第46話

初イベ番外編


モブの視点



さぁついにやってきたDWの初イベ!

この日のために装備は新調したからな。

俺はやる気に満ち溢れている。


で、イベントフィールドに飛ばされて、はたと目を引く3人が目の前にいた。


――よくみる人だな――


そう、よく見かける。

たぶん社会人だろう。ログイン時間が被るからな。

学生っぽさもないし、と考えてるけどどうだろうか。


ついでに男2人はとんでもないイケメンだ。

周りの女子がきゃって色めき立つくらいには。

顔も似てるから兄弟、もしくは双子あたりか。

仲良いんだろう。

そこに紅一点でいるのがローブを着た女の人。

妹かな?なんかお世話されてる感がすごいしな。


ちなみに、この女の人をよく見かける。

DW開始当時から見かけてたから一陣なんだろうけど、結構な間初期装備だったのも目立ってた。

つーか、プークスされてたからな。

その人のペースがあるんだからほっといてやれよ…と思いながら見ていたのを覚えてる。


よく噴水前でストレッチしていて、それもプークスの原因だったのだろうけど、ふとそれは意味のある行動なのでは?と思い立って、俺も1人のタイミングでストレッチをしてみたら、体が動かしやすくなった。

なるほど、それならと筋トレをしてみたら確実に筋力がついたのもわかった。

理にかなってる行動だったんだな、と発覚したから余計に気がついたら見ているってこともあるんだけども。


観察してみたら、やたら住人と会話していたり、むしろお世話されていたり。


特別な美女!みんなが振り返る!ていう訳では無いけど、まぁキレイな人。


つーか、あの男2人と目元が似てるから妹とかだろうな?と。



で、その3人が目の前に。

男2人は装備も変更して、レベル上げてんだろうなっていう印象。


で、だ。

女の人が濃紺のローブを着ていた。

そんな装備売ってたっけ??と考えながら、武器も持ってないように見えるけど、どうするんだろうか、と考える。

前は初期装備に和弓を体にかけていたから、弓使いかって思っていたけど今は弓は見えない。

職替えたか?


あ、始まる。



周りのテンションに急き立てられて慌てたスタートダッシュして3人のことを一瞬忘れてたけど、戦闘中にまた視界に入ってきた。

そこで不思議なものを見た。


――なんだ?――


女の人の前方にいたゴブリンの動きが悪くなって、それを男2人が倒す。

連携してる?

女の人は何をしている?杖持ってる?足止めさせている?と、目の前のゴブリンを殴った時、その先にいたゴブリンが檻に収納されていた。


いや何言ってんだよって話なんだけど、地面からぐわ!!って檻ができて閉じ込めていた。



「…は?」



なに?と言う言葉は、ゴッ!という鈍い音で飲み込んだ。


――氷がとんできた?――


何したんだ?と確認しようとしたら、騎士団とも会話していて、本当にこの人なんなんだ?と混乱してくる。



自分も敵を殴り飛ばしながら注視していたら、何やら3人でごにょごにょ話をしている。



「よしきた!!」



――え?なにが?――


と、俺を含め数人のプレイヤーが注目する中でその人は軽快に杖を掲げた。




「ぬかるみドーン!からのー!?いでよ!ミニチュアファミリー!」


『え?』



いや、周りのプレイヤー数人で被ったよ。

そしてそこに居たのはあの有名なミニチュアなファミリー達。

色こそ土色だけども、うさぎの家族が微笑んで動いている。


――うわすご!え!?すご!――


ミニチュアファミリーだけど俺らの腰くらいあるから全然ミニチュアじゃないけど、結構精巧なつくりをしている。

どうやって動いてる?核か?いやでも急に現れた。


じっと見ていると、うさぎの首あたりに文字が一瞬見えた。


――ということは、emethか?――


確かヘブライ語にあたる真理。

壊すには、1文字取ってmethにすれば動かなくなる。

先頭にいたうさぎは首あたりに見えたが、他のうさぎは違うところにあるようで首に文字は見えない。

よく出来ている。


感心していると、急にミニチュアファミリーが走り出した。



――…撹乱か?――



ゴブリンも驚いているが、それよりもプレイヤーの方が驚いている叫び声が聞こえてるけども。

本人たちは近くのゴブリンを倒しまくってる。

なんか…すげえな。


なんて思ってる間に、ボスらしきでかいヤツが現れた。

今の装備じゃキツイもんがありそうだな、と近くのゴブリンを倒していたら、また何やら3人でごにょごにょしている。


先程の様子を見ていた他のプレイヤーもじっと動向を伺っている。



――なんだ?3人で並んだ?――



ヒュ!!と3人がなにか投げたのでその先を見たら、ボスの目と眉間に何かがヒット。



――なにしてんだこの3人――



なんか、…うん。

周りのプレイヤー達と目を合わせて、無言で頷く。

思っていることは同じだきっと。


もうこれ以上何かされても驚くことはきっとない、と思ったが、爆発とともに現れた魔法騎士団とも知り合いらしい。



案の定、最後の賞も獲得してる…。



このまま辞めることなくゲーム続けて楽しんでもらえたら、陰ながら応援したい人達だな。


またそのうち見かけたら陰ながら応援しよう。






モブ子の視点


はじめてのイベントで気合いは十分!だけど大量のゴブリンに流石にうんざりしているところ。

可愛くない。

もう本当に可愛くない。

こんなに!気合を入れて!オシャレをしたのに!


イケメンが颯爽と現れて大丈夫かい?なんて言ってくれることもなく、みんな戦闘だー!って感じだし、ちょっと期待はずれ。


甘酸っぱい感じどこにもない。


はーあ、と思ってたらプレイヤーがザワついてる。

え?ついにイケメンとかでてきた?かよわい女の子演じる準備は万端よ!?

と思ったら、有名なミニチュアファミリーのうさぎが走ってきた。


――……かわいい――


え、敵?味方?

そんなのどうでも良くなるくらい可愛い。

わたしの好きなものが動いてるっていうか走ってる。

土色だけど。


ピタッと立ち止まって、どうしたのかなって見てたら、にっこり(したように見えた)して手を振ってくれた。


――っかわいい!!――


抱っこしたい!と動こうとした瞬間、綺麗なお辞儀をして泥に戻った……。


その姿に気がついたら涙が…。



「だ、大丈夫?」



近くにいた見知らぬプレイヤーに慰められながらイベントは気がついたら終了。

今回のイベントではお友達をゲットした。

恩人?であるミニチュアファミリーにまた会いたい……。

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