38.一件落着!?
「有里ねぇ……ごめん。私、変な勘違いしてて……」
「いやいや! 良いんだよ、元はといえば私が原因だしね……」
「ううん。悪いのは有里ねぇじゃない」
「えーっと……じゃあ誰が?」
有里ねぇが首を傾げながら、凛津にそう聞くと
「悪いのは……優太」
「……え? 俺……ですか?」
「そう、悪いのは優太」
そう言って凛津は俺の方を指差す。
「はは。これはこれで……一件落着?」
「なんでだよ!」
俺は隣に座っているテルの頭を2人にバレないように引っ叩いた。
「いたたた……優太君、痛いですよ」
「何も解決してないのに一件落着とかいうから……」
「優太!」
「はっ、はい!」
俺は正座の姿勢を再び整える。
今、どういう状況かといえば……それは少し前に遡り
☆
「でも、分かったでしょ。優太が好きなのは私じゃなくて凛津だってこと」
「……うん、分かった。でも、もう一つ分かった事がある」
「凛津?」
「優太は最低……」
「えっ?」
突然、流れ弾が飛んできた俺は面食らってしまう。
「優太は、アメリカに行っちゃう有里ねぇを振ったんだよね?」
「そっ、それは。だって……」
「わざわざ、泣いてる女の子を慰めに行っておいて、『好きです』って告白されたら、そのまま逃げてきたんだよね?」
「いや……逃げたって。あれは凛津が……」
「言い訳しない!」
「はい……」
「優太はそこに正座! テルと有里有里ねぇもそこの畳に座って」
「ぼっ、僕もですか?」
いつの間にか部屋に入って来ていたテルも巻き込まれた形となり……
「これからどうするつもりなの!」
なんて感じでこの会議が始まったのだが……
☆
「優太! 結局、どうするつもりなの!」
「えっ? どっ、どうって?」
「だーかーらー! 今の話を聞いても尚、有里ねぇじゃなくて私を選ぶのかって言うこと!」
そう言いながら、凛津は有里ねぇの腕をギュと握っている。
どうやら2人のわだかまりは解けたようだが、その分俺の扱いが雑になっている気がする……。
「……選ぶって」
「言っとくけど! ここまで来て、2人とも大好きだぞ! なんて答えは望んでないからね」
凛津が俺の方に、射殺すような視線を向けて来る。
「……」
俺は隣にいるテルの方をチラッと見る……が
「……僕は知りません」
小声でそう言いながら俺からサッと目を逸らした。
(テル……この中では唯一の男だし、力になってくれると思っていたのに……。)
再び凛津の方をチラッと見る……と
「……」
無言で俺の方をジッと見ていた。
これは逃げられない。
本能的にそう悟った。
「……で、デート? とか」
「はぁ? デート?」
凛津……怖いよ。
キャラが初めの頃に戻ってきてるじゃないか……。
そんな事を思いながらも俺は続ける。
「もし、有里ねぇが嫌じゃなければなんだけどさ……。有里ねぇが、アメリカに行ってしまうまでの間にもう一度有里ねぇと話をしておきたいかな……って」
「……」
「だからさ……こういう雰囲気の中で話すのもなんだし、それだったらいっそデートって形にして話したりするのも良いのかな〜……なんて」
「……」
気のせいか、凛津の俺を見る目がさらに険しくなった気がした。
ダメ……か?
結構良い考えだと思ったんだけど……。
それに、この方法ならもしかすると有里ねぇと凛津の体を元に戻せるかもと思ったんだけどけどな……。
「……じゃ、じゃあ」
俺が次の案を口に出そうとした時
「凛津がいいなら……。私、やってみたい……な」
凛津に抱きつかれていた有里ねぇがそう言った。
「有里ねぇ……」
「もっ、勿論! 凛津が嫌なら良いんだけど……」
有里ねぇは手をアワアワさせながらそう言った。
これはまた一悶着あるのか?
俺はそう思って少し身構えた……が
「有里ねぇが、それでいいなら……」
そう言って凛津は俺の提案を案外、あっさりと承諾した。
けれど
「確認しとくけど。優太って私のこと好きなんだよね?」
「……そっ、そうだよ」
「じゃあ、デートしたからって他の女の子に気持ちが行っちゃうなんてことないよね?」
そう言いながら凛津はまるで人を殺すような目で俺を見てくる。
「あっ……当たり前だろ?」
「本当?」
俺はブンブンと音が鳴りそうな位に、頭を振った。
「そう……なら良かった!」
凛津はそう言いながらまた、いつもの調子に戻った。
実は凛津……本当に二重人格なんじゃ……
「優太? 今、変なこと考えてないよね?」
「考えてませんっ!」
「ふふっ。優太君、もうすっかり尻に敷かれちゃいましたね……」
「テル……軽口もほどほどにな」
「ゆっ、優太君? 僕、一応年上なんだけど……」
そんなこんなで、あの夜の事件は一件落着? した。
代わりに、俺には新たなミッションが2つ追加された。
一つは、有里ねぇと凛津の体を元に戻すこと。
そして、もう一つは
「優太! ついて来て!」
「えっ? どこに?」
「それは……」
「「私達の学校に!」」
何故か有里ねぇ達の通う学校へ行くという事だった。
残り数えるほどしかない夏休み、おそらくこれが最後のデートになるだろう。
夕方で、もうすっかりと赤く染まってしまった空を、窓から眺めながら俺は1人、そう思った。
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