2.優しい人もいました。
「本当に助かりました。」
「いいんだよ。女の子が夜にひとりで歩いてたら危ないって。」
「おかみさん……!」
「ははっ、気楽なひとり暮らしさ。ゆっくりしてっておくれ。」
「ありがとうございます!」
どうしようかと途方に暮れていると、辺りはあっという間に暗くなってしまっていよいよ心細くなってきた私に声をかけてくれたパン屋のおかみさん。行くあてがないなら、と家に招いてくれた。とってもいい人です。
隠す事情でもないし、召喚されたことを正直に話したら、なんかあの偉そうな王子は偉そうなことで有名で、わりと国民から嫌われているらしい。
偉そうな王子の被害者として同情してくれた。
おかみさんは、旦那さんをモンスターの襲撃の時に亡くして今は一人暮らしなんだって。モンスター化してしまった者たちが街に入り込んで暴れることがあるって教えてくれた。
そんな被害が出るほど深刻な問題なんだって知ったら、間違えられたのとなんか雑な扱いされたのは腹立つけど、異世界からでも助けが欲しかったっていうのは納得できる。
ちなみに息子さんがいて、騎士団で頑張っているんですって。とても強くて自慢の息子だって。
「おかみさん、私接客は得意なんです。 お店、手伝わせてください。」
「あら、そうかい? あんたみたいな子がいたら、店も明るくなるし、ありがたいよ。」
私は、置いてもらうかわりにお店を手伝うことにした。
・
・
・
「この部屋を使いな。こまめに掃除はしてるから大丈夫だと思うけど、不便があったら言っとくれ。」
「ありがとうございます。」
「朝食は7時に用意するから、その頃起きておいで。」
「ほんとうに……何から何までありがとうございます。明日から精一杯働きますね。」
「ははっ、ほどほどでいいよ。気楽にやってちょうだいな。」
「ふふっ。はい!」
ベッドと机と椅子が置かれた日本で言うところの8畳ほどの部屋に案内してもらい、今夜からここで寝泊まりさせてもらうことになる。
シンプルで、とても落ち着くいい部屋。
渡された寝間着に着替えると、ベッドに座ってひと息つく。
お風呂は、朝パンを焼くときに使うオーブンの熱を使ってお湯を沸かすらしいから、朝風呂をいただけるらしい。
ひとりになってあらためて思い返してみると、ずいぶんな一日だった。
偉い人恐怖症になりそう。
そういえば、異世界召喚とか転生とかって、漫画で読んだことあるけど、こう、ステータスウインドウが見れたりアイテムボックス持ってたりする設定の場合もあるのよね。
「す、ステータスオープンっ……」
-ヴォンッ
「わっ!」
ちょっと恥ずかしかったけど、声に出してみたら何もない空中にパネルが現れた。これぞステータスウインドウ。すごい。
画面を上から確認していく。
まずはHP、220。
多いのか少ないのかわかんない。年齢×10ってことかな。
MP、0。ぜ、ゼロ。
魔法は使えない??
SPが、30000? ささささんまん? なに、SPって。何ポイント?スペシャル??
ま、まあ、分からないことは置いておいて……。体力、攻撃力に防御力、素早さとか運とか、普通ですね。たぶん。
こっちのタブは、スキル?
-ピーオッ
『スキル・家具職人』?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます