第58話
ハロウィン
はーい、ぼくジャック。
世間ではジャック・オー・ランタンって言う名前がメジャーかなぁ。
そう、ぼくかぼちゃ頭。
本当はカブ頭なんだけどねー、ぼくを作った人いわく
――ジャック・オー・ランタンはかぼちゃでないとね――
だって。
で、ぼくの使命は今日10月31日にWDの中をウロウロして
『Trick or Treat』
を、言いまくるというもの。
日本で恒例のお菓子くれなきゃイタズラするぞ?ってことなんだけど、イタズラはなしで、お菓子くれたらいい事があって、お菓子くれなかったら何も無いっていう感じ。
10月31日になった瞬間から僕は生まれてうろちょろ。
24時間ほど活動するよー。
うろちょろって言っても、全員に聞くことは難しいから目に付いた人に聞いて、場所をワープで変えてまた聞いての繰り返し。
聞いて回ってもみんなお菓子持ってない人ばっかり。
たまーに果物くれるから、うーん、まぁセーフかなぁ?ってことで、今日1日狩りをするとドロップ率アップのお守りをプレゼント。
美味しいお菓子が欲しいんだけどなぁー。
――――――――――――――
「うひー、ペーストにする大変さよ」
「美味しくするためだから仕方ないけどな」
「いいサツマイモだから上手く出来そうだしな」
そう、たまたまログインしてツインズと薬草採取に向かって、いつもの様に上を見上げたらリンゴ。
視線を下げたらなんか見た事あるツルと葉っぱ。
これサツマイモじゃない?とツインズを呼んで、うんとこしょーどっこいしょーですよ。
いやほんとあの絵本かな?ってくらいでっかいサツマイモが。
赤子サイズやんって思わずツッコミをね。
ゴロンゴロン取れたし、どうやら同じツルから普通のサツマイモも紫芋が取れたっぽくて。
「いっちょ焼き芋チャレーンジ!」
ってことで、1つを堂々と燃やしてみたらまぁ素晴らしくねっとりホクホクの焼き芋が出来上がりまして。
最高か?ていうね。
残りをいそいそ持ち帰り生産部屋ですよ。
途中卵とか買い足してね。
「で、せっせとペーストにしてる訳だが」
「交代しよういろは、サツマイモチップスするからスライスして」
さつまいもの裏ごしのしんどさよ。
交代してひたすらスライスして水にちゃぽーん。
アク抜きしないとね。
で、それをしっかり水気を拭いてから油でじっくり揚げます!
からの砂糖とはちみつと水を煮詰めたタレに絡めて完成!
「サツマイモチップス!」
「やめられない止まらない」
「罪深き味」
ほんとそれよ。
どんどん揚げてる最中にペースト作業も終わり、成形して卵塗ってオーブンに。
そしてすぐ完成スイートポテト。
「これ焼き芋をさ?オーブンで低温で焼いたら干し芋なるかなぁ?」
「あぁ、なるかもね」
「やってみようか」
なんてことを繰り返し、大量のサツマイモ菓子の完成です。
まぁー……見事に芋祭り。
秋の芋祭り。
「……なんか俺仕事した気分」
「わたしは芋祭りでテンションあがった」
「俺はこんなでかい芋が現実にあればってちょっと思った」
それぞれの感想を言いながら生産部屋退室。
からの、お世話になってる方にお菓子配りツアーを開催。
もちろん師匠のとこにもね!
「エヌさーん?」
「なんだ?」
「……はっぴーはろうぃーん?」
「聞かれても」
ははは、Trick or Treatは言ってもらう側だな今と思ってたら出てこなかったんだよ、ははは。
薬爺もいたので、スイートポテトを贈呈。
あと干し芋。
「ありがたく」
「じゃあわしらはお茶にしようかの」
次は騎士団でリオン団長達に。
こちらは干し芋とサツマイモチップス。
「お嬢ちゃんたちつくったの!?ぱりぱりもしっとりもどっちもいいね!」
干し芋はお腹にたまるし甘くて美味いと好評のようで、若手?はぱりぱりが止まらない!ともりもり食べてる。
赤子サイズの芋がゴロンゴロン取れた時はどうなるかと思ったけど、無事に消費できそうだね。
さて、最近あまり行けていないアルファさんとベータさんのところ。
どうなら甘いもの大好きらしく、スイートポテトを多めに渡してきた。
またいつでも来いよーと言われたけど、素材がありません……という。
早く見つけたいところ。
あとはお世話になりっぱなしの八百屋のお母さん。
ギルド職員のアールさん。
結構くばって無くなったんじゃない?とローブの中に手を突っ込んで在庫を確認しようとしたら目の前にかぼちゃ。
『かぼちゃ』
「ジャック・オー・ランタン?」
オレンジのかぼちゃに身体がついてる。
ちなみにスーツ着用ですけど。
真っ白のスーツとはまた……良くも悪くも目立つキャラだなーと眺める。
すごいなぁ仮装するなんてと思ったら振り返ってバッチリ目が合った。
いや目が合ったってかぼちゃのくり抜かれたところの奥に光があって、たぶん目?みたいな感じ。
すごいどうなってんだろう?
「そう、ぼくジャック!Trick or Treat!」
「あ、はい」
手にあったサツマイモチップスを贈呈。
「……え?」
「え?だめ?じゃあこれも」
干し芋贈呈。
「え?」
「あれ?苦手?これなら食べられる?」
スイートポテト贈呈。
「すごいお菓子だ!!」
「え?Trick or Treat言われたから」
「サイコーじゃん!今日イチだよ!君達にこれをあげるね!」
そう言ってもらったのは目に見えないという。
ステータスに追加してあるからね!と気がついたらジャック・オー・ランタンはいなかった。
どこ行ったんだ…?
瞬間移動とかできるの?え?プレイヤーでもなかったの?
イベントとか聞いてないけど?とツインズと頭の上にクエスチョン。
ちなみにもらったのは
――ジャック・オー・ランタンの恩恵 ――
どうやら収穫祭に因んで、自分で収穫したものの品質が上がったり、数が多めに取れたりするらしい。
地味に嬉しい。よく収穫する人間からしたらありがたいものだ。
「なんかお菓子作っててラッキーだったね」
「報われた感じする」
「それな」
――――――――――――――
「めちゃうまー!」
24時間あちこちでTrick or Treat言いまくって得られたものを目の前に並べてみたけど、圧倒的くだもの。
その中ひときわ目立つ芋菓子。
ドキドキしながらサツマイモチップスを口に入れたら、パリパリで甘くて最高。
ちょっと厚めで硬いのがまたいい。
干し芋はねっとりしっとりでお腹にたまる感じ。
そしてなにより、このスイートポテト。
絶品。
滑らかで舌触り最高。
粒感なんてない。
とろっとろ。
かろうじて形を保てる感じだから、指の力間違ったらすぐ崩れそうなぐらい。
手間暇かかってますっていう味。
「はー、あの3人組に声掛けてよかった、またそのうち会ってみたいなー。来年も役目が回ってきたらあの3人組を探しに行かなきゃね!」
今年の仕事は終わったから、ゆっくりこのお菓子とくだものを堪能しよーっと。
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