第142話 その日の夜にて
「本日はこちらでご寛ぎください。」
そう言われて案内されたのは、公爵家の名に相応しい部屋だった
扉を開けて奥を見ると窓があり、そこから外が見渡せ、入って右に荷物を入れるところがあり、そこから少し奥にベットがある。
「ありがとう、何かあったら連絡するよ。」
「はい…本日は災難でしたね。」
災難と言うのはミュウとの交際の許可を取りに来ただけなのに、家庭崩壊の一環を担ってしまった事だろう。
「気にしないでください、寧ろ私の方こそすいません、私がいなければこうならなかった筈ですから。」
「いいえ、それは違います」
「え?」
どう言う事だ?と不思議に思ったエイトがつい口に溢してしまった。
「確かに、今日こんな事になってしまいましたが、旦那様…いえ、元…ですね、彼は前々から浮気相手の女性と肉体関係を持っていました、いずれこうなるのが今日なっただけです。」
「つまり、私は出汁(だし)に使われたと?」
「簡単に言えばそうです、勿論そうならない事がベストでしたが、あのままだともっと大変な事になっていましたから。」
確かに、もしあのまま何も起こらなければ、ミュウとシルフィは自分の父親と執事長に暴行を加えていただろう、そうなれば今回の件も全てパーになる。
「公爵家の為、一族の為と抜かしながらその人の本人がやっては言けない事をやったのです、当然の報いだと思います。」
多分彼女なりのエイトの励ましなのだろう
小説やネットではそう言った浮気や不倫をした者がザマァ展開になるのが定番だが、それが現実に起こるとこうも違うのかと不思議に思う。
「ありがとうございます、少し…楽になりました。」
「はい、では私はこれにて」
そう言ってメイルは静かに扉を閉める
部屋は既に暗く、月明かりが部屋を照らす
「…今日1日で色んな事があったなぁ」
そう口に溢しつつ、エイトはベットに倒れ込む、自分の家よりも、ミュウの家(別荘)よりもふかふかで、今日1日の疲れが一気に来たのか、エイトはいつの間にか深い眠りに落ちていた。
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目が覚めたのはまだ夜も深い真夜中の事だった。
何か違和感があり、そして暖かさがある為
きっと何者かが、自分のベットの中にいるのだろう。
(…ミュウか…シルフィだな)
温もりが1つな為、どちらか2人なのは確定だろう、そう思って目を開けて確かめようとすると
「………フフッ」
「………………………………」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」
ミュウだとツッコミが入る言葉だが、残念ながら、相手はミュウではなく、その母親だった
「あらあら、そんなに驚く事ないじゃないの?」
いやいやいや、人妻(元)の人がいきなりこんな事をすれば驚くに決まってるし、もし童貞だったら間違いなく、息子が育っている。
「ふむ、興奮しないのかぁ」
「滅茶苦茶良い匂いで、ヤバかったです」
「あら…フフッ」
「…って何しに来たんですか!?」
このままのペースで行くと何かを失いかねないので、話を変える。
(こんな美人の人がいるのに、よく浮気したな)
エイトはつくづく思う、熟女好きと言われるかもしれないが、それ程までに妖艶な魅力があり、更に母性も感じる、何故こんな人を裏切れるのか、その男の理屈がわからない。
「ああ、そうそう、さっきの事で話がしたくてね?」
「さっきのって…あの…」
不倫騒動の事ですか?と言いたいのだが、
そんな無神経な事をそう言えるものではない
そんな気持ちが伝わったのか、ミュウの母はエイトの頭を撫でて、胸元に抱き寄せる。
「…え!?」
何が起こったのかわからないエイトは、頭が混乱する。
柔らかくて、温かくて、良い匂いで、…そして
「貴方は優しいままでいてね、決してあの子達を悲しませないでね。」
と、ミュウの母はそう言う、彼女の言葉は
とても悲しくて、哀しくて、辛くて、先程の事が辛くないと言うのが痛い程わかった。
「全く…私の次はエイトなの?」
「ミュウ!?」
今の状況が数分間続き、兎に角離してもらおうと思った矢先、ミュウが部屋の中に入ってきた。
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子供の事を想わない親はいないと言う言葉を18歳の誕生日に死んで、生き返る為に英雄の力を集めている主人公が言っていたけど
…本当かな?
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