第123話 女子会(いや、2人だけやん)

「シルフィ、ミルク頂戴」


「コーヒーは飲まないのですか?」


「あれは苦くて嫌よ、それにエイトもミルク好きだし。」


エイト達が外で話している時、ミュウ達は自室でゆっくりとしていた

エイトからすれば驚きものだが、これが本来の2人なのだ。


「どうぞ、冷たいとお腹を壊す可能性があるので睡眠をよくする為に温かくしておきました。」


「相変わらず、気がきくわね」


「何年間メイドをやっていると思っているのですか?」


それもそうだな、と思いながらゆっくりと飲む、体の芯から温まる感じがとても良い


「所で、今日はエイトさんの部屋に行かないのですか?」


「そう言うシルフィは行かないの?」


「そうですね、今日はやめておきます。」


そう言って枕を持ってミュウの隣に座る


「女子会、では人が少ないですが、偶にはゆっくりとミュウ様と話したいと思いまして。」


「偶然ね私もよ」


顔を見あってくすくす笑う

前世の記憶を取り戻す前はこうだったのだ。


「半年?かしら?」


「何がですか?」


「エイトと出会ってから、なんかつい昨日の事の様に覚えてるの。」


「そうですね、とても濃い日々ですが、とても楽しいです。」


カイトの事は除いて、と心の中で思いながらミュウとシルフィは話を進める。


「今は…ね」


「…そうですね」


そう言って2人は暗い表情になる

わかっているのだ、この幸せな時間が残りわずかなのだと。


その理由は簡単で身分だ

ミュウは貴族だが

エイトは平民、今は付き合っているが

いずれ終わりが来る。


「お父様達はどう言うのかな?」


「まず、跡取りの為に他の貴族の人…最悪の場合、勇者件幼馴染み(嫌悪)であるカイト(汚物)が選ばれますね。」


「………私が貴族を辞めると言ったら?」


「何がなんでも探し出して、連れて帰らせますね。」


わかっていた事だ

前世の記憶を取り戻して、浮かれていただけだ。


現実に目を向けると真実の愛など、圧倒的な力の前には無力なのだ。


「やっぱりね、でも…」


そう言ってミュウは目から涙を零す

それは一度出たら止まらない

今まで溜めていた感情だ。


「いやだよ…そんなの…私は…ただ…エイトと一緒に……いたいだけなのに………」


思い返せば、彼女は、ミュウは幸せを奪われてばっかりだ。


小さい頃、独りぼっちだった彼女を、下手くそだったけど英語を覚えて親しくしてくれた

ずっと側にいてくれた瑛人は


勘違いと思い込みで邪魔ばっかしてきた海斗によって車に撥ねられて死に


今もまた、身分差、勘違い片想いのカイトによって、その幸せを奪われそうになっている。


「ミュウ様………」


シルフィだってそうだ、エイトとの取り合いでミュウとケンカする事はあるが、この世界では小さい頃から付き添っていた大切な主人だ。


そんな主人が自分の前で本当の気持ちを

エイトには見せたくない姿を見せている

それは恋人ではなく、正真正銘の親友にしか見せれないものだ。


「ねぇ…何か…ないの?…みんなと…一緒に…いる方法。」


「ありますよ?」


「…そうだよね…やっぱり…ふぇ?」


とても可愛らしい声で反応するミュウに

少し笑ってしまうが、シルフィはミュウの手をとって話す。


「可能性は低いですが、私達の職業なら…もしかしたら…」


その方法はと言ってミュウの耳元で話す

最初はくすぐったそうにしていたミュウだが

内容を聞いていくと、真剣な表情になる。


「成る程、確かにそうすればエイト達ともいられるし、運が良ければ…!」


「はい、女神アマス様の件もありますし、あのアダマスと言う女神もきっと。」


そう言って2人は頷き

残っていたミルクを飲み干す。


「期待してるわよ、シルフィ?」


「これは期待というより、祈るだけでは?」


その後も2人は他愛もない雑談をして

この幸せなひとときを噛み締めた。


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学園モノ…どうしようかな…



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