彼女に穏やかなお茶会は難しい
オホホホと口元に手を当てて、笑うのはシザア王国の王妃で、ウィルのお姉様ソフィーだった。
今、シザリア王国、ユクドール王国、ハイロン王国、そして私達のエイルシア王国が集い、進めていることがあり、度々シザリア王も来ている。今回はウィルのお姉様も共に来てくれ、退屈している私の相手を頼むとウィルから言われたらしい。
ウィルは私が退屈するだろうと、そこまで気づいてるのに、『怠惰に過ごさせるように』なんて命令を出している。そして城の皆が全力で取り組んでしまってる。しかも善意でしてくれてるのがわかるから、私も拒否しにくい。
その話をするとソフィーは楽しそうに笑い出したのだった。
「笑い事ではありませんわ」
「ご、ごめんなさいね。ウフフフ……笑いが止まらなくて!弟が!あのウィルバートが!そこまで心配しているなんて思わなくて……フフッ」
……笑い過ぎである。
「そういえば……この指輪をありがとうございました」
「あら?お役に立ちまして?」
ハイと私は頷いた。あんなに魔力の増幅があるとは思わなかった。
「指輪はリアン様に差し上げるわ。お父様が、この指輪をわたくしにくれたのはウィルバートが暴走したら止めろという意味だったのではないかと思うのよ。もちろんわたくし自身の身を守れということでもあったとは思うけど……」
「ウィルバートが暴走??」
ソフィーは私が聞き返すとなんとも言えない。複雑そうな顔をした。
「ええ。その可能性はあったと思うわ。お父様は元々はきちんと国を治められていたのですわ。最初から、責務を放棄していたのではないの。ウィルバートのお母様が亡くなってから、なにもかもやる気が失せたという感じになってしまったと耳にしたわ」
ウィルバートのお母様のことを本当に好きだったのねと私はせつなくなる。さらにソフィーは言う。
「弟が子どもができて、喜んでいるのは嬉しいけど、リアン様や子どもを失うことがあれば、ウィルバートもどう変わるのか……わかってるとは思うけれど……」
わかってる。私は理解していて、気をつけなければならない。
きっとそうなれば、ウィルの優しい部分は消えて、ウィルバートは闇に心を掴まれて突き進んで行くだろう。それはきっと国をも巻き込む破滅の道だろう。
「思っていた以上に責任重大な気がしてきましたわ」
「プレッシャーを与えるつもりじゃないのよ。ただ元気で明るくいつものあなたのように傍にいてあげてほしいの」
「それならできます」
私の返事に微笑むソフィー。
「異母姉といえど、なんの姉らしいことなどしてなかったわたくしに何かを言う権利はありませんけれど、ウィルバートをお願いします。リアン様もお体を大事にしてくださいね。城の皆が案じているのはわかります。行き過ぎたところもあるでしょうけどね。新しく生まれる子を楽しみにしてるのでしょう」
「ありがとうございます。わかってはいるのですが、案じられ過ぎてストレスになりそうですわ。そういえばシザリア王は近々、東の国と交易を始めると聞きましたけれど?」
「もう!もっと女の子たちが好きそうな話題をしなさいな!……でもそれが、きっとリアン様何でしょうけれども……そうですわ。情報が早いですわね。先日、決まった話ですのに。東の国は珍しい物がありますし、こちらも売れるものもあるとシザリア王は心弾ませてますわ」
なるほどと私は頷く。あまり交流のなかった地域だけれど、あちらからコンタクトを取ってきた?と見ていいのかしら?長く疎遠だったのに。今になって?政治の方向性が変わった?
「リアン様!胎教に悪いですわよ!また難しいことを考えてるでしょう?穏やかな気持ちでいることが大事よ!」
慌てた声に思考を遮られる。
「癖というか、自然と……申し訳ありませんわ」
リアン様をゆったりとしたお茶会に誘うのは難しいですわとソフィーは困った顔で頬に手をあてたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます