第353話 予感はしていた
「はい、兄様の言う通り、最初の頃、カイトがまだ勇者カイトになる前はなんの状態変化もなかったんです。」
アリアはそう言うと、治療されているメグミ達を見て、嫌悪感を露わにする。
「主様には悪いが、真実を言わせてもらったぞ?…遅かれ早かれ、バレるからな。」
そう言ってエルは悲しげな表情を見せる、本気でエイトの事を思っての行動だったのだろう、しかしそれは今までの話を覆す内容になる。
まだ前世の記憶を完璧に取り戻す前、エイトはミュウとシルフィを家に招いた…と言うより、ミュウ達が来た事があった。
その時、メグミとアイはエイトの事を本気で殺そうとしたし、罵詈雑言をこれでもかと言っていた。
「でもこれで、女神アマスがメグミに取り憑いた時期と合うわね。」
「…?それはどう言う事ですか?ミュウ様?」
「鑑定の儀式、私が魔王、シルフィ、貴女が剣姫になったあの日、少しだけ不可解な事が起こったの」
シルフィの質問にミュウは次の様に答える。
「鑑定の儀式の時、私達の中で1番最初に受けたのはエイトだったわ、そして"英雄"と言う職業を鑑定してもらい、その時に日本にいた頃の前世の記憶を取り戻し始めたの。」
「ええ、その時エイトさんの汗のかき方は異常でした、その時の事は今でも覚えていますよ。」
その次にミュウで魔王
最後のシルフィで剣姫 となり、自分達の冒険のキッカケになったのだ。
「でも、その時に違和感はあったわ。」
「?…そうですか?私は何も感じませんでしたけど…」
それよりもエイトの容態が心配でそれどころではなかった、と言うのがシルフィの本音だ。
「あの時、私達の所に戻る時に"メグミが何かしようとしていたの"」
「あの時…?」
「メグミは俺に手を伸ばした。」
ミュウのあの時にシルフィは頭を悩ませたが、エイトが即座に答える。
メグミは何かしようとしてエイトの手を掴もうとしていたと思っていたが、あれが既に女神アマスがメグミに憑依し始めていたとすれば辻褄は合う。
合う…が、
あの罵詈雑言は"心から思っていた事"になる。
「エイト…」
「エイトさん…」
「兄様…」
「主様…」
いくら気にしないとは言え、同情と言うより、可哀想と思ってしまう。
「…薄々はさ、気づいていたよ。」
「え?」
エイトの言葉にミュウは驚く
「だってさ、これでもこの世界で何十年間も一緒にいた仲だよ?…多少なりとも違和感はあったよ。」
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帰省中の為、今日はここまで。
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