第9話 やり直し
この第二作戦でも指揮官を任せられたレディットは、前回の記憶を頼りにして罠を避けながら中心部に繋がる道を的確に選んで進んでいった。
ダンジョンの恐怖は、罠や魔物などの"未知の存在"が待ち構えていることにある。ダンジョン攻略の心構えとして、そのような情報の無さに付け入られることは警戒する必要があった。それを理解しているレディットは冒険者として優秀な人物だが、ダンジョンマスターは何枚も上手だった。
レディットは今度こそ騙されまいと意気込んでいた。ところが、またしても彼は騙された。
「レディット様・・・。」
「どうした?」
青ざめた様子の兵士の顔を見て、レディットは何かが起きたことを察知する。
「インプの数が、激減しています・・・」
「どういうことだ・・・・戦力が底をついたということではないのか」
自分でそういっておきながら確信はなかった。
「前回とは違って、なんだか張り合いがありませんね・・・」
「何か思惑があるのか」
しかし、そうでなければこの迷宮の主は敗北を認めダンジョンを明け渡したことになる。
「・・・少数だけで進んでいく。後は待機だ」
探索は完了した。
しかし、ダンジョンの攻略は失敗したと言わざるを得ない。ダンジョンコアの奪取という最大の目標が叶わなかったから。
「おいっ!探せ!もっとよく探すんだ!」
「レディット様。探索は既に終わっています・・・残念ながら。どこか違う地下空間に持ち出されたものかと・・・」
「馬鹿言うな。コアがそんな簡単に持ち出せるか。悪魔といえども、そのようなことは・・・」
「では一体どこに・・・」
レディットは、ダンジョンがどこもかしこも閉路だらけで、コアを収められるような枝葉の葉の部分となる巨大な空間が存在しないのに違和感を感じた。
コアが存在するなら、特定のルートだけから出入りできて、奥まった位置にあると考えられるからだ。
しかし、見つからないものは仕方がない。
「・・・くそっ!コアが見つからなければ何のために・・・何のために我々は・・・」
ダンジョンから帰ったレディットは、自国の王に作戦失敗を報告するしかなかった。
選ばれし民である"ビエラ族"の威信を賭けた作戦だったのだが、後一歩の所で届かなかったのだ。
数か月後。
ダンジョンには調査隊が派遣された。
コアは持ち出されたのでなく、ダンジョンの主要通路をふさいで物理的に接触不能にしたというあり得なそうな推測だけが根拠であり、大掛かりなものではない。
ドガララララララララ・・・・・・・・・
「はぁ・・・はあ・・・。いつになったらコアが見つかるんだ」
「まだまだ先さ」
ダンジョンコアがすぐ目の前にあるとわかっていても、作業のスピードには限界があった。弓錐式の穿孔機を内部で組み立て岩盤に穴をあけていくという地道な作業を小数人で繰り返すことしかできない。
「運び出すのがまた手間なんだよなぁ」
確証を得るときまで、つまり魔力を検知できる距離まで作業が進むのに何年かかるのか、見通しは全く立っていない。
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