきたぁっ! まずミッションだよね!

 さーて、どこにいるのかなぁ?


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