028 母の想いと穏行と
「そういうことですかい、俺たちが仕入れてきた話とだいたい同じですね」
「いえね、ダンナを捜しがてら ヒサのアニキと二手に分かれて ちょいとばかし聞き込みってやつをやってみたんでさ」
「若旦那、あとこれはホントかウソかわからねぇんですが、その前任の代官のことなんですがね、一部では、毒を盛られたんじゃねぇかって話なんですよ」
「毒?ですか、穏やかじゃないですね。」
「ええ、ただね 旦那の話にもありやしたが そのあまりにも病になるのが 急だってんでね、あとタイミングが良すぎってのもあるみたいでさぁ」
「仮に毒を盛ったとすると、断言するには 早いですが…前任者にいつまでも代官を続けられてちゃ困る人物がいたってことですね」
「はぁ~、面倒なことになってきましたね。」
「あと、面倒ついでに こんな話もありやした。」
「なんでも 今の代官には 倅がひとりいるようなんですがね そいつが どうもベルニーニさんに 懸想けそうしてやがるようなんですよ」
「まぁ、ここの宿の女将は、なかなかいけてますからね」とタケ。
「おいら的には、妹ちゃんもなかなかいけてるって思うんですがね」
「タケぇ~!」
「おぉ、こえぇ。こえぇ、ヒサのアニキは 堅物だよな」
「だから アニキじゃねぇつってんだろ」
「はいはい、お二人とも仲良しさんなんだから…」
「「仲良くねっす」」
「ほら」とクスクスと笑みをこぼすミキである。
「さて、そろそろ 夕飯の時間でしょうか?」
「食堂へ行ってみましょう、なんだか呼んでいただくのも悪い気がしますので」
「だな」
◇
食事は、なかなか美味しいものであり 特にヒサとタケの二人は ヴェスドラッヘの町でしか飲めない地酒に舌鼓をうっていたようですね。(えっ?ここは 食レポをするところだって。ないですよ、今回は)
食事の後、一人になったミキは 今日の出来事を思い出していた。
(はぁ、聴いただけの話ならどう考えてみても 今の代官が怪しいんですけどねぇ。身分至上主義っぽいですし。ですが そんな方が 皇都のすぐ手前の町の代官になれるんでしょうか?そういえば 代官の辞令の話も…たしか町長(まちおさ)や村長(むらおさ)が 存在する町や村の場合 そこに赴任するものは、民との折衝をスムーズに行うためにその町、村の代表者及び代表者によって選出された数名のものに挨拶を行う際に必ず辞令書を持参、双方確認を行うこととあったと思うのですが…、ロビーナさんの話を聞く限りでは はっきりしていませんね。その辺りも含めて調査が必要なんでしょうが…手数が足りません。はぁ 仕方ありませんね、皇都に応援を頼みましょうか、自らの手に余る問題に首を突っ込むんじゃないって叱られますかね)と、呟きつつ通信の魔道具に手をやろうとしたところ…。
「お困りでしょうか?」と上の方から声が聞こえてきます。
「誰?っていうか クラリッサの配下の人ですよね」
「あまり驚かれないのですね」
「一応、いつも同じ気配は 感じていましたから。たしか ジーナさんでしたでしょうか」
「(ガクッ)穏行は、得意なはずだったのですが」
「うん、すっごく気配が薄いよ。たぶん、あの二人ですら気付いてないって思う」
「で、お困りか お困りじゃないかっていうと すっごく困っています。もしかして 手を貸してくださる?」
「はい、陛下とクラリッサより、もし『ミキが困っているようなら手を貸すようにと。あ奴のことじゃ、なんだかんだいって困っているもの、虐げられているものを見過ごすことは 出来んじゃろうて』とのお言葉がありました」
「はぁ、お見通しですか。母さまには、かないませんね。ジーナさん、よろしくお願いします。手を貸してください」と頭を下げるミキである。
「あ・頭を下げないでくださいまし、ミキさまに そんなことさせたと後から侍女長に知れたらどんな目に遭うか…」
「そんな、すみません。では 改めまして 今回の件、よろしくお願いしますね」
「はい、お任せください。具体的には どのように?」
「うん、それなんですけどね…」
と先ほど思い出しながら 足りないピースをどうするか?悩んでいたことをジーナに語っていくミキである。
「…では そのように。」
「うん、でも 無理も無茶もしないでくださいね」
「委細承知」と短く言葉を残し 一瞬にしてこの場から消えたのであった。
「相変わらず、あの侍女さんたちハイ・スペックだよなぁ。というか 皇宮勤めの侍女スキルに 穏行なんているんだ」とクラリッサ配下の侍女団に首を傾げるミキである。
(さてっと、これで 問題のいくつかは 解決出来そうかな?あとは 明日 ヒサさん、タケさんにもう一度聞き込みをお願いして、僕の方は ロビーナさんに会いに行って 町長(まちおさ)さんに会わせてもらうことにしよう。あっ!そういえば お茶のお礼を 言ってなかったような気が…まぁ それも含めて明日…ふぁ~うみゅ~)
旅の疲れと相まって そのままベッドに倒れ伏しそのまま眠りについたミキであった。
◇
ミキが 眠りについてしばらくして、ベッドの横に起つ影一つ
「頑張っちゃってから、もう。あまり 無理しなくていいのよ。あぁ、でも わたしのために頑張ってくれてるのだものね、こんなこと言ってちゃダメよね、風邪引いちゃうわよ」とそっと布団をかける影…まぁ 心配性のエリステル陛下ですね
「陛下、そろそろ時間切れになります、お急ぎくださいまし」
「あぁ、うん。ミキ、頑張ってね、またね。おやすみ」そっとミキの額に口づけるエリステルである。
◇
それから 小鳥のさえずる時間、そう東の空が明けてきた頃、ようやくミキが目を覚ます。
「ふぁ~、なんだかあったかい夢を見てたような気がする。あれ母さまの匂いがする…ってまさかね」
「さて、今日は することがたくさんあります。ヒサさん、タケさんのお二人は もう起きているかな。まずは 顔を洗ってこようっと。それからですね」
◇
「おっ!若旦那」、「ダンナ」
「あっ、お二人とも。おはようございます」
「顔を洗ったら、朝食の時間まで 少しお話があります。よろしいでしょうか」
「うん、今日の段取りか?」
「です、今日は、お二人には 申し訳ないのですが いろいろとお願いしたいことがたくさんあります」
「ほう、なんだかスッキリした感じだな。方向が 決まったのかな。それとも…いや そっち方面はないな」
「うん、ない」
「なんですか?お二人とも」
「「いや、なんでもねぇ」」
「はぁ、よく解りませんが」
◇
「というわけで、クラリッサさんの配下の方に ちょっとしたことをお願いしてあります。その報告次第で、うつ対策が変わってきます。おそらく足りないピースが見つかると思います」
「で、俺たちの方は?」
「はい、町の噂をどんな些細なことでもいいので 集めてきて欲しいですね。あと中小規模の馬車置き場完備だった宿のその後についても出来ればお願いします」
「おっしゃ、まかしときな」
「うん、まかせなって」
「はい、よろしくお願いしますね」
「ようやく一歩前進ってとこかな」
「だな」
029 明かされていく謎
「こんにちわ~、お言葉に甘えて早速来てみました」
ここは、昨日も よったヴェスドラッヘの町の小物屋さん『ロビン商会』、店内は 朝も早いことから客もまばらの様子。それより 朝早くからお客がいることの方が すごいのか。
「あぁ、ミキちゃんだったかしらね。いらっしゃい。もう少しで手が空くから待ってちょうだいね」
「あ、朝早くからすみません」
売れている品物を見てみると、どうやら茶葉を購入している様子。小物屋さんだけどちょっとした日用雑貨も扱っているみたいですね。
「お待たせ。昨日ね、あのあとすぐ 町長まちおさに連絡を取ってみたのよ、そうしたら 『辞令』なんて見せられてないって言うじゃない。で、今ここに来ているのよ、紹介するわね」
「こりゃ、またえろう別嬪さんだのぉ、わしがこの区の 町長(まちおさ)のマーフィと言うものじゃ」
「あっ、初めまして。皇都から来ました『エチゴヤ』商会のミキと申します」
「ほぉ、『エチゴヤ』さんとな、これは これは。ロビーナさん、あんた とんでもない人とお知り合いになったようじゃな」
「?」顔に疑問符が浮かんでる小物屋女将のロビーナである。
「どうやら、何も知らぬようじゃの」
「すみません、昨日は ただのお客としてこちらをお尋ねしたものですから」
「いやいや、これも何かの縁じゃろうて」
「なんだい、なんだいマーフィの爺さん。あたしにも 解るように話しておくれでないか」
「そうじゃの。こちら『エチゴヤ』のミキ殿は、あの『ライト・エール』を考案し 一手に扱っておるなかなかのやり手」
「えっ!えぇ~~~、あんた お貴族様じゃないけど とんでもないお人だったんだねぇ」
「そんなことありません。ただのミキですよ」
「まぁ、世間一般に名の通っておるのは『ライト・エール』じゃがの。わしは それよりも あの『保冷と保温』の魔道具の開発者として興味があるのじゃがの。っと 話がそれよったわい」
「なんとも まぁ。うちでも使わせて貰ってるよ。『保冷・保温の魔道具』」
「それは、有り難く存じます。どこかご不便なところはございませんか?」
「あぁ、そりゃ文句なしに」
「これこれ」
「それでの、わしが 今日ここに来ておるのは なんじゃったかの。そうそう、今の代官が就任したときに 『辞令』を見たか どうかじゃったかということで その話をしに来たんじゃ。ロビーナさんにも話したのじゃがの、わしは見ておらんのじゃよ」
「そうでなのすか」
「うむ、二年前じゃったかの、わしもな、先代の代官が着任するときには、『辞令』もみせてもろうたのじゃが、今の代官が着任するときには 見せられんかったの。まぁ 先代代官の声かけで着任したということじゃから、誰も何も 疑わなんだがの」
「そういうことですか」
「それにの、わし以外は、仮に辞令を見たとしても それが本物かどうかなど 解らぬよ」
「わしは、たまたまなり手がのうての、二度目の 町長を拝命しとるのじゃが、他のもんは 今回が初めての 町長なんじゃよ」
「実はですね、こんなことを 言うのもなんですが 代官が新しく赴任・就任する場合 『町長や村長が 存在する町や村の場合 そこに赴任するものは、民との折衝をスムーズに行うためにその町、村の代表者及び代表者によって選出された数名のものに挨拶を行う際に必ず辞令書を持参、双方確認を行うこと』という決まりがあるんです。」
「なんと!そのような決まりが…」一瞬 町長に緊張が走る。
「えぇ、もっとも それを 町長や村長が知らなくても罪に問われることはありませんけど」
「ふぅ~、良かったのじゃ。良かったのじゃ」
「もっとも それを しなかった代官には 相応の罪がありますが…」
「なんと!それは まことか?」
「はい、ひどい場合は 代官職の剥奪及び鉱山送りとかですね、まぁ ただ単に忘れていた場合は、現行職の解任、つまり代官を辞めていただくという形になるでしょうか」
「ほうほう」
「出来れば 他の方々からのお話も念のため伺ってみたいのですが…」
「ロビーナさん!」
「あいよ、爺さん」
「さっそく他の区の 町長連中にも集まってもらうとしよう」
「ツグミ~、あんた ちょいと他の 町長たちを呼んどいで」
「は~ぃ」
「急ぐんだよ、この時間なら 寄り合い所にいるかもしれないから」
「えっ?えっ? こんな早くから 大丈夫なんですか?」
「「大丈夫に決まってます」る」
「はぁ、そうなんですか」
そのときミキの頭上から一枚の紙が舞い落ちる。
それを すっと受け取ると 中には…
<ミキさまへ
急ぎ昨日の件につきお知らせいたします。
現代官には、背任・横領及び先代代官へ毒殺容疑あり、追って証拠となるものお届けいたす>
と、認めてあった。
「そうですか、そういうことですか」
とミキが 読み終わると同時に
「ごめんくださいまし、こちらに皇都からお見えになっているミキさまは いらっしゃいますでしょうか」
小物屋の入り口を見やると そこには 昨夜話したジーナの姿が。それもメイド服に身を包み。
「いらっしゃい、ミキさんなら こちらに。」
「わたしは、皇都の商会『エチゴヤ』にて ミキさまのお側にお仕えしているものにございます、ジーナと申します」
「おやまぁ、これは ご丁寧に。わたしは ロビーナって言うんだ。よろしくだね」
「旦那さま、こちらに 背任・横領の証拠、そして こちらの毒が彼のものの部屋の金庫より出てきたものです。あと『辞令』につきましては 代官屋敷の何処を探しても見つかりませんでした、よもや彼のものが肌身離さず持っているとも思えませんが…」
「そうですね、すみませんが ジーナ。『真偽官』を二人ほど呼んでおいてもらえませんか、出来れば皇都から一人とこの町…すみません、ロビーナさん。この町に 真偽官は いらっしゃいますか」
「そうだねぇ、確か…」
「真偽官ならおるぞ、東区の代表の倅が真偽官のはずじゃ。」
「ツグミ~、東区へ「は~ぃ、今から早速行って呼んできますね」、早っ!」
「なんか 元気な方ですね、ツグミさん」
「もぉ~、なんだろうね。あの子ったら!お客さまの前で 恥ずかしいったらありゃしない」
「主がそれを言うか?ロビーナや。お主なんぞ、もうすぐ結婚するって段になっても跳ねっ返ってばかりおったはずじゃが?」
「ちょいと、およしよ。爺さん。そんな昔の話を持ち出すんじゃないよ」
「おふたりとも 昔から?」
「あぁ、この人は うちの亭主の親なんですよぉ。あたしにとっちゃ、義理の父親ですかね。まぁ あたしの何処が気に入ったのか しきりに今の亭主をすすめてきましてね」
「あやつは、わしの目から見ても 悪い奴ではないんじゃが いかんせん覇気にかけておる。多少、跳ね返っておっても 芯のしっかり通ったおなごを 嫁にしたほうが いいってもんだ。まぁ 婿に行ってしもうたがな」
「ハッハッハ」
「えっ、それじゃぁ マーフィさんの跡は?…どなたが」
「おぉ、それなら問題ないのじゃ、わしには 倅が三人に 娘が二人おっての…それに まだまだわしは、引退なんぞせぬぞ」
なんだか 和やかな感じのロビン商会の店先ですが…次回、怒濤の解決編へ…となれば いいな。
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