今日はどうかしている

「今日は何しようかしらー?読書とお茶と……あっ!そうだわ。お気に入りのお昼寝用のクッションはお洗濯終わった?」


 今日も元気に怠惰に過ごすわよー!と張り切っていると、アナベルは呆れつつ、ふかふかのクッションを渡してくれる。


「お嬢様、怠惰に過ごすことを張り切るものではありません」


 扉のところに直立不動でいる護衛係のトラス。苦痛そうに私の行動を見守っている。なにか言いたげにいるのが、すごく気になるのよね。


「トラス、私はこうしてのんびり過ごすし、行動範囲なんて後宮、庭、図書室くらいだから、ずーっといなくても大丈夫よ」


「そういうわけにはいきません!」


 ま、真面目すぎるわ……セオドアは必要がないと判断した時はいなかった。それなのにトラスは……いやいや、仕方ないわ。セオドアはウィルの護衛の役割があるもの。


 ウィル、ずっと忙しそうなのよねぇ。同じ城にいるのに、会えないときは会えない。なんだかもどかしい。私から会いに行くことはできないのよね。


 いつも私は待つ方だわ。私塾にいた時もそうだった。来る時と来ない時があって、来ない時はなんとなく退屈で、いつ来るのかしら?と待っていた。


「あーあー……」


「なんです?お嬢様、そんな子どもっぽい声を出して、どうしたんです?」


「私が男ならウィルバートの仕事を手伝えるのにって思ったの」

 

 女で王妃で、それを期待されてるわけじゃないから動けない。以前の国が傾くかどうかの非常事態ならともかく……今は理由がない。


 クスッとアナベルは笑った。


「怠惰に過ごしたいと言いつつも、お嬢様の性格では怠惰に過ごせるものではありませんね。陛下に来ていただけるようにお声をかけてみたらいかがです?手紙を運びましょうか?」


「いいの。ウィルは忙しいんだから、邪魔しちゃダメだし」


 そう言った瞬間、ドアがバンッと開いた。え?と私は口が開いた。ウィルを先頭に執務官達が書類を抱えてついてきていて、ドサッと机に置かれた。アナベルは驚きながらも、速やかに私のティーセットをどかす。


「どどどどどうしたのーーっ!?」


「今日はここで仕事をする」


 ウィルは不機嫌なのかしら?顔が怖い。彼は椅子に座って、無言で仕事を始める。


「なぜ私の部屋で仕事をするの?」


「別に……仕事はどこにいてもできるし」


 ついてきていたセオドアが額に手をあてている。トラスが説明しろとセオドアを見ている。


 ポンッと私は手を叩いた。


「もしかして!心配してるの!?」


「いいや!心配してない!オレはリアンもトラスも信用してるしな!」


「私、その噂のことだって口にしてないんだけど?」

  

 ウィルは言ってしまった後で、しまった!という顔になったのだった。私のさり気ない言葉にひっかかる。


 ………やっぱりそっちじゃないの。私は半眼になったのだった。

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