第26話
というわけで、神父様と一緒に「周期的に良からぬものがいるところ」に来た。
おっきい影が暴れてた。木が倒されてて、壊れた家もある。中の人は逃げてるんかな……。心配やの。
「あれは……、ゾウっぽい何かですね」
「神父様、ゾウっぽい何かって何やの?」
「名前を呼ぶとこちらを認識してしまう可能性があるので……。まあ、けいがいるならどうにでもなるでしょう。さっさと焼き殺してきてください」
「慈悲がないやの!」
神父様は「やれやれ」と言いながら聖書を開いた。力で解決しようとするから、神父としてどうなんかって思ってきたやの。
「主の名の元に、私は貴女を許します。さあ、行け!」
「え」
神父様はウチのツノを掴むとポイッて、ゾウっぽい何かへ向かって投げつけた。
ひどいやの! ひどすぎるやの! ゾウっぽい何かがこっちを向く。やられる前にやらな!
「えいっ!」
「一気に燃えましたね。見事です」
「これでええの?」
「はい。家も一緒に燃えましたが、どのみち壊れていたので、燃やして更地にしたほうが再建もしやすいでしょう」
……どこからつっこんだらええかわからへん。ゾウっぽい何かは呪いの言葉を吐きながら燃えてる。ぐるんぐるん地面を転がって、消火してもうた。怒ってる。まずいやの。これは、めっちゃまずいやの!
「まだ生きてますね」
「ウチの今の魔力やとあれが限界やの。だから、決定的な致命傷にはならへんやの」
「そうですか」
ゾウっぽい何かがこっちに走ってくる。
あんな突進食らったら、死んでまうやの!
「神父様! 逃げてやの!」
「はぁ? どうしてですか?」
「どうしてって――」
ウチが言い終わる前に、神父様は服の下から銃を取り出して、ぶっ放してた。
……ゾウっぽい何かの額の中心ではなくて、口のあたりに銃弾がめり込む。貫通したっぽいやの。後ろの木に穴があいた。
ゾウっぽい何かはドンッと倒れる。
「仕留めましたかね」
「ひぇっ! オーバーキルやの!」
倒れてピクリとも動いてないゾウっぽい何かを踏みつけながら神父様は十発ぐらい撃ち込んでた。怖いやの……。怖すぎるやの……。慈悲がないやの……。
「これで退治できてなくて殺されるのは私達なんですから、始末はつけておかなければなりません」
「だからってこれは……やりすぎやの……。慈悲がないやの」
「痛みを伴うことなく無痛で天へ送り出したので、無問題です。神の名において、私は私の罪を許します」
この神父様、何しても自分で全て許してしまうやの。おそろしいやの。
ウチも一歩間違えてたらハチの巣になってたんかと思ったら、ゾッとしたやの。戦闘系の悪魔やなくて良かったやの……。
「あり? もしかしてもう終わっちまったか? ベヒモスが出たって聞いてきたんだけど」
「ゾウっぽい何かなら今しがたけいがハートを撃ち抜いてメロメロにして殺しましたよ」
ダメンズエクソシスト、来るのが遅いやの。だめだめやの。そんでもって、ウチがゾウっぽい何かを倒したことになってるやの! ハートどころか色々撃ち抜かれてる死体やのに!
「へぇ、すっげぇな! サキュバスってこんなこともできんのか!」
「これは、小焼様が――」
「けいがやりました」
「すごいんだねえあんた! 見直したよ!」
ピクシーにまで誤解されてるやの。ウチ、オーバーキルなんてせえへんもん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます