第20話 満員御礼!漢の勝負始めようぜ?
「どうしたらこんなことになるんだよっ!」
俺はラルドレース場のど真ん中で叫んだ。
見渡すと客席には人、人、人、満席の人で溢れかえっている。
「最近ラルドレース場がなくなって街にギャンブルがなくなったからのう。ワシが昨日周りに言いふらしたらこの有様じゃ」
「余計なことすんなって!」
『お集まりの皆様お待たせしましたっす! これから二人の出場選手のアピールタイムに入るっす!』
何でハナは司会進行やってんだよ!
『それではコール選手! お客さんにアピールおねがいしますっす!』
「こんな所来てないで帰って真面目に働けよ!!」
『おぉーっとコール選手ヒールっすねー! お客さんからは笑いと怒りの声が飛び交っているっす! さぁ! お次はダイリル選手アピールタイムお願いっす!』
ダイリルじいに目を向けると右腕を上げ、人差し指をだけ立てている。
「聞けい! 皆の衆! コールはワシの孫であるライリルを言葉巧みに操りマインドコントロールし自分の欲を満たす道具としておる! そんな非道が許されるのか! 否! 許されるはずがない! 年老いたワシではこの若いマンパワーに勝てぬかもしれん……がっしかし! 愛する唯一人の孫を助けるためにワシは命の灯火が消えようとも戦い続ける! そして愛する孫をこの手に取り戻すのじゃ!」
「嘘ばっかこくなぁぁぁぁぁ!!」
「さいてー!」「じいさん頑張れ!」「悪に負けるな!」「くたばれコール!!」
『おぉーっと! コール選手に物を投げないでくださいっす!』
四方八方から投げられてくる飲み物やゴミから逃げながらダイリルじいを見ると勝ち誇った顔でこちらを見据えている。
マジで許さんぞこいつ!
『では両選手セコンドのいる場所に行ってくださいっす』
まだ止まない罵声を浴びながら謎に水とマウスピースを持って「足もっと動かしてへ〜いへ〜い」と言ってふざけてるライリルの隣に座る。
「お前はお気楽でいいよなぁ」
「大丈夫! コールなら絶対勝つもんね!」
「簡単に言ってくれちゃってよ」
ため息を付きながらセラのいる相手サイドを遠目で見てみる。
「まだまだ腰が入ってないわよ!」
「はぁい!」
「そんなんでコールに勝てると思うの! 気合い入れなさいよ!」
「ふぁぁぁい!!」
どうしてサンドバック殴ってんの?
『それでは今回のルールを説明するっす。勝負は三回戦行うっす。先に二勝した方が勝者となりダイリル選手が勝ったらライライを取り戻せるっす。コール選手が勝ったらダイリル選手の身体を好きにする権利が貰えるっす』
その権利マジでいらないんだよなぁ……またお客さんからの俺への罵声増えたし最悪だよ……
『それでは一回戦の発表っす! 一回戦の種目は「品物をキレイにしろ! ピカピカキレイ対決っす!』
俺は仮にもリュースショップの店長だぞ?
品物をきれいにするだけなら俺が優勢だ。
『それでは両選手。中央に来てくださいっす』
「がんばってねコール! フレィ! フレィ! コ! オ! ル!」
「わかってるよ。さっさと終わらして店に帰ろうな」
「うん!」
俺はライリルの頭を一度に撫でて歩き始める。
「ワシはライリルちゃんのおしめを取り替えておったんじゃ。お前とは関係の年月が違う」
「なぁ、ダイリルじい……いや、ダイリル。ライリルはもう大人だ。家族だからっていつまでも過保護してんじゃねぇよ」
「ぁん? てめぇ孫いた事ねぇだろこら?」
「そんなに孫が必要なら孫の手でも噛じってろこらぁ!」
「食ってひ孫の手にしてやるよこらぁぁぁぁ!!」
勘違いしないでもらいたいがこれは俺が昨日の夜に考えた作戦である。
今のままだと、どうしてもダイリルに遠慮が生まれちまう。
だって孫が可愛いのはわかるし。
俺だってじいさんとばあちゃんには可愛がって貰ってた。
借金作ったじいさんだけど俺が小さい頃よく遊んでくれてたし、ばあちゃんも優しかった。
正直、ダイリルがライリルを家に連れて帰りたい気持ちも分かる。
だけどライリルにあんな風に泣かれてんのに「はいそうですかどうぞ」なんて言えるはずがないだろうに。
「手加減なんてしねぇからな。漢と漢の勝負しようぜダイリル」
「わかってんねぇ若造……いや、コール・リード!」
『それでは! 第一回戦スタートっす! レフリー!』
「ふぁ〜いとぉ」
ミール……本当にレフリーやるんだな……
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