不遇職【ポーター】のスキルがバグってる件 ~頭の中の「管理者」に書き換えてもらったら、魔物恐怖症の俺でも無双できました~
夢見金獅子
第1話 魔物恐怖症
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慣れてきたので、ちょっと前に氷像にしたタフベアー(重量約300kg)を、あいつの頭上へ落としてみる。
この高さなら着弾までの時間は変わらないが、重さは桁違いだ。
フッフッフ。さあ、行ったれ!!
ヒュゴオオオオォッ!!
ズゥウウン!!!!
轟音と共に、マグマゴーレムの巨体が粉々に砕け散った。
あ、やっちまっ、
「ダメだよー。ちゃんと自分へのリスクも計算しないとさー。」
周りを見渡すと、マグマゴーレムのいた場所を中心にクレーターが出来ており、俺の周囲半径1メートル程の円を描く範囲より外側は、全て吹き飛ばされていた。
「ゴメン、何か計算に夢中になっててさ。」
「まー、いーけどねー。」
スレインは、どーせ危ない事するんだろーと思って(失礼な)、サンクチュアリ(聖域)という魔法を使っててくれたらしい。
物理攻撃無効化……ちっ、このチートが! 助かったけど。
――これは、魔物が怖くて戦えない「ポーター(荷物持ち)」の少年が、物理法則を味方につけて無双してしまう、不遇と勘違いの物語。
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クソっ、この手段に頼るしかねぇ…か。
スマン、ちょっとだけの筈が予定が狂っちまった。
すまねえが暫く居させて貰うぜ、
なぁに、どうにか妙案見つけてすぐ出てくからよ、
あー!…もう良い子だからそろそろ泣き止めって!
その内何かお返しすっからさ。な!
しーーっ。そうそう良い子だ…ヨシヨシ…。
…………
「おーい、ジャック!コッチだ。いつまで蹲ってんだ。いい加減この森にも慣れやがれよ。もう十二歳だろうが!」
「父ちゃんまだかよ…。ホラ!アッチの八十メートル先に魔物二匹!ヤバイって!早く帰ろうぜ、あ、もう俺、膝が…。」
ガクガク震え始める膝を抑えながら、ジャックは父ちゃんに情けない声で懇願するが、
「ッチ、仕方ねえ、今日はあと二本で終わりにすっから、もうちっと待ってな。まあ、もし襲いかかってきてもこの辺の魔物なら、父ちゃんがサクッとやっつけてやっから心配すんな。」
結局帰らせてくれねえんじゃねえか…と心で泣いた。
ジャックの父、ザックは木こりの仕事を職業としている。ジャックの住まいが、わざわざライブ村の端から連なるライブ森林帯のほど中に居を構えるのにはそういう訳があった。
「しっかし、オメェを連れてくると魔物が何処にどんだけいるか分かって助かるな。」
「うっせえやい。俺だってこんな力身に付けたくて付いた訳じゃねーんだからな!世の中には知らないで済むなら知らなくていい事が…」
「だー!わーかったって、わかったからもうちょい待ってくれ。」
そう、幼少期に魔物に恐怖を植え付けられたトラウマを持つジャック。あまりに魔物が怖すぎるゆえか、物心がつく頃には、魔物が何処にいるのか、相当に遠い位置からも把握出来るようになってしまっていた。具体的に言えば、そのサーチの範囲は凡そ半径二キロ程、ついでにもうちょこっと詳しく言えば、一キロ圏内かつ大体50センチ以上の体長の魔物であれば、位置、大きさ、輪郭まで寸分違わず把握出来る。ただし、把握できるのがそこまでなので相対した事の無い魔物は当たり前の話だが何者かの特定は出来ない。せいぜい何かこんな形のこんな大きさの何かが其処にいる、程度となる。木こりであるジャックの父、ザックも生物の気配を感知する能力が無い訳では無かったが、せいぜい視界の範囲プラス十メートル前後に何かいるかな、位で、素人よりは当然鋭敏に感知出来る能力はあるにはあるし、ジャックの様に魔物限定ではないので有用といえば有用ではあるが、ジャックと比べてしまうと、ヤマ勘の域を出ない。もうソレに関しては性能が段違い過ぎて、ジャックに他の用事が無い時は(基本的に無い)専ら、こうして恐怖症の克服を名目に、森に連れ出しているのである。いわば、便利な人型高性能魔物探知機である、但しワーワー五月蠅いのとスグに帰りたがるのが難点ではあるが。
「オメェももうすぐ天授だ、そんな調子で大丈夫か?」
「俺だって、それについちゃあ心配で仕方無ぇよ!間違っても近接戦闘系の職種には当たらないよう、毎日ニベール様には祈ってるさ。もしそんなモン当たったら俺は一生家から出ねえかんな。」
「はは、母ちゃんとメルはそれでもいいとか言いそうだな。」
「けっ!冗談だよ、冗談!なんでこんな魔物だらけの森の中にわざわざ住まなきゃなんねぇんだ、すぐに家出てぜってぇ魔物が出ねえ安全安心な街のド真ん中に住んでやるんだ。」
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「おーし、こいつで終いだ。ところで…さっきの魔物の気配は大丈夫か?」
「…もう帰るんだな?絶対に絶対だぞ!………、実は大丈夫。マドトレン卜だから。」
「……。…ったく、道理で結構魔物と距離近いのに大してテメェが騒がねえと思ったんだよ。」
マドトレントは魔物ではあるが、木の魔物で近付くと枝を振り回して攻撃してくるぐらいで根は動かせないため移動が出来ないのだ。
「よって、近寄ってはこれないから、元々問題無い…(ゴン!)アダっ!?」
「なら最初からそう言え!バカタレが。なにが、よって…だ。誰に説明してんだ、もう帰るぞ。」
「父ちゃん、斧の柄で殴るのはマジヤメてっ!頭に柄型の窪みが出来ちゃう!!」
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